1. 育児休業中の収入はどうなる?保険料の免除について
    1. 育児休業給付金の基本と2025年改正
    2. 育児休業中の所得税・住民税の取り扱い
    3. 社会保険料の免除制度とそのメリット
  2. 育児休業中に給与や賞与・退職金はどうなる?
    1. 給与・賞与支給の有無と社会保険料の扱い
    2. 育児休業中の賞与にかかる社会保険料免除
    3. 退職金への影響と育児休業期間の考え方
  3. 育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除手続き
    1. 社会保険料免除の対象期間と条件
    2. 免除申請の具体的な流れと必要書類
    3. 免除中のメリットと将来の年金への影響
  4. 育児休業中の欠勤扱いや通勤手当、組合費について
    1. 欠勤扱いと育児休業期間の賃金・手当
    2. 通勤手当・その他諸手当の取り扱い
    3. 組合費などの控除の有無と確認事項
  5. 育児休業を賢く活用!節税の可能性や公務員のケース
    1. 育児休業給付金の非課税メリットと節税
    2. 公務員の育児休業制度と民間企業との違い
    3. 経済的な不安を解消するための計画術
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金)は免除されますか?
    2. Q: 育児休業中の給与は支払われますか?
    3. Q: 育児休業中の欠勤扱いや通勤手当はどうなりますか?
    4. Q: 妻が扶養に入っている場合、育児休業中の夫の収入はどうなりますか?
    5. Q: 育児休業は節税につながりますか?

育児休業中の収入はどうなる?保険料の免除について

育児休業は、お子さんの成長を見守る大切な時間ですが、収入面や経済的な不安を感じる方も少なくありません。ここでは、育児休業中の収入の柱となる給付金や、税金・社会保険料の取り扱いについて詳しく解説します。

育児休業給付金の基本と2025年改正

育児休業中の主な収入源となるのが「育児休業給付金」です。これは雇用保険から支給される手当で、育児休業開始から180日目までは休業開始前賃金の67%が、それ以降は50%が支給されます。この給付金は、育児休業中の生活を支える重要な柱となります。

特に注目すべきは、2025年4月1日からの変更です。両親ともに一定期間育児休業を取得した場合、「出生後休業支援給付金」が加算され、従来の育児休業給付金に13%が上乗せされます。これにより、合計で最大80%(手取りでは約10割相当)が最大28日間支給される予定です。これは、夫婦で育児休業を取得する家庭にとって、非常に大きな経済的支援となるでしょう。

給付金を受け取るためには、雇用保険の被保険者であり、育児休業開始前2年間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が通算して12か月以上あるなどの要件を満たす必要があります。上限額と下限額も設定されており、2025年4月1日時点での日額上限は15,690円、月額換算(給付率67%の場合)で315,369円が目安となります。最も重要な点として、この育児休業給付金は所得税・住民税の課税対象外であるため、実質的な手取り額は表示されている支給率よりも高くなります。

育児休業中の所得税・住民税の取り扱い

育児休業中の税金は、所得税と住民税でその取り扱いが大きく異なります。まず、所得税については、育児休業中に育児休業給付金のみを受け取っている場合、その給付金は非課税であるため、原則として所得税はかかりません。もし育児休業開始前に受け取った給与などがあり、年収が103万円以下であれば、同様に所得税は非課税となります。復職後は通常の給与所得として課税対象となるため、復帰後の給与明細で確認しましょう。

一方で住民税は、前年の所得に対して課税されるため、育児休業中でも支払う義務が生じます。育児休業の開始時期によっては、給与から天引き(特別徴収)される場合もあれば、ご自身で納付書を使って納める(普通徴収)必要がある場合もあります。一時的に納税が困難な場合は、1年以内の期間で徴収猶予が認められるケースもありますので、市町村の窓口に相談してみることをお勧めします。

また、住宅ローン控除を受けている方は注意が必要です。育児休業中の収入減により所得税・住民税がかからない場合、住宅ローン控除も適用されなくなる可能性があります。年末調整や確定申告の際に、税務署や税理士に確認しておくことが大切です。

社会保険料の免除制度とそのメリット

育児休業期間中には、家計に大きな影響を与える社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除される制度があります。この制度は、経済的な負担を軽減し、安心して育児に専念できるよう設けられたものです。免除の条件は、雇用保険の被保険者である従業員が育児休業を取得する場合に適用されます。

免除の対象期間は、育児休業を開始した日が属する月から、育児休業が終了した日の翌日が属する月の前月までとなります。さらに、月をまたいで14日以上連続して育児休業を取得した場合も、その月の社会保険料が免除の対象となります。例えば、月の途中で育児休業を開始し、翌月も継続する場合、開始月とその後の休業期間中の社会保険料が免除されます。

この社会保険料免除の最大のメリットは、将来の年金額計算において、保険料を納めた期間として扱われることです。つまり、保険料を支払っていなくても、将来受け取る年金額が減る心配はありません。また、健康保険の給付(医療費3割負担など)も、免除期間中も通常通り受けられます。免除手続きは、従業員が会社に申し出を行い、会社が日本年金機構へ「育児休業等取得者申出書」を提出することで行われます。

育児休業中に給与や賞与・退職金はどうなる?

育児休業中は、給与や賞与といった通常の収入がどうなるのか、また退職金に影響があるのかなど、具体的な金銭面での疑問は尽きません。ここでは、これらの給与所得や退職金に関する取り扱いについて詳しく見ていきましょう。

給与・賞与支給の有無と社会保険料の扱い

育児休業期間中は、原則として会社から給与は支給されません。これは、育児休業が労働義務を免除される期間であるためです。そのため、育児休業期間中の生活費は、主に前述の育児休業給付金によって賄われることになります。

もし、育児休業期間中に何らかの形で会社から給与が支給される場合(例えば、一部有給休暇を消化した場合など)、その給与に対しては通常の所得税・住民税・社会保険料が課税・徴収される可能性があります。育児休業給付金は非課税ですが、会社からの給与は通常の賃金と同じ扱いですので、注意が必要です。

賞与(ボーナス)についても同様で、育児休業期間中に支給対象となる査定期間があり、会社規定で支給される場合は給与と同じ扱いとなります。しかし、後述するように、賞与にかかる社会保険料については特例が適用される場合があります。自身の会社の就業規則や賃金規程を確認し、不明な点は人事担当者に問い合わせるようにしましょう。

育児休業中の賞与にかかる社会保険料免除

育児休業期間中に賞与が支給される場合、その賞与にも社会保険料がかかるのが原則です。しかし、育児休業中の経済的負担を軽減するため、賞与にかかる社会保険料も免除される制度があります。この免除の条件は、賞与が支給された月の末日を含めて1か月以上連続して育児休業を取得している場合です。

具体的には、例えば6月に賞与が支給され、その6月の末日時点で育児休業中であり、かつその育児休業が1か月以上継続している(またはする予定)であれば、6月に支給された賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料は免除されます。これは非常に大きなメリットであり、手取り額を増やすことにつながります。

この制度は、育児休業取得者の経済的な不安を軽減し、安心して子育てに取り組めるよう支援するものです。該当する場合は、会社が日本年金機構に手続きを行いますので、ご自身で申請する必要はありませんが、念のため会社に確認しておくと良いでしょう。賞与の支給時期と育児休業の取得期間をよく照らし合わせ、この免除制度を最大限に活用しましょう。

退職金への影響と育児休業期間の考え方

退職金制度は、企業によってその計算方法や支給条件が大きく異なります。そのため、育児休業が退職金にどのように影響するかは、一概には言えません。一般的には、退職金は勤続年数や在籍期間、役職などに基づいて計算されることが多いため、育児休業期間が勤続年数として算入されるかどうかで影響が変わってきます。

多くの企業では、育児休業期間も勤続年数に含めるとされていますが、退職金の算定対象期間から除外される場合もあります。特に、退職金の計算において、休業期間中の給与を基準にする場合、給与が支給されない育児休業期間が不利に働く可能性も考えられます。

退職金の規定は、企業の就業規則や退職金規程に明記されています。育児休業を取得する前に、必ず会社の人事担当者に確認し、どのような影響があるのかを具体的に把握しておくことが重要です。将来設計に大きく関わる部分ですので、疑問点は早めに解消しておきましょう。

育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除手続き

育児休業中の経済的な負担を軽減する上で、社会保険料の免除制度は非常に重要です。ここでは、その免除の具体的な条件、申請手続き、そして将来への影響について詳しく解説します。

社会保険料免除の対象期間と条件

育児休業期間中の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の免除は、一定の条件を満たすことで適用されます。まず大前提として、育児休業を取得している従業員が雇用保険の被保険者であることが必要です。

免除の対象期間は以下の通りです。

  • 育児休業を開始した日が属する月から、育児休業が終了した日の翌日が属する月の前月まで。
  • 上記に加え、月をまたいで14日以上連続して育児休業を取得した場合、その月も免除の対象となります。例えば、月の途中で育児休業を開始し、翌月も継続する場合、開始月とその後の休業期間中の社会保険料が免除されます。

この免除制度は、従業員が育児休業を最大限に活用できるよう、経済的な後押しをするためのものです。免除期間中も、被保険者としての資格は継続され、健康保険の給付(医療費3割負担など)は通常通り受けられます。

免除申請の具体的な流れと必要書類

社会保険料の免除手続きは、原則として会社が行います。従業員自身が直接年金事務所に申請する必要はありませんが、会社への申し出は必要です。

申請の具体的な流れは以下の通りです。

  1. 従業員から会社への申し出: 育児休業を取得する従業員は、会社に対して育児休業の取得を申し出ます。この際、社会保険料免除の希望も併せて伝えます。
  2. 会社から日本年金機構への提出: 会社は、従業員から育児休業の申し出を受け、「育児休業等取得者申出書(新規・延長)」を日本年金機構へ提出します。この申出書には、育児休業の開始日と終了予定日などを記載します。
  3. 免除の開始: 日本年金機構が申出書を受理し、免除の条件を満たしていることを確認すると、指定された期間の社会保険料が免除されます。

通常、育児休業を開始した後、会社が速やかに手続きを行うことになります。手続きが遅れると、一時的に社会保険料が徴収されてしまう可能性もありますので、会社の人事担当者と密に連携を取り、早めに手続きを済ませてもらうようにしましょう。必要書類は会社側で準備することがほとんどですが、ご自身の情報確認は必要です。

免除中のメリットと将来の年金への影響

育児休業中に社会保険料が免除されることのメリットは非常に大きいです。最も直接的なメリットは、毎月支払うはずだった健康保険料と厚生年金保険料の負担がゼロになるため、家計の経済的な負担が大幅に軽減される点です。

さらに重要なのは、社会保険料が免除されても、将来の年金額計算においては保険料を納めた期間として扱われることです。つまり、育児休業期間中に年金保険料を支払っていなくても、その期間は厚生年金保険の加入期間としてカウントされ、将来受け取る老齢厚生年金の額が減る心配はありません。これは、育児休業取得者の年金受給権をしっかりと保障するための制度です。

健康保険についても、免除期間中も被保険者としての資格は継続されるため、医療機関を受診した際の医療費負担割合(通常3割)や、傷病手当金、出産手当金などの給付も変わらず受けられます。この制度は、育児休業を経済的な不安なく安心して取得するための、非常に手厚い支援と言えるでしょう。

育児休業中の欠勤扱いや通勤手当、組合費について

育児休業中には、給与や社会保険料以外にも、通常の勤務時とは異なる取り扱いとなる項目がいくつかあります。欠勤扱いになるのか、通勤手当や各種手当はどうなるのか、組合費などの控除は発生するのかなど、事前に確認しておくべきポイントを押さえましょう。

欠勤扱いと育児休業期間の賃金・手当

育児休業は、労働基準法に基づく欠勤とは異なり、法律で認められた「休業」です。そのため、欠勤として扱われ、懲戒の対象になったり、人事評価に不利に影響したりすることはありません。企業によっては、育児休業期間が勤続年数に含まれるとされており、この点は退職金の算定などにも影響します。

育児休業期間中は、原則として会社からの給与支給はありません。これは労働の提供がないためです。したがって、基本給だけでなく、役職手当や時間外手当など、労働の対価として支払われる各種手当も支給されません。
しかし、企業によっては、福利厚生の一環として独自の育児支援手当や補助金制度を設けている場合もあります。これらの手当の支給条件や金額は企業によって様々ですので、事前に就業規則や人事担当者に確認しておくことが重要です。育児休業給付金とは別に、会社独自のサポートがあれば、経済的な安心感がさらに高まるでしょう。

通勤手当・その他諸手当の取り扱い

育児休業中は、通常の通勤がなくなるため、通勤手当は原則として支給停止となります。定期券代として支給されていた場合も、休業期間中はその支給が止まるか、休業開始までの日割り精算となるのが一般的です。もし通勤手当が給与と一緒に振り込まれる形で支給されていた場合、休業期間に入るとこの分の支給もなくなることを覚えておきましょう。

通勤手当以外にも、家族手当、住宅手当、役職手当など、会社から支給されている様々な手当があります。これらの手当が育児休業期間中にどうなるかは、企業の就業規則や賃金規程によって異なります。例えば、家族手当は家族構成に応じて支給されるため、休業中も支給が続く企業もあれば、労働の対価とみなされ支給停止となる企業もあります。

不明な点があれば、会社の人事担当者に直接確認することが最も確実です。特に、手当が生活費に占める割合が高い場合は、事前に確認し、育児休業中の家計計画に反映させることが大切です。

組合費などの控除の有無と確認事項

労働組合に加入している場合、毎月の給与から組合費が天引きされていることがほとんどです。育児休業期間中に給与が支給されない場合、組合費の取り扱いがどうなるかを確認しておく必要があります。多くの労働組合では、育児休業中は組合費が免除されたり、減額されたりする制度を設けています。

しかし、組合によっては、継続して組合員資格を維持するために、育児休業中も組合費の支払いが必要となる場合があります。その場合、銀行口座からの自動引き落としや、復帰後に一括徴収といった方法が取られることもありますので、所属している労働組合の規約を確認するか、組合の担当者に直接問い合わせてみましょう。

また、財形貯蓄や社内預金、団体保険料など、給与から天引きされているその他の控除についても、育児休業中の取り扱いを確認しておくことが重要です。休業中は天引きができなくなるため、一時的に支払いを停止するか、ご自身で継続して支払う必要があるかなど、それぞれの制度によって対応が異なります。事前に全てを把握し、必要な手続きを行っておくことで、予期せぬトラブルを防ぐことができます。

育児休業を賢く活用!節税の可能性や公務員のケース

育児休業は、お子さんとの貴重な時間を過ごすだけでなく、公的な制度を賢く活用することで、経済的なメリットを享受できる期間でもあります。ここでは、育児休業中の節税の可能性や、公務員の場合の特殊な取り扱い、そして経済的な不安を解消するための計画術について解説します。

育児休業給付金の非課税メリットと節税

育児休業給付金が非課税であるという点は、育児休業中の大きな経済的メリットの一つです。通常、給与所得には所得税や住民税がかかりますが、育児休業給付金は課税対象外のため、支給された金額がそのまま手取りとなります。これは、仮に休業前の給与の67%が支給されたとしても、税金が引かれない分、実質的な手取り収入は休業前と比べて大きく減らない(むしろ場合によっては手取り率が上がる)ことを意味します。

特に2025年4月からの「出生後休業支援給付金」が加算され、最大80%(手取り約10割相当)になることを考えると、この非課税メリットはさらに大きくなります。所得税がかからない期間があることで、一時的な節税効果も期待できますが、住民税は前年の所得に対して課税されるため、育児休業開始時期によっては休業中でも支払いが必要となる点には注意が必要です。

この非課税メリットを最大限に活かし、育児休業中に経済的に安定した生活を送るためには、事前の家計シミュレーションが不可欠です。給付金の額や住民税の支払い額などを正確に把握し、無駄のない支出計画を立てることで、賢く育児休業期間を乗り切ることができます。

公務員の育児休業制度と民間企業との違い

公務員の方も、もちろん育児休業を取得することができますが、民間企業に勤める方とはいくつか異なる点があります。最も大きな違いは、公務員は雇用保険に加入していないため、民間企業で支給される「育児休業給付金」ではなく、各共済組合から「育児休業手当金」が支給される点です。

育児休業手当金の支給率や期間は、基本的に民間企業の育児休業給付金に準じる形となっていますが、具体的な要件や手続き、支給額の上限などについては、所属する共済組合(国家公務員共済組合、地方公務員共済組合など)によって細かな規定が異なります。

したがって、公務員の方は、ご自身の所属する機関の人事担当者や共済組合に直接問い合わせて、詳細な制度内容を確認することが重要です。民間企業とは異なる制度設計になっていることを理解し、自身の状況に合わせた情報収集と計画を進めるようにしましょう。

経済的な不安を解消するための計画術

育児休業を安心して取得し、経済的な不安を解消するためには、事前の周到な計画が不可欠です。まずは、夫婦での家計シミュレーションを行い、育児休業期間中の収入と支出の見込みを立てましょう。育児休業給付金やその他の手当の金額、住民税などの支払い額を正確に把握することが重要です。

特に、2025年4月からの「出生後休業支援給付金」の導入は、夫婦で育児休業を分割して取得することで、収入を最大化できる可能性を秘めています。この制度を効果的に活用するためには、夫婦で育児休業の取得時期や期間を戦略的に計画することがカギとなります。

不明な点や不安なことがあれば、一人で抱え込まずに、積極的に相談窓口を利用しましょう。会社の担当者、ハローワーク、年金事務所、またはファイナンシャルプランナーなど、それぞれの専門家が具体的なアドバイスを提供してくれます。公的な制度を最大限に活用し、計画的に育児休業を乗り切ることで、お子さんとのかけがえのない時間を心ゆくまで楽しむことができるでしょう。