概要: 固定残業代は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含んで支払う制度です。しかし、固定残業代が60時間を超えると、労働基準法違反のリスクが高まる可能性があります。この記事では、固定残業代の仕組みから、60時間超のケースで注意すべき点、違法性の判断基準、そして賢く働くためのポイントまでを解説します。
固定残業代60時間超は要注意?上限や法律違反のリスクを徹底解説
近年、求人情報などで「固定残業代」という言葉を目にする機会が増えました。一見すると給与が高く見え、魅力的に感じるかもしれませんが、その仕組みを正しく理解しておかないと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。特に、固定残業代が60時間以上に設定されている場合は、要注意です。
本記事では、固定残業代の基本的な仕組みから、なぜ「60時間」という数字が危険視されるのか、さらには法律上の上限や違反のリスク、そして固定残業代が多い企業で働く前に確認すべきポイントまで、詳しく解説していきます。
自身の権利を守り、安心して働くためにも、ぜひ最後までお読みください。
固定残業代の仕組みを理解しよう
固定残業代とは?基本を解説
固定残業代とは、毎月一定の時間数分の残業をあらかじめ見込み、その分の賃金を基本給とは別に定額で支払う制度のことです。「みなし残業代」とも呼ばれ、給与に固定的に組み込まれるため、一見すると基本給が高く見えることがあります。
この制度の主な目的は、会社側が毎月の残業代計算の手間を省くことや、社員側も月々の収入が安定するというメリットが挙げられます。しかし、この制度が適切に運用されない場合、従業員にとって不利益となることも少なくありません。給与明細では「〇〇手当」「業務手当」といった名目で表記されることが多く、その内訳が「固定残業代(〇時間分)」と明記されているか確認が重要です。求人票に記載されている給与額が、実は固定残業代込みであるケースも多いので、内訳をよく確認するようにしましょう。
企業がこの制度を導入する際は、賃金規程に固定残業代に関する規定を設け、労働条件通知書や雇用契約書にその旨を明記する必要があります。また、労働者に対し、固定残業代がどのような趣旨で、何時間分の残業に相当するのかを明確に説明する義務があります。この説明が不十分であったり、実態と異なる運用がされていたりすると、後にトラブルの原因となる可能性が高まります。
残業代の正しい計算方法と原則的な上限
固定残業代を理解するためには、まず残業代の基本的な考え方を知ることが不可欠です。労働基準法では、法定労働時間(原則として1日8時間、週40時間)を超えて労働させた場合、会社は従業員に対し、通常の賃金に割増率を上乗せした残業代を支払う義務があります。
この残業代は、通常「1時間あたりの賃金 × 残業時間数 × 割増率」で計算されます。一般的な割増率は、時間外労働で25%以上、深夜労働(22時~翌5時)で25%以上、法定休日労働で35%以上と定められています。そして、会社が従業員に法定労働時間を超えて残業をさせる場合、労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で「36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
この36協定で定めることができる時間外労働の上限は、原則として月45時間、年間360時間とされています。これは、労働者の健康維持を目的とした重要な規制であり、企業が従業員に無制限に残業をさせることを防ぐためのものです。固定残業代が設定されている場合でも、この法定の残業時間上限を超えて労働させることはできませんし、もし超えた場合は別途残業代を支払う義務が生じます。この原則的な上限は、固定残業代が設定されている場合でも、労働者の健康と生活を守るための基準となることを理解しておく必要があります。
固定残業代と通常残業代の違い
固定残業代と通常の残業代の最も大きな違いは、「残業があるかどうかにかかわらず、あらかじめ定額が支払われる」という点にあります。通常の残業代は、実際に残業した時間に応じて計算され、支払われます。しかし固定残業代の場合、例えば「月20時間分の固定残業代」と設定されていれば、実際に残業が5時間であったとしても、20時間分の固定残業代が支払われます。
重要なのは、固定残業代として設定された時間数を超えて残業した場合、その超過時間分については別途、通常の残業代と同じように割増賃金を支払う義務が会社にはあるという点です。例えば、月20時間の固定残業代が支払われている従業員が、ある月に30時間残業した場合、20時間を超える10時間分については追加で残業代が支払われなければなりません。
もし会社がこの超過分の残業代を支払わない場合、それは「未払い残業代」となり、労働基準法違反にあたります。固定残業代制度は、あくまで一定時間までの残業代を前払いするものであり、それ以上の残業をタダ働きさせるためのものではないことを理解しておくことが非常に重要です。この点を誤解している企業や従業員も少なくなく、未払い残業代請求トラブルに発展するケースも後を絶ちません。制度の透明性と正確な運用が、企業と従業員双方にとって健全な関係を築く上で不可欠です。
固定残業代「60時間」はなぜやばいと言われるのか?
法律改正で中小企業も対象に!割増賃金率引き上げ
固定残業代が「60時間」という数字に警戒すべき最大の理由は、2023年4月1日に行われた労働基準法の改正にあります。この改正により、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が、従来の25%から50%以上に引き上げられました。以前は大企業のみが対象でしたが、この改正で中小企業も例外なく対象となった点が極めて重要です。
つまり、固定残業代が60時間以上に設定されている会社で、実際に60時間を超えて残業した場合、その超過分は通常の25%ではなく、50%以上の高い割増率で計算されることになります。これは、企業にとって人件費の負担が大幅に増えることを意味し、従業員にとっても60時間というラインを超えた残業代の計算が複雑になることを示唆しています。
この法改正は、過重労働の抑制と従業員の健康保護を強く推進する国の姿勢を示すものです。中小企業にとっては大きな変化であり、固定残業代の運用を適切に見直す必要性が高まりました。会社がこの新しい法律を遵守しているか、また、従業員自身が自身の残業代が正しく計算されているかを確認する上で、非常に重要なポイントとなります。
月60時間超の残業がもたらすリスク
月60時間を超える残業は、単に割増賃金率が高くなるという経済的な側面だけでなく、労働者自身の健康や企業の社会的信用にも深刻なリスクをもたらします。医学的・社会的に、月45時間を超える残業は健康リスクを高めるとされており、月80時間を超えると「過労死ライン」として非常に危険な水準とされています。
常に月60時間以上の残業が常態化している職場は、従業員の心身の疲弊を招き、生産性の低下、離職率の増加、さらにはうつ病などの精神疾患や循環器疾患の発症リスクを高める可能性があります。このような状況は、企業にとっても優秀な人材の流出、新たな採用コストの増加、そして何よりも従業員の健康を損なうことによる企業の社会的責任(CSR)の欠如という大きな問題に直面します。
厚生労働省も過重労働対策に力を入れており、労働基準監督署による指導や是正勧告の対象となる可能性も高まります。ブラック企業としての風評が立てば、採用活動にも悪影響が出かねません。固定残業代が60時間以上に設定されていること自体が直ちに違法というわけではありませんが、それが恒常的な実態と結びついている場合は、深刻な過重労働が起きている可能性が高く、従業員と企業双方にとって見過ごせないリスクとなるのです。
計算例で見る!固定残業代60時間超の給与
では、具体的に月60時間超の残業が給与にどう影響するのか、計算例を見てみましょう。
前提:
- 基本給月30万円
 - 固定残業代:なし(残業時間に応じて都度支払い)
 - 1時間あたりの基礎賃金:30万円 / (160時間 * 1.25) = 約1,875円 (※月平均所定労働時間160時間、仮の計算)
 
| 残業時間 | 割増率 | 計算式 | 残業代 | 
|---|---|---|---|
| 〜60時間 | 25% | 1,875円 × 60時間 × 1.25 | 140,625円 | 
| 60時間超分(例: 5時間) | 50% | 1,875円 × 5時間 × 1.50 | 14,062円 | 
| 合計残業時間 65時間の場合 | 154,687円 | ||
| 〜60時間 | 25% | 1,875円 × 60時間 × 1.25 | 140,625円 | 
| 60時間超分(例: 10時間) | 50% | 1,875円 × 10時間 × 1.50 | 28,125円 | 
| 合計残業時間 70時間の場合 | 168,750円 | ||
このように、60時間を境に割増率が大きく変わるため、会社が支払う残業代は大きく増加します。もし固定残業代として60時間分が支払われている会社で、さらに5時間残業した場合、その5時間分は50%割増で追加支払いが必要です。さらに、月60時間を超える時間外労働が深夜(22時~翌5時)に重なる場合、深夜労働の割増率25%と合わせて合計で75%以上(50%+25%)の割増賃金となります。
会社がこの計算を正しく行わず、従来の25%割増でしか支払っていない場合、未払い残業代が発生していることになります。従業員自身も自身の残業時間と給与明細を照らし合わせ、正しく計算されているか確認することが大切です。この計算の複雑さと、それに伴う会社の負担増が、「固定残業代60時間」が警戒される大きな理由の一つです。
固定残業代の上限は法律で決まっている?
法律が定める残業時間の原則的な上限
日本の労働基準法では、労働者の健康と生活を守るため、企業が従業員に労働させることができる時間外労働(残業)について明確な上限を定めています。これが、通称「36協定」と呼ばれる時間外労働・休日労働に関する協定に基づくものです。
原則として、時間外労働の上限は月45時間、年間360時間とされています。この上限は、過労死等の社会問題を受けて、2019年に労働基準法が改正され、罰則付きの法的規制として設けられました。これ以前は、上限に法的拘束力がなく、実質的に無制限な残業が横行する要因となっていました。
この原則的な上限は、あらゆる労働者に適用されるものであり、固定残業代が設定されているかどうかにかかわらず、会社はこの上限を超えて労働者を働かせることはできません。もしこの上限を超えて労働させた場合、労働基準法違反となり、会社には罰則が科される可能性があります。労働者側から見ても、自身の残業時間がこの原則的な上限を超えていないか、常に意識しておくべき重要な基準となります。この上限規制があることで、労働者が過度な負担を強いられることを防ぎ、ワークライフバランスを保ちやすくする狙いがあります。
固定残業代の「妥当な」時間設定とは
実は、固定残業代として設定できる時間の上限について、法律で明確に定められたものはありません。しかし、前述した36協定の原則的な時間外労働の上限である月45時間を超える設定は、非常にリスクが高いとされています。
なぜなら、固定残業代を月45時間以上に設定するということは、会社が「毎月45時間を超える残業が常態化する」ことを前提としていると解釈されかねないからです。もし実際の残業時間が常に45時間を超えているのであれば、それは原則的な36協定の上限を超過しており、法律違反となる可能性が高まります。このため、固定残業代は原則的な上限である月45時間に合わせることが一般的かつ妥当と認識されています。
月45時間を超える固定残業代の設定は、企業が法を遵守する姿勢に疑問符をつけられるだけでなく、労働者に対しても「残業が常態化する職場」という印象を与え、優秀な人材の確保を難しくする要因にもなります。法律に明確な規定がないからといって、無制限に長い時間を設定できるわけではなく、労働基準法の趣旨や他の規制との整合性を考慮した上で、慎重に時間設定を行う必要があります。
特別条項付き36協定と上限規制
原則として月45時間、年間360時間が時間外労働の上限とされていますが、特別な事情がある場合に限り、「特別条項付き36協定」を締結することで、この上限を超えて労働させることが認められています。例えば、緊急の業務対応や大規模なプロジェクトの納期直前などがこれに該当します。
しかし、特別条項を設けたからといって、無制限に残業させられるわけではありません。特別条項付き36協定にも、以下のような厳しい上限規制が設けられています。
- 時間外労働が年720時間以内であること
 - 時間外労働が月100時間未満であること
 - 時間外労働が2ヶ月から6ヶ月の平均で月80時間以内であること
 - 月45時間を超えることができるのは年6回までであること
 
これらの上限は、労働者の健康確保を最優先するために設けられたものであり、会社は特別条項を適用する際も、これらの規制を厳格に遵守しなければなりません。もしこれらの上限を超えて労働させた場合、労働基準法違反として罰則の対象となります。固定残業代が例えば60時間と設定されている場合、それが特別条項で許容される範囲内であっても、その実態が月100時間近い残業が常態化しているのであれば、従業員の健康リスクは極めて高くなります。企業は、特別条項を安易に利用せず、労働時間の削減に努めることが強く求められています。
固定残業代60時間超の会社は違法?見分け方と対処法
違法となるケースとは?
固定残業代制度は、正しく運用されていれば違法ではありません。しかし、以下のような運用がされている場合、法律違反となる可能性が高く、労働者は未払い残業代を請求できる可能性があります。
- 固定残業代と基本給が明確に区分されていない:給与明細などで基本給の中に固定残業代が含まれていたり、「〇〇手当」という名目だけで、何時間分の残業代に相当するかが明記されていなかったりするケース。
 - 固定残業時間を超えた分の残業代が支払われない:固定残業代として設定された時間を超えて労働したにもかかわらず、その超過分の割増賃金が支払われない場合。これが最も一般的な違法行為です。
 - 固定残業代の金額が労働実態にかけ離れている:固定残業代の金額が、実際に残業した場合に発生するであろう残業代の金額と比較して著しく低い場合。これは実質的な残業代の不払いにあたります。
 - 常に過度な残業を強いる:固定残業代が設定されているにもかかわらず、毎月のように原則的な36協定の上限(月45時間)や特別条項の上限を超えるような残業を恒常的に強いる場合。これは過重労働であり、労働基準法違反につながります。
 
これらのケースに該当する場合、会社は未払い残業代の支払い義務を負い、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。固定残業代の表示方法や実際の運用状況をしっかり確認することが重要です。
違法な会社を見分けるポイント
違法な固定残業代制度を導入している会社を見分けるには、いくつかのポイントがあります。入社前だけでなく、入社後もこれらの点に注意を払うようにしましょう。
- 求人票や労働条件通知書を徹底確認する:
- 「固定残業代」が給与の内訳として明記されているか。
 - 何時間分の残業を想定しているか、その時間数が明確か。
 - 固定残業時間を超えた場合の残業代の扱いが明記されているか。
 - 基本給と固定残業代の金額が明確に分かれているか。
 
曖昧な記載や、「みなし残業手当」など具体的な時間数が書かれていない場合は要注意です。
 - 給与明細の内訳をチェックする:入社後、毎月の給与明細で固定残業代が基本給と明確に区分され、金額が明示されているか確認しましょう。また、実際の残業時間が固定残業時間を超えた月に、超過分の残業代が追加で支払われているかも確認が必要です。
 - 会社の口コミや評判を調べる:転職サイトやSNSなどで、その会社の残業時間の実態や固定残業代に関する口コミを調べてみましょう。離職率が高い、サービス残業が多いといった情報がある場合は警戒が必要です。
 - 面接時に質問する:面接の機会があれば、固定残業代の具体的な計算方法、過去の従業員の平均残業時間、超過分の残業代の支払い実績について積極的に質問してみましょう。
 
これらの情報から、会社が固定残業代制度を適正に運用しているかを判断する材料とすることができます。
違法な固定残業代の対処法
もし、あなたの会社で固定残業代が不適切に運用されており、違法な状況にあると感じた場合、一人で抱え込まず、適切な対処を取ることが重要です。
- 会社への確認・交渉:
まず、会社の担当者や上司に、自身の残業時間と給与明細の記載について疑問点を伝え、説明を求めることから始めましょう。可能であれば、書面で質問し、回答も書面で得るように努めると、後の証拠になります。 - 労働基準監督署への相談:
会社との直接交渉で解決しない場合や、会社がまともに対応しない場合は、労働基準監督署に相談することができます。労働基準監督署は、労働基準法違反の事実があれば会社に対して指導や是正勧告を行い、悪質な場合には捜査を行う権限を持っています。 - 弁護士への相談:
未払い残業代の請求を考えている場合や、法的な解決を希望する場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、過去の給与明細やタイムカードなどの証拠をもとに、具体的な未払い残業代の金額を計算し、会社との交渉や訴訟を代理して行うことができます。 - 証拠の収集:
どのような対処法を取るにしても、残業の証拠を収集しておくことが不可欠です。タイムカード、業務日報、PCのログ、メールの送受信履歴、出退勤時刻を記録したメモや交通系ICカードの履歴、同僚とのやり取りなどが有力な証拠となります。 
これらの手段を通じて、自身の正当な権利を守り、安心して働ける環境を取り戻しましょう。
固定残業代が多い企業で働く前に確認すべきこと
求人票や労働条件通知書を徹底確認
固定残業代が多い企業への転職を検討している場合、最も重要なのは、入社前に求人票や労働条件通知書を徹底的に確認することです。これらの書類には、あなたの労働条件に関する重要な情報がすべて記載されています。
特に注意すべき点は以下の通りです。
- 固定残業代の具体的な時間数と金額が明記されているか。
 - 固定残業時間を超えた場合の残業代が別途支払われる旨が明確に記載されているか。
 - 基本給と固定残業代が明確に区分されているか、例えば「月給30万円(固定残業代60時間分10万円含む)」のように、内訳が分かりやすく記載されているか。
 - 固定残業代の時間が、前述の月45時間の原則的な上限を大きく超えていないか。
 
もし記載内容が曖昧であったり、不明な点が多い場合は、必ず採用担当者や面接官に質問し、納得できるまで確認するようにしてください。口頭での説明だけでなく、可能であれば書面での回答を求めることで、後のトラブルを避けることができます。固定残業代を過度に利用している企業の中には、あいまいな記載でごまかそうとするケースもあるため、細部にわたる確認が自身を守る第一歩となります。
給与と働き方の実態を把握する
求人票に記載された給与額が、固定残業代込みで高く見えても、それが必ずしも「良い条件」とは限りません。提示された給与が、固定残業代を除いた基本給が極端に低い場合、ボーナスや退職金、昇給の基準が基本給ベースで計算されるため、将来的な収入に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、固定残業代が多いということは、それだけ会社が残業を前提とした働き方を求めている可能性が高いことを意味します。そのため、以下の点も合わせて確認することが重要です。
- 実際の残業時間の平均:面接時や社員の口コミを通じて、社員が実際にどれくらいの時間残業しているのかを確認しましょう。固定残業時間ギリギリまで毎日残業しているような実態がないか。
 - 仕事の裁量や業務量:残業が多いのは、業務量が過剰なのか、それとも効率的な働き方ができていないのか、その原因を探ることも大切です。
 - ワークライフバランスへの企業の考え方:従業員のプライベートを尊重する文化があるか、有給休暇の取得状況はどうかなども、働き方の実態を把握する上で重要な情報です。
 
高い給与に惑わされず、その内訳と、実際にどれだけ働かなければならないのかという働き方の実態を深く理解することで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。給与額だけでなく、総合的な労働条件と企業文化を見極めることが賢明です。
企業文化と健康への配慮をチェック
固定残業代が多い企業を選ぶ際に、最後に確認すべきは、その企業の「企業文化」と「従業員の健康への配慮」です。過重労働が常態化している職場では、従業員の心身の健康が損なわれ、長期的に働くことが困難になる可能性があります。
以下のような点をチェックしてみましょう。
- 残業に対する企業の考え方:残業は「当たり前」とされているか、それとも「やむを得ない場合に限る」という認識か。残業削減への取り組みがあるか。
 - 健康経営への取り組み:健康診断の徹底、ストレスチェックの実施、産業医の設置、メンタルヘルスサポートなど、従業員の健康を守るための具体的な制度が整っているか。
 - コミュニケーションの活発さ:上司や同僚と気軽に相談できる雰囲気があるか。困ったときに助け合える文化があるか。
 - ハラスメント対策:パワーハラスメントやモラルハラスメントがないか、相談窓口が機能しているか。
 
「社員は会社の財産」という考えが根付いている企業であれば、固定残業代の制度があっても、過度な残業を強いることなく、従業員の健康と働きがいを両立させる努力をしているはずです。求人情報や企業ホームページだけでなく、OB・OG訪問や企業説明会、面接時の雰囲気などから、企業の真の文化を感じ取ることが大切です。自身のキャリアを長く、そして健康的に築いていくためにも、これらの視点からの企業分析は欠かせません。
まとめ
よくある質問
Q: 固定残業代とは具体的にどのような制度ですか?
A: 固定残業代とは、毎月一定時間分の残業代があらかじめ給与に含まれている制度です。例えば、月30時間分の固定残業代が含まれている場合、実際に30時間残業しても、それ以上の残業をしても、給与から引かれる残業代は固定額となります。
Q: 固定残業代「60時間」や「80時間」は、なぜ「やばい」と言われるのですか?
A: 固定残業代が60時間、80時間と長くなるほど、法定労働時間を超えた労働時間に対して、適切な割増賃金が支払われていない可能性が高まるため、「やばい」と言われることがあります。法的な上限を超えている場合や、実質的な労働時間が固定残業時間よりも大幅に長い場合、問題となることがあります。
Q: 固定残業代の上限は法律で決まっていますか?
A: 法律で直接的に「固定残業代の上限は〇時間まで」と明確に定められているわけではありません。しかし、労働基準法では1週間の法定労働時間は40時間、1日8時間と定められており、これを超えた労働には割増賃金の支払い義務があります。固定残業代がこれらの法定時間や、36協定で定められた特別条項の上限を超えるような場合は、法的な問題が生じる可能性があります。
Q: 固定残業代60時間超の会社は必ず違法ですか?
A: 固定残業代が60時間超であっても、必ずしも違法とは限りません。重要なのは、36協定で定められた時間内であり、かつ、固定残業代として支払われる金額が、実際の労働時間に見合った割増賃金(時間外労働、深夜労働、休日労働に対する割増賃金)を上回っているかどうかです。ただし、60時間超となると、法的なリスクが高まるため、慎重な確認が必要です。
Q: 固定残業代が多い企業で働く場合に、どのような点を確認すべきですか?
A: まず、求人票や雇用契約書で、固定残業代が何時間分含まれているか、そしてその金額を確認しましょう。次に、実際の想定残業時間と固定残業代の時間が乖離していないか、そして、残業が発生した場合の割増賃金(深夜・休日労働など)がどのように計算・支払われるのかを企業に具体的に確認することが重要です。また、36協定の内容も確認できるとより安心です。
  
  
  
  