賞与にかかる税金、高すぎる？賢く対策するための徹底解説

賞与（ボーナス）を受け取った際、「思ったより手取りが少ない…」と感じた経験はありませんか？ それは、賞与からも所得税や社会保険料が差し引かれているためです。この記事では、賞与にかかる税金と社会保険料の複雑な仕組みを、最新の情報を交えて徹底解説します。手取りを最大化するための賢い対策までご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

賞与にかかる税金の仕組み：所得税と社会保険料の計算方法

賞与から差し引かれるのは、主に所得税と社会保険料です。これらの計算方法を正しく理解することが、手取り額への疑問を解消する第一歩となります。

賞与から引かれる「所得税」の計算ルール

賞与にかかる所得税（源泉徴収税）は、以下の計算式で算出されます。

源泉所得税額 = (賞与支給額 – 社会保険料控除額) × 源泉徴収税率

この源泉徴収税率は、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額と、扶養親族等の数によって決まります。国税庁が公表する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に基づいており、例えば扶養親族0人の場合、前月給与が79,000円～251,999円であれば税率は4.084%が適用されます。前月の給与が非常に高い、または全くないといった特殊なケースでは、計算方法が異なる場合もあるため注意が必要です。

社会保険料の種類と計算方法を徹底解説

賞与から控除される社会保険料は、健康保険料、介護保険料（40歳以上）、厚生年金保険料、雇用保険料の4種類です。これらの保険料は、原則として「標準賞与額」にそれぞれの保険料率を掛けて計算されます。標準賞与額は、賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた金額です。

例えば、厚生年金保険料率は18.3%（2023年時点）、雇用保険料率の労働者負担分は6/1000（令和6年度）です。健康保険・介護保険には年度累計573万円、厚生年金保険には1ヶ月あたり150万円という標準賞与額の上限が設定されており、上限を超えた部分には保険料がかかりません。

住民税は？賞与から引かれるもの・引かれないもの

賞与が支給される際、手取り額から差し引かれるのは主に所得税と社会保険料です。一方で、住民税は、前年の所得に基づいて計算され、毎月の給与から分割して納付されるため、原則として賞与から直接差し引かれることはありません。つまり、賞与明細に住民税の項目がないのが通常です。何が引かれて何が引かれないのかを理解することは、明細をチェックする際に役立ち、手取り額がなぜその金額になったのかを把握しやすくなります。

賞与の金額別！所得税はいくら引かれる？シミュレーション

賞与から引かれる所得税額は、その金額や個人の状況によって大きく変動します。具体的な例で見ていきましょう。

手取りを左右する「源泉徴収税率」のしくみ

所得税額を決定づける源泉徴収税率は、前月の給与額と扶養親族の数によって決まります。例えば、扶養親族が0人の場合、前月の給与が68,000円未満なら税率0%、79,000円～251,999円なら4.084%となります。前月の給与が高ければ高いほど、賞与にかかる税率も高くなる傾向があります。ご自身の正確な税率は、会社から支給される給与明細や国税庁のサイトで確認することができます。扶養親族の状況を正確に会社に申告することが、適切な税額計算の基本です。

【所得税率の例（扶養親族0人の場合）】

ケーススタディ：賞与〇〇万円の場合の所得税額

仮に、賞与が50万円で、社会保険料控除額が10万円、前月の給与から社会保険料等を差し引いた額が20万円（扶養親族0人）の場合をシミュレーションしてみましょう。この条件では、源泉徴収税率は4.084%が適用されます。

• 賞与支給額：500,000円
• 社会保険料控除額：100,000円
• 所得税対象額：500,000円 – 100,000円 = 400,000円
• 源泉所得税額：400,000円 × 4.084% = 16,336円

このように、賞与の額面から社会保険料を差し引いた金額に対して所得税が課されるため、手取り額はさらに少なくなります。ご自身の状況で計算してみると、より具体的な手取り額をイメージできます。

知っておきたい！所得税計算の特殊なケース

所得税の計算には、いくつか特殊なケースが存在します。例えば、前月の給与が賞与の10倍を超える場合や、賞与支給月の前月に給与の支払いがない場合などです。これらの状況では、通常の計算式ではなく、特定のルールに基づいて税額が算出されます。滅多に経験することではありませんが、もし該当した場合は「なぜだろう？」と疑問に思う前に、これらの特殊なケースが適用されている可能性を思い出してください。最終的な所得税額は年末調整で確定し、過不足が精算されるため、一時的な手取り額の変動であっても安心です。

社会保険料も意外と大きい！賞与からの控除額をチェック

所得税だけでなく、賞与から引かれる社会保険料も手取り額に大きな影響を与えます。特に上限額や特定の期間の取り扱いは要チェックです。

健康保険・厚生年金保険料の「標準賞与額」とは？

健康保険、介護保険、厚生年金保険の各社会保険料は、「標準賞与額」を基に計算されます。標準賞与額とは、賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。例えば、賞与が499,999円なら標準賞与額は499,000円、500,000円なら500,000円となります。この標準賞与額にそれぞれの保険料率を掛けて、控除額が決定されます。賞与額が切り捨てられる前の金額とわずかに異なるため、計算時にはこのルールを覚えておくと良いでしょう。

上限に注意！高額賞与で得する？損する？

社会保険料には、標準賞与額の上限が設けられています。具体的には、健康保険・介護保険は年度（4月1日～翌年3月31日）の累計額で573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円です。この上限を超えた部分には保険料がかからないため、高額な賞与を受け取る方にとっては、一定額以上の部分には保険料の負担が生じないというメリットがあります。ただし、その分将来の給付額（年金など）の計算にも影響が出ることがありますので、一概に「得」とは言えません。複数回賞与が支給される場合は、その月の賞与額を合算して上限適用が判断されます。

出産・育児休業中の賞与は社会保険料がかからない？

産前産後休業や育児休業中には、社会保険料の免除制度があります。月末時点で休業が継続している場合、その月の賞与からは社会保険料が徴収されません。これは、休業期間中の家計にとって非常に大きなサポートとなるため、該当する方はこの制度を積極的に活用しましょう。同様に、賞与支給月の末日より前に退職した場合、退職月の社会保険料はかかりません。これらの制度を知っておくことで、ライフイベントやキャリアプランニングにおいて、より賢明な選択が可能になります。

賞与の税金対策、できることは？知っておきたい節税のポイント

「賞与の手取りを増やしたい」と考えるなら、合法的な節税対策を知っておくことが重要です。いくつかのポイントをご紹介します。

年末調整を最大限活用する！還付金アップのコツ

年末調整は、1年間の所得税額を確定させ、過不足を精算する重要な手続きです。年末調整を適切に行うことで、税金が還付されるケースも多くあります。特に、生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCo（個人型確定拠出年金）の掛金控除、医療費控除、住宅ローン控除など、様々な所得控除が存在します。これらの控除を漏れなく適用するためには、必要書類を期日までに会社に提出することが不可欠です。不足なく申告し、賢く還付金を受け取りましょう。

iDeCo・NISAで賢く資産形成＆節税

将来に向けた資産形成と同時に、節税効果も期待できるのがiDeCo（イデコ）やNISA（ニーサ）といった制度です。iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税を軽減する効果があります。賞与の手取りを直接増やすわけではありませんが、年間の税負担を減らすことで実質的な手元資金を増やすことに繋がります。NISAは、運用益が非課税となる制度で、直接的な所得控除はないものの、投資で得た利益から税金が引かれないため、効率的な資産形成をサポートします。

給与所得控除と基礎控除の改正で手取りが変わる！

税制改正も手取り額に影響を与える重要な要素です。2025年度（令和7年度）の年末調整からは、所得税の計算における「年収の壁」対策として、給与所得控除と基礎控除が引き上げられます。具体的には、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に、基礎控除が48万円から58万円（合計所得金額2,350万円以下の場合）にそれぞれ引き上げられます。これにより、特に給与収入が123万円以下であれば、所得税がかからなくなる可能性があり、実質的な手取りが増えることになります。最新の税制改正を常に把握しておくことが重要です。

賞与から〇〇円引かれたら？税金・保険料の疑問を解決！

賞与の手取り額に疑問を感じた時、どこに注目すれば良いのでしょうか。よくある疑問とその解決策をご紹介します。

扶養親族の確認が最も重要！なぜ税金が変わるのか？

扶養親族の人数は、所得税額を大きく左右する重要な要素です。扶養親族が多いほど、所得税の計算に適用される税率が低くなるか、あるいは所得控除が増えるため、最終的な税負担が軽減されます。会社に登録されている扶養親族の情報が最新かつ正確であるか、定期的に確認することが非常に大切です。結婚や出産、親を扶養に入れるなど、家族構成に変化があった場合は速やかに会社へ申告し、年末調整で適切な控除を受けられるようにしましょう。

社会保険料控除の意外な落とし穴とメリット

社会保険料の控除には、知っておくとお得な「メリット」がいくつか存在します。特に、産前産後休業や育児休業中に支給される賞与は、月末時点で休業が継続していれば社会保険料が免除されます。これは非常に大きな手取り額アップに繋がるため、休業のタイミングを計画する上でも重要な情報です。また、退職月の社会保険料も、賞与支給月の末日より前に退職した場合はかかりません。これらの制度は「落とし穴」ではなく、むしろ賢く活用すべき制度として認識しておきましょう。

結局、手取りを増やすために今日からできること

賞与の手取り額を最大限に増やすために、今日からできることをまとめました。

1. 扶養親族の情報を常に正確に会社に申告する。
2. 年末調整の書類は期限内に提出し、適用可能な控除をすべて活用する。
3. iDeCoやNISAといった節税効果のある制度の活用を検討する。
4. 定期的に給与明細や賞与明細をチェックし、税金や保険料の仕組みへの理解を深める。

賞与にかかる税金や社会保険料は複雑に感じられるかもしれませんが、仕組みを理解し、最新の制度を把握することで、賢く手取り額を増やすことが可能です。ご自身の状況に合わせて、適切な対策を検討してみてください。