近年、働き方改革の流れの中で、「フレックスタイム制」や「コアタイム」の廃止といった、より柔軟な働き方を導入する企業が増えています。

本記事では、最新の動向を踏まえ、各社の取り組みや、それが振込に与える可能性のある影響について解説します。

「コアタイム」とは何か?基本を理解しよう

フレックスタイム制とコアタイムの定義

「フレックスタイム制」とは、労働者が自身の勤務時間を柔軟に設定できる制度であり、近年導入する企業が非常に増加しています。

この制度の根幹は、労働者が日々の始業時間と終業時間を自身の裁量で決定できる点にあります。

一方で「コアタイム」とは、フレックスタイム制が適用される企業において、「必ず勤務しなければならない時間帯」を指します。

例えば「午前10時から午後3時までは全社員が出勤」といった形で設定され、この時間帯は会議や打ち合わせ、チームでの情報共有などを行う場として活用されます。コアタイムを設けることで、従業員の柔軟性を保ちつつも、組織としての連携を維持し、業務の円滑な進行を図るのが目的です。

コアタイム設定の背景と企業の目的

企業がコアタイムを設定する背景には、主にチーム内のコミュニケーション確保と業務連携の必要性があります。

全員が顔を合わせる時間を確保することで、会議をスムーズに開催したり、口頭での迅速な情報共有を可能にしたりすることができます。

特に、複数の部署やプロジェクトメンバーが連携して業務を進める場合、共通の勤務時間帯があることで、進捗確認や意思決定が迅速に行えるというメリットがあります。

また、顧客からの問い合わせ対応や、特定の時間に行う必要のある業務を確実に遂行するためにも、コアタイムは有効な手段として機能してきました。

最低限のコミュニケーション機会を保障し、組織としての生産性を維持することが、多くの企業がコアタイムを導入する主な目的だったと言えるでしょう。

コアタイム廃止への流れ

しかし近年、このようなコアタイムを廃止する動きが急速に広がっています。

その背景には、社会全体の価値観の変化や労働市場の構造変化に伴い、「時間に縛られない働き方」を推進しようとする企業の姿勢があります。

特に、育児や介護といった従業員個々のライフイベントとの両立支援や、リモートワークの普及が、この動きを加速させています。

コアタイムを廃止することで、従業員はより一層自身の生活リズムや集中力が高まる時間帯に合わせて働くことが可能になり、結果としてワークライフバランスの向上や生産性の向上が期待されます。

このような制度は「スーパーフレックスタイム制度」とも呼ばれ、働き方の柔軟性を最大限に高めるものとして注目を集めています。

各社が導入する「コアタイム」の実態

業界別の導入状況と大手企業の事例

フレックスタイム制の導入は年々増加傾向にあり、2022年度の調査では、企業の約8%がこの制度を導入しています。

特に従業員数が多い大手企業での導入率が高い傾向にあり、従業員数1,000人以上の企業では31.2%が導入していることが分かります。

業種別に見ると、情報通信業が最も導入率が高く、約30%の企業が採用。さらに、IT・通信業界では実に61%もの企業がフレックスタイム制を採用しており、先進的な働き方を率先して取り入れている実態がうかがえます。

その他、金融・保険業(14.7%)、電気・ガス・熱供給・水道業(12.5%)でも導入が進んでいます。

このようなデータは、現代の企業が働き方の多様化にいかに対応しようとしているかを示しています。

コアタイム廃止の具体的な動き

多くの企業が、より柔軟な働き方を目指し、コアタイムの廃止に踏み切っています。

例えば、花王株式会社はコアタイムの廃止や休暇取得の時間単位化により、時間外労働の削減を実現しました。従業員が自身の都合に合わせて効率的に働ける環境を整備しています。

また、江崎グリコ株式会社もテレワーク導入と同時にフレックス勤務のコアタイムを廃止し、場所と時間にとらわれない働き方を推進しています。

ソフトバンク株式会社は、2017年から既にコアタイムを廃止し、スーパーフレックスタイム制度を導入しており、従業員の自律性を重視する企業文化を築いています。

さらに、三菱日立パワーシステムズ株式会社は2019年8月にコアタイムを廃止し、フレキシブルタイム内であれば出退勤時間を自由に選べるようにしました。株式会社三井住友フィナンシャルグループも2022年3月時点で、社員の約8割がコアタイムなしのフレックスタイム制度を利用しており、大手金融機関でもその動きが加速しています。

スーパーフレックス制への移行と特徴

コアタイムを廃止し、より柔軟な働き方を追求する企業が導入しているのが「スーパーフレックスタイム制度」です。

この制度は、文字通りコアタイムが存在しないため、従業員は自身の判断で、いつ働き始めていつ終えるかを完全にコントロールできます。これは、単に勤務時間の柔軟性を提供するだけでなく、従業員一人ひとりの自律性と責任感を最大限に引き出すことを目的としています。

スーパーフレックス制下では、成果を重視する文化がより一層醸成されやすくなります。

決められた時間に働くことよりも、与えられた業務を期限内に、高い質で完遂することが求められるため、従業員は自身の生産性が最も高まる時間帯に集中して業務に取り組むことができます。これにより、企業はより多くの優秀な人材を引きつけ、従業員のエンゲージメントを高める効果も期待できます。

「コアタイム」と振込・入金タイミングの関係

コアタイムの有無が振込額に与える直接的な影響

「コアタイム」の有無や、フレックスタイム制の導入自体は、直接的に振込額を変動させるものではありません。

従業員の振込額、つまり給与は、基本給、各種手当、残業代、インセンティブなど、企業が定める個々の給与規定に基づいて厳密に計算されます。

コアタイムはあくまで「勤務時間管理」の制度であり、給与の計算ロジックとは直接的な関係がありません。

そのため、コアタイムがあるかどうかにかかわらず、所定労働時間に対する給与は固定されており、時間外労働が発生すれば残業代が支払われるという基本構造は変わりません。

従業員が柔軟な働き方を選択できる制度と、それに対する報酬は、それぞれ異なる側面から設計されていると理解しておくことが重要です。

間接的な影響の可能性

直接的な影響は限定的であるものの、コアタイムの廃止が間接的に振込額に影響を与える可能性はあります。

例えば、コアタイム廃止によって従業員が自身の生産性が高い時間帯に集中して業務に取り組めるようになれば、業務効率が向上し、結果として残業時間の削減に繋がる可能性があります。

残業代が減少すれば、総支給額も変動することになります。逆に、成果主義を導入している企業では、柔軟な働き方によって個々の成果が向上し、それがインセンティブやボーナスに反映されることで、振込額が増加する可能性も考えられます。

また、企業全体の生産性向上や業績改善に繋がれば、それが賞与や昇給といった形で従業員に還元されることも期待できるでしょう。

働き方改革と給与制度の連動

コアタイムの廃止を含む働き方改革は、単に勤務時間を柔軟にするだけでなく、企業が従業員の評価方法や給与制度全体を見直す契機となることがあります。

多くの企業が、時間ではなく「成果」をより重視する評価制度へと移行する傾向にあります。これは、従業員がいつどこで働くかにかかわらず、達成した結果に対して適切に報酬を与えることを目的としています。

このような制度は、従業員の自律性を尊重し、自身のキャリアプランやスキルアップに繋がる業務に注力することを奨励します。

結果として、柔軟な働き方が個々の従業員の市場価値を高め、長期的なキャリア形成や賃金上昇に繋がる可能性も十分にあり得るのです。働き方改革は、給与制度を含む企業文化全体を変革する大きな流れと言えるでしょう。

「コアタイム」制度がもたらすメリット・デメリット

従業員と企業のメリット

コアタイムの廃止やスーパーフレックスタイム制の導入は、従業員と企業双方に多大なメリットをもたらします。

まず、従業員にとっては、ワークライフバランスの大幅な向上が挙げられます。育児や介護、通院などの個人的な事情に合わせて勤務時間を調整できるため、仕事と私生活の両立が非常にしやすくなります。これにより、従業員の肉体的・精神的負担が軽減され、モチベーションの向上に繋がります。

企業側から見ると、従業員が自身の集中できる時間帯に業務を行えるようになるため、生産性・業務効率の向上が期待できます。成果を重視する文化が醸成され、意思決定のスピードアップも図れるでしょう。

また、柔軟な働き方は、現代の多様なニーズを持つ優秀な人材にとって魅力的な選択肢となり、採用競争力の強化に繋がります。

残業という概念に縛られず柔軟に勤務時間を設定できることで、長時間労働の常態化を抑制し、健康的な職場環境を維持することも可能です。

コミュニケーションと勤怠管理の課題

一方で、コアタイム廃止にはいくつかのデメリットや懸念点も存在します。

最も大きな課題の一つが、コミュニケーション不足です。チームメンバーが同じ時間に勤務していないことで、偶発的な情報共有の機会が減少し、情報伝達や意思決定が遅れる可能性があります。特に、共同作業が多い部署や、厳密な決裁フローが必要な部署では、調整が難しくなる場合があります。

次に、勤怠管理の複雑化も大きな課題です。従業員一人ひとりの出退勤時間が異なるため、正確な労働時間の把握が煩雑になり、人員配置やシフト管理が難しくなる可能性があります。

また、全員が顔を合わせる機会が減ることで、チームや部署の一体感が低下し、組織文化の醸成が難しくなることも懸念されます。

これらの課題は、柔軟な働き方を成功させるために、企業が積極的に取り組むべき点と言えるでしょう。

デメリットへの効果的な対策

コアタイム廃止によるデメリットを克服するためには、適切な対策とツールの導入が不可欠です。

コミュニケーション不足に対しては、SlackやMicrosoft Teamsといったチャットツール、ZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議システム、さらには法人向けスケジュール管理ツールを積極的に活用することが有効です。これらにより、遠隔地からでもリアルタイムの情報共有や会議参加が可能となり、円滑なコミュニケーションを維持できます。

また、勤怠管理の複雑化には、勤怠管理システムの導入が推奨されます。これにより、従業員の出退勤時間を自動で記録し、労働時間を正確に把握できるため、管理業務の負担を大幅に軽減できます。

システムの活用だけでなく、定期的なチームビルディング活動やオフラインでの交流機会を設けることで、組織の一体感を醸成し、従業員同士の信頼関係を深めることも重要です。

テクノロジーと人間的なアプローチの融合が、柔軟な働き方を成功させる鍵となります。

あなたに合った働き方を見つけるヒント

働き方の選択肢と自己分析

多様な働き方が浸透する中で、自分に合った働き方を見つけることは、キャリアを考える上で非常に重要です。

コアタイムの有無だけでなく、自身のライフスタイル、キャリア目標、仕事で何を最も重視するのかを深く自己分析することから始めましょう。

例えば、「育児や介護と両立させたいので、勤務時間の柔軟性が最優先か?」「チームで密に連携しながら仕事を進めたいか?」「成果で正当に評価されたいか?」など、自身の価値観を明確にすることが大切です。

フレックスタイム制、スーパーフレックス制、リモートワーク、時短勤務など、様々な選択肢の中から、自身の望む働き方を具体的にイメージすることで、企業選びの軸が定まります。

自己分析を通じて、自身の理想とするワークスタイルを明確にしましょう。

企業選びのポイントと情報収集

自己分析で自身の求める働き方が明確になったら、次はそれに合致する企業を探すための情報収集が重要になります。

求人情報に記載されているコアタイムの有無やフレックスタイム制の導入状況だけでなく、企業の文化、評価制度、福利厚生なども総合的にチェックすることが大切です。

企業の公式ウェブサイト、採用ページはもちろんのこと、口コミサイト、SNS、ニュース記事などを活用して、実際の働き方や従業員の声を探るのも有効です。

特に、面接時には、単に制度の有無を確認するだけでなく、「実際にどのように運用されているのか」「チーム内のコミュニケーションはどのように取っているのか」など、具体的な質問をすることで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

企業が導入しているコミュニケーションツールや勤怠管理システムの種類も、働き方の実態を推し量るヒントになるでしょう。

柔軟な働き方を活かすための心構え

柔軟な働き方は、多くの自由とメリットをもたらしますが、その分、個人の自律性と責任感がこれまで以上に求められます。

コアタイムがない環境では、自身の業務遂行能力や自己管理能力が重要になります。与えられた裁量の中で、いかに効率的かつ効果的に業務を遂行し、成果を出せるかが評価の鍵となります。

また、コミュニケーションの機会が減るからこそ、自ら積極的に情報共有を行い、チームメンバーとの連携を密にしようとする意識が不可欠です。

オンラインツールを最大限に活用し、報告・連絡・相談を怠らない努力が求められます。柔軟な働き方を最大限に活かすためには、これらの心構えを持ち、常に自身のパフォーマンス向上とチームへの貢献を意識することが、成功への近道となるでしょう。