概要: 近年、地方公務員の副業解禁が進んでいます。本記事では、副業解禁の現状や背景、自治体ごとの具体的な事例、そして副業を始める際の注意点について解説します。地方公務員の方が新しい働き方を見つけるための一助となれば幸いです。
地方公務員も副業解禁!知っておくべき最新情報と注意点
近年、地方公務員の働き方が大きく変化しています。これまで原則禁止とされてきた副業・兼業が、多くの自治体で認められる動きが活発化しており、公務員一人ひとりのキャリアや地域貢献の選択肢が広がりつつあります。
この変化は、働き方改革や地方創生といった社会背景に対応するため、国も地方自治体も方針転換を進めている結果です。今回は、地方公務員の副業解禁に関する最新情報と、副業を始める上で知っておくべきポイントを解説します。
地方公務員の副業解禁、いつから?現状を解説
全国的な動きと総務省通知
地方公務員の副業解禁は、突如始まったわけではありません。働き方改革や地域活性化の機運が高まる中で、国も地方自治体もこの問題に真剣に向き合い始めました。
特に大きな転換点となったのは、2025年6月に施行される総務省の通知です。この通知は、全国の自治体に対し、地方公務員の副業・兼業を促進するため、許可基準の明確化と公表を促すものです。
これにより、これまで「原則禁止」という硬直的な運用がなされてきた副業が、一定の条件下で「許可される」方向へと大きく舵を切ることになりました。
副業解禁の具体的な開始時期
総務省通知の施行は2025年6月ですが、すでに多くの自治体では、これに先行して副業に関する柔軟な運用が始まっています。通知を待たず、独自にガイドラインを策定し、職員からの相談体制を整えているケースも少なくありません。
これは、国の方針転換が自治体に与える影響が大きく、地域の人材不足や職員のモチベーション向上といった喫緊の課題に対応する必要があるからです。各自治体がそれぞれの実情に合わせて、副業解禁に向けた準備を進めているのが現状です。
現時点での副業許可状況
副業解禁の動きは着実に成果を上げています。具体的な数値として、令和5年度には全国で41,625件もの地方公務員の副業が許可されていることが明らかになっています。
これは、地域活動への参加、職務上の専門性を活かした執筆や講演、家業の手伝いなど、多岐にわたる副業が認められていることを示しています。この数字は、今後さらに増加していくことが予想され、公務員が自身のスキルや経験を地域社会に還元する新たな道が開かれていることを物語っています。
副業解禁の背景と目的:なぜ今、公務員に副業が認められるのか
社会情勢の変化と地方創生への貢献
副業解禁の背景には、日本の深刻な人口減少とそれに伴う地域の人手不足があります。地方自治体にとって、地域を活性化させるためには外部の力だけでなく、職員自身の多様な能力を地域に還元することが不可欠となっています。
例えば、公務員がNPO活動に参加したり、地域のイベント運営を手伝ったりすることは、地域社会に新たな活力を生み出すことに繋がります。奈良県生駒市では、職員が地域のサッカー指導を行う事例もあり、公務員が地域の一員として多角的に貢献することが期待されています。
職員のモチベーション向上とスキルアップ
副業は、公務員自身のモチベーション向上やスキルアップにも繋がります。本業だけでは得られない経験や知識を副業を通じて習得することで、職員自身の視野が広がり、新たな視点や発想を本業にも活かすことができるようになります。
また、自身の専門性や特技を活かした副業は、キャリアの選択肢を広げ、働きがいを高める要因となります。例えば、公務で培った広報や企画のスキルを活かして、地域のイベントプロデュースを手掛けるといったケースも考えられるでしょう。
公務員人気低下への対応と人材確保
近年、公務員人気の低下が課題となっています。特に若手人材の中には、働き方の多様性を重視し、副業を認める企業を選ぶ傾向が見られます。
副業解禁は、こうした多様な働き方を求める人材にとって、公務員という職業の魅力を高める重要な施策となり得ます。自身の専門性を高めたい、地域に貢献したいという意欲を持つ人材を惹きつけ、優秀な人材の確保と定着に繋がることも、副業解禁の重要な目的の一つです。
自治体ごとの副業解禁状況:神戸市、大阪府、埼玉県などを事例に
先進事例に見る多様な取り組み
地方公務員の副業解禁は、各自治体の裁量に委ねられています。そのため、神戸市、大阪府、埼玉県など、先進的に取り組んでいる自治体では、それぞれ特色のある制度を設けています。例えば、神戸市は「地域貢献型兼業」を積極的に推奨しており、職員が地域の活性化に繋がる活動を行うことを奨励しています。
大阪府では、公務員の専門知識を活かした講師業などを認めるなど、職員のスキルアップを支援する側面も重視しています。このように、各自治体が地域の特性やニーズに合わせて、独自のガイドラインを策定し、職員が安心して副業に取り組める環境を整備しようと努めています。
各自治体の許可基準と運用例
副業が認められるためには、共通する以下の3つの原則があります。これらは、公務員としての信用を損ねず、本業に支障がないようにするための重要な基準です。
- 公務遂行に支障がないこと: 本業の勤務時間外であり、職務への集中力やパフォーマンスに影響がないこと。
- 職務の公正を確保できること: 利益相反が生じる可能性がなく、職務の公平性が保たれること。
- 職務の品位を損ねないこと: 公務員全体の信用や品位を損なうような活動ではないこと。
しかし、これらの原則の具体的な解釈や、副業で得られる収入の「社会通念上相当と認められる範囲」といった基準は、自治体によって異なります。自身の所属する自治体の規則を詳細に確認することが不可欠です。
今後の全国的な動向と期待
2025年6月の総務省通知を契機に、今後さらに多くの自治体で副業解禁の動きが加速すると予想されます。先行して導入した自治体の知見や成功事例が共有されることで、より標準的で具体的な運用モデルが確立される可能性があります。
これにより、地方公務員が地域社会で多角的に活躍する「複業」的な働き方が、より一層一般化していくことが期待されます。公務員が持つ多様な能力が地域課題の解決に繋がる、新たな人材活用モデルとして注目されています。
副業を始める前に確認すべきこと:ルールと申請手続き
副業許可の3原則を理解する
副業を始める前に、最も重要となるのが、自治体が定める「副業許可の3原則」を深く理解することです。これらは、公務員としての職務を全うし、社会からの信頼を失わないために絶対に守るべき基準となります。
具体的には、「公務遂行に支障がないこと」「職務の公正を確保できること」「職務の品位を損ねないこと」の3点です。これらを無視した副業は、懲戒処分の対象となる可能性があり、自身のキャリアを大きく傷つけることになります。副業の内容がこれらの原則に合致するかどうかを厳しく自己点検しましょう。
自治体内での申請プロセスと必要書類
副業を行う場合は、必ず所属する自治体の任命権者の許可を得る必要があります。このプロセスは自治体によって異なりますが、一般的には以下のステップを踏むことになります。
- まず、所属部署の人事担当者や副業担当窓口に相談し、自身の自治体の詳細な規則やガイドラインを確認します。
- 次に、副業の内容、期間、報酬、本業への影響などを具体的に記載した「兼業許可申請書」を作成します。
- 必要に応じて、副業先の情報や事業計画書などの添付書類が求められることもあります。
事前に十分な情報収集と相談を行うことで、申請プロセスをスムーズに進めることができ、不許可のリスクを減らすことができます。
無許可副業のリスクと確定申告の重要性
無許可での副業は、最も避けるべき行為です。発覚した場合には、戒告、減給、停職、そして最悪の場合には免職といった重い懲戒処分の対象となります。これは、公務員としての信用を失墜させる行為と見なされるためです。
また、副業で得た収入に関する税務上の義務も忘れてはなりません。原則として、副業で得た年間所得が20万円を超える場合は、翌年の確定申告が必要です。これを怠ると、追徴課税や延滞税が課せられる可能性があり、これもまた公務員としての信用問題に発展しかねません。ルールを遵守し、透明性のある副業を行いましょう。
地方公務員が副業で成功するためのポイント
本業とのバランスを保つ働き方
副業を成功させる上で最も重要なのは、本業とのバランスを保つことです。副業はあくまで「本業に支障が出ない範囲」で行うことが大前提であり、体調不良や業務への集中力低下は本末転倒です。
自身の体力や時間を過信せず、無理のない範囲で副業に取り組む計画を立てましょう。効率的な時間管理術を身につけ、プライベートな時間や休息も十分に確保することが、長期的に副業を継続し、本業も疎かにしないための鍵となります。副業の目的を明確にし、本業のパフォーマンスを落とさないよう常に意識することが求められます。
地域貢献とスキルアップを意識した副業選び
地方公務員にとって、副業選びは単なる収入源の確保以上の意味を持ちます。自身の公務員としての経験や専門知識を活かし、地域貢献に繋がる活動や、自身のスキルアップに資する副業を選ぶことを強く推奨します。
例えば、まちづくり、福祉、教育、広報といった分野での知識や経験は、地域のNPO活動やセミナー講師などで大いに役立つでしょう。地域に根差した貢献活動は、公務員の品位を損ねるリスクも低く、自治体からの許可を得やすい傾向にあります。自身のキャリア形成にとって意味のある副業を見つけることが、成功への第一歩です。
情報収集と継続的な学習の重要性
副業に関するルールは、自治体ごとに異なり、また社会情勢の変化に伴い今後も見直される可能性があります。そのため、常に最新の情報を積極的に収集し、自身の所属する自治体の規則やガイドラインを把握しておくことが不可欠です。
人事担当者との定期的な情報交換や、副業に関する研修会への参加も有効な手段となるでしょう。さらに、副業を通じて新たな知識やスキルを習得し、それを本業や自身の長期的なキャリア形成に活かす視点を持つことも重要です。自律的な学びの姿勢が、副業を成功させ、公務員としての価値をさらに高めることに繋がります。
まとめ
よくある質問
Q: 地方公務員の副業解禁はいつから始まりましたか?
A: 地方公務員の副業解禁は、中央省庁の国家公務員に続いて、各自治体で段階的に進められています。具体的な開始時期は自治体によって異なりますが、近年、多くの自治体で制度が整備されつつあります。
Q: 公務員が副業をすることのメリットは何ですか?
A: 公務員が副業をすることで、収入の増加はもちろん、自身のスキルアップや新しい知識・経験の習得、地域社会への貢献などが期待できます。また、公務員としての経験だけでは得られない視点を持つことも可能です。
Q: 神戸市役所や大阪府庁では、副業についてどのような規定がありますか?
A: 神戸市役所や大阪府庁をはじめ、多くの自治体では、原則として副業は禁止されていますが、一定の条件を満たせば許可されるケースが増えています。具体的な許可基準や申請方法については、各自治体の人事課などにお問い合わせください。
Q: 公務員が副業をする上で、最も注意すべき点は何ですか?
A: 最も注意すべき点は、職務専念義務や守秘義務に反しないことです。また、勤務時間外であっても、副業が公務の信用を損なうような内容であったり、公務に支障をきたす場合は許可されません。必ず所属自治体の規定を確認し、許可を得てから副業を開始しましょう。
Q: 副業が許可されるかどうか、どのように確認すれば良いですか?
A: まずは、ご自身の所属する自治体の職員就業規則や人事関連の通達を確認してください。不明な点があれば、所属部署の上司や人事担当部署に相談し、正式な回答を得ることが重要です。許可申請の手続きについても、事前に確認しておきましょう。
