概要: 介護休暇を取得すると、給与が減額されるのではと心配な方もいるでしょう。本記事では、介護休暇と有給休暇の給与への影響の違い、月給や賞与の減額計算、無給期間や給付金、税金との関係まで詳しく解説します。
介護休暇と有給休暇、給与への影響はどう違う?
有給休暇の給与への影響
仕事とプライベートのバランスを取る上で、有給休暇は非常に重要な制度です。
有給休暇は、労働基準法によって定められた労働者の権利であり、取得しても賃金が減額されることはありません。
これは、休んだ日も通常通り勤務したものとみなされ、所定の賃金が満額支給されるためです。
例えば、1日有給休暇を取得した場合、その日の給与は普段と変わらず支払われます。
有給休暇は、心身のリフレッシュや私用、あるいは突発的な用事など、幅広い目的で活用できます。
給与面での不安なく休暇が取れる点が、介護休暇との大きな違いの一つと言えるでしょう。
この制度があることで、労働者は安心して休息を取ったり、個人的な都合に対応したりすることが可能になります。
介護休暇の給与への影響(原則無給の可能性)
一方、介護休暇の給与に関する取り扱いは、有給休暇とは大きく異なります。
参考情報にもある通り、介護休暇中の給与については、法律上の明確な規定がなく、各企業の就業規則によって定められています。
そのため、多くの企業では介護休暇が無給扱いとなるのが現状です。
介護休暇が「無給」の場合、取得した日数や時間に応じて給与が減額されます。
具体的には、欠勤扱いとなり、日割り計算や時間割り計算で月給から控除されることになります。
ただし、企業によっては福利厚生の一環として、一部を有給扱いとしたり、一定期間のみ給与を補償したりするケースもあります。
もし会社から給与が支払われる場合でも注意が必要です。
その金額によっては、後述する介護休業給付金の支給額が調整されたり、最悪の場合、支給されなくなったりすることがあるため、事前に自社の担当部署に確認しておくことが重要です。
給与が減額される可能性を考慮し、介護休暇の利用を検討する必要があります。
介護休暇と介護休業の違いを比較
介護休暇と混同されやすい制度に「介護休業」があります。
これらはどちらも家族の介護のための制度ですが、その性質や給与への影響は大きく異なります。
以下の表で、その主な違いを比較してみましょう。
項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
---|---|---|
取得日数 | 対象家族1人につき年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで(時間単位での取得も可能)。 | 対象家族1人につき、通算して最大93日間まで取得可能(最大3回まで分割取得可)。 |
給与の扱い | 法律上の規定はなく、各企業の就業規則による(無給が多い)。 | 会社から給与の支払いは原則なし。ただし、雇用保険から「介護休業給付金」が支給される(賃金の約67%)。 |
目的 | 通院の付き添いや、介護サービスの手配など、比較的短期間で必要な介護に対応。 | 病気や怪我などで、2週間以上にわたり常時介護が必要な家族を、まとまった期間介護するため。 |
給付金の有無 | なし。 | あり(介護休業給付金)。 |
このように、介護休暇は短期間の対応、介護休業は長期間の介護に対応する制度であり、給付金の有無も大きな違いです。
特に、介護休業は雇用保険から「介護休業給付金」が支給されるため、休業中の収入を一定程度補償してくれる制度として理解しておきましょう。
自身の状況に合わせて、どちらの制度が適切かを判断することが大切です。
介護休暇中の月給・減給の仕組みと計算方法
無給の場合の月給減額の仕組み
介護休暇を無給で取得する場合、具体的にどのように月給が減額されるのか理解しておくことが重要です。
参考情報にもある通り、無給の介護休暇は「欠勤扱い」となり、その日数や時間に応じて給与が減額されます。
これは、日割り計算や時間割り計算によって、本来支払われるべき給与から差し引かれる仕組みです。
例えば、月給制で所定労働日数が20日の会社で、1日介護休暇を取得した場合を考えてみましょう。
月給が30万円であれば、1日あたりの給与額は「30万円 ÷ 20日 = 1万5千円」となります。
この1万5千円が月給から減額されることになります。
時間単位で取得した場合も同様に、1時間あたりの賃金を計算して減額されます。
多くの企業の就業規則には、欠勤時の給与控除に関する詳細が記載されています。
給与計算は複雑になることもありますので、不明な点があれば必ず人事部や給与担当者に確認することをおすすめします。
減額の幅を事前に把握することで、家計への影響を予測し、対策を立てることができます。
企業が一部有給とする場合の具体例
介護休暇が無給が原則とされていますが、一部の企業では独自の福利厚生として、介護休暇の一部を有給扱いとするケースもあります。
これは、従業員の仕事と介護の両立を支援するための、企業独自の配慮と言えるでしょう。
例えば、年間の介護休暇5日間のうち、最初の2日間は有給扱いとし、残りの3日間は無給とする、といった規定が考えられます。
また、短時間勤務制度と組み合わせて、介護のために所定労働時間を短縮した場合、その短縮分の時間に対して一部の給与を補償する制度を設けている企業もあります。
このような制度は、従業員にとって経済的な負担を軽減し、より安心して介護に取り組める環境を提供します。
しかし、こうした企業独自の制度は、全ての企業に存在するわけではありません。
そのため、介護休暇を取得する前には、必ず自社の就業規則を詳細に確認し、どのような制度が利用できるのか、給与の扱いはどうなるのかを把握しておくことが極めて重要です。
不明な点があれば、遠慮なく会社の担当者に問い合わせてみましょう。
給与減額が社会保険料に与える影響
介護休暇による給与減額は、単に手取りが減るだけでなく、社会保険料にも影響を及ぼす可能性があります。
社会保険料(健康保険、厚生年金保険)は、毎月の給与額に応じて決定される「標準報酬月額」に基づいて計算されます。
給与が一時的に大きく減額された場合、標準報酬月額の見直しが行われ、結果として社会保険料の負担額が減少することがあります。
ただし、介護休暇のような一時的な給与減額の場合、すぐに標準報酬月額が変更されるわけではありません。
通常、標準報酬月額の変更は年に一度の定時決定や、大幅な給与変動があった際の随時改定によって行われます。
もし長期間にわたり介護休業を取得し、給与が大きく減少するような場合は、標準報酬月額が下がり、将来の年金額にも影響が出る可能性があります。
一方、雇用保険料も給与額に応じて変動するため、給与が減れば雇用保険料も減少します。
これらの社会保険料の変動は、一時的には家計の負担を軽減するかもしれませんが、将来の給付(年金など)に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
特に長期にわたる介護の場合は、社会保険事務所や会社の担当部署に相談し、影響を理解しておくことが賢明です。
介護休暇が賞与(ボーナス)に与える影響
賞与算定期間と介護休暇期間の関係
賞与(ボーナス)は、一般的に企業の業績や個人の勤務実績、評価に基づいて支給されます。
多くの企業では、賞与の算定対象期間が定められており、その期間中の勤怠状況や業務への貢献度が賞与額に影響を与えます。
介護休暇を取得した場合、この算定期間中に欠勤扱いとなる日数が生じるため、賞与額に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、夏のボーナスが1月~6月の期間を評価対象としている場合、その期間中に介護休暇を取得し欠勤扱いとなれば、勤務日数が減少し、評価が下がる要因となることがあります。
賞与の支給条件や計算方法は企業によって大きく異なるため、就業規則や賃金規程に目を通し、自身の勤怠がどのように賞与に反映されるのかを事前に確認することが重要です。
ただし、全ての介護休暇が自動的に賞与を減額するわけではありません。
企業によっては、一定の期間内であれば欠勤とみなさない、あるいは評価に影響させないといった配慮をしている場合もあります。
しかし、これは企業の裁量によるため、「自分の会社はどうなっているのか」を具体的に確認することが最も確実な方法です。
介護休暇による賞与額への影響の可能性
介護休暇が賞与額に影響を与える具体的なメカニズムはいくつか考えられます。
まず、多くの企業では、賞与計算において「欠勤控除」の規定を設けています。
介護休暇が無給の欠勤扱いとなる場合、この控除の対象となり、賞与額が直接的に減額される可能性があります。
次に、個人の評価制度への影響です。
賞与は個人の業績評価に基づいて支給されることが多いため、介護休暇によって勤務日数が減り、目標達成への貢献度が低いと判断される場合、評価が下がり、結果として賞与額が減少することが考えられます。
特に、チームでの業務や締め切りがあるプロジェクトに携わっている場合、欠勤が業務に与える影響は無視できません。
しかし、企業側も従業員の介護負担を理解し、その影響を最小限に抑えるような制度設計をしているケースもあります。
例えば、欠勤日数が一定以下であれば賞与算定上の不利益が生じない、あるいは介護休暇取得者を対象とした評価の調整を行う、といった仕組みです。
このような状況は、就業規則や人事制度を読み解くことで把握できます。
賞与算定における「欠勤扱い」と「休職扱い」の違い
賞与への影響を考える上で、「欠勤扱い」と「休職扱い」の違いを理解しておくことは非常に重要です。
介護休暇は一般的に短期間の「欠勤扱い」となることが多いですが、介護休業は「休職扱い」となります。
これらの扱いの違いが、賞与の支給に大きな影響を及ぼします。
欠勤扱いの場合、通常は欠勤日数に応じた給与の減額や、賞与算定期間における勤務日数の減少が考慮され、賞与額が調整されます。
しかし、基本的に支給対象から外れるわけではありません。
例えば、数日の介護休暇であれば、賞与への影響は軽微であるか、全く影響しない場合もあります。
一方で、休職扱いとなる介護休業の場合は、賞与の支給対象期間中に休職期間が含まれると、賞与自体が支給されない、あるいは大幅に減額される規定が設けられている企業が多数です。
休職は「労働義務が免除される期間」であるため、その期間中の勤務実績がないと判断されるためです。
長期的な介護を検討する際には、この休職と賞与の関係を特に注意して確認しておく必要があります。
無給期間や給付金、税金との関係を解説
介護休業給付金の支給条件と計算方法
介護休暇は原則無給ですが、長期間にわたる介護が必要な場合に取得できる「介護休業」では、雇用保険から「介護休業給付金」が支給され、休業中の収入を補填する重要な役割を果たします。
この給付金は、休業開始前の賃金の67%が補償されるものです。
しかし、受給するにはいくつかの条件を満たす必要があります。
受給資格の主な条件は以下の通りです。
- 雇用保険の被保険者であること。
- 介護休業を開始した日より前の2年間に、雇用保険に加入している期間が12ヶ月以上あること。
- 介護休業中に働いた日数が月に10日以下であること。
- 介護休業中の賃金が、休業前の賃金の80%未満であること。
これらの条件を満たすことで、給付金を受け取ることが可能になります。
給付額の計算方法は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」となります。
例えば、休業前の賃金日額が1万円であれば、1日あたり6,700円が支給されることになります。
この給付金は、介護による経済的負担を軽減し、介護離職を防ぐ上で非常に重要な制度です。
介護休暇と異なり、介護休業の期間にはこの給付金が適用される点を理解しておきましょう。
介護休業給付金と税金の関係
介護休業給付金は、休業中の経済的な支えとなるだけでなく、税制上の優遇措置がある点も大きなメリットです。
この給付金は、所得税法上「非課税所得」とされており、所得税や住民税の課税対象にはなりません。
つまり、給付金として受け取った金額に対して、税金が一切かからないということです。
通常の給与所得とは異なり、この給付金は所得とはみなされないため、確定申告の必要もありません。
これにより、手取りの金額を最大限に確保できるため、休業中の家計にとって非常に助かる制度と言えるでしょう。
非課税であるという特性は、介護休業中の経済的な負担をさらに軽減することに繋がります。
ただし、所得税や住民税はかからなくても、後述するように社会保険料や住民税の支払いは通常通り発生します。
給付金は非課税というメリットはありますが、これだけで全ての費用を賄えるわけではないため、事前の資金計画は引き続き重要となります。
非課税所得であるという点をしっかりと理解し、適切に制度を活用しましょう。
無給期間中の社会保険料・住民税の支払いについて
介護休暇や介護休業で給与が減少したり、給付金を受け取ったりする期間中であっても、一部の公的な負担は継続して発生します。
特に注意が必要なのが、社会保険料と住民税の支払い義務です。
介護休業給付金は非課税ですが、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は原則として支払いを続ける必要があります。
社会保険料は、給与が減額された場合でも、その前の標準報酬月額に基づいて徴収されることがあります。
ただし、長期にわたる休業で給与が大幅に減少した場合、一定の条件を満たせば、社会保険料が免除される制度もあります(例えば、育児休業中の社会保険料免除のような制度)。
介護休業においても、健康保険組合によっては独自の免除制度を設けている場合があるため、加入している健康保険組合に確認してみると良いでしょう。
また、住民税は前年の所得に対して課税されるため、介護休暇や介護休業で現在の収入が減っても、支払い義務は変わりません。
給与から天引きされている場合は、自分で納付する必要が生じることもあります。
無給期間中もこれらの支払いが発生することを念頭に置き、事前に資金計画を立てておくことが、経済的な不安を軽減するために非常に重要となります。
介護休暇取得前に知っておきたいこと
自社の就業規則と福利厚生の確認
介護休暇や介護休業を検討する上で、最も最初にすべきことは、自社の就業規則と福利厚生制度を徹底的に確認することです。
参考情報にもある通り、介護休暇中の給与の取り扱いは法律で明確に定められておらず、企業ごとの就業規則に委ねられています。
そのため、給与が有給となるのか、無給となるのか、あるいは一部補償があるのかは、会社によって大きく異なります。
また、申請手続きの方法や必要な書類、申請期限なども就業規則に記載されています。
これらのルールを把握せずに申請すると、制度を利用できなかったり、給付金を受け取れなかったりするリスクがあります。
さらに、企業によっては、法定の制度に加えて、独自の介護支援制度や相談窓口を設けている場合もありますので、そうした隠れた福利厚生がないかどうかも確認してみましょう。
就業規則は、社内ポータルサイトや人事部で閲覧できることが多いです。
不明な点があれば、必ず人事担当者や上司に相談し、疑問を解消しておくことが重要です。
事前にしっかりと準備することで、スムーズに介護と仕事の両立を図ることができます。
2025年法改正と制度の最新情報
介護を取り巻く環境や法制度は常に変化しており、最新情報を把握しておくことが重要です。
参考情報にも記載されているように、2025年4月1日からは、介護休暇の対象者から「入社6ヶ月未満の労働者」を除外する要件が廃止されます。
これは、より多くの労働者が介護休暇を取得しやすくなるための重要な改正です。
これまでの制度では、入社して間もない社員は介護休暇を利用できないケースがありましたが、法改正によって、入社時期に関わらず介護が必要な状況であれば、誰もがこの制度を利用できるようになります。
これにより、新卒や中途採用で入社してすぐに介護が必要になった場合でも、安心して制度を活用できる環境が整えられます。
このように、制度は時代に合わせて見直されていくため、常に厚生労働省のウェブサイトや関連ニュースなどで最新情報を確認する習慣を持つことが推奨されます。
法改正によって利用条件が緩和されたり、新たな支援策が導入されたりする可能性もありますので、定期的な情報収集を心がけましょう。
仕事と介護の両立支援と相談窓口
介護は長期にわたることが多く、仕事との両立は精神的にも肉体的にも大きな負担となる可能性があります。
介護離職を防ぎ、安心して働き続けるためには、利用できる支援制度や相談窓口を積極的に活用することが重要です。
まず、社内の人事担当者や産業医、社内相談窓口に相談してみましょう。
社外にも様々な相談窓口があります。
例えば、地域の地域包括支援センターでは、介護に関する総合的な相談に応じ、適切な介護サービスの情報提供やケアプラン作成の支援を行っています。
また、各自治体の福祉窓口や、厚生労働省が運営する「仕事と介護の両立支援」に関する情報サイトなども参考になります。
一人で抱え込まず、早い段階で専門家や信頼できる人に相談することで、より良い介護プランを立て、仕事と介護のバランスを見つけることができるでしょう。
公的な支援やサービスを賢く利用し、自身の負担を軽減しながら、大切な家族の介護を続けるための道を探ることが、何よりも大切です。
まとめ
よくある質問
Q: 介護休暇を取得しても、有給休暇は通常通り使えますか?
A: はい、介護休暇と有給休暇は別の制度ですので、介護休暇を取得しても有給休暇の権利は失われません。ご自身の状況に合わせて、有給休暇と組み合わせて利用することも可能です。
Q: 介護休暇中の月給は、具体的にどのくらい減額されますか?
A: 介護休暇中の月給は、企業によって就業規則で定められていることが一般的です。無給となる場合や、一部減給となる場合があります。減額の割合や計算方法は、企業ごとに異なります。
Q: 介護休暇を取得すると、賞与(ボーナス)はどうなりますか?
A: 賞与は、一般的に労働の対価として支払われるため、介護休暇で労働しなかった期間があると、その期間に応じて減額されることがあります。減額割合は企業の規定によります。
Q: 介護休暇中に給付金などはありますか?
A: 介護休業給付金という制度がありますが、これは「介護休業」を取得した場合に、一定の条件を満たせば雇用保険から支給されるものです。介護休暇とは制度が異なりますのでご注意ください。
Q: 介護休暇中の税金はどうなりますか?
A: 給与から源泉徴収される税金は、所得に応じて計算されます。介護休暇で収入が減額された場合、その年の所得税額も減額されます。源泉徴収票には、実際の収入額が反映されます。