概要: 介護休暇は、家族の介護のために取得できる休暇制度です。企業や自治体によって、取得条件や給付内容に違いがあります。本記事では、ライフコーポレーション、NTT、NTTデータ、大和証券、第一生命、デンソー、和歌山県、群馬県(教員)、人事院(自衛隊)、大学などの事例を比較し、介護休暇の取得を検討する方へ役立つ情報をお届けします。
介護休暇とは?基本を理解しよう
ご家族の介護が必要になった時、仕事との両立は大きな課題となります。そんな時に役立つのが「介護休暇制度」です。しかし、「介護休暇」と「介護休業」の違いや、その利用状況については、まだ十分に知られていないのが現状です。
介護休暇と介護休業の違い
「介護休暇」と「介護休業」は、どちらも家族の介護を支援するための制度ですが、目的や期間、取得単位に違いがあります。
介護休暇は、主に短期的な介護や通院の付き添いなどに利用される制度です。法律では、対象家族が1人の場合は年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで、1日または半日単位で取得できます。給与は原則として支払われないことが多いですが、企業によっては有給とする場合もあります。
一方、介護休業は、長期的な介護のために仕事を休む制度です。対象家族1人につき通算93日まで取得でき、分割取得も可能です。休業期間中は、条件を満たせば「介護休業給付金」が雇用保険から支給されます。参考情報によると、介護をしている雇用者のうち、介護休業を取得した人の割合は3.2%と、介護休暇の2.7%(2025年度では3.6%)と比べてわずかに高いものの、依然として低い水準にとどまっています。
制度の対象者と取得条件
介護休暇・介護休業の対象となる家族は、配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。これらの家族が病気や怪我、または高齢により、日常生活を送る上で介護が必要な場合に利用できます。
取得条件については、一般的には勤続6ヶ月以上であることや、会社の就業規則に定められた要件を満たすことが求められます。ただし、企業によっては、より柔軟な条件を設定している場合もあります。具体的な要件は、ご自身の会社の就業規則や人事担当部署に確認することが最も確実です。
介護が必要になった時、まずはご自身の職場の制度を確認し、どのような条件で、誰が対象となるのかを把握することが第一歩となります。
なぜ介護休暇の取得率は低いのか?
参考情報が示すように、介護休暇の取得率は非常に低いのが現状です。2025年度の調査でも、介護休暇取得者がいた事業所の割合は3.6%と、介護に直面する労働者の多さを考えると、この数字は課題を示唆しています。
取得率が低い理由としては、いくつかの要因が考えられます。まず、制度自体の認知度が低いこと。多くの人が「介護休暇がある」と知っていても、具体的な内容や利用方法まで理解しているケースは少ないかもしれません。
次に、職場の理解やサポート体制の不足です。介護休暇を取得することに対する職場の雰囲気や、同僚への負担を懸念して申請をためらうケースも少なくありません。また、給与が支払われないことによる経済的な不安も、利用を阻む大きな要因の一つです。介護と仕事の両立は精神的・身体的にも負担が大きいため、制度が整っていても実際に利用に踏み切るには高いハードルがあると言えるでしょう。
主要企業・自治体の介護休暇制度を比較
介護休暇制度は、法律で定められている最低限の基準に加え、企業や自治体が独自に上乗せ措置を講じている場合があります。そのため、所属する組織によって、利用できる制度の内容に大きな違いが生じます。
大企業と中小企業の導入状況
介護休暇制度の導入状況には、企業規模による顕著な差が見られます。参考情報によると、仕事と介護の両立支援制度を導入している企業の割合は、大企業では73.4%に達する一方、中小企業では48.2%にとどまっています。
この差は、実際に介護休業・休暇を取得した従業員がいた事業所の割合にも現れています。介護休業者がいた事業所の割合は、大企業が13.6%であるのに対し、中小企業はわずか3.6%です。このような格差が生じる背景には、中小企業における人手不足や、制度設計・運用にかかるコスト、そして情報不足などが挙げられます。
大企業では、従業員の定着や多様な働き方を推進するため、法定以上の手厚い介護支援制度を設けているところも少なくありません。一方、中小企業では、法令遵守が精一杯で、独自の制度導入にまで手が回らないのが実情と言えるでしょう。
企業規模 | 両立支援制度導入率 | 介護休業取得者発生事業所割合 |
---|---|---|
大企業 | 73.4% | 13.6% |
中小企業 | 48.2% | 3.6% |
公務員の介護休暇制度の特徴
公務員の介護休暇制度は、一般的な企業とは異なる独自の規定が設けられています。国家公務員、地方公務員ともに、家族の介護を理由に仕事を休むことができる手厚い制度が整備されています。
参考情報によれば、公務員は「家族1人につき通算6ヶ月」の介護休業を取得可能です。さらに、1日単位や1日4時間などの分割取得も柔軟に認められている点が特徴です。また、配偶者、父母、子などに加えて、祖父母、孫、兄弟姉妹なども対象となる「短期介護休暇」が設けられており、年間5日の範囲内で取得できます。
介護休業や休暇だけでなく、フレックスタイム制、時差出勤、テレワークなどの制度も積極的に活用できるため、より多様な働き方で介護と両立しやすい環境が整っていると言えます。ただし、地方公務員の場合、詳細な規定は各自治体によって異なるため、所属する自治体の就業規則を必ず確認する必要があります。
先進企業のユニークな取り組み事例
大企業を中心に、法定を上回る手厚い介護支援制度を導入し、従業員が安心して介護と仕事の両立ができるよう配慮している企業が増えています。これらの先進的な取り組みは、介護離職の防止だけでなく、優秀な人材の確保・定着にも繋がっています。
例えば、あるIT企業では、介護休暇を法定の年間10日(2人以上の場合)から年間30日に拡大し、さらに取得期間中も給与の全額を保障しています。また、介護サービス利用費の補助制度や、専門家による介護相談窓口の設置、テレワークや短時間勤務の積極的な活用推進なども行っています。
また別のメーカーでは、介護を理由とした転勤免除や、介護経験者同士が情報交換できる社内コミュニティの運営など、制度面だけでなく心理的なサポートも充実させています。これらのユニークな取り組みは、従業員が介護に直面した際に一人で抱え込まず、安心して働き続けられる環境を築く上で非常に有効です。
給与や条件、知っておきたいポイント
介護休暇制度を利用するにあたり、最も気になる点の一つが「給与はどうなるのか?」という経済的な側面でしょう。また、取得できる期間や条件についても、正しく理解しておくことが重要です。
給与は出る?無給?給付金は?
基本的に、介護休暇期間中の給与は無給となる企業が多いです。これは、介護休暇が法律で定められた制度であり、給与の支払い義務までは規定されていないためです。ただし、企業によっては、福利厚生の一環として、有給の介護休暇を設けている場合もあります。
一方、介護休業を利用する際には、条件を満たせば「介護休業給付金」が雇用保険から支給されます。これは、休業開始前賃金の約67%(※上限あり)が支給される制度で、経済的な不安を軽減する大きな支えとなります。この給付金は、介護休業を取得する労働者の生活を保障し、安心して介護に専念できるようにすることを目的としています。
ご自身の会社の就業規則を確認し、給与の有無や給付金制度について事前に把握しておくことが大切です。不明な点があれば、人事担当部署に問い合わせてみましょう。
取得できる期間と回数の制限
介護休暇と介護休業では、取得できる期間と回数に違いがあります。
介護休暇は、対象家族1人につき年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで取得可能です。これは、1日単位または半日単位で取得できます。利用回数に制限はなく、必要に応じて何度でも申請できますが、年間合計日数の上限を超えての取得はできません。
一方、介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで取得できます。これは3回を上限として分割取得が可能です。例えば、最初に60日間取得し、その後、状況に応じて残りの33日間をさらに2回に分けて取得するといった柔軟な利用が認められています。公務員の場合は、家族1人につき通算6ヶ月まで取得可能と、企業よりも長い期間が設定されていることがあります。
ご自身の状況に合わせて、介護休暇と介護休業を適切に組み合わせて利用することで、より効果的に介護と仕事の両立を図ることができます。
申請手続きと注意点
介護休暇や介護休業を申請する際には、適切な手続きを踏むことが重要です。一般的には、まず会社の就業規則を確認し、申請に必要な書類や提出期限、担当窓口を把握します。
その後、所定の申請書に必要事項を記入し、介護が必要であることを証明する書類(診断書や介護保険証の写しなど)を添付して提出します。急な介護の場合は、口頭での申し出でも認められることがありますが、後日速やかに書面での手続きを行うことが求められます。
注意点としては、「取得の1週間前までに申し出る」といった、会社が定める事前の申請期間がある場合が多いことです。また、申請時には介護の状況や期間について具体的に説明できるように準備しておくとスムーズです。職場の人手不足や業務への影響を考慮し、早めに相談することで、職場の理解も得やすくなるでしょう。
利用者の声から見る介護休暇の現状
介護休暇制度は法的に整備されていますが、実際に利用する労働者の声からは、制度のメリットとともに、利用にあたっての課題や本音が浮かび上がってきます。制度が形骸化しないためには、現場の声を吸い上げ、改善に繋げることが不可欠です。
介護と仕事の両立のリアルな苦労
介護に直面した多くの労働者は、精神的にも肉体的にも大きな負担を抱えながら、仕事との両立に苦労しています。「介護休暇は助かるけれど、休んだ分の仕事が溜まる」「同僚に迷惑をかけるのが申し訳ない」といった声は後を絶ちません。
特に、介護が必要な家族の急な体調変化や、介護サービスの調整など、突発的な事態への対応は予測が難しく、柔軟な働き方ができない職場では、「介護離職」という選択肢が頭をよぎることも少なくないようです。
参考情報では、介護休業の取得率が3.2%、介護休暇が2.7%と低い現状が示されています。これは、制度があっても利用しにくい職場環境や、利用への心理的ハードルが高いことを物語っています。介護と仕事の両立は、個人の問題だけでなく、企業や社会全体で取り組むべき課題と言えるでしょう。
制度利用で得られるメリットと課題
介護休暇制度を利用することで得られるメリットは、主に時間的な余裕が生まれることです。急な通院の付き添いや介護サービス事業所との打ち合わせなど、普段は仕事で対応できない用事を済ませることができます。
これにより、介護者の精神的負担が一時的に軽減され、家族への介護により深く関わることができます。しかし、その一方で課題も少なくありません。「給与が出ないため、経済的な負担が増える」「休んだ期間のキャリアへの影響が心配」といった懸念は常に存在します。
また、職場の理解が得られず、制度を利用しにくい雰囲気がある場合、利用者は孤立感を深めてしまうこともあります。制度があるだけでは十分ではなく、実際に利用しやすい環境と、利用者の精神面・経済面への配慮が重要となります。
職場環境改善への期待
介護休暇制度がより有効に活用されるためには、職場環境の改善が不可欠です。まず、制度の周知徹底と、利用しやすい雰囲気作りが求められます。管理職が率先して制度の理解を深め、部下からの相談に丁寧に対応することが、従業員の安心感に繋がります。
また、業務の属人化を防ぎ、従業員が一時的に休んでも業務が滞らないような体制を構築することも重要です。テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方の導入も、介護と仕事の両立を強力にサポートします。2025年の法改正では、こうした柔軟な働き方を実現する措置の義務化や、介護離職防止のための措置が強化されます。
これらの改正が、企業が介護支援に本腰を入れるきっかけとなり、従業員が安心して介護と仕事を両立できる、より良い職場環境が整備されることが強く期待されています。
あなたの職場はどう?介護休暇活用ガイド
ご自身の職場に介護休暇制度があるのか、どのような内容なのかを正確に把握することは、いざという時に困らないための第一歩です。日頃から情報収集を心がけ、いざという時に備えましょう。
まずは就業規則を確認しよう
介護休暇制度を利用する上で最も重要なのは、ご自身の会社の「就業規則」を確認することです。就業規則には、介護休暇や介護休業に関する具体的な規定(取得条件、期間、申請方法、給与の有無など)が詳細に記載されています。
もし就業規則が手元になければ、人事部や総務部に問い合わせてみましょう。多くの企業では、社内ポータルサイトなどで公開されている場合もあります。就業規則の確認と同時に、介護に関する社内規定や、相談窓口の有無なども調べておくと良いでしょう。制度の存在を知るだけでなく、「自分の会社でどう運用されているか」を具体的に把握することが大切です。
「うちの会社には制度がないのでは?」と諦める前に、まずは情報収集から始めてみてください。法律で定められている最低限の制度は、ほとんどの企業で導入されているはずです。
2025年法改正でどう変わる?
2025年4月より、育児・介護休業法の一部が改正され、仕事と介護の両立支援制度がさらに強化されます。これは、介護に直面する労働者にとって非常に重要な変更点です。
主な改正点は以下の通りです。
- 柔軟な働き方を実現する措置の義務化: 企業は、時差出勤、短時間勤務、テレワークなど、2つ以上の措置を講じ、従業員が選択できるようにすることが義務付けられます。
- 介護離職防止のための措置: 従業員が介護に直面した際に、個別の周知や意向確認、雇用環境整備が義務化されます。これにより、企業は従業員の介護ニーズを早期に把握し、適切な対応を取ることが求められます。
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象範囲拡大: より多くの労働者が残業免除の恩恵を受けられるようになります。
- 育児・介護のためのテレワーク導入の努力義務化: 企業はテレワーク制度の導入に努める必要があります。
これらの改正は、従業員がより柔軟な働き方を選択しやすくなり、介護離職を防ぐための企業の責任が明確化されることを意味します。あなたの職場も、この法改正に合わせて制度を整備・拡充していくはずです。
介護に直面したら取るべき行動
もしご家族に介護が必要になった場合、まずは冷静に状況を整理し、計画的に行動することが大切です。
- 情報収集: 介護サービスの利用や公的支援制度について、地域包括支援センターや自治体の窓口で情報収集を行いましょう。
- 会社への相談: 早めに上司や人事担当部署に相談し、介護の状況と今後の希望を伝えましょう。相談することで、利用できる社内制度や、業務調整の可能性が見えてきます。
- 利用できる制度の検討: 介護休暇、介護休業、短時間勤務、テレワークなど、ご自身の状況に合った制度の利用を検討します。給付金の受給条件なども確認しましょう。
- ケアプランの作成: 介護サービス事業者と連携し、家族の状況に合わせたケアプラン(介護計画)を作成します。これにより、必要な介護サービスを効率的に利用できます。
一人で抱え込まず、周囲のサポートも積極的に活用しながら、介護と仕事の両立を目指しましょう。企業も従業員の介護ニーズへの理解を深め、安心して働ける環境を提供することが、持続可能な社会の実現に繋がります。
まとめ
よくある質問
Q: 介護休暇とは具体的にどのような制度ですか?
A: 介護休暇とは、要介護状態にある家族を介護するために取得できる休暇制度です。対象となる家族の範囲や取得日数、取得条件などは、各企業や自治体の規定によって異なります。労働基準法で定められた「育児・介護休業法」に基づき、多くの企業で導入されています。
Q: 介護休暇中の給与はどのように扱われますか?
A: 介護休暇中の給与の扱いは、企業や自治体によって大きく異なります。有給休暇として扱われる場合、一部給与が支払われる場合、無給となる場合など様々です。NTTなどの一部企業では、一定期間の給与が保障される制度を設けている場合もあります。詳細は各組織の就業規則等をご確認ください。
Q: 「介護休暇」と「介護休業」の違いは何ですか?
A: 介護休暇は、比較的短期間(1日単位や半日単位など)で取得できる休暇であり、年次有給休暇とは別に取得できる場合が多いです。一方、介護休業は、より長期間(通算して93日まで)取得できる休業制度で、原則無給となります。どちらの制度も、家族の介護を目的としています。
Q: 群馬県の教員は介護休暇を取得できますか?
A: はい、群馬県の教員も地方公務員法に基づき、介護休暇を取得できます。具体的な取得日数や条件については、群馬県教育委員会の規定をご確認ください。人事院規則等で定められた公務員としての休暇制度が適用されます。
Q: 自衛隊員も介護休暇を取得できますか?
A: はい、自衛隊員も人事院規則に基づいて、家族の介護のための休暇を取得することができます。具体的な制度内容や申請方法については、所属部隊の担当部署にご確認ください。公務員としての共通の制度が適用されます。