社員旅行は休日?給料は?家族同伴や子供連れ、経費について徹底解説

社員旅行は、従業員間の親睦を深め、リフレッシュを図るための重要な福利厚生の一つです。しかし、その実施にあたっては「これって勤務扱い?」「給料は出るの?」「家族も連れて行ける?」といった様々な疑問や懸念が生じるものです。

特に、労働時間や賃金、税務上の扱いに関しては、法的な解釈や企業の運用によって大きく異なるため、事前にしっかりと理解しておくことが大切です。

この記事では、社員旅行が休日となるのか、それとも労働時間とみなされるのか、また給料の扱いや、家族同伴の場合の経費についてなど、社員旅行に関するあらゆる疑問を徹底解説します。適切な計画を立て、従業員にとっても会社にとっても有意義な社員旅行を実現するための参考にしてください。

  1. 社員旅行は勤務扱いになる?休日との関係
    1. 社員旅行が「労働時間」とみなされるケース
    2. 「休日扱い」となる社員旅行の条件とは
    3. 判断基準のポイントと注意点
  2. 社員旅行中の給料はどうなる?給料天引きは許される?
    1. 労働時間とみなされれば給料は発生する
    2. 給料が発生しないケースとその理由
    3. 社員旅行費用を給料から天引きは可能?
  3. 公休日に社員旅行した場合の扱いとは
    1. 公休日が労働時間とみなされる場合
    2. 公休日の社員旅行が労働時間とならない場合
    3. 公休日の社員旅行におけるトラブル防止策
  4. アルバイトの社員旅行参加と待遇について
    1. アルバイトも社員旅行の対象となるか
    2. アルバイトの労働時間と給料の扱い
    3. アルバイトの経費計上における注意点
  5. 社員旅行への家族同伴・子供連れは可能?経費はどうなる?
    1. 家族同伴・子供連れは原則可能だが費用は自費
    2. 家族分の費用を会社が負担した場合の課税
    3. 家族同伴の場合の経費計上の例外と注意点
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 社員旅行は休日として扱われますか?
    2. Q: 社員旅行中に給料は発生しますか?
    3. Q: 社員旅行の費用を給料から天引きすることは許されますか?
    4. Q: 公休日に社員旅行が実施された場合、どのように扱われますか?
    5. Q: 社員旅行に家族や子供を連れて参加する場合、経費はどうなりますか?

社員旅行は勤務扱いになる?休日との関係

社員旅行が「労働時間」とみなされるか、「休日扱い」となるかは、その旅行の性質や従業員の参加に対する会社の強制度によって判断が分かれます。この判断は、給料や手当の発生に直結するため、非常に重要です。

社員旅行が「労働時間」とみなされるケース

社員旅行が労働時間とみなされるのは、主に会社が業務遂行上必要と判断し、参加が実質的に強制される場合です。例えば、旅行中に業務に関する研修や会議が組まれている場合、あるいは参加しない従業員に対して人事評価上の不利益が生じる可能性がある場合などがこれに該当します。

具体的には、新製品発表のための勉強会が旅行日程に組み込まれていたり、チームビルディングを目的とした業務関連のワークショップが実施されたりするケースです。このような場合、従業員は会社の指揮命令下にあると判断され、旅行期間全体または一部が労働時間として扱われます。

移動時間についても、会社からの指示で団体行動が義務付けられている場合は、労働時間とみなされることがあります。労働時間と判断された場合、会社は通常の賃金や、休日出勤にあたる場合は休日出勤手当の支払い義務を負うことになります。

「休日扱い」となる社員旅行の条件とは

一方で、社員旅行が休日として扱われるのは、その参加が完全に任意であり、業務との関連性が低い場合です。これは、福利厚生の一環として従業員のリフレッシュを目的とする旅行が典型的です。

参加・不参加が個人の自由な選択に委ねられ、不参加であってもいかなる不利益も生じないこと。また、旅行の主な内容が観光やレクリエーションであり、業務に関する指示や拘束がほとんどないことが条件となります。旅行中に自由時間が多く、個々が自由に過ごせるようなプランであれば、休日と判断されやすいでしょう。

このようなケースでは、会社は従業員に対して給料や代休を付与する義務はなく、純粋な福利厚生として費用を負担することになります。従業員も、自身のプライベートな時間を使って参加するという認識になります。

判断基準のポイントと注意点

社員旅行が労働時間となるか、休日扱いとなるかの判断は、「参加の強制度」「業務関連性」の2点が重要なポイントとなります。形式的に「任意参加」と謳っていても、実態として不参加が難しい雰囲気がある場合や、業務と密接に関連する活動が含まれている場合は、労働時間とみなされるリスクがあります。

企業としては、旅行の企画段階からこの点を明確にし、従業員に誤解が生じないよう十分に周知徹底することが不可欠です。就業規則に社員旅行に関する規定を設けたり、旅行前に書面で参加の条件や労働時間の有無を通知したりするなどの対策が有効です。

曖昧な運用は、後に労働基準監督署からの指摘や従業員とのトラブルに発展する可能性があるため、事前に専門家への相談も検討するべきでしょう。明確なルール作りと丁寧なコミュニケーションが、スムーズな社員旅行実施の鍵となります。

社員旅行中の給料はどうなる?給料天引きは許される?

社員旅行の期間中、給料が発生するのか、あるいは旅行費用を給料から天引きできるのかは、従業員にとっても企業にとっても関心の高い事項です。ここでは、給料の扱いに関する原則と注意点を解説します。

労働時間とみなされれば給料は発生する

前述の通り、社員旅行が「労働時間」と判断された場合、その期間に対しては当然ながら給料が発生します。これは、労働基準法における賃金支払いの原則に基づきます。会社は、従業員が会社の指揮命令下で業務に従事しているとみなされる時間に対して、適正な賃金を支払う義務があります。

具体的には、研修や会議への参加時間、業務報告のための移動時間、会社が義務付けた団体行動の時間などが労働時間に含まれる可能性があります。もし、これらの活動が所定労働時間外や休日にあたる場合は、時間外労働や休日労働としての割増賃金を支払う必要が生じます。

したがって、社員旅行を計画する際は、労働時間とみなされる可能性のある活動内容とその時間を正確に把握し、それに伴う賃金支払いについて事前に予算を組んでおくことが重要です。

給料が発生しないケースとその理由

一方で、社員旅行が「労働時間ではない」と判断された場合、つまり参加が任意で業務関連性が低い場合は、その期間中の給料は発生しないのが一般的です。これは、従業員が自己の裁量で私的な活動を行っているとみなされるためです。

旅行中の自由時間、個々が参加を自由に選択できるレクリエーション、観光スポットでの自由行動などは、労働時間に該当しません。会社が福利厚生として旅行費用を負担する場合であっても、これらの時間に対して給料を支払う義務はありません。

例えば、日中に観光や食事があり、夜に自由時間が設けられているような旅行であれば、業務とは切り離された個人的な時間と解釈されます。この場合、給料は通常通り所定労働時間に対して支払われ、旅行中の非労働時間については給料が発生しないことになります。

社員旅行費用を給料から天引きは可能?

社員旅行の費用を従業員の給料から天引きすることは、原則として労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」に違反します。この原則は、会社が従業員の給料から一方的に費用を差し引くことを禁じています。

ただし、例外的に天引きが認められるケースもあります。それは、労使協定が締結されている場合、または従業員から書面による明確な同意を得ている場合です。例えば、社員旅行の一部費用を従業員が自己負担することに同意し、その旨を記載した同意書を会社が取得している場合などが考えられます。

しかし、従業員の自由な意思に基づかない強制的な天引きや、従業員に不利益が生じる形での天引きは認められません。会社としては、天引きではなく、従業員が実費を支払う形での徴収や、旅行費用の一部を会社が負担する「補助金」という形での対応を検討する方が、トラブルを避ける上で賢明です。

公休日に社員旅行した場合の扱いとは

社員旅行が公休日に実施される場合、その扱いは非常にデリケートです。公休日が労働時間とみなされるか否かで、会社が支払うべき賃金や手当、従業員の負担が大きく変わってくるため、慎重な判断が求められます。

公休日が労働時間とみなされる場合

会社が定めた公休日(法定休日や所定休日)に社員旅行が実施され、それが労働時間と判断される場合は、会社は従業員に対して休日出勤手当を支払う義務が生じます。特に、労働基準法で定められた週1回の「法定休日」に労働させた場合は、通常の賃金の35%以上の割増賃金が必要です。

例えば、日曜日を法定休日としている企業が、その日曜日に社員旅行を実施し、かつ参加が強制的な研修や会議が組み込まれているような場合です。この場合、従業員は休日にもかかわらず会社の指揮命令下で業務に従事したとみなされ、割増賃金を受け取る権利が発生します。

また、所定休日(法定休日以外の会社が定めた休日)に労働時間とみなされる社員旅行を行った場合も、通常の賃金を支払う義務があります。企業は、休日出勤の取り扱いについて就業規則に明記し、適正な賃金計算と支払いを徹底する必要があります。

公休日の社員旅行が労働時間とならない場合

公休日に社員旅行が実施されても、その参加が完全に任意であり、業務性が低い場合は、労働時間とはみなされません。この場合、従業員は自身の自由な時間を使って旅行に参加していると解釈され、会社は給料や代休を付与する義務はありません。

例として、土日を利用した観光目的の社員旅行で、参加は自由、不参加による不利益も一切ないというケースが挙げられます。このような旅行は、従業員のリフレッシュや親睦を目的とした福利厚生の一環であり、あくまで個人的な時間の延長として扱われます。

企業としては、公休日を利用して社員旅行を実施する際は、その旨を従業員に明確に伝え、参加が強制ではないこと、給料や代休が発生しないことを十分に説明することが重要です。これにより、従業員の誤解や不満を防ぐことができます。

公休日の社員旅行におけるトラブル防止策

公休日の社員旅行におけるトラブルを未然に防ぐためには、事前の明確な方針と従業員への丁寧な説明が不可欠です。

  • 参加の強制度と業務関連性を明確にする: 旅行の目的や内容を明確にし、労働時間となるのか、休日となるのかの判断基準を社内で共有します。
  • 就業規則への明記: 社員旅行に関する規定を就業規則に盛り込み、休日出勤の取り扱いを含めて明確化します。
  • 事前同意の取得: 参加が任意であること、給料や代休が発生しないことを従業員に説明し、同意書を取得することも有効です。
  • 不参加者への配慮: 参加しない従業員が不利益を被らないよう、業務上の配慮や代替案の提供も検討します。

これらの対策を講じることで、従業員の納得感を高め、トラブルのリスクを軽減し、有意義な社員旅行を実現できるでしょう。

アルバイトの社員旅行参加と待遇について

社員旅行は正社員だけのものと思われがちですが、パートやアルバイト従業員も参加の対象とすべきでしょうか。また、参加した場合の待遇はどのように考えるべきか、経費計上の観点も踏まえて解説します。

アルバイトも社員旅行の対象となるか

社員旅行が福利厚生の一環として実施される場合、原則としてパートやアルバイト従業員も参加の対象に含めるべきです。参考情報にも「パートやアルバイトも参加率の計算に含まれます」とある通り、福利厚生は公平に提供されるべきという考え方が一般的です。

アルバイト従業員を含めることで、社内の一体感醸成やコミュニケーション活性化といった社員旅行本来の目的がより効果的に達成されます。参加を促すことは、彼らのモチベーション向上やエンゲージメント強化にも繋がり、企業全体の生産性向上にも寄与する可能性があります。

ただし、参加はあくまで任意であり、強制はできません。アルバイト従業員にも、正社員と同様に旅行の目的や内容、労働時間の有無について事前に明確に説明し、参加の意思を尊重することが求められます。

アルバイトの労働時間と給料の扱い

アルバイト従業員が社員旅行に参加し、それが「労働時間」とみなされる場合は、正社員と同様に給料を支払う義務が発生します。アルバイトは時給制であることが多いため、参加した労働時間に応じた賃金を正確に計算し、支払う必要があります。

例えば、会社が義務付けた研修や団体行動への参加時間が労働時間と判断されれば、その時間分の時給を支払わなければなりません。また、休日出勤や深夜労働に該当する場合は、正社員と同様に割増賃金の支払いが必要になります。

労働時間ではないと判断される任意参加の旅行であれば、給料は発生しません。いずれにしても、アルバイト従業員の勤務状況を正確に把握し、労働時間管理を適切に行うことが、賃金未払いや労働基準法違反といったトラブルを避ける上で非常に重要です。

アルバイトの経費計上における注意点

社員旅行の費用を福利厚生費として経費計上する際の条件には、「従業員の参加率が50%以上であること」というものがあります。この参加率の計算には、パートやアルバイト従業員も含まれます

そのため、アルバイト従業員にも積極的に社員旅行への参加を促すことは、福利厚生費としての経費計上を確実にするためにも有効な手段となります。ただし、一部のアルバイト従業員だけを対象にしたり、不参加のアルバイト従業員に旅行費用相当額を現金で支給したりすると、福利厚生費として認められない可能性があります。

このような対応は、給与とみなされ課税対象となるリスクがあるため注意が必要です。福利厚生費として計上するためには、正社員・アルバイト問わず公平な条件で参加を募り、福利厚生費の要件を全て満たすように計画することが求められます。

社員旅行への家族同伴・子供連れは可能?経費はどうなる?

社員旅行に家族や子供を同伴させたいと考える従業員も少なくありません。家族同伴が可能なのか、またその場合の費用は経費として認められるのかについて、税務上の観点も交えながら詳しく見ていきましょう。

家族同伴・子供連れは原則可能だが費用は自費

社員旅行に家族や子供を同伴させることは、会社が特に禁止していなければ、原則として可能です。多くの企業では、従業員の個人的な事情に配慮し、家族同伴を認めています。これにより、従業員の満足度向上や、家族を含めた会社へのロイヤリティを高める効果も期待できます。

しかし、参考情報にもある通り、「家族分の旅行費用は原則として経費として計上できません」。福利厚生費は従業員本人を対象とするものであり、家族の費用は含まれないのが基本的な考え方です。したがって、家族を同伴させる場合の費用は、従業員が自己負担するのが一般的です。

会社は、家族同伴を許可する際に、その旨を明確に伝え、費用負担のルールを事前に説明しておく必要があります。また、同伴によって他の参加者に迷惑がかからないよう、マナーや行動に関するルールを設けることも重要です。

家族分の費用を会社が負担した場合の課税

もし会社が家族分の旅行費用を負担した場合、その費用は原則として従業員に対する「給与」とみなされ、所得税の課税対象となります。これは、従業員が本来負担すべき費用を会社が肩代わりしたと解釈されるためです。

給与とみなされると、所得税だけでなく、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)の計算対象にもなります。結果として、従業員の手取り額が減少し、会社側も社会保険料の負担が増えることになります。これは、社員旅行の福利厚生としてのメリットを大きく損なうことになりかねません。

税務調査で指摘を受けないためにも、家族分の費用を会社が負担する運用は極力避け、従業員に実費を負担してもらう形が最も安全です。誤った運用は、予期せぬ税金や社会保険料の追加負担につながるリスクがあります。

家族同伴の場合の経費計上の例外と注意点

家族分の費用を経費として計上することは原則的に困難ですが、ごく稀に「家族も業務の一環として参加する必要がある」と客観的に認められるような特殊なケースでは、経費計上が可能となる場合があります。しかし、これは非常に限定的であり、一般的な社員旅行ではほとんど該当しません。

例えば、企業のプロモーション活動のために家族がモデルとして同行する、あるいは海外視察などで家族も同行して交渉に臨む必要があるといった、明確な業務上の理由が求められます。このような場合でも、税務署からの説明責任は非常に重いため、事前に税理士などの専門家と相談することが不可欠です。

通常の社員旅行で家族同伴を許可する場合は、以下の点に注意し、会社負担分と従業員自己負担分を明確に区分けすることが重要です。

  • 従業員から家族分の旅費を徴収する際は、会社負担分と明確に分けた領収書を発行する。
  • 自己負担分の精算は、給与天引きではなく、現金徴収や銀行振込などで行う。
  • 福利厚生費として計上する際の3つの条件(旅行期間4泊5日以内、参加率50%以上、社会通念上一般的な旅行プラン)を会社負担分のみで満たせるか確認する。家族分を含めると「一般的な旅行プラン」の範囲を超えるリスクもあるためです。

適切な手続きと明確なルールを設けることで、税務上のリスクを避けつつ、家族同伴の社員旅行を実現することができるでしょう。