概要: 長年制限されていた公務員の副業が解禁される動きが広がっています。本記事では、その背景にある理由や具体的な内容、そして農業や兼業といった多様な副業の可能性について解説します。また、全国の自治体や病院での最新動向も紹介し、公務員の働き方の未来像を探ります。
公務員の副業解禁!気になる内容と最新ニュースを徹底解説
長らく「原則禁止」とされてきた公務員の副業ですが、近年その規制緩和が急速に進んでいます。
これは、働き方改革や地方創生といった社会の大きな流れの中で、公務員個人のキャリア形成支援と地域活性化を両立させるための重要な取り組みとして注目されています。
この記事では、公務員の副業解禁がどのような背景と目的のもとで進められているのか、具体的なルールや許可条件、そして多様な副業の可能性について、最新の動向を交えながら徹底解説します。
公務員の副業解禁、その背景と目的とは?
なぜ今、公務員の副業が求められるのか?
公務員の副業解禁が加速している背景には、現代社会が抱える複数の課題があります。
まず挙げられるのが、人口減少や地域人材の不足です。特に地方では、行政だけでは解決できない地域課題が山積しており、公務員が地域活動に積極的に関わることで、その解決に貢献できると期待されています。
また、職員個人のキャリア多様化も重要な要素です。
公務員が本業以外の活動を通じて新たな知識やスキル、人脈を獲得することは、自身の成長を促すだけでなく、本業である行政サービスにも多様な視点や専門性をもたらすと考えられています。これにより、職員のモチベーション向上やエンゲージメント強化にもつながると期待されています。
国全体で推進されている「働き方改革」の一環として、個人の多様な働き方を許容し、その経験を行政運営に活かすという狙いもあります。
「原則禁止」から「条件付き容認」への転換点
公務員の副業は、地方公務員法や国家公務員法により「職務専念義務」「信用失墜行為の禁止」などの理由から長らく原則禁止とされてきました。
しかし、時代の変化とともに、この硬直的な制度が見直される必要性が高まったのです。
特に、2025年に入り総務省が地方公務員の副業・兼業促進に向け、全国自治体へ許可基準の明確化・公表を通知したことは、大きな転換点となりました。
この通知により、多くの自治体で従来よりも柔軟な運用が始まり、副業を許可するための具体的な基準や相談体制の整備が加速しています。
これは、単なる規制緩和に留まらず、公務員の持つ多様な能力を地域社会に還元し、行政組織をより現代のニーズに合わせたものへと変革していこうという強い意志の表れと言えるでしょう。
副業解禁がもたらす多様なメリット
公務員の副業解禁は、多方面にわたるメリットをもたらします。
まず、公務員個人にとっては、新たな知見やスキル、人脈を獲得できる機会が増えることで、自己成長やキャリアの幅が広がります。本業では得られない経験を通じて、自身の専門性を高めたり、新たな分野に挑戦したりすることが可能です。
行政組織にとっては、職員が副業で得た多様な経験や知見を本業に還元することで、行政運営に新たな視点やイノベーションをもたらすことが期待されます。
例えば、地域課題に取り組むNPOでの活動経験が、新しい施策立案に活かされるといったケースも考えられます。
そして、最も大きなメリットの一つが、地域社会への貢献です。
公務員が副業を通じて地域の担い手となり、人手不足に悩む地域活動を支援したり、専門知識を活かして地域活性化に貢献したりすることで、より活気ある社会の実現につながるでしょう。
副業解禁の具体的な内容と注意点
許可される副業の必須条件とは?
公務員の副業は、全面的な解禁ではなく、あくまで「条件付き容認」であるという点を理解することが重要です。
副業を許可されるためには、以下のいくつかの必須条件を満たす必要があります。
- 本業への支障がないこと: 最も重要な条件です。勤務時間と重複しないことはもちろん、疲れなどにより本業の職務がおろそかにならないよう、週8時間以下などの労働時間制限が設けられることがあります。職務専念義務に抵触しないことが大前提です。
- 公務員としての信用を損なわないこと: 信用失墜行為の禁止、守秘義務の遵守が求められます。公務員としての品位を損なうような活動や、秘密情報を漏洩する可能性のある活動は許可されません。
- 非営利目的・社会貢献性が高い活動: 地域社会や人々の役に立つ活動は、許可を得やすい傾向があります。例えば、認定NPOでの活動や、地域貢献を目的とした兼業などがこれに該当します。
- 職務に関連しない、専門知識を活かせるもの: 公務員として培った専門知識やスキルを活かせる副業は、自己啓発や能力開発につながると評価されることがあります。ただし、本業と直接的に利害関係が生じるような活動は認められません。
これらの条件を総合的に判断し、所属長の許可を得る必要があります。
許可されにくい副業の具体例
公務員の副業では、上記のような条件に照らし合わせて許可が下りないケースも存在します。
特に注意が必要なのは、営利性が高い副業や、本業と直接的な競合・利害関係が生じる可能性のある副業です。
例えば、自身が許認可業務を行う部署にいるにもかかわらず、その許認可対象となる事業で副業を行うといったケースは、職務の公正性を損なうとして認められません。
また、特定の企業の商品を販売するような営業活動や、風俗営業など公務員の信用を著しく損なう可能性のある活動も許可対象外です。
執筆活動における印税収入は、原則として許可されません。これは著作物の販売による継続的な利益が営利目的とみなされるためです。
ただし、講演や原稿執筆といった単発の活動で謝礼を受け取る場合は、公務に支障がない範囲で許可されることがあります。
その他、株式投資やFX取引など、投機的な要素が強く、公務員としての信用を損なう可能性のある活動も、規模や内容によっては問題視されることがあります。
無許可副業のリスクとペナルティ
副業を検討する上で、最も重要な注意点は「必ず所属する自治体の規定を確認し、事前に相談・申請を行うこと」です。
無許可で副業を行った場合、公務員規定違反となり、懲戒処分の対象となる可能性があります。
懲戒処分の内容は、副業の内容や収入の規模、勤務への影響などによって異なりますが、戒告、減給、停職、そして最悪の場合には免職といった重い処分が科せられることもあります。
過去には、無許可で副業を行った公務員が懲戒処分を受けた事例も報告されており、決して軽視できないリスクです。
また、副業が許可されたとしても、その内容が条件に違反していないか、定期的に報告を求められる場合もあります。
常に自身の副業活動が公務員としての責務に合致しているかを確認し、疑問点があれば速やかに所属部署や人事担当者に相談することが不可欠です。
事前の確認と許可申請を怠らないようにしましょう。
農業や兼業も?公務員副業の多様な可能性
地域貢献とスキルアップを両立する副業
公務員の副業は、単なる収入補填にとどまらず、地域貢献や自己成長の機会としても大きな注目を集めています。
特に許可を得やすい傾向にあるのが、非営利団体での活動や、自身の専門知識・スキルを地域のために活かす活動です。
例えば、地域の認定NPO法人で運営支援や広報活動を行うケース、地域の活性化イベントの企画・運営に携わるケースなどが挙げられます。
これは、公務員が持つ地域に関する知識や行政手続きのノウハウが、NPO活動や地域活動において非常に有効に機能するためです。
また、公務員として培った専門知識(例えば、法務、財務、広報など)を活かして、地域の小規模事業者や団体向けにコンサルティングを行うといった活動も、その公共性や社会貢献性が認められれば許可される可能性があります。
これらの活動は、地域課題の解決に貢献しつつ、自身のスキルアップにもつながるWin-Winの関係を築くことができます。
家業の手伝いや小規模農業の現状
親の介護を兼ねて実家の家業を手伝ったり、週末に小規模な農業を営んだりすることも、公務員の副業として認められる場合があります。
家業の手伝いについては、無報酬での手伝いは比較的認められやすいですが、報酬を得る場合は事前に許可が必要です。
その際も、本業への支障や公務員としての信用を損なわないことが条件となります。
小規模農業も同様に、自給自足が目的で、営利を目的としない範囲であれば認められることがあります。
例えば、自宅の庭や市民農園で野菜を育て、自家消費するといった活動です。
しかし、収穫した作物を道の駅などで販売し、継続的に利益を得る場合は「営利目的」とみなされ、許可が必要となります。
営農規模や収入によっては、許可が下りない可能性もあるため、事前に詳細を確認することが重要です。
大切なのは、あくまで「地域貢献」や「自給自足」といった非営利性・社会貢献性が高く評価される点です。
執筆・講演活動、不動産投資の実態
公務員としての専門知識や経験を活かした執筆活動や講演活動は、比較的許可されやすい副業の一つです。
公務に支障のない範囲であれば、原稿料や講演料といった謝礼を受け取ることが可能な場合があります。
しかし、前述の通り、印税収入のように継続的な利益が発生するものは原則として認められません。
不動産投資については、小規模なものであれば申請が不要なケースもありますが、一定以上の賃貸収入がある場合や、管理に多くの時間を要する場合は許可が必要です。
具体的には、「5棟10室基準」と呼ばれるものが目安となることが多く、これを超える規模や、年間賃料が一定額を超える場合は厳格な審査が行われます。
この場合も、職務専念義務との関係や、公務員としての信用を損なわないかといった点が厳しく問われます。
不動産投資は資産形成の一環として捉えられがちですが、公務員の場合はその目的と規模、そして管理の手間が大きな判断基準となります。
必ず事前に所属自治体の規定を確認し、必要であれば申請を行うことが肝要です。
自治体ごとの最新動向:地域別の事例紹介
総務省通知が促す自治体の動き
2025年に総務省から発出された地方公務員の副業・兼業促進に向けた通知は、全国の自治体にとって大きな一歩となりました。
この通知は、単に副業を許可しなさいという命令ではなく、各自治体に対して「許可基準の明確化」と「その公表」を求めるものでした。
これにより、これまで「申請しても許可が下りるか分からない」「どのような副業が認められるのか不明確」といった不透明感が解消され、職員が安心して副業を検討できる環境が整備されつつあります。
総務省の狙いは、職員のキャリア形成支援と地域課題解決への貢献を両立させることにあります。
具体的には、地域住民の生活支援や地域イベントの企画運営、NPO活動への参加など、地域貢献性の高い活動が優先的に許可される傾向が見られます。
自治体によっては、地域活性化に資する活動であれば、一定の条件のもとで報酬を伴う副業も柔軟に認める動きが出てきています。
許可基準の明確化と相談体制の整備
総務省の通知を受け、多くの自治体で許可基準の明確化が進められています。
これは、各自治体の地域特性や抱える課題に応じた、独自の基準が設けられていることを意味します。
例えば、過疎化が進む地域では、地域住民の生活を支えるためのサービス(高齢者見守り、子どもの学習支援など)に関する副業が積極的に推奨されるかもしれません。
一方、都市部では、多様なスキルを持った人材が、IT分野やコンサルティング分野で地域貢献するケースが考えられます。
また、職員が安心して相談できる窓口や体制の整備も進められています。
多くの自治体では、人事部門が副業に関する相談を受け付け、具体的な事例や過去の許可実績に基づいたアドバイスを提供しています。
中には、副業マッチング支援を行う部署を設ける自治体も現れており、職員の「副業したい」という意欲を具体的にサポートする動きが加速しています。
先進自治体に見る許可事例と地域連携
いくつかの先進的な自治体では、すでに公務員の副業を積極的に推進し、具体的な成果を上げています。
例えば、ある自治体では、職員が地域のNPO法人でイベント企画や広報活動を行うことを許可し、その経験が本業の地域振興課での業務に活かされています。
別の自治体では、地域の人材育成プログラムの一環として、職員が地域の若者向けにキャリア相談やスキルアップ講座を提供する副業が認められています。
これにより、職員は自身の専門知識を地域に還元し、同時に自身のリーダーシップ能力を高める機会を得ています。
特に注目すべきは、地域との連携を深める形での副業です。
公務員が地域活動に深く関わることで、行政と住民の距離が縮まり、地域全体のエンゲージメントが高まる効果が期待されます。
これは、単に個人の働き方を変えるだけでなく、行政そのものが地域に開かれた存在へと進化していく可能性を示唆しています。
副業解禁で変わる公務員の働き方
キャリア形成と自己成長の新たな道
公務員の副業解禁は、個人のキャリア形成と自己成長に新たな道を開くものです。
これまで、公務員のキャリアパスは比較的限定的であると見られがちでしたが、副業を通じて自身の専門性を深めたり、全く異なる分野に挑戦したりすることで、キャリアの幅を大きく広げることが可能になります。
例えば、環境保全の部署に勤める職員が、週末に地域の自然保護団体で活動することで、実践的な知識やスキルを身につけ、本業にも還元することができます。
また、広報担当の職員が、地域の情報誌で記事を執筆することで、文章力や編集スキルを磨き、それが本業の広報活動の質の向上につながることも期待されます。
副業は、公務員が自身の可能性を追求し、生涯にわたる学習と成長を続けるための強力なツールとなり得るでしょう。
本業と副業の相乗効果によって、より専門性が高く、多様な視点を持った公務員が増えていくことが期待されます。
公務員が副業に期待する理由
人事院の調査によると、現在制度で兼業を行ったことがある国家公務員は6.2%である一方、今後兼業を行うことを希望する職員の割合は32.9%にも上ることが明らかになっています。
この数字は、公務員が副業に対して大きな期待を寄せていることを明確に示しています。
希望する理由としては、以下のような点が挙げられています。
- 「新しい知見やスキル・人脈を得たい」: これは、自身の専門性を高め、キャリアアップを図りたいという意欲の表れです。
- 「自分の趣味や特技を活かしたい」: 本業とは異なる分野で、自身の情熱や才能を発揮したいという欲求が強くあります。
- 「地域貢献・社会貢献がしたい」: 公務員としての使命感に加え、より直接的な形で地域社会に貢献したいという意識が高いことを示しています。
- 「収入を増やしたい」: 生活の安定やQOL(生活の質)向上も、副業を考える上で現実的な動機の一つです。
これらの理由から、公務員が副業を通じて自己実現を図り、本業では得られない多様な価値を求めていることが伺えます。
未来の公務員像と働き方の多様化
公務員の副業解禁は、単なる制度変更にとどまらず、未来の公務員像と働き方を大きく変える可能性を秘めています。
これからの公務員は、行政組織の中だけで働く「縦割り」の専門家ではなく、地域社会と密接に連携し、多様なスキルと経験を兼ね備えた「横断的」なプロフェッショナルとして期待されるようになるでしょう。
公務員が副業を通じて地域課題に直接触れ、市民感覚を養うことで、より実効性の高い政策立案やサービス提供が可能になります。
また、本業では接点のなかった異業種の人々との交流は、新たな視点や発想を生み出す源泉となります。
今後も公務員の副業に関する制度は、地域課題への対応や職員の多様な働き方の実現を目指して、さらに見直しが進む可能性があります。
公務員一人ひとりが自身の可能性を最大限に引き出し、地域社会の活性化に貢献していく、そんな新しい公務員の働き方が、もうそこまで来ていると言えるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 公務員の副業が解禁されるようになった主な理由は何ですか?
A: 公務員の専門性向上、人材の多様化、地域経済への貢献、そして公務員が持つスキルを地域社会で活かすことなどが理由として挙げられます。
Q: 公務員が副業を行う上で、どのような点に注意する必要がありますか?
A: 本業に支障が出ないこと、職務専念義務に反しないこと、国家公務員法や地方公務員法で禁止されている兼業でないこと、そして利益相反のおそれがないことなどが重要です。各自治体のガイドラインを確認することが不可欠です。
Q: 公務員が農業を副業とすることは可能ですか?
A: 多くの自治体で農業や林業、漁業といった農林水産業は、例外的に認められる副業としてガイドラインに明記されています。ただし、これも一定の要件や届出が必要となる場合があります。
Q: 副業解禁の最新ニュースとして、どのような自治体や組織の動きがありますか?
A: 長野県、山梨県、北海道、横浜市、東京都、そして一部の病院など、全国的に副業解禁の動きが広がっています。各自治体で具体的なガイドラインが策定・公表されています。
Q: 自衛官の副業についても解禁の動きはありますか?
A: 自衛官の副業解禁については、現時点では国家公務員全体の副業解禁とは別に、個別の検討や情報収集が必要です。軍法や服務規程との兼ね合いもあり、一般の公務員とは異なる制約がある可能性があります。
