賞与(ボーナス)の基本的な考え方

賞与、いわゆるボーナスは、従業員にとって日々の仕事の励みとなる特別な報酬です。しかし、その支給時期や条件は、法律によって一律に定められているわけではありません。

各企業の就業規則や賃金規程によって詳細が異なり、企業ごとの方針が強く反映されるのが特徴です。

一般的には、会社の業績向上への貢献や個人の成績を評価し、従業員のモチベーションを高める目的で支給されます。

賞与は法律で決まっている?その目的と一般的な時期

賞与の支給は、企業が任意で定めるものであり、労働基準法などの法律で義務付けられているものではありません。そのため、支給がない企業も存在します。

多くの企業では、従業員のモチベーション向上や企業業績への貢献を評価する目的で支給されています。また、年間を通じて従業員への利益還元を行う意味合いも大きいでしょう。

支給時期は、一般的に年に2回夏季賞与冬季賞与として設定されることが多いです。夏の賞与は6月下旬から7月下旬頃、冬の賞与は12月中旬頃に支給されるのが一般的ですが、これはあくまで目安であり、企業によって異なる場合があります。

例えば、製造業では決算期に合わせて異なる時期に支給されたり、サービス業では繁忙期明けに支給されるなど、業界や企業の特性に応じて柔軟な設定がされています。

賞与の算定期間と一般的な目安

賞与の支給額を決定するにあたっては、算定期間(評価対象期間)というものが設けられています。この期間中の勤務実績や評価が、支給額に大きく影響します。

算定期間も企業によって異なりますが、一般的には以下の期間が目安となります。

  • 夏季賞与の算定期間: 前年10月頃~当年3月頃
  • 冬季賞与の算定期間: 当年4月頃~当年9月頃

この期間中にどれだけ会社に貢献したか、個人の目標達成度合いや勤務態度などが評価され、賞与額に反映されます。したがって、賞与を最大限に活かすためには、この算定期間を意識して日々の業務に取り組むことが重要となります。

評価期間が短すぎると公平性に欠け、長すぎると直近の頑張りが反映されにくくなるため、多くの企業が半年程度の期間を設定しています。

支給額はどれくらい?平均データと変動要因

「他の人はどれくらいもらっているんだろう?」と気になるのが賞与の金額です。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、2024年(令和6年)の平均支給額は以下の通りでした。

賞与の種類 平均支給額 給与の約〇ヶ月分
夏季賞与 41万4,515円 1.05ヶ月分
年末賞与 41万3,277円 1.07ヶ月分

年間で見ると、給与の2ヶ月分をやや上回る程度が平均的といえます。しかし、これはあくまで全国平均であり、実際には様々な要因によって大きく変動します。

主な変動要因としては、企業の業績が挙げられます。会社の売上や利益が好調であれば賞与額が増え、不調であれば減額されることがあります。

また、個人の勤務成績や評価も重要な要素です。同じ会社、同じ役職でも、個人のパフォーマンスによって支給額に差が出ることは珍しくありません。勤続年数や役職も賞与額に影響を与える場合があります。

賞与支給における「在籍要件」とは

賞与の支給条件の中でも、特に重要なのが「在籍要件」です。これは、特定の日に会社に在籍しているかどうかを問うもので、多くの企業の就業規則に明記されています。

この要件を満たさない場合、たとえ算定期間中にどれだけ貢献していても、賞与が支給されないという事態も起こり得ます。

「賞与支給日に在籍」が原則

多くの企業で賞与支給の条件として掲げられているのが、「賞与支給日に会社に在籍していること」です。これは、賞与が将来への期待や継続的な貢献への報奨といった意味合いも持つためです。

例えば、夏季賞与が7月10日に支給されると定められている場合、7月9日に退職してしまうと、たとえ算定期間中に素晴らしい実績を上げていたとしても、賞与は支給されないのが原則となります。

これは企業が「支給日時点で会社に貢献し続けている社員」に対して支給する、という考え方に基づいているためです。退職予定のある方は、この日付をしっかり確認し、自身の退職日と賞与支給日の関係を把握しておくことが非常に重要です。

後述しますが、就業規則に別の定めがある場合や、有給休暇消化期間中に支給日が重なる場合は例外もありますので注意が必要です。

在籍期間や出勤率が支給額に与える影響

賞与の支給条件は、単に支給日に在籍しているかだけでなく、算定期間中の在籍期間出勤率も考慮されるのが一般的です。これは、賞与が評価期間中の貢献度を反映するためです。

例えば、「算定期間の2/3以上在籍している場合に、本来の支給額の2/3が支給される」といったケースがあります。これは、期間の途中で入社した場合や、長期休業があった場合に適用されることがあります。

また、出勤率が一定以上であることが求められる企業も少なくありません。「算定期間中の出勤率が9割以上」といった条件を設けている企業もあり、遅刻や欠勤が多いと賞与が減額されたり、場合によっては不支給となる可能性もあります。

これらの具体的な基準は、すべて就業規則や賃金規程に明記されていますので、必ず確認するようにしましょう。不明な点があれば、人事部や総務部に問い合わせて、詳細な説明を受けることが大切です。

勤務成績や勤続年数も支給条件に

賞与の金額は、単に在籍しているかどうかだけでなく、個人の勤務成績や評価、さらには勤続年数によっても変動します。これは、賞与が単なる基本給の延長ではなく、社員の頑張りや貢献度を直接的に評価する要素だからです。

多くの企業では、目標管理制度や人事評価制度を導入しており、上司との面談を通じて個人の目標達成度、業務遂行能力、会社への貢献度などが評価されます。この評価結果が、賞与の支給額に直接反映される仕組みになっています。

例えば、同じ職位の社員でも、評価が高い社員は平均よりも高い賞与を受け取ることができ、逆に評価が低い場合は減額されることもあります。

また、勤続年数も考慮されることがあります。長期間会社に貢献してきた社員に対して、勤続手当のような形で賞与額が増額されるケースもあります。これは、会社へのロイヤリティや経験年数を評価する意味合いが強いでしょう。

休職中や退職した場合、賞与はどうなる?

人生には予期せぬ出来事やキャリアプランの変更があり、休職や退職を選択せざるを得ない状況も起こりえます。

そのような場合、それまでの頑張りが詰まった賞与がどうなるのかは、多くの方が抱える疑問でしょう。企業の就業規則や賃金規程によってその扱いは大きく異なります。

休職中の賞与は「ノーワーク・ノーペイ」が基本

休職中の賞与の扱いは、非常にデリケートな問題です。一般的には、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、労働を提供していない休職期間中は無給となることが多く、賞与も減額されたり、支給されなかったりする場合があります。

しかし、企業によっては、休職制度や賞与の支給に関する具体的な規定が存在し、休職期間中の賞与支給が明記されている場合は、支給される可能性もあります。

特に、産前産後休業や育児休業などの法律で保護された休業期間が算定期間と重なる場合、賞与が減額されたり不支給となったりすることがありますが、産前産後休業の取得を妨げるような不利益な取り扱いは無効となる可能性があります。これは、女性労働者の保護を目的とした法律の趣旨に反するためです。

傷病休職の場合も同様で、休職期間が長くなると勤務実績が減るため、賞与は減額されるのが一般的です。自身の休職の種類と期間、そして会社の就業規則を詳細に確認することが不可欠です。

退職予定者の賞与、もらえるケースともらえないケース

「退職するけど、次のボーナスはもらえるの?」という疑問は、退職を控える社員にとって非常に関心が高いテーマです。結論から言うと、賞与支給日に在籍しているか否かが最大の分かれ目となります。

多くの企業では、「賞与支給日に在籍していること」が支給条件となっているため、支給日前に退職してしまうと賞与は支給されないのが原則です。これは、賞与が「支給日時点での在籍者に対する報酬」という性質を持つためです。

しかし、例外も存在します。就業規則等で賞与支給に関する独自の規定や、支給日在籍要件の緩和が定められている場合、退職予定者であっても支給日に在籍していれば、賞与が支給されることがあります。

例えば、「算定期間満了時に在籍していれば支給対象」とする企業もあります。退職の意思を伝える前に、必ず自身の会社の就業規則を詳細に確認し、不明な点は人事担当者に相談することをお勧めします。口頭での確認だけでなく、書面での記録を残しておくこともトラブル防止に繋がります。

有給休暇消化期間と賞与支給の関係

退職前に残っている有給休暇を消化する期間は、法的には「在籍中」と判断されます。この点が、退職予定者の賞与支給に大きく影響する場合があります。

もし、あなたが有給休暇を消化している期間中に賞与の支給日が重なる場合、多くの場合で賞与が支給される可能性があります。これは、有給休暇中であっても雇用関係が継続しており、会社に在籍していると見なされるためです。

例えば、7月10日が夏季賞与の支給日で、退職日が7月31日、その間に有給休暇を消化している場合、支給日である7月10日には在籍していることになるため、賞与を受け取れる可能性が高いでしょう。

ただし、この点も企業の就業規則や賃金規程によって異なる解釈がなされる場合があるため、最終的には勤務先の人事部や総務部に確認することが最も確実です。トラブルを避けるためにも、事前に明確な回答を得ておくことを強くお勧めします。

賞与の時期と確認しておきたいこと

賞与は、従業員にとって大きなモチベーションとなりますが、その支給は会社の規程に基づいています。

ご自身の状況で賞与がどうなるのかを正確に把握するためには、どこに情報があるのか、そして誰に確認すればよいのかを知っておくことが非常に重要です。

一般的な賞与の時期と公務員のケース

賞与の支給時期は企業によって様々ですが、一般的には年に2回、夏(6月下旬〜7月下旬)と冬(12月中旬)に支給されることが多いです。この時期は多くの企業で共通しており、従業員もこの時期を心待ちにしていることでしょう。

しかし、企業によっては年に1回や3回以上支給するところ、あるいは決算賞与として不定期に支給するところもあります。

特に明確なのが公務員の場合です。国家公務員は法律で支給日が定められており、夏の期末・勤勉手当は6月30日、冬は12月10日に支給されます。地方公務員もこれに準じて支給されることがほとんどです。

公務員は法律で定められているため、民間企業のように業績変動による大幅な変動は少ないですが、国の経済状況や方針によって支給額が調整されることもあります。

賞与に関する情報源は就業規則と賃金規程

賞与に関する最も正確で公式な情報は、あなたの会社の就業規則賃金規程に全て記載されています。支給の有無、時期、算定方法、支給条件(在籍要件、出勤率、評価基準など)、そして休職中や退職時の扱いまで、詳細が明記されているはずです。

これらの書類は、労働基準法によって作成・周知が義務付けられており、従業員であればいつでも閲覧できる状態にあるべきものです。

「大体このくらいだろう」「前年はこうだったから」という憶測や、同僚からの情報だけを鵜呑みにするのは避けるべきです。個人の状況によって適用される規程が異なる場合もあるため、必ずご自身の会社の正式な規程を確認するようにしましょう。

もし閲覧方法が分からない場合は、人事部や総務部に問い合わせてください。これらの規程を理解しておくことは、自身の権利を守る上でも非常に重要です。

不明点は必ず勤務先に確認しよう

賞与に関する情報は複雑で、個人の状況によって解釈が分かれることも少なくありません。インターネット上の一般的な情報や他社の事例はあくまで参考であり、ご自身の会社の状況にそのまま当てはまるわけではないことを理解しておく必要があります。

したがって、もし賞与に関して疑問や不安な点がある場合は、迷わず勤務先の担当部署(人事部や総務部など)に直接確認することが最も確実で賢明な方法です。

口頭での確認だけでなく、重要な事項についてはメールなどで文書として残しておくことをお勧めします。これにより、後々の認識の齟齬やトラブルを防ぐことができます。

「こんなことを聞いても大丈夫かな?」と遠慮する必要はありません。自身の報酬に関わる重要なことですので、プロフェッショナルとして適切な情報を得る努力をしましょう。早めに確認することで、不測の事態にも対応しやすくなります。