特別休暇の変更、廃止で損しない?知っておきたい注意点

会社員にとって、法定外の休暇である「特別休暇」は、日々の仕事の疲れを癒やしたり、プライベートを充実させたりする上で非常に大切な制度です。

しかし、もし突然、会社から特別休暇の制度が変更されたり、廃止されたりすると言われたら、どうすれば良いのでしょうか?

「これって不利益変更じゃないの?」「私の生活はどうなるの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。

この記事では、特別休暇に関する企業の制度変更や廃止の際に知っておくべき注意点や、万が一の時の対処法について、詳しく解説していきます。

突然の特別休暇廃止!何が起こる?

誰もが期待している特別休暇が、ある日突然なくなってしまったら、従業員は大きな影響を受けます。なぜそのようなことが起こり得るのでしょうか。

特別休暇制度の基本と現状

特別休暇は、法律で義務付けられている年次有給休暇などとは異なり、企業が従業員の福利厚生の充実や働きがい向上のために任意で設ける「法定外休暇」です。

夏季休暇や病気休暇、リフレッシュ休暇などが一般的で、従業員のライフワークバランスを支える重要な役割を担っています。

厚生労働省の調査によると、特別休暇制度がある企業の割合は年々変動しており、直近では2024年に59.9%と、半数以上の企業で導入されていることが分かります。

特に夏季休暇(40.0%)病気休暇(27.9%)リフレッシュ休暇(14.7%)などが主な種類として挙げられます。

従業員が直面する不利益とは

特別休暇の廃止や減額は、従業員にとって大きな不利益となります。

例えば、毎年楽しみにしていた夏季休暇がなくなれば、レジャーの計画が立てられなくなったり、家族との時間を確保しづらくなったりするでしょう。

病気休暇が廃止されれば、体調不良の際に年次有給休暇を消費するか、欠勤扱いで給料が減るリスクを負うことになります。

これにより、従業員のモチベーション低下や会社への不信感へと繋がり、結果としてエンゲージメントの低下を引き起こす可能性も十分に考えられます。

企業が制度変更・廃止に至る背景

企業が特別休暇制度の変更や廃止に踏み切る背景には、様々な理由が考えられます。

多くの場合、経営状況の悪化によるコスト削減、制度運用の見直し、あるいは他の法定休暇制度との整合性を図る目的などがあります。

特に、制度が形骸化していたり、利用率が低かったりする場合に、より効果的な福利厚生策へ変更しようとすることも考えられます。

しかし、その理由がどうであれ、従業員への影響を最小限に抑え、適切な手続きを踏むことが企業には求められます。

特別休暇の減額・不利益変更は許される?

特別休暇は企業の任意で設けられるとはいえ、一度導入され就業規則に明記されている場合、その変更は簡単にできるものではありません。

「不利益変更」の壁と労働契約法

特別休暇が就業規則に定められている場合、その廃止や内容の変更は「不利益変更」とみなされる可能性があります。

労働契約法では、労働者と使用者の合意なしに、労働者に不利益となるような就業規則の変更は原則として認められないと規定されています。

これは、労働者の既得権益を守るための重要なルールであり、企業が一方的に変更することは極めて困難です。

もし合意なしに変更された場合は、違法となるケースもあるため、従業員は自分の権利について知っておく必要があります。

不利益変更が許容されるケースとは

ただし、例外的に不利益変更が許容されるケースも存在します。

それは、変更の必要性、労働者が受ける不利益の程度、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況、他の労働組合または他の労働者の対応、その他の就業規則の変更に係る事情を総合的に考慮し、就業規則の変更が合理的なものであると認められる場合です。

例えば、会社の存続に関わるような危機的な経営状況で、特別休暇の廃止が避けられないと判断されるような極めて限定的な状況がこれに当たります。

この場合でも、企業は従業員に対して丁寧な説明と、可能な限りの代替措置を講じることが求められます。

年次有給休暇との意外な落とし穴

特別休暇の変更や廃止に関して、特に注意すべきは「年次有給休暇」との関係性です。

例えば、特別休暇の日数を減らす代わりに、年次有給休暇の日数を上乗せするといった措置を検討する企業もあるかもしれません。

しかし、厚生労働省は、年次有給休暇の日数を上乗せする目的で付与されていた特別休暇を廃止し、年次有給休暇に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わず、実質的に年次有給休暇の取得促進につながらないとして望ましくないとしています。

法定休暇である年次有給休暇は、その取得目的や条件が法律で厳格に定められており、法定外の特別休暇とは異なる性質を持つからです。

有給休暇や給料との関係性を解説

特別休暇が、自身の年次有給休暇や給料にどう影響するのかは、誰もが気になる点でしょう。両者の違いや給料の扱いについて解説します。

法定休暇と特別休暇の違い

年次有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、取得しても賃金が支払われることが義務付けられています。

一方、特別休暇は企業が任意で設ける制度であるため、その目的も種類も多岐にわたります。

例えば、結婚休暇や慶弔休暇、リフレッシュ休暇などがこれに該当し、従業員の特定の事由や心身のリフレッシュを目的としています。

法律で定められた休暇ではないため、企業によって制度の有無や内容が大きく異なるのが特徴です。

特別休暇の「有給・無給」の実態

特別休暇が「有給」となるか「無給」となるかは、企業の就業規則によって異なります。

参考情報によると、特別休暇制度のある企業において、賃金が全額支給される「全額有給」の割合は以下のようになっています。

  • 夏季休暇:81.4%
  • 病気休暇:44.2%
  • リフレッシュ休暇:89.3%

このデータからもわかるように、夏季休暇やリフレッシュ休暇は有給となるケースが多い一方で、病気休暇は無給となる可能性も比較的高いことが分かります。

制度を利用する際は、必ず自身の会社の就業規則を確認し、賃金の扱いや取得条件を把握しておくことが重要です。

賞与や査定への影響は?

特別休暇の取得が、賞与の算出や勤怠査定にどのように影響するかは、各企業の判断に委ねられています。

法的には、特別休暇の取得日を欠勤扱いとすることも可能ですが、休暇本来の意味を考慮し、慎重な運用が求められます。

多くの企業では、特別休暇の取得が査定に直接的に影響しないよう配慮していることが多いですが、一部の企業では出勤率の計算に含めるなど、独自のルールを設けている場合もあります。

もし不安な場合は、事前に人事担当者や上司に確認し、自身の評価に不利益が生じないよう注意しましょう。

不正取得が疑われる場合、どうなる?

特別休暇は従業員の権利ですが、制度を不正に利用しようとする行為は、企業からの厳しい処分を招く可能性があります。

「不正取得」とみなされる行為

特別休暇の不正取得とは、休暇の申請理由と異なる目的で休暇を取得したり、虚偽の申請をしたりする行為を指します。

例えば、「法事のため」と申請して実際には旅行に行っていたり、「体調不良」と偽って休んだりするケースなどが考えられます。

このような行為は、会社への詐欺行為とみなされ、就業規則違反に問われる可能性があります。

会社は従業員の申請を信頼して休暇を付与しているため、その信頼を裏切る行為は決して許されるものではありません。

企業からの厳しい処分も

もし特別休暇の不正取得が疑われた場合、企業は事実確認のために聞き取り調査を行うなど、厳正な対応を取ります。

不正が確認された場合、その内容や悪質性に応じて、就業規則に定められた懲戒処分が科されることになります。

軽いものでは「譴責(けん責)」や「減給」ですが、悪質なケースや繰り返しの不正である場合は、「出勤停止」や最悪の場合「懲戒解雇」といった重い処分を受ける可能性も十分にあります。

不正取得は個人のキャリアだけでなく、企業全体の秩序を乱す行為として、非常に厳しく見られます。

従業員が取るべき正しい行動

特別休暇制度を利用する際は、必ず会社の就業規則をよく読み、制度の目的や取得条件を正確に理解することが大切です。

申請は正直に行い、取得した休暇は申請した目的のために使うようにしましょう。

万が一、やむを得ない事情で休暇の目的や内容が変更になった場合は、速やかに会社の人事担当者や上司に相談し、指示を仰ぐようにしてください。

正直な対応が、企業との信頼関係を維持し、トラブルを未然に防ぐ最も重要な行動となります。

特別休暇がもらえない!そんな時の対処法

特別休暇制度があるはずなのに、なぜか取得できない、あるいは制度自体が曖昧でよく分からないという状況に直面したら、どのように対応すれば良いでしょうか。

まずは自社の就業規則を確認

特別休暇に関する疑問やトラブルが生じた場合、まず最初に行うべきは、会社の就業規則を確認することです。

就業規則には、特別休暇の種類、取得条件、申請手続き、有給・無給の区分など、制度に関する詳細が明記されています。

そもそも特別休暇制度が存在しないのか、それとも自分の取得条件が満たされていないのかを明確にすることができます。

就業規則は会社のルールブックですので、必ず目を通し、不明点があればマークしておきましょう。

人事担当者や上司への相談

就業規則を確認しても疑問が解決しない場合や、制度が曖昧で取得申請が通らない場合は、人事担当者や直属の上司に直接相談してみましょう。

自分の状況を具体的に説明し、どのような休暇を希望しているのか、なぜそれが自分にとって必要なのかを丁寧に伝えることが大切です。

相談する際は、感情的にならず、冷静に事実と自分の希望を伝えるように心がけましょう。

場合によっては、代替案の提案や、制度の見直しを検討してもらえる可能性もゼロではありません。

外部機関への相談も視野に

社内での相談で問題が解決しない場合や、会社が不当な対応をしていると感じる場合は、外部の専門機関に相談することも有効な手段です。

例えば、労働基準監督署では、労働基準法に関する相談や情報提供を行っており、適切なアドバイスを受けることができます。

また、より専門的な法的な助言が必要な場合は、弁護士に相談することで、法的な観点からのサポートや、場合によっては企業との交渉を依頼することも可能です。

労働組合がある場合は、組合員として組合に相談し、団体交渉を通じて解決を図る道もあります。

泣き寝入りせず、自分の権利を守るために適切な行動を取ることが大切です。