テレワークの最新事情 NTTグループの動向と先進事例

働き方の多様化が加速する現代において、テレワークはもはや特別な選択肢ではなくなりつつあります。特にNTTグループは、その大規模な組織を率いながら、先進的なテレワーク施策を積極的に推進していることで注目を集めています。

本記事では、NTTグループがどのような方針でテレワークを導入し、どのような具体的な取り組みを行っているのか、そしてその背景にある技術革新や、一般的なテレワーク事情との比較を通じて、その最新動向を深掘りしていきます。

  1. NTTグループが推進するテレワークの現状
    1. リモートスタンダード制度の導入とその狙い
    2. 働き方の自由度向上と健康経営
    3. ハイブリッドワークの推進と今後の展望
  2. NTTデータ、NTT東日本、NTTコミュニケーションズの取り組み
    1. 多角的な環境整備で支えるリモートワーク
    2. コミュニケーションとウェルビーイングへの配慮
    3. 主要グループ会社のテレワーク実施状況
  3. シン・テレワークシステムとは?NTTの技術革新
    1. セキュアなリモートアクセス環境の構築
    2. 遠隔コミュニケーションを革新するNTTの挑戦
    3. 技術で拓く、未来の働き方
  4. テレワーク廃止の背景と今後の展望
    1. 一般的なテレワークの課題と向き合う
    2. NTTグループが示すリモートワークの未来像
    3. ワーケーションなど先進的な取り組みの拡大
  5. 他社のテレワーク事情:GoogleやNRIとの比較
    1. 日本のテレワーク実施率の全体像
    2. NTTグループの取り組みと一般企業の比較
    3. テレワーク普及における共通の課題
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: NTTグループは、テレワークをどの程度推進していますか?
    2. Q: 「シン・テレワークシステム」とは具体的にどのようなものですか?
    3. Q: NTTグループ内でテレワークが廃止されるという話は本当ですか?
    4. Q: NTTデータとNTT東日本のテレワークへの取り組みに違いはありますか?
    5. Q: GoogleやNRI(野村総合研究所)のテレワーク事情と比較して、NTTグループの特徴は何ですか?

NTTグループが推進するテレワークの現状

NTTグループは、日本の通信インフラを支える巨大企業として、従業員の働き方改革にも最前線で取り組んでいます。

リモートスタンダード制度の導入とその狙い

NTTグループは、2022年7月1日より、約3万人の社員を対象に「リモートスタンダード制度」を導入しました。

これは、原則自宅勤務を基本とする新たな働き方であり、従業員の「住む場所」の自由度を大幅に高めることを目的としています。この制度の導入により、「ワークインライフ(健康経営)」の推進を図り、個人の生活と仕事の調和を重視する姿勢が明確に示されています。

当初の対象は、NTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェア、NTTデータといった主要グループ会社の社員の約半数に及び、その規模の大きさが制度への本気度を物語っています。

働き方の自由度向上と健康経営

リモートスタンダード制度の下では、会社への出社は「出張扱い」となる場合があり、その際の交通費や宿泊費は出張費として支給される方針です。これにより、従業員は通勤圏にとらわれず、日本国内であればどこにでも自由に居住することが可能になりました。

中には、飛行機での通勤でも交通費として認められるケースがあるなど、その柔軟性は驚くべきものです。このような高い自由度は、従業員のライフスタイルの選択肢を広げ、地域創生への貢献や、介護・育児との両立支援など、多岐にわたるメリットをもたらします。

結果として、従業員のストレス軽減やモチベーション向上に繋がり、健康経営の観点からも大きな効果が期待されています。

ハイブリッドワークの推進と今後の展望

NTTグループは、リモートワークとオフィス出社を組み合わせたハイブリッドワークを前提としています。個人の希望や業務内容に応じて、制度の適用や適用除外も柔軟に対応しており、画一的な働き方を強制することはありません。

これは、業務の性質や個人の状況に合わせた最適な働き方を選択できる環境を提供していることを意味します。NTTグループは、今後もオンライン化・デジタル化の流れは変わらないと考えており、リモートワークを推進していく方針を明確に示しています。

この姿勢は、単なる一時的な対応ではなく、持続可能な未来の働き方を見据えた長期的な戦略の一環と言えるでしょう。

NTTデータ、NTT東日本、NTTコミュニケーションズの取り組み

NTTグループ各社は、それぞれ独自の強みを活かし、テレワーク環境の整備と運用に工夫を凝らしています。

多角的な環境整備で支えるリモートワーク

NTTグループでは、テレワークを円滑に進めるための物理的・技術的な環境整備に力を入れています。

具体的には、全社員へのモバイルツール(ノートパソコンなど)やモバイルWi-Fiの配布、そして何よりも重要なセキュリティ管理体制の徹底が挙げられます。特に、NTTコミュニケーションズでは、ロボットや等身大の電子看板などを設置し、離れた場所にいる人同士が同じ場所にいるかのような空間を創出する先進的な試みを実施しています。

さらに、サテライトオフィスの拡充、リモートアクセス環境の整備・増強、住宅地エリアに所在する通信ビル等を活用したサテライトオフィスの構築、そしてリモートワーク手当の支給など、多方面から従業員のテレワークを支援しています。

コミュニケーションとウェルビーイングへの配慮

テレワークで懸念されるコミュニケーション不足や従業員の孤立を防ぐため、NTTグループは運用面でも様々な工夫を凝らしています。

柔軟な勤務制度(フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制、裁量労働制、分断勤務など)の導入はもちろん、オンラインでの上司と部下の対話や社員同士の雑談を促すコミュニケーションスペースの整備にも注力しています。

また、メンタルヘルスを含む健康状態の定期確認や相談窓口の設置、管理者・社員に対するリモートワーク活用研修の実施など、従業員のウェルビーイング(心身の健康と幸福)にも細やかに配慮しています。さらに、2名以上で実施した場合に会社が費用を負担するワーケーション制度や、業務中の仮眠推奨といったユニークな取り組みも行われています。

主要グループ会社のテレワーク実施状況

NTTグループの主要会社のテレワーク実施率は、非常に高い水準を維持しています。以下は2025年8月時点の実績データです。

(※エッセンシャルワーカーは含まれていません。自宅でのリモートワーク実施実績に基づき算出されており、サテライトオフィス等での実施は含まれていません。)

グループ会社 テレワーク実施率
NTT 61.3%
NTT東日本 63.0%
NTT西日本 47.9%
NTTドコモビジネス 80.2%
NTTデータグループ 65.6%
NTTドコモ 64.9%

特にNTTドコモビジネスでは80%を超える高い実施率を誇っており、グループ全体でテレワークが定着していることが分かります。

シン・テレワークシステムとは?NTTの技術革新

NTTグループは、テレワークを単なる働き方の変化に留めず、先進技術を活用した新しい働き方を追求しています。

セキュアなリモートアクセス環境の構築

テレワークを大規模に展開する上で、最も重要な基盤となるのが、強固なセキュリティと安定したリモートアクセス環境です。NTTグループは、長年にわたり培ってきた通信技術とセキュリティ技術を駆使し、これを実現しています。

モバイルツール(PC、Wi-Fi)の配布に加え、これらのデバイスを安全に利用するためのセキュリティ管理体制は徹底されており、情報漏洩のリスクを最小限に抑える努力が払われています。

また、リモートアクセス環境の整備・増強は、NTTグループが持つネットワーク技術の粋を集めたものであり、従業員がどこからでも安心して業務に取り組める環境を提供しています。

遠隔コミュニケーションを革新するNTTの挑戦

物理的な距離がある中で、いかに効率的かつ円滑なコミュニケーションを維持するかは、テレワークにおける永遠の課題です。NTTコミュニケーションズの取り組みは、その解決策の一つとして注目されています。

ロボットや等身大の電子看板をオフィスに設置することで、離れた場所にいる社員同士がまるで同じ空間にいるかのような感覚を創出する試みは、仮想的な一体感を生み出し、従来のビデオ会議では得られなかった臨場感を提供します。

これは、NTTグループが単に既存のツールを利用するだけでなく、自社の技術で新しいコミュニケーションの形を創造しようとする意欲の表れと言えるでしょう。

技術で拓く、未来の働き方

NTTグループは、常に最先端の技術動向を捉え、それを働き方改革に活かすことを目指しています。上記のリモートアクセスやコミュニケーション技術は、その一端に過ぎません。

オンライン化・デジタル化の流れを今後も変わらないと見据え、AIやIoT、VR/ARといった次世代技術との融合により、さらに多様で柔軟な働き方を模索していると考えられます。例えば、サテライトオフィスの拡充も、単なる場所の提供ではなく、分散型オフィスや地域と連携した新しい働き方のモデルを技術で支える試みと言えるでしょう。

NTTグループの技術革新は、未来の働き方を形作る上で不可欠な要素となっています。

テレワーク廃止の背景と今後の展望

一部企業でテレワークの見直しや廃止の動きが見られる中、NTTグループはテレワーク推進の旗手を務めています。その背景と今後の展望を掘り下げます。

一般的なテレワークの課題と向き合う

2024年~2025年の調査では、多くの企業がテレワークの課題に直面していることが明らかになっています。主な課題としては、以下のような点が挙げられます。

  • 社内コミュニケーションの減少(70.6%)
  • 利用する従業員と利用できない従業員との間の不公平感(51.9%)
  • 従業員の勤務状況の把握(49.8%)
  • 連帯感、一体感の低下(36.2%)
  • 部下の仕事の様子が分かりにくくなった(32.2%)

これらの課題は、一部の企業でテレワークの「廃止」や「出社回帰」の動きを加速させる要因となっています。特にコミュニケーション不足やマネジメントの難しさは、生産性や組織文化に影響を及ぼす可能性があります。

NTTグループが示すリモートワークの未来像

一般的な課題がある中でも、NTTグループは「オンライン化・デジタル化の流れは変わらない」と明言し、リモートワークを推進する方針を堅持しています。これは、先に述べた環境整備や運用面の工夫を通じて、一般的な課題を克服し、むしろテレワークのメリットを最大限に引き出すことに成功していると判断しているためでしょう。

「リモートスタンダード制度」という強力な推進体制は、社員の働き方を根本から変え、住む場所の自由度を高めることで、個人のウェルビーイング向上と組織全体の生産性向上を両立させることを目指しています。

この取り組みは、日本の大企業における先進事例として、他の企業にも大きな影響を与える可能性があります。

ワーケーションなど先進的な取り組みの拡大

NTTグループは、単なる在宅勤務に留まらない、より柔軟で創造的な働き方も推進しています。その代表例が「ワーケーション」です。

2021年から全メンバーを対象にワーケーションを実施しており、2名以上で実施した場合に会社が費用を負担するという手厚いサポートも行っています。これは、仕事とプライベートの境界線を柔軟にし、新しいアイデアの創出やリフレッシュを促す狙いがあります。

また、業務中の仮眠推奨や、オフィスを持たずにフルリモートワークを実践するグループ会社の存在は、NTTグループが働き方の多様性を深く理解し、未来を見据えた実践を行っている証拠と言えるでしょう。

他社のテレワーク事情:GoogleやNRIとの比較

NTTグループの先進的な取り組みは、他の企業と比較してもどのような位置づけにあるのでしょうか。</

日本のテレワーク実施率の全体像

日本のテレワーク実施率は、コロナ禍のピーク時と比較して横ばい、あるいはやや減少傾向にあります。

2025年3月の調査では、リモートワーク実施率は17.0%で前年(2024年3月)と同じ結果でした。また、2024年7月の正規雇用社員での実施率は22.6%、2024年2月の就業者全体でのテレワーク実施率は17.0%と報告されています。

これは、業種や職種による実施の難しさ、あるいはテレワーク導入による課題に直面している企業が多いことを示唆しています。多くの企業が試行錯誤を続ける中で、いかに持続可能なテレワークモデルを構築するかが問われています。

NTTグループの取り組みと一般企業の比較

前述のNTTグループ各社のテレワーク実施率(例えばNTTドコモビジネスの80.2%、NTTデータグループの65.6%など)は、日本の平均的な実施率である17%~22%を大きく上回っています。

この差は、NTTグループが「リモートスタンダード制度」という明確な方針を打ち出し、それを支えるための大規模な投資と環境整備、そして従業員のウェルビーイングに配慮した運用を徹底していることに起因すると考えられます。

参考情報ではGoogleやNRIに直接言及されていませんが、多くの先進的なIT企業もハイブリッドワークを導入しつつ、生産性維持と従業員満足度向上に努めています。NTTグループの取り組みは、そうした先進企業とも肩を並べる水準にあると言えるでしょう。

テレワーク普及における共通の課題

テレワークを推進する企業が直面する課題は、NTTグループも例外ではありません。しかし、NTTグループはこれらの課題に対して具体的な対策を講じています。

例えば、一般的な課題である「社内コミュニケーションの減少」に対しては、オンライン対話スペースの整備やワーケーションの推奨で対応し、「勤務状況の把握」については、柔軟な勤務制度と管理者研修で解決を図っています。

「不公平感」や「連帯感の低下」といった組織文化に関わる課題にも、丁寧な制度設計と対話を通じて向き合っています。これらの課題は普遍的であり、NTTグループが示している解決策は、他の企業にとっても非常に参考になるものと言えるでしょう。