非正規雇用労働者の皆様、そして彼らを雇用する企業の皆様、キャリアアップは現代社会において非常に重要なテーマとなっています。

「キャリアアップ計画書」は、このキャリアアップを具体的に支援するための鍵となる書類です。この計画書を適切に作成し提出することで、国が提供する「キャリアアップ助成金」の対象となり、企業の取り組みが強力にバックアップされます。

本記事では、キャリアアップ計画書の基本的な知識から、令和7年版に対応した記入例、提出手順、そして期限切れ対策まで、網羅的に解説していきます。完璧な計画書を作成し、非正規雇用労働者の活躍を後押しするとともに、企業の成長につなげましょう。

  1. キャリアアップ計画書とは?目的と重要性を理解しよう
    1. 1.1. キャリアアップ計画書の基本的な定義と役割
    2. 1.2. 計画書作成が企業にもたらすメリットとキャリアアップ助成金の概要
    3. 1.3. なぜ今、計画書作成が重要視されるのか?社会情勢と背景
  2. キャリアアップ計画書の記入例|令和7年版で具体例を解説
    1. 2.1. 最新様式の入手と基本的な記載事項
    2. 2.2. 就業規則との整合性と具体的な目標設定のポイント
    3. 2.3. 計画書作成時の注意点とよくある間違い
  3. キャリアアップ計画書の提出先と電子申請の手順
    1. 3.1. 提出先と提出期限の確認
    2. 3.2. 電子申請のメリットと具体的な流れ
    3. 3.3. 提出後の流れと審査のポイント
  4. キャリアアップ計画書の添付書類と更新・再交付について
    1. 4.1. 提出時に必要な添付書類リスト
    2. 4.2. 計画書の更新・変更が必要なケース
    3. 4.3. 計画書の再交付と管理の重要性
  5. キャリアアップ計画書の期限切れに注意!対策も紹介
    1. 5.1. 計画書期限切れがもたらす影響
    2. 5.2. 期限切れを防ぐための管理体制
    3. 5.3. 計画書を常に最新に保つためのベストプラクティス
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: キャリアアップ計画書はなぜ重要なのでしょうか?
    2. Q: 令和7年版のキャリアアップ計画書で特に注意すべき点はありますか?
    3. Q: キャリアアップ計画書の提出先はどこになりますか?
    4. Q: キャリアアップ計画書を電子申請する場合、どのような書類が必要ですか?
    5. Q: キャリアアップ計画書が期限切れになった場合、どうなりますか?

キャリアアップ計画書とは?目的と重要性を理解しよう

1.1. キャリアアップ計画書の基本的な定義と役割

キャリアアップ計画書とは、企業が非正規雇用労働者(有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者など)のキャリアアップを促進するために、具体的にどのような取り組みを実施するかを示す書類です。この計画書は、単なる事務手続きではなく、企業が非正規雇用労働者の能力開発や処遇改善に本気で取り組む姿勢を表明する重要なツールとなります。

この計画書が受理されることで、国が用意する「キャリアアップ助成金」の申請が可能となり、企業の取り組みが資金面でも支援されます。具体的には、正社員への転換支援や賃金規定の見直しなど、多岐にわたるコースが用意されており、企業は自社の状況に合わせて活用できます。

計画書には、対象となる労働者の情報、キャリアアップの具体的な目標、その目標達成までの期間、そして実施する具体的な訓練や処遇改善策などを明記する必要があります。これにより、計画の実行可能性と透明性が確保され、審査プロセスにおいても重要な判断材料となります。また、有期雇用労働者を含む全ての労働者代表からの意見を反映させることで、現場の実情に即した、より実効性の高い計画を策定することが求められます。

1.2. 計画書作成が企業にもたらすメリットとキャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ計画書を作成し、関連する取り組みを実施することは、企業にとって多岐にわたるメリットをもたらします。最も直接的なメリットは、国の支援制度である「キャリアアップ助成金」を受給できる点です。

キャリアアップ助成金には、主に以下の2つのコースがあります。

コース名 概要 支給額(中小企業・重点支援対象者)
正社員化コース 有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換した場合 1人あたり最大80万円(2期に分けて支給)
賃金規定等改定コース 非正規雇用労働者の賃金規定などを3%以上増額改定した場合 賃金引き上げ率に応じて1人あたり5万円~6万5,000円(※1年度1事業所あたりの上限人数あり)

これらの助成金は、企業の資金繰りを助けるだけでなく、非正規雇用労働者のモチベーション向上や企業への定着率アップにも繋がります。正社員化や処遇改善は、労働者にとってキャリアパスの明確化と将来への安心感を提供し、企業にとっては優秀な人材の確保と育成に貢献します。

また、キャリアアップへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにも繋がり、企業イメージの向上にも寄与します。多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備することは、企業の持続的な成長に不可欠な要素と言えるでしょう。

1.3. なぜ今、計画書作成が重要視されるのか?社会情勢と背景

キャリアアップ計画書が近年、特に重要視される背景には、日本の労働市場が抱える様々な課題と、政府が推進する政策があります。まず、少子高齢化による労働力人口の減少は深刻であり、企業は多様な人材を最大限に活用し、生産性を向上させる必要に迫られています。

非正規雇用労働者は、日本の労働力の大きな割合を占めており、彼らのキャリアアップを支援することは、労働力全体の底上げに直結します。また、「同一労働同一賃金」の原則が浸透しつつある中で、非正規雇用労働者の処遇改善は喫緊の課題となっています。キャリアアップ計画書は、この原則に基づき、雇用形態に関わらず公正な評価と賃金体系を構築するための具体的な道筋を示す役割も担います。

政府は、持続的な経済成長と社会保障制度の維持のため、誰もが意欲と能力に応じて活躍できる社会の実現を目指しています。キャリアアップ助成金をはじめとする支援策は、この目標達成のための重要な手段であり、企業が積極的に非正規雇用労働者のキャリア形成を支援することを促しています。

計画期間を3年から5年と長期で設定し、具体的な目標と取り組みを明記することで、企業は将来を見据えた人材戦略を構築できます。これは、短期的な人手不足の解消だけでなく、長期的な視点での企業の競争力強化にも繋がるため、現代のビジネス環境において、その重要性は増すばかりです。

キャリアアップ計画書の記入例|令和7年版で具体例を解説

2.1. 最新様式の入手と基本的な記載事項

キャリアアップ計画書を作成する上で最も重要なことの一つは、必ず厚生労働省のウェブサイトから最新の様式をダウンロードして使用することです。様式は年度や法改正によって変更されることがあるため、古い様式を使用すると受理されない可能性があります。

令和7年版(または現時点での最新版)の様式を入手したら、以下の基本的な事項を正確に記入していきます。

  1. 事業所の基本情報: 会社名、所在地、代表者名、電話番号など、事業所の識別情報。
  2. キャリアアップ管理者: 事業所ごとに選定するキャリアアップ管理者の氏名、役職、連絡先を記入します。事業主や役員が兼任する場合もありますが、キャリアアップに関する知識や経験を持つ人物を選定することが求められます。
  3. 対象労働者の情報: キャリアアップの対象となる非正規雇用労働者の人数や職種などを記載します。特に、有期雇用労働者を含む全ての労働者代表からの意見を反映させた旨を明記する欄があるため、適切にヒアリングを行い、その結果を反映させることが重要です。

これらの基本情報を正確に、かつ漏れなく記入することが、スムーズな計画書作成の第一歩となります。記載例などを参考にしながら、不明な点があれば管轄の労働局やハローワークに確認することをお勧めします。

2.2. 就業規則との整合性と具体的な目標設定のポイント

キャリアアップ計画書を作成する上で、極めて重要なのが「就業規則との整合性」です。計画書の内容が、事業所の就業規則や実際の取り組み内容と矛盾しないように細心の注意を払う必要があります。審査の際には、これらの整合性が総合的に確認されるため、例えば正社員転換制度や賃金規程の改定に関する内容を計画書に盛り込む場合は、それが就業規則に明記されているか、または計画と同時に就業規則の改定を行う予定であるかを明確にする必要があります。

次に、「具体的な目標設定」のポイントです。計画書では、対象労働者のキャリアアップに関する目標を具体的に設定し、その達成までの期間、そして具体的な取り組み内容を明記しなければなりません。

  • 目標の具体性: 「正社員に〇名転換する」「賃金を〇%引き上げる」「〇名に専門的な職業訓練を実施する」など、数値目標を盛り込むことで、計画の実効性が高まります。
  • 期間の設定: 計画期間は3年から5年以内で設定します。長期的な視点でのキャリアアップを見据え、無理のない計画期間を設定しましょう。
  • 取り組み内容の明確化: 正社員転換制度の導入、賃金規定の改定、職業訓練の実施、メンター制度の導入など、具体的な支援策を詳細に記述します。それぞれの取り組みが、設定した目標達成にどのように寄与するのかを明確に示します。

これらの要素を詳細かつ具体的に記載することで、計画書は単なる書類ではなく、非正規雇用労働者のキャリアを真に支援する羅針盤となります。

2.3. 計画書作成時の注意点とよくある間違い

キャリアアップ計画書を完璧に作成するためには、いくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。これらの点を見落とすと、助成金申請に影響が出たり、計画書が受理されない原因となったりする可能性があります。

  1. 最新様式の使用: 前述の通り、必ず厚生労働省のウェブサイトから最新の様式をダウンロードして使用してください。古い様式での提出は差し戻しの原因となります。
  2. 労働者代表の意見反映: 有期雇用労働者を含む全ての労働者代表からの意見を十分に聞き取り、それを計画書に反映させることが義務付けられています。形式的な意見聴取ではなく、実質的な対話を通じて、現場のニーズに応える計画を目指しましょう。
  3. 記載漏れや不備のチェック: 必要事項がすべて記入されているか、添付書類に漏れはないか、最終提出前に複数人で確認することをお勧めします。特に、就業規則との整合性は繰り返し確認が必要です。
  4. 助成金に関する注意点: キャリアアップ助成金は、労働関係法令の違反や労働保険料の滞納がある場合、受給できないことがあります。また、申請から受給まで1年ほどかかる場合があるため、計画的な資金運用が必要です。就業規則に不備があると、助成金の対象外となる可能性もあるため、計画書と合わせて就業規則の見直しも検討しましょう。事業主や取締役の3親等以内の親族は助成金の対象外となる点も注意が必要です。

これらの注意点を踏まえ、必要に応じて社会保険労務士などの専門家の意見も仰ぎながら、慎重に作成を進めることで、確実なキャリアアップ計画書が完成します。

キャリアアップ計画書の提出先と電子申請の手順

3.1. 提出先と提出期限の確認

キャリアアップ計画書の提出先は、事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークです。どちらに提出すればよいか迷う場合は、事前に電話などで確認することをお勧めします。

最も重要なのは「提出期限」です。キャリアアップ計画書は、関連する取り組みを開始する前日までに提出しなければなりません。例えば、正社員転換制度を2月1日から開始する場合、遅くとも1月31日までに計画書が労働局またはハローワークに受理されている必要があります。

郵送で提出する場合は、到着日を考慮し、余裕を持って発送することが不可欠です。消印が期限内であっても、到着が期限後となれば受理されません。特に連休や年末年始を挟む場合は、通常よりもさらに早めの提出を心がけましょう。期日を過ぎてしまうと、その期間の取り組みが助成金の対象とならないため、細心の注意が必要です。

提出期限を厳守することで、計画的なキャリアアップ支援が可能となり、助成金の受給もスムーズに進みます。事前の確認と計画的な提出を徹底しましょう。

3.2. 電子申請のメリットと具体的な流れ

近年、行政手続きのデジタル化が進む中で、キャリアアップ計画書も電子申請での提出が可能となっています。電子申請には、以下のような多くのメリットがあります。

  • 利便性: 24時間いつでも、事業所や自宅から申請手続きが可能です。
  • 時間短縮: 郵送や窓口での待ち時間、移動時間を削減できます。
  • 記録の正確性: 入力補助機能やチェック機能により、記載ミスを減らすことができます。

具体的な電子申請の流れは、利用するシステム(e-Govなど)によって異なりますが、一般的な手順は以下の通りです。

  1. 事前準備: 電子証明書の取得、PC環境の整備、必要なID・パスワードの登録などを行います。
  2. 様式のダウンロードと入力: 厚生労働省のウェブサイトから最新の電子申請対応様式をダウンロードし、必要事項を入力します。
  3. 添付書類の準備: 就業規則や労働者代表の選出に関する書類など、必要な添付書類をPDF形式などで用意します。
  4. 申請フォームへの入力とアップロード: 電子申請システムのフォームに必要事項を入力し、作成した計画書と添付書類をアップロードします。
  5. 最終確認と送信: 内容に誤りがないか最終確認を行い、電子署名を付与して送信します。

電子申請は手間がかかるように見えますが、一度慣れてしまえばその利便性は非常に高く、今後の行政手続きの標準となるでしょう。不明な点があれば、e-Govのヘルプデスクや管轄の労働局に問い合わせることをお勧めします。

3.3. 提出後の流れと審査のポイント

キャリアアップ計画書を提出した後、労働局またはハローワークで内容の審査が行われます。この審査を経て、計画書が受理されることで、初めてキャリアアップ助成金の申請資格が得られます。

提出後の一般的な流れは以下のようになります。

  1. 受理通知: 提出された計画書が形式的な要件を満たしていれば、一旦受理されます。その後、内容に関する審査が行われます。
  2. 内容審査と問い合わせ: 計画書の内容(特に就業規則との整合性、目標設定の具体性、取り組みの適切性など)が詳細に審査されます。不明な点や修正が必要な箇所があれば、担当者から事業所へ問い合わせが入ることがあります。迅速かつ的確に対応することが重要です。
  3. 計画の認定: 審査が完了し、計画書の内容が適切であると判断されると、計画の認定通知が送付されます。これにより、計画に記載された取り組みを開始し、助成金の申請準備を進めることができます。

審査の主なポイントは、以下の通りです。

  • 就業規則との整合性: 計画書の内容と、就業規則や賃金規程が矛盾していないか。
  • 目標の具体性: 設定されたキャリアアップの目標が具体的で、達成可能であるか。
  • 取り組みの妥当性: 目標達成に向けた取り組みが適切で、非正規雇用労働者のキャリアアップに資するか。
  • 労働者代表の意見反映: 労働者代表の意見が適切に反映されているか。

計画書の認定は、助成金受給に向けた重要なステップです。提出後も問い合わせに対応できるよう、計画書の内容を把握しておくようにしましょう。

キャリアアップ計画書の添付書類と更新・再交付について

4.1. 提出時に必要な添付書類リスト

キャリアアップ計画書を提出する際には、計画書本体だけでなく、その内容を裏付けるためのいくつかの添付書類が必要となります。これらの書類は、計画の実行可能性や事業所の法令遵守状況を確認するために不可欠です。

一般的に必要とされる主な添付書類は以下の通りです。

  • 就業規則および関連規程:
    • 就業規則(正社員転換制度や賃金規定改定など、計画書の内容と関連する箇所が含まれていること)
    • 賃金規程、退職金規程など(特に賃金規定等改定コースを申請する場合)
  • 労働者代表の選出に関する書類:
    • 労働者代表を選出した議事録や同意書(労働者代表の意見を計画に反映させたことを証明するもの)
  • 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書): 法人としての存在確認のため。
  • 事業所概要を示す書類: 会社案内など、事業内容を説明する資料。
  • 事業所の位置図・配置図: (場合によって必要となることがあります)
  • その他、労働局から提出を求められる書類: 個別のケースに応じて追加書類が必要となる場合があります。

これらの書類は、写しで提出できるものと原本が必要なものがあるので、事前に労働局またはハローワークに確認しておきましょう。不足や不備があると、計画書の受理が遅れたり、再提出を求められたりする原因となります。万全の準備で提出に臨みましょう。

4.2. 計画書の更新・変更が必要なケース

一度提出し認定されたキャリアアップ計画書も、様々な状況変化によって更新や変更が必要となる場合があります。計画期間は3年から5年と比較的長期であるため、その間に事業所を取り巻く環境が変わることは十分にあり得ます。

主に以下のようなケースで、計画書の更新または変更の手続きが必要になります。

  1. 計画期間の終了: 最初に設定した計画期間が終了する場合、引き続きキャリアアップ助成金等の活用を検討するのであれば、新たな計画書を作成し提出する必要があります。
  2. 事業内容や組織体制の変更: 事業所の合併、分割、M&A、主要事業の変更、大幅な組織改編などがあった場合、計画書の前提条件が変わるため、変更届の提出や新たな計画書の作成が求められることがあります。
  3. 法改正への対応: 労働関連法令(最低賃金法、労働基準法、パートタイム・有期雇用労働法など)の改正により、計画書の内容が現状と合わなくなる場合があります。この際も、計画書の内容を見直し、必要に応じて変更手続きを行う必要があります。
  4. 当初の計画からの大幅な変更: 計画に盛り込んだ取り組み内容や目標を大きく変更する場合も、変更届の提出が必要です。例えば、正社員転換制度の運用方法を変更したり、新たな訓練コースを追加したりするケースなどが該当します。

変更や更新が必要な場合は、事前に管轄の労働局またはハローワークに相談し、適切な手続き方法を確認することが重要です。適切なタイミングで手続きを行うことで、助成金受給資格を維持し、継続的なキャリアアップ支援が可能となります。

4.3. 計画書の再交付と管理の重要性

キャリアアップ計画書は、一度提出し認定されると、その認定書は助成金申請時などに必要となる重要な書類です。万が一、認定書を紛失してしまった場合は、管轄の労働局またはハローワークに再交付の申請を行うことができます。

再交付の手続きは、申請用紙の記入と本人確認書類の提出が必要となります。スムーズな再交付のためにも、どの労働局・ハローワークに提出したか、提出時期などを記録しておくことが大切です。

また、計画書の適切な「管理」も非常に重要です。認定された計画書は、以下の点に注意して保管・管理しましょう。

  • 長期保管: 計画期間中はもちろんのこと、助成金受給後も一定期間(通常は5年間程度)は保管義務があるため、大切に保管してください。
  • データ管理: 紙媒体だけでなく、PDFなどの電子データとしても保管し、バックアップを取っておくと安心です。
  • 従業員への周知: 計画書の内容は、対象となる非正規雇用労働者を含む全従業員に周知し、アクセスしやすい場所に掲示したり、社内ネットワークで公開したりするなど、透明性を確保することが望ましいです。これにより、従業員のキャリアアップへの意識を高め、計画への参加を促すことができます。
  • 関連書類との連携: 就業規則や賃金規定など、計画書に関連する書類も合わせて管理することで、いざという時の確認や更新がスムーズに行えます。

適切な管理を行うことで、計画の円滑な実施と、将来的な助成金申請や監査対応に繋がります。

キャリアアップ計画書の期限切れに注意!対策も紹介

5.1. 計画書期限切れがもたらす影響

キャリアアップ計画書には、設定した計画期間という「期限」があります。この期限が切れてしまうと、企業にはいくつかの重大な影響が及びます。最も直接的かつ大きな影響は、キャリアアップ助成金の申請資格を失うことです。

計画期間が満了した後、新たな計画書を提出し、認定されるまでの間は、その期間に行った非正規雇用労働者のキャリアアップに関する取り組みが助成金の対象外となってしまいます。例えば、正社員転換制度を継続的に実施していても、計画書が期限切れであれば、その間の転換は助成金に繋がらない可能性があります。

また、期限切れは、企業がせっかく立てた非正規雇用労働者のキャリアアップ支援という取り組みが無効になってしまうことを意味します。労働者側から見ても、企業が提供するキャリアアップの機会が一時的に中断したり、支援が受けられなくなったりすることは、モチベーションの低下や企業への不信感に繋がりかねません。

さらに、計画書が期限切れになっている状況は、企業の管理体制の不備として、対外的な信用問題に発展する可能性も否定できません。計画的な人材育成・活用を行っていないと見なされることは、企業の採用活動や事業展開にも悪影響を与える恐れがあるため、期限管理は極めて重要な業務の一つです。

5.2. 期限切れを防ぐための管理体制

キャリアアップ計画書の期限切れを防ぐためには、日頃からの適切な管理体制を構築することが不可欠です。以下のような対策を講じることで、期限切れのリスクを最小限に抑えることができます。

  1. 計画期間の定期的な見直し: 計画書の提出時に、次回の更新時期をカレンダーやリマインダーに登録しておきましょう。計画期間が終了する半年前から3ヶ月前には、更新手続きの準備を開始できるよう、アラートを設定しておくのが理想的です。
  2. 担当者の明確化: キャリアアップ計画書の作成、提出、管理、そして更新手続きの責任者を明確に定めます。担当者が複数いる場合は、役割分担を明確にし、情報共有を徹底します。担当者の異動があった場合も、確実に引継ぎが行われるような仕組みを構築しましょう。
  3. 情報共有の徹底: 関係部署(人事、総務、経営層など)間で、計画書の期限や更新状況に関する情報を定期的に共有します。特に、助成金受給に関わる部署は、常に最新の状況を把握しておく必要があります。
  4. 更新手続きの早期着手: 計画期間終了間際になって慌てて手続きを行うと、不備が発生したり、期限に間に合わなかったりするリスクが高まります。余裕をもって、計画書の内容見直しや最新様式の確認、労働者代表からの意見聴取などを開始し、提出準備を進めましょう。

これらの管理体制を確立することで、計画書は常に有効な状態を保ち、企業のキャリアアップ支援が継続的に実施されるようになります。

5.3. 計画書を常に最新に保つためのベストプラクティス

キャリアアップ計画書は一度作って終わりではなく、社会情勢や企業の変化に合わせて常に最新の状態に保つことが、その効果を最大限に引き出すためのベストプラクティスです。以下に、計画書を常に最新に保つための具体的な方法を紹介します。

  1. 法改正情報のキャッチアップ: 労働関連法令は頻繁に改正されます。厚生労働省のウェブサイトや労働局からの情報を定期的に確認し、キャリアアップ助成金の要件や計画書の様式変更がないか、常に最新情報を把握するよう努めましょう。
  2. 厚生労働省ウェブサイトの定期的な確認: キャリアアップ助成金に関する最新情報やQ&A、様式のダウンロードは、厚生労働省の公式ウェブサイトが最も確実な情報源です。少なくとも四半期に一度は、関連ページを確認する習慣をつけましょう。
  3. 専門家(社会保険労務士など)との連携: 自社で全ての情報を把握し、手続きを進めるのが難しい場合は、社会保険労務士などの専門家と顧問契約を結ぶことも有効です。専門家は法改正や手続きの変更に精通しており、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。
  4. 内部での定期的なレビュー: 計画書の期限が近づいていなくても、年に一度など定期的に、計画書の内容と実際の取り組み状況をレビューする機会を設けましょう。計画の進捗状況、目標達成度、従業員からのフィードバックなどを確認し、必要に応じて柔軟に計画の見直しを検討します。

これらの実践を通じて、キャリアアップ計画書は単なる提出書類ではなく、企業の成長戦略と非正規雇用労働者のキャリア形成を支援する、生きたツールとして機能し続けるでしょう。積極的に情報を収集し、適切な管理を行うことで、企業の持続的な発展に繋がります。