2024年から2025年にかけて、日本の育児・介護休業法は、仕事と育児の両立をさらに支援するために段階的に改正が進んでいます。
これにより、育児休業の取得はより柔軟になり、多くの家庭にとって大きなメリットをもたらすでしょう。

本記事では、最新のルールに基づいた育児休業の基本的な仕組みから、具体的な取得条件、申請方法、そして知っておきたい給付金までを詳しく解説します。
改正のポイントを押さえ、安心して育児休業を取得するための準備を進めましょう。

育児休業制度の基本:法定休暇と労働基準法

育児休業とは?その法的根拠

育児休業は、1歳に満たない子を養育するために、男女問わず取得できる法定の休業制度です。
これは育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づいて定められており、労働者の権利として保障されています。
原則として子が1歳になるまで休業できますが、保育所に入所できないなど特定の要件を満たせば、最長で子が2歳になるまで延長することが可能です。

この制度の目的は、育児を行う労働者が、子どもの健やかな成長を支えつつ、自身のキャリアを中断することなく継続できるよう支援することにあります。
企業は、労働者からの育児休業の申し出を原則として拒否することはできません。
また、育児休業を取得したことを理由に、不利益な取り扱いをすることも禁じられています。
育児休業は、働く人たちが安心して子育てに取り組むための、社会全体で支える重要な仕組みと言えるでしょう。

2024年~2025年の主要な法改正ポイント

育児・介護休業法は、時代の変化に合わせて柔軟な育児支援を実現するために、継続的に改正が行われています。
特に2024年~2025年にかけては、以下の点が注目すべき改正ポイントです。

  • 育児休業の分割取得の柔軟化:
    これまで原則として分割取得ができなかった育児休業が、2回まで分割して取得できるようになりました。
    さらに、産後パパ育休(出生時育児休業)と合わせれば、子が1歳になるまでに最大4回まで分割取得が可能となり、夫婦で協力しながらより柔軟な働き方が選べるようになります。
  • 子の看護等休暇の見直し:
    名称が「子の看護等休暇」に変更され、対象となる子の範囲が小学校3年生修了までに拡大されます(2025年4月1日施行)。
    また、感染症による学級閉鎖や、入園・入学式、卒園式なども取得事由に追加され、より多様なケースに対応できるようになります。
  • 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大:
    3歳未満の子を養育する労働者に加え、小学校就学前の子を養育する労働者も、請求により残業免除を受けられるようになります(2025年4月1日施行)。
    これにより、幼い子どもを持つ家庭の負担軽減が期待されます。
  • 育児休業取得状況の公表義務拡大:
    これまで従業員数1,000人超の企業に義務付けられていた育児休業取得状況の公表が、2025年4月1日からは従業員数300人超の企業にも義務付けられます。
    これにより、より多くの企業で男性育休の取得促進や、育児支援制度の透明化が進むことが期待されます。
  • テレワーク等の導入推進:
    3歳未満の子を養育する労働者に対して、短時間勤務制度の代替措置としてテレワーク等を導入することが、事業主の努力義務となります(2025年4月1日施行)。
    これにより、育児中の従業員がより柔軟な働き方を選択できるよう、企業側の環境整備が促されます。

これらの改正は、働く人々が育児と仕事を両立しやすい社会を目指す上で、重要な一歩となるでしょう。
特に、夫婦での育児休業の取得を促進し、男性の育児参加を後押しする内容が多く盛り込まれています。

男性育休取得率の動向と背景

近年、男性の育児休業取得率は大きく上昇傾向にあります。
厚生労働省の発表によると、2023年度(令和5年度)の女性の育児休業取得率は84.1%を維持しています。
一方で、男性の育児休業取得率は、2023年度の30.1%から2024年度には40.5%と過去最高を記録しました。
これは前年度と比較して大幅な伸びであり、男性の育児参加に対する意識の高まりが伺えます。

しかし、女性の取得率と比較すると、依然として大きな差があるのが現状です。
政府は「2025年に男性育休取得率50%」という目標を掲げており、この目標達成に向けてさらなる取り組みが期待されます。
男性育休取得率の上昇の背景には、2022年10月に創設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」の導入や、育児休業の分割取得が可能になったことなど、法制度の整備が大きく影響しています。

また、企業の意識改革や、育児は夫婦で分担するという社会全体の価値観の変化も、男性の育児休業取得を後押ししている要因です。
多くの企業で育児休業の取得が推奨されるようになり、男性が育児休業を取得しやすい環境が整備されつつあります。
今後も、男性の育児休業がより当たり前の選択肢となるよう、制度面と社会意識の両面からの取り組みが重要となるでしょう。

育児休業を取得するための要件と注意点

取得の基本的な条件と対象期間

育児休業を取得するための基本的な条件は、「1歳に満たない子を養育する労働者」であることです。
この制度は、男女問わず、正社員や一部の有期雇用労働者も対象となります。
休業期間は原則として子が1歳になるまでですが、特定の事情がある場合は延長が認められています。

延長できるケースとしては、以下のようなものがあります。
子が1歳になる時点で、保育園に入所を希望しているにもかかわらず入所できない場合や、配偶者が病気・負傷・死亡などで子の養育が困難になった場合などです。
これらの要件を満たせば、最長で子が1歳6か月、さらに最長で2歳になるまで育児休業を延長することが可能です。
延長を希望する際には、所定の期日までに事業主への申し出が必要となりますので、会社の担当部署に早めに相談しましょう。

また、2022年4月1日以降、これまで求められていた「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という要件が原則撤廃されました。
これにより、入社から間もない労働者や有期雇用労働者も、育児休業を取得しやすくなりました。
ただし、後述する労使協定による例外があるため、自身の雇用形態と会社の規定を必ず確認することが重要です。

分割取得の活用と柔軟な働き方

2022年10月1日以降の法改正により、育児休業の取得が格段に柔軟になりました。
以前は原則として一度取得したら途中で中断して再取得することはできませんでしたが、現在では育児休業を2回まで分割して取得できるようになりました。
これは、夫婦が交代で育児休業を取得したり、育児の山場に合わせて休業期間を調整したりするなど、家庭の状況に合わせた柔軟な選択を可能にするものです。

さらに、「産後パパ育休(出生時育児休業)」と組み合わせることで、子が1歳になるまでに最大4回まで育児休業を取得することが可能になります。
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる休業で、こちらも2回に分割して取得できます。
例えば、夫が産後パパ育休を2回取得し、その後通常の育児休業を2回分割取得するといったパターンも可能です。

この柔軟な分割取得は、夫婦で育児を分担する新しいライフスタイルを後押しするものです。
妻の産後の回復期に夫が育児休業を取得し、その後妻が復職した後に夫が再度育児休業を取得するなど、それぞれのキャリアプランや家庭の状況に合わせて最適な育児期間を設計できるようになりました。
計画的に分割取得を活用することで、夫婦ともに安心して育児と仕事の両立を図ることができるでしょう。

子の看護等休暇の拡充と利用シーン

子の看護休暇は、病気やけがをした子どもの世話や、予防接種・健康診断を受けさせるために取得できる休暇です。
この制度は、2025年4月1日施行の法改正により、名称が「子の看護等休暇」に変更され、その内容が大幅に拡充されます。
最も大きな変更点は、対象となる子の範囲が「小学校就学の始期に達するまで」から「小学校3年生修了まで」に延長されることです。
これにより、より長くこの制度を利用できるようになり、子育て世帯にとって大きな安心材料となるでしょう。

さらに、取得事由も拡充され、これまで対象外だった感染症による学級閉鎖や、入園・入学式、卒園式などの学校行事も取得の対象となります。
例えば、子どもがインフルエンザで学級閉鎖になった際に、仕事を休んで子どもの面倒を見ることが可能になります。
また、子どもの大切な節目の行事に参加するために、休暇を取得しやすくなることは、親として非常に嬉しい変化です。

子の看護等休暇は、フルタイム労働者であれば、子が1人の場合は年間5日、子が2人以上の場合は年間10日まで取得可能です。
時間単位での取得も可能なため、子どもの急な発熱やちょっとした用事にも柔軟に対応できます。
この制度の拡充により、親が仕事と子育てを両立する上で直面する、多様な「もしも」の事態や大切なイベントに対応できるようになり、安心して働き続けられる環境がさらに整備されることになります。

有期雇用者でも取得可能?育児休業のもらえる条件

有期雇用労働者の取得条件の変更点

これまで有期雇用労働者が育児休業を取得するためには、「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という要件が必須でした。
しかし、2022年4月1日以降、この「勤続1年以上」の要件は原則として撤廃されました。
これにより、入社から1年未満の有期雇用労働者でも、育児休業を取得しやすくなり、雇用形態にかかわらず育児休業が利用できる労働者の範囲が大きく広がりました。

ただし、完全に無条件になったわけではありません。
現行の育児・介護休業法では、有期雇用労働者が育児休業を取得するための条件として、主に以下のいずれかを満たす必要があります。
一つは「子の1歳6か月到達日までに労働契約が満了しない」こと、もう一つは「労働契約の更新により、子が1歳6か月になるまでの間、引き続き雇用されることが見込まれる」ことです。
これらの条件は、休業取得中に契約期間が満了してしまい、休業期間が短縮される事態を避けるための措置と言えます。

この改正により、有期雇用労働者も安心して育児休業を検討できるようになりました。
しかし、個々の契約内容や更新の見込みは異なるため、育児休業を検討する際は、自身の労働契約書や就業規則をよく確認し、必要であれば勤務先の人事担当者や労働組合に相談することをお勧めします。
自身の状況が制度の対象となるか、事前に確認することが何よりも重要です。

労使協定による制限と確認ポイント

有期雇用労働者の育児休業取得条件が緩和された一方で、労使協定によって、育児休業の取得が制限されるケースも存在します。
具体的には、「雇用期間が1年未満の労働者については育児休業を認めない」といった内容の労使協定が企業で締結されている場合、有期雇用労働者は育児休業を取得できないことがあります。
これは、法改正によって「勤続1年以上」の要件は原則撤廃されたものの、労使協定によって別途定めがある場合はそれに従う、という例外規定が残っているためです。

そのため、有期雇用労働者が育児休業を検討する際には、自身の労働契約の内容だけでなく、勤務先の就業規則や、労働者と使用者との間で締結された労使協定の内容を必ず確認することが不可欠です。
これらの書類は、企業の担当部署(人事部など)に問い合わせれば閲覧できるはずです。
特に、契約更新の可能性が不明確な場合や、自身の状況が労使協定の適用範囲に該当するかどうか疑問がある場合は、早めに確認し、必要であれば会社側と協議することが大切です。

労使協定は、企業の実情に合わせて柔軟なルールを設けることを目的としていますが、それが労働者の権利を不当に制限するものであってはなりません。
もし、労使協定の内容が不当だと感じたり、育児休業の取得に関してトラブルが生じたりした場合は、労働局やハローワークなどの公的機関に相談することも一つの選択肢となります。
自身の権利を守るためにも、事前に情報を収集し、適切な行動をとることが重要です。

育児休業給付金の支給要件

育児休業を取得する期間中、労働者の所得を保障するために、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
この給付金は、休業中の生活を支える重要な支援制度です。
給付金を受給するためには、以下の主な要件を満たす必要があります。

  • 育児休業を取得し、雇用保険の被保険者であること。
  • 休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数11日以上ある月が12か月以上あること。
    (ただし、病気や負傷などやむを得ない理由がある場合は、それ以前の期間も算入できる場合があります)
  • 育児休業期間中、休業開始前の賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
  • 育児休業中に就業している日数が、各支給単位期間(原則1か月)ごとに10日以下であること。
    (10日を超える場合は、就業時間が80時間以下であること)

支給額は、休業開始時賃金日額の67%相当額(休業開始から180日経過後は50%相当額)が原則として支給されます。
この給付金は非課税であり、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)も免除されるため、手取り額は休業前の賃金に対して比較的高水準に保たれることになります。

さらに、2025年4月からは、「出生後休業支援給付金」が新たに創設される予定です。
これは、配偶者と協力して育児休業を取得した場合に、最大28日間は手取り額が10割相当になるという画期的な給付金です。
特に男性の育児休業取得を強力に後押しするものであり、夫婦で協力した育児参加を検討する上で非常に魅力的な制度となるでしょう。
これらの給付金を活用することで、経済的な不安を軽減し、安心して育児に専念できる環境が整います。

育児休業の申出書と手続き:遅延・早期終了の場合

育児休業の申請方法と必要書類

育児休業の申請は、原則として休業開始予定日の1か月前までに、書面で事業主(会社)に行う必要があります。
まずは勤務先の人事担当部署に連絡し、会社所定の申出書があるか確認しましょう。
多くの場合、会社が準備したフォーマットに必要事項を記入し、提出することになります。

育児休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)がハローワークを通じて行います。
初回申請時に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 雇用保険被保険者 育児休業開始時賃金月額証明書:
    これは休業開始前の賃金を証明する書類で、会社が作成します。
  • 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書:
    給付金の受給資格を確認し、初回給付金を申請するための書類です。
    これも会社が準備し、労働者が記入・捺印する部分もあります。
  • 母子手帳の写し:
    子の氏名、生年月日などが記載されたページが必要です。
  • 住民票など、世帯全員が記載された書類(会社が準備する場合があります):
    世帯構成を確認するために提出を求められることがあります。

これらの書類を会社経由でハローワークに提出することで、育児休業給付金の受給資格が確認され、給付が開始されます。
提出期限を厳守し、不明な点があれば必ず会社の担当者やハローワークに確認しましょう。

給付金申請の手順と注意すべき期限

育児休業給付金の申請は、初回申請と2回目以降の申請で手順が異なります。
初回申請は、育児休業開始日から約2か月後(支給単位期間の初日から4か月後の月末まで)に、前述の必要書類を添えて会社からハローワークへ提出されます。
この申請が受理されると、育児休業開始日から2か月ごとの期間(支給単位期間)について、給付金がまとめて支給される流れになります。

2回目以降の申請は、原則として2か月に一度、ハローワークへ支給申請を行います。
この際、会社が用意する申請書に、支給単位期間における就業日数、就業時間、支払われた賃金額などを正確に記載する必要があります。
給付金は原則として会社が従業員に代わって申請を行いますが、会社が手続きを行わない場合は、従業員本人が直接ハローワークに申請することも可能です。
その際は、会社の協力が必要となる書類もあるため、事前に会社との連携が重要です。

特に注意すべきは、申請期限です。
各支給単位期間について、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に申請書を提出する必要があります。
この期限を過ぎると、給付金が支給されなくなる可能性があるため、必ず期限内に手続きを完了させましょう。
手続きの流れや必要書類、具体的な期限については、勤務先の人事担当部署や管轄のハローワークに事前に確認し、計画的に準備を進めることが大切です。

取得期間の変更や早期終了時の対応

育児休業は、当初計画していた期間通りに終了するとは限りません。
子どもの成長や家庭の状況、あるいは会社の都合により、取得期間の変更(延長・短縮)や、予定よりも早く復職する「早期終了」が必要となる場合があります。
これらの変更が生じた場合、速やかに会社にその旨を連絡し、所定の手続きを行う必要があります。

育児休業期間を延長する場合は、延長後の休業期間開始日の1か月前までに会社に申し出ることが原則です。
延長には「保育所に入所できない」などの特定の要件が必要となるため、その証明書類(入所不承諾通知など)も併せて提出します。
会社を通じてハローワークにもその旨を届け出る必要があるため、早めの相談が重要です。

一方、育児休業を早期に終了し、復職する場合も、会社への連絡は必須です。
会社は復職に向けての準備(業務の引き継ぎ、席の確保など)が必要となるため、遅くとも復職希望日の2週間前までには連絡を入れるのが一般的です。
育児休業給付金を受けていた場合は、早期終了に伴い給付金の支給も終了するため、その旨をハローワークに届け出る必要があります。
届け出が遅れると、過払いが発生し、後から返還を求められる可能性もあるため注意が必要です。

いずれの場合も、変更が生じたら速やかに勤務先の人事担当者と連絡を取り、必要な手続きを確認し、遺漏なく対応を進めることが大切です。
特に給付金に関わる手続きは、期日が定められているため、注意深く対応しましょう。
不明な点があれば、会社の担当部署やハローワークに相談し、適切なアドバイスを求めることをお勧めします。

知っておきたい!育児休業に関する労使協定とQ&A

企業に求められる労使協定の重要性

育児休業制度は、育児・介護休業法によって基本的な枠組みが定められていますが、企業によっては、労使協定を締結することで、法で定められた最低限の基準を超えた、独自のルールや制度を設けることがあります。
労使協定とは、労働者側の代表と使用者(企業)側とが合意して締結する書面のことです。
これにより、例えば有期雇用労働者の育児休業取得条件の例外規定や、子の看護等休暇の時間単位取得の具体的な運用方法などが定められることがあります。

労使協定は、企業の事業内容や規模、従業員のニーズに合わせて、より柔軟で働きやすい環境を整備するために活用されます。
例えば、法定では育児休業の取得が難しいケースでも、労使協定によって取得を認めたり、法定を上回る手当を支給したりするなど、従業員にとって有利な条件を定めることも可能です。
一方で、前述のように「雇用期間が1年未満の有期雇用労働者は育児休業の対象としない」といった、法で認められた範囲内での制限が設けられることもあります。

そのため、育児休業を検討する労働者は、自身の会社の就業規則だけでなく、労使協定の内容についても確認しておくことが非常に重要です。
不明な点があれば、人事担当者や労働組合の窓口に問い合わせて、具体的な規定を把握しておくことで、安心して育児休業の計画を立てることができます。
労使協定は、企業と従業員が共に協力し、より良い職場環境を作り上げていくための重要なツールと言えるでしょう。

取得状況の公表義務と企業文化の変化

2025年4月1日からは、従業員数300人を超える企業に対し、男性の育児休業取得状況の公表が義務付けられます。
これまでは従業員数1,000人超の企業が対象でしたが、対象企業が拡大されることで、より多くの企業で男性の育児休業取得促進への意識が高まることが期待されます。
この公表義務は、企業が男性育休の取得促進に真剣に取り組むインセンティブとなり、育児支援制度の透明性を高める効果があります。

企業が自社の育児休業取得状況を公表することは、企業イメージの向上にも繋がり、優秀な人材の確保にも寄与するでしょう。
働き方改革やダイバーシティ推進の観点からも、育児と仕事の両立支援は企業の重要な経営戦略の一つと位置づけられています。
公表義務の拡大は、単に数字を開示するだけでなく、企業文化全体が「育児休業を取得しやすい」方向へと変化するきっかけとなる可能性を秘めています。

男性の育児休業取得率が向上することは、個々の家庭において育児負担の偏りを解消し、女性のキャリア継続を支援する上でも非常に重要です。
また、男性自身が育児に参加することで、ワークライフバランスの充実や、子育てを通じて得られる経験が仕事にも良い影響を与えることも期待されます。
この公表義務を通じて、社会全体で育児と仕事の両立を当たり前とする文化が醸成されることが望まれます。

よくある質問とトラブルシューティング

育児休業に関する疑問やトラブルは多岐にわたります。ここでは、よくある質問とその対応について解説します。

Q1: 育児休業中に会社から解雇されることはありますか?
A1: 育児休業の取得を理由とする解雇は、育児・介護休業法により禁止されています。
ただし、育児休業とは無関係の、例えば会社が倒産するなど正当な解雇事由がある場合は例外です。
不当な解雇と感じたら、労働局や弁護士に相談しましょう。

Q2: 育児休業中の社会保険料はどうなりますか?
A2: 育児休業中は、申請を行うことで、健康保険料と厚生年金保険料が事業主・労働者ともに免除されます。
この免除期間も、将来の年金額には影響しません。
手続きは会社が行うのが一般的ですが、念のため確認しましょう。

Q3: 会社が育児休業の取得を拒否した場合、どうすれば良いですか?
A3: 育児休業の申し出は原則として拒否できません。
拒否された場合は、まず会社の担当部署と話し合い、それでも解決しない場合は、労働局の雇用環境・均等部(室)に相談することができます。
相談機関が問題解決のための助言や指導を行います。

Q4: 育児休業中の手当やボーナスは支給されますか?
A4: 育児休業中は、基本的に会社からの賃金(手当やボーナスを含む)は支払われないか、支払われても減額されることがほとんどです。
代わりに、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
会社の就業規則や賃金規程に定めがある場合もあるため、事前に確認が必要です。

育児休業制度は複雑な側面もあります。不明な点や疑問点があれば、厚生労働省のウェブサイトハローワーク、または各都道府県の労働局など、信頼できる情報源や専門機関に相談することが最も確実な解決策となります。
ご自身の状況に合わせて、適切なサポートを活用し、安心して育児に取り組んでください。