介護休暇中の賃金はどうなる?

民間企業の場合:原則として無給

家族の介護のために介護休暇や介護休業を取得する際、その期間中の賃金がどうなるかは多くの人が気になる点でしょう。民間企業の場合、介護休暇(年5日または10日)については、法律上は無給とされており、企業によっては有給とするか無給とするかは就業規則の定めによります。多くの企業では無給とされているのが現状です。

一方、介護休業(最長93日)は、法律の規定により原則として無給となります。この無給期間中の労働者の生活を支援するため、雇用保険から「介護休業給付金」が支給される制度があります。しかし、給付金は賃金の全額をカバーするものではないため、休業期間中の収入は大きく減少することを覚悟しておく必要があります。

公務員の場合:給与は減少する

公務員の場合も、介護休暇や介護休業中の賃金については、民間企業と同様に原則として給与が全額支給されるわけではありません。公務員には通算6ヶ月まで取得可能な介護休暇制度がありますが、勤務しない時間については給与が減少します。国家公務員と地方公務員では、制度の根幹は同じであるものの、詳細な規定は所属する自治体や機関によって異なる場合があります。

給与が減少する期間に対する経済的な支援として、公務員独自の「介護休業手当金」が共済組合から支給される制度が存在します。これにより、一定の範囲で減少した給与の一部が補填されますが、やはり完全に元通りになるわけではないため、事前の確認と計画が重要です。

賃金がない期間の生活費の考え方

介護休暇・休業中に賃金が減少したり、全く支給されなくなったりする場合、どのように生活費を賄うかを事前に検討しておくことが不可欠です。民間企業に勤める方は介護休業給付金を、公務員の方は介護休業手当金を主要な収入源として計画することになりますが、これらは賃金の約67%であり、全額が補填されるわけではありません

給付金・手当金では賄いきれない分は、貯蓄を取り崩したり、配偶者の収入でカバーしたりするなど、家計全体での調整が必要になります。長期にわたる介護の場合は特に、綿密な資金計画を立て、必要に応じて家族や専門家とも相談し、経済的な不安を少しでも軽減できるように準備を進めましょう。

介護休暇の手当・手当金について

民間企業の「介護休業給付金」とは

民間企業で働く方が介護休業を取得する際、経済的な支えとなるのが雇用保険から支給される「介護休業給付金」です。この給付金は、家族の介護のために仕事を休む労働者の生活を支援することを目的としています。給付額は、休業開始時賃金の67%が支給され、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて受給することが可能です。

受給にはいくつかの条件があります。まず、雇用保険の被保険者であること。休業開始日の前2年間に、賃金支払いの基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上あることなどが挙げられます。休業中に支払われた賃金が休業開始時の賃金の80%未満であることも条件となります。申請手続きは、原則として事業主を通じてハローワークへ行います。

公務員独自の「介護休業手当金」

公務員には、民間企業の介護休業給付金とは別に、国家公務員共済組合などから「介護休業手当金」が支給される制度があります。これは、介護休暇中に取得した休暇を合計して通算66日まで、給与の標準報酬日額の約67%が支給されるものです。地方職員共済組合などでも、同様の制度が設けられています。

支給額には上限が設けられており、例えば令和6年8月1日からは1日あたり15,778円が上限となっています。この手当金は、公務員が家族の介護と仕事を両立させる上で、非常に重要な経済的支援となります。詳細は所属する共済組合の規定を確認することが必須です。

手当金受給における注意点

介護休業給付金や介護休業手当金を受給する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、休業中に給与が支払われる場合、その金額によっては給付金や手当金の支給額が制限されたり、支給されなくなったりすることがあります。具体的には、休業開始時の賃金の80%以上が支払われると給付対象外となります。

また、支給日数や回数には上限が設定されており、それを超える期間の介護休業には給付金が支給されません。有期雇用労働者の場合、契約期間に関する追加条件があるため、注意が必要です。申請手続きは事業主や共済組合を経由するため、早めに相談し、必要な書類を漏れなく提出することが重要です。

公務員の介護休暇とその手当

国家公務員・地方公務員の介護休暇制度

公務員における介護休暇制度は、国家公務員と地方公務員とで基本的な枠組みは共通しています。国家公務員には「国家公務員の育児休業等に関する法律」に基づき、地方公務員には各自治体の条例に基づき、それぞれ介護休暇や介護休業の制度が設けられています。いずれも対象家族の介護のために、一定期間仕事を休むことを認めるものです。

介護休暇は通算6ヶ月まで取得可能であり、育児休業等に関する法律の改正により、育児休業に関する取得回数制限の緩和など、より柔軟な働き方を支援する動きが進んでいます。これに伴い、介護休業に関する取得要件の緩和も進められており、公務員が介護と仕事を両立しやすい環境が整備されつつあります。

公務員共済組合からの手当金詳細

公務員が介護休業を取得する際の経済的支援として、国家公務員共済組合や地方職員共済組合から「介護休業手当金」が支給されます。この手当金は、介護休業期間中に1日単位で取得した休暇を合計して66日まで、給与の標準報酬日額の約67%が支給される制度です。

支給額には上限があり、例えば国家公務員共済組合の場合、令和6年8月1日からは1日あたり15,778円が上限とされています。この手当金は、介護による給与減少の一部を補填し、公務員の生活を支える重要な役割を果たします。具体的な支給条件や手続きについては、ご自身の所属する共済組合のウェブサイトや担当窓口で確認してください。

公務員制度における賃金減額と補填

公務員の介護休暇中は、勤務しない時間に応じて給与が減少します。これは、介護休業期間中は労働の提供がないため、その分の賃金が支払われないという原則に基づいています。しかし、この賃金減額による経済的負担を軽減するため、前述の「介護休業手当金」が支給されることで、減額分の一部が補填される仕組みとなっています。

例えば、給与の約67%が手当金として支給されるため、残りの約33%は自己負担となる計算です。完全に減額分がカバーされるわけではないため、公務員も休業期間中の家計計画をしっかり立てる必要があります。事前に人事担当部署や共済組合に相談し、制度を十分に理解した上で介護休暇・休業を取得することが大切です。

介護休暇と社会保険料の扱い

原則として社会保険料は免除されない

介護休暇や介護休業期間中、多くの人が気にすることの一つに社会保険料の扱があります。残念ながら、民間企業・公務員を問わず、介護休業期間中の社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)は原則として免除されません。育児休業中の社会保険料免除とは異なり、介護休業の場合は休業期間中も支払い義務が生じます。

これは、社会保険の制度が、被保険者の資格を維持し、将来の年金受給資格や医療保険の適用を保証するためのものであるためです。そのため、給与が減少または無給であっても、社会保険料の負担は継続することになります。休業中は賃金からの天引きができないため、会社や自治体から直接請求されるか、事前に支払い方法を確認しておく必要があります。

介護休業給付金・手当金の税務上の扱い

介護休業給付金(民間企業)や介護休業手当金(公務員)は、所得税・復興特別所得税については非課税とされており、差し引かれることはありません。これは、これらの給付金が、労働者の生活保障を目的とした国の制度であるためです。したがって、確定申告の際に給付金を所得として計上する必要はありません。

しかし、住民税に関しては扱いが異なります。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、介護休業期間中も前年の所得に対する住民税の支払いが必要です。ただし、介護休業給付金・手当金自体は次年度の住民税の算定収入には含まれないため、翌年度の住民税は減額される可能性があります。税務上の影響についても、事前に確認しておくと安心です。

社会保険料支払いのための準備と確認

介護休業中の社会保険料免除がないため、この期間の支払いのための準備は非常に重要です。特に、給与が減少または無給となる期間が長い場合、毎月の社会保険料の負担が家計を圧迫する可能性があります。事前に十分な貯蓄を確保しておくか、家族と協力して資金計画を立てておくことが求められます。

また、勤務先や共済組合に、休業期間中の社会保険料の支払い方法や手続きについて必ず確認しましょう。会社によっては、一時的に立て替えてくれるケースや、給与天引きの代わりに口座振替や振込での支払いが必要となる場合があります。不明な点があれば、必ず担当部署に問い合わせ、適切な手続きを行うようにしてください。

介護休暇は査定や退職金に影響する?

査定(人事評価)への影響

介護休暇や介護休業の取得が、人事評価(査定)に直接的に不利益をもたらすことは、法律上禁止されています。しかし、実際の人事評価において、休業期間中の業務実績がないため、同僚と比較して昇進や昇給の機会に影響が出る可能性はゼロではありません。評価制度によっては、業務貢献度や目標達成度が重視されるため、休業期間が長いほど不利に働くことも考えられます。

このような懸念を軽減するためには、休業前に上司や人事担当者と十分に話し合い、今後の評価方針や目標設定について確認することが重要です。また、復職後には介護と両立しながらも積極的に業務に取り組み、自身の貢献度を示す努力も求められます。企業側も、介護と仕事の両立支援制度の活用を評価に反映するよう努めることが望ましいでしょう。

退職金算定への影響

退職金の算定方法は、勤続年数、退職時の基本給、役職など、企業の退職金規程によって大きく異なります。介護休業期間中の給与が減少したり、無給であったりする場合、それが退職金算定に影響を及ぼす可能性があります。特に、退職金が「基本給連動型」である場合、休業期間中の基本給が低くなることで、退職金総額が減少する恐れがあります。

また、勤続年数に休業期間が含まれるかどうかも規程によって異なるため、事前に勤務先の退職金規程を確認することが非常に重要です。不明な点があれば、人事部や労務担当者に詳細を問い合わせ、自身の状況が退職金にどのように影響するかを把握しておくことをお勧めします。

不利益取扱いの禁止と相談窓口

育児介護休業法では、介護休暇・休業を理由とした労働者への不利益な取り扱いを明確に禁止しています。これは、労働者が安心して介護と仕事を両立できる環境を保障するための重要な規定です。具体的には、解雇、降格、減給、不当な配置転換などが不利益取扱いに該当します。

もし、介護休暇・休業の取得を理由に不利益な扱いを受けたと感じた場合は、まずは勤務先の人事部や労働組合に相談しましょう。それでも解決しない場合は、厚生労働省の「労働局」にある「総合労働相談コーナー」が相談窓口となります。専門家が無料で相談に応じてくれるため、一人で悩まずに積極的に活用することが大切です。