概要: 育児休業中の収入減に不安を感じていませんか?本記事では、育児休業給付金の基本的な支給率である6割や67%の計算方法から、条件付きで適用される8割給付金、さらには延長した場合の給付金まで、知っておくべきお金事情を詳しく解説します。
育児休業給付金、いくらもらえる?6割~8割の計算方法と注意点
育児休業期間中、経済的な不安を感じる方は少なくありません。しかし、育児休業給付金は、休業中の家計を支える重要な制度です。
特に2025年4月からは、夫婦での育児休業取得を促進するための新たな給付金が創設され、より手厚いサポートが期待されています。
この記事では、育児休業給付金の基本的な支給率や計算方法、そして2025年4月からの最新情報まで、分かりやすく解説します。いくらもらえるのか、どのような条件があるのか、具体的な計算例を交えながら見ていきましょう。
育児休業給付金の基本的な支給率と上限額
支給率の基本と期間ごとの変化
育児休業給付金の基本的な支給率は、育児休業を開始した日からの期間によって変わります。
育児休業開始から180日目までは、原則として休業開始前の賃金の67%が支給されます。この67%という割合は、現行制度でも、そして2025年4月1日以降の制度においても基本となる重要な数字です。
そして、181日目以降は、支給率が50%に切り替わります。この期間ごとの支給率の変動を理解しておくことが、給付金の総額を把握する上で非常に大切です。
特に、長期間の育児休業を検討している方は、後半の支給率が下がることを考慮して、家計の計画を立てる必要があります。制度変更後もこの基本的な支給率の切り替わりは維持されるため、まずはこの基本ルールをしっかりと押さえておきましょう。
給付金の上限額と計算式の基本
育児休業給付金の月額支給額は、以下の計算式で算出されます。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
この計算式の核となるのが「休業開始時賃金日額」です。これは、育児休業開始前6ヶ月間の賃金総額(ただし、ボーナスは除く)を180で割った金額で決まります。
この賃金日額には上限額と下限額が定められており、2025年4月1日時点での上限額は15,690円、下限額は2,869円です。つまり、たとえ月収が高くても、この上限額を超えて支給されることはありません。
支給日数は原則として30日間で計算されますが、実際に育児休業を取得した日数に応じて調整されることがあります。ボーナスが計算に含まれない点も、給付金が思ったより少なく感じる原因となることがあるため、注意が必要です。
非課税メリットと社会保険料免除
育児休業給付金は、単に収入の一部を補填するだけでなく、税金や社会保険料の面で大きなメリットがあります。
まず、育児休業給付金自体は非課税のため、所得税や住民税がかかりません。これは、通常の給与収入から税金が引かれることを考えると、手取り額の実質的な価値が非常に高いことを意味します。
さらに、育児休業期間中は、一定の条件を満たせば健康保険料と厚生年金保険料も免除されます。社会保険料は給与から大きな割合を占めるため、これが免除されることで、支給される給付金の手取り額が、休業前の給与手取り額にかなり近づくことになります。
この非課税と社会保険料免除の恩恵により、「賃金の67%」が「手取りで実質8割〜9割相当」となる感覚になることが多く、育児休業中の経済的な負担を大きく軽減してくれます。
育児休業給付金「6割」「67%」「7割」の計算方法
「67%」の基本的な計算方法と具体例
育児休業給付金の支給率「67%」は、育児休業開始から180日目までの期間に適用される基本的な割合です。具体的な計算方法を見てみましょう。
まずは、あなたの「休業開始時賃金日額」を算出します。これは育児休業開始前6ヶ月の賃金総額(ボーナス除く)を180で割った金額です。
例えば、月収30万円(手当等含め、ボーナス除く)の方が育児休業を取得した場合、休業開始時賃金日額は約1万円(30万円×6ヶ月÷180日)となります。
この日額を使って、月額の支給額は以下のようになります。
- 休業開始時賃金日額:1万円
- 支給日数:30日
- 給付率:67%(0.67)
月額支給額 = 1万円 × 30日 × 0.67 = 20.1万円
参考情報にもあった具体例では、月収35万円で20日間育児休業を取得した場合、現行制度(67%)では約15.6万円(35万円 × 67% × (20日/30日))が支給されます。この計算を参考に、ご自身の支給額をイメージしてみましょう。
2025年4月からの「67%」と「50%」の切り替わり
2025年4月1日以降の制度変更でも、育児休業給付金の基本的な支給率は、育児休業開始から180日目までは67%、181日目以降は50%という切り替わりは維持されます。
この基本的な給付率の仕組みは変わらないため、長期の育児休業を検討している場合は、前半と後半で給付額が変動することを念頭に置く必要があります。
新しい制度で注目すべきは、この基本的な67%や50%に加えて、特定の条件を満たした場合に支給される「上乗せ分」です。特に「8割」給付金と称されるものは、この基本支給率に新たな給付金が加算される形で実現します。
したがって、2025年4月以降も、まずは「67%」「50%」という基本的な給付率の期間ごとの変化を理解し、その上で新たな上乗せ制度の適用条件を確認することが重要です。
月収別シミュレーションと手取り額のイメージ
実際の月収を元に、育児休業給付金がどれくらいになるかシミュレーションしてみましょう。ここでは、休業開始から180日目までの67%支給期間を想定します。
月収(ボーナス除く) | 休業開始時賃金日額(概算) | 月額支給額(概算) |
---|---|---|
25万円 | 約8,333円 | 約16.7万円 |
30万円 | 約10,000円 | 約20.1万円 |
35万円 | 約11,667円 | 約23.4万円 |
40万円 | 約13,333円 | 約26.8万円 |
47万円(上限) | 約15,690円 | 約31.5万円 |
※月収から休業開始時賃金日額を算出する際、実際は端数処理などにより変動します。
これらの支給額は非課税であり、さらに社会保険料の免除もあるため、休業前の手取り額と比較すると、実質的に8割から9割程度の感覚になることが少なくありません。例えば月収30万円で約20.1万円の支給だと、一見少なく感じますが、税金や社会保険料が引かれない分、手元に残る金額はかなりのものになります。
「8割」給付金とは?いつから適用される?
出生後休業支援給付金の創設と「80%」の仕組み
育児休業給付金の大きな変更点として、2025年4月1日から「出生後休業支援給付金」が新たに創設されます。これは、特に夫婦で育児休業を取得した場合に、給付金が大幅に手厚くなる画期的な制度です。
具体的には、夫婦ともに一定期間(それぞれ14日以上)育児休業を取得した場合、最大28日間、従来の育児休業給付金に加えて賃金の13%が上乗せされます。
これにより、合計で賃金額面の80%が支給されることになります。この「80%」という数字は、単に給付率が上がるだけでなく、育児休業の利用を促進し、男女ともに育児に参加しやすい環境を整えることを目的としています。夫婦で育児に取り組む家庭にとっては、非常に大きな経済的支援となるでしょう。
「実質手取り10割相当」になる条件と対象期間
先述の80%給付金は、その高い支給率に加え、非課税であること、そして社会保険料の免除という大きなメリットが重なることで、「実質手取り10割相当」になると言われています。
これは、休業前の給与から引かれていた所得税、住民税、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が、給付金にはかからず、育児休業期間中も免除されるためです。
この「手取り10割相当」が適用される期間は限定的です。
父親の場合は「産後パパ育休期間」(出生時育児休業期間)、母親の場合は「産休後8週間以内(育休開始後8週間以内)」が対象となります。
この短い期間に限定されるとはいえ、夫婦のどちらか一方が育児休業中に経済的な不安を感じることなく、新生児との大切な時間を過ごせるよう、手厚い支援が用意されているのです。
夫婦での育休取得がポイント!例外も確認
この80%給付金である出生後休業支援給付金は、原則として「夫婦ともに一定期間(それぞれ14日以上)育児休業を取得」することが適用条件となります。夫婦での育児参加を強く後押しする制度設計と言えるでしょう。
しかし、夫婦での育休取得が難しいケースにも配慮されています。
例えば、配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親の場合には、配偶者の育児休業取得がなくても給付率が引き上げられる可能性があります。これは、特定の家庭環境にある方々にも、公平な支援が行き渡るようにするための重要な措置です。
これらの例外規定は、家庭の状況に応じて給付金を最大限に活用するためにも、ご自身の状況が該当するかどうかを事前に確認しておくことが大切です。不明な点があれば、ハローワークや会社の担当者に相談することをおすすめします。
育児休業中のお金、いくらもらえる?シミュレーション
現行制度(2025年3月まで)での支給額シミュレーション
現行制度(2025年3月31日まで)では、育児休業開始から180日目までは賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。
例えば、月収30万円(ボーナス除く)の方が育児休業を6ヶ月(180日)取得した場合をシミュレーションしてみましょう。
- 月収:30万円
- 休業開始時賃金日額:約10,000円(30万円×6ヶ月÷180日)
- 月額支給額(67%期間):約20.1万円(10,000円 × 30日 × 0.67)
この場合、6ヶ月間の育児休業で、月々約20.1万円の給付金を受け取ることができます。給付金は非課税であり、社会保険料も免除されるため、手取り額としては休業前の給与の8~9割程度に感じられるでしょう。このシミュレーションは、休業前の生活レベルをどの程度維持できるかの目安となります。
2025年4月以降の夫婦取得ケースシミュレーション
2025年4月1日からの新制度では、夫婦での育休取得がより手厚く支援されます。
例えば、月収35万円の夫婦が、それぞれ14日以上の育児休業を合計28日間取得し、出生後休業支援給付金の要件を満たした場合を想定します。
- 月収:35万円
- 休業開始時賃金日額:約11,667円(35万円×6ヶ月÷180日)
- 給付率:80%(0.8)※上乗せ期間
月額支給額 = 11,667円 × 30日 × 0.8 = 約28万円
もし20日間育児休業を取得した場合、約18.7万円(35万円 × 80% × (20日/30日))が支給されます。この80%支給は、社会保険料免除と非課税の恩恵と合わせると、「実質手取り10割相当」となり、夫婦が協力して育児休業を取りやすくなる大きなインセンティブとなります。特に子どもの誕生直後の大変な時期に、安心して育児に専念できるでしょう。
シミュレーションの注意点と考慮すべきこと
上記シミュレーションはあくまで目安であり、実際の支給額は個々の状況によって変動します。
最も重要なのは、「休業開始時賃金日額」は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金で算出されるという点です。これは、直近の残業時間やボーナスの支給月などによって変動する可能性があります。特に、計算対象期間に多くの残業があったり、ボーナスが支給されていたりすると、給付金の基準となる賃金が思ったよりも低くなることがあります(ボーナスは賃金日額の計算対象外)。
また、給付金の上限額も考慮に入れる必要があります。月収が高い方でも、上限額を超えて支給されることはありません。
ご自身の正確な支給額を知るためには、勤務先の担当部署やハローワークに相談し、具体的な給与明細を元に確認することをお勧めします。計画的な育児休業のために、早めにシミュレーションを行い、家計の見通しを立てておきましょう。
育児休業給付金以外のお金、延長した場合の給付金
育児休業給付金以外の公的支援
育児休業中の経済的なサポートは、育児休業給付金だけではありません。他にも、国や地方自治体から様々な支援が提供されています。
代表的なものとしては、「児童手当」が挙げられます。これは、中学校卒業までの子どもを養育している方に支給される手当で、子どもの年齢や人数に応じて支給額が変わります。2024年12月からは支給期間の延長や所得制限の撤廃が予定されており、より多くの家庭が恩恵を受けられるようになります。
また、お住まいの地方自治体によっては、独自の育児支援制度や助成金を設けている場合があります。例えば、医療費の助成、保育サービスの利用補助、子育て世帯への商品券配布など、多岐にわたります。
これらの情報は、各自治体のウェブサイトや広報誌で確認できるほか、お住まいの役所の窓口で相談することも可能です。育児休業給付金と合わせて、利用できる制度がないかぜひ調べてみましょう。
育児休業延長時の給付金と支給率
育児休業は、原則として子どもが1歳になるまでですが、保育所に入れないなどの特別な事情がある場合には、最長で子どもが2歳になるまで延長することができます。
この延長期間中の育児休業給付金の支給率は、最初の180日を過ぎると、賃金の50%に切り替わります。つまり、181日目以降は、給付率が50%となるため、給付額は最初の67%期間よりも減少します。
例えば、月収30万円の方が育児休業を1年間延長した場合、最初の6ヶ月間は月約20.1万円(67%)ですが、残りの6ヶ月間は月約15万円(50%)となります。
延長を検討する際は、この支給率の変更を考慮し、家計のシミュレーションを再度行うことが重要です。また、延長するためには、市区町村が発行する「保育所入所保留通知書」などの添付書類が必要になることがありますので、事前に確認しておきましょう。
給与支給との関係と給付金受給条件
育児休業期間中に、会社から給与が支給されるケースもあるかもしれません。しかし、育児休業給付金は、「育児休業中に会社から支給される給与が、休業開始前の賃金の80%未満であること」が支給条件の一つとなります。
もし、育児休業中に支給される給与が休業前の賃金の80%以上になると、育児休業給付金は支給されなくなります。また、80%未満であっても、支給される給与額によっては給付金が減額されることがあります。
これは、給付金と給与の合計が、休業前の賃金を大幅に超えないようにするための調整措置です。
育児休業中に会社から給与が支給される予定がある場合は、事前に会社の担当者やハローワークに相談し、給付金への影響を確認しておくことが非常に重要です。計画的な育児休業のためにも、給与と給付金の関係性を正しく理解し、安心して休業期間を過ごせるように準備しましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 育児休業給付金は、給料の何割くらいもらえますか?
A: 原則として、休業開始前の賃金の67%(6割)が支給されます。ただし、一定の条件を満たす場合は、休業開始前の賃金の80%が支給される期間があります。
Q: 育児休業給付金「6割」「67%」の計算方法を教えてください。
A: 休業開始前の月給(総支給額)に67%(0.67)を掛けた金額が、育児休業給付金の月額の目安となります。ただし、上限額が設定されています。
Q: 育児休業給付金「8割」はどのような場合に適用されますか?
A: 2022年10月1日以降に育児休業を開始した方で、パパ・ママ育休プラス制度を利用しない場合、または延長した育児休業期間中に、育児休業等取得率が一定水準以上であるなどの条件を満たす場合に、休業開始前の賃金の80%が支給される期間があります。詳細な条件は社会保険労務士にご確認ください。
Q: 育児休業中、実際にはいくらくらいお金をもらえるのか計算したいです。
A: 計算には、休業開始前の月給、加入期間、社会保険料などが関わってきます。具体的な計算には、ハローワークのウェブサイトのシミュレーションツールや、社会保険労務士への相談をおすすめします。
Q: 育児休業を延長した場合、給付金はどうなりますか?
A: 育児休業を延長した場合、延長期間中の給付金は、原則として休業開始前の賃金の67%(6割)となります。ただし、前述の「8割」給付金の対象となる条件を満たす場合は、その期間中は8割が支給されることもあります。