概要: 特別休暇を取得した際の給料について、基本的な仕組みからコロナ禍での変化、パートや公務員の場合までを解説します。特別休暇中の給料の有無や、給料が減るケースについて詳しく見ていきましょう。
特別休暇と給料の関係!コロナ禍での変化やパート、公務員の場合も解説
働き方や生活様式が大きく変化したコロナ禍において、「特別休暇」の役割と給料の扱いは、多くの人にとって関心の高いテーマとなりました。
今回は、特別休暇の基本的な理解から、給料との関係性、そしてコロナ禍での具体的な変化、さらにはパート・アルバイトや公務員の場合について、詳しく解説していきます。
特別休暇とは?基本を理解しよう
特別休暇は、労働者の心身のリフレッシュやライフイベントに対応するために、企業が独自に設ける休暇制度です。法律で定められた「法定休暇」とは異なるため、その内容は企業によって大きく異なります。
法律上の休暇と企業独自の休暇
まず、休暇には大きく分けて2つの種類があります。一つは労働基準法などで定められた「法定休暇」です。
これには、年次有給休暇、産前産後休暇、育児介護休業などが含まれ、企業は必ず従業員に付与する義務があります。
もう一つが、企業が任意で定める「特別休暇」です。
こちらは法律上の義務ではありませんが、従業員の福利厚生の充実やモチベーション向上を目的として、多くの企業で導入されています。
例えば、結婚休暇や慶弔休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇などが代表的です。これらの休暇は、労使の話し合いを経て就業規則に定めることで導入が可能となります。
企業が従業員の声を聞き、それぞれのニーズに合った休暇制度を設計することが重要です。
特別休暇の目的と種類
特別休暇が設けられる目的は多岐にわたります。従業員が安心して働き続けられるように、人生の様々な節目や突発的な事情に対応できるようにすることが主な目的です。
例えば、親族の不幸があった際の慶弔休暇、自身の結婚を祝う結婚休暇、勤続年数に応じたリフレッシュ休暇などがあります。
これらは、従業員が私的な事情で仕事を休む必要が生じた際、安心して休暇を取得できるよう支援するものです。
近年では、地域活動への参加を促すボランティア休暇や、介護・育児に関する休暇制度を法定以上に充実させる企業も増えています。
特にコロナ禍では、感染症対策や子どもの世話を目的とした「感染症対応特別休暇」が多くの企業で導入され、その重要性が再認識されました。
企業がどのような特別休暇を設けるかは、その企業の理念や従業員の働き方によって柔軟に選択されます。
有給休暇との違いと取得条件
特別休暇と混同されやすいのが「年次有給休暇」ですが、両者には明確な違いがあります。
年次有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、原則として取得理由を問わず、消化できなかった分は買い取りの対象外です。
2019年には、年次有給休暇の平均取得日数は10.4日であり、年間取得日数が5日に満たない労働者の割合は14.2%でした。厚生労働省の調査では、労働者1人あたりの平均取得日数は10.1日と報告されています。
これに対し、特別休暇は企業が独自に設ける制度であるため、有給とするか無給とするかは企業の判断に委ねられます。
多くの特別休暇は従業員の福利厚生として有給で付与されることが多いですが、必ずしも有給とは限りません。
また、取得条件も就業規則によって細かく定められています。例えば、結婚休暇であれば結婚の事実を証明する書類の提出、慶弔休暇であれば忌引の範囲などが具体的に規定されています。
従業員は、自分の会社の就業規則を確認し、特別休暇の取得条件や手続きを理解しておくことが重要です。
特別休暇は給料が出る?それとも減る?
特別休暇が有給か無給かは、従業員にとって非常に重要なポイントです。法律上の義務がない特別休暇の場合、給料の支払いについては企業の判断に委ねられます。
給料支払いの原則と休業手当
特別休暇における給料の支払いについては、まず労働基準法の原則を理解しておく必要があります。
労働基準法では、特別休暇そのものの給料支払いを義務付けてはいません。しかし、企業が従業員を休業させた場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」であれば、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が生じます。
例えば、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、法律上は休業手当の支払い義務がないとされています。これは、感染症法に基づく就業制限による休業は、通常、「使用者の責に帰すべき事由」には該当しないためです。
しかし、企業が感染症対策として発熱などの症状がある従業員の出勤を禁じるなどのルールを設けている場合は、企業側の判断による休業とみなされ、休業手当の支払い義務が生じる可能性があります。
このあたりの判断は複雑であり、状況に応じて慎重な対応が求められます。
企業が任意で給与を支払うケース
法律上の義務がない場合でも、多くの企業は従業員の福利厚生やモチベーション維持のために、特別休暇を有給としています。
これは、従業員が安心して休暇を取得できる環境を整えることで、長期的な視点での人材定着や生産性向上に繋がると考えるためです。
有給の特別休暇を設ける際は、労使の話し合いを通じて、具体的な内容、取得条件、そして有給である旨を就業規則に明確に定める必要があります。
企業が独自に定める特別休暇は、従業員にとって大きな安心材料となります。例えば、親族の介護や育児で一時的に休む必要がある場合でも、給料の心配なく休暇を取得できれば、仕事への復帰もスムーズになるでしょう。
法律上の義務はなくても、従業員が安心して働ける職場環境を構築するためには、有給の特別休暇制度は非常に有効な手段と言えます。
助成金制度の活用と期限
企業が有給の特別休暇を導入する際、政府や自治体からの助成金制度を活用できるケースがありました。
特にコロナ禍においては、感染症対応に伴う特別休暇に対して、特定の助成金が用意されていました。例えば、「両立支援等助成金(育児休業等支援コース 新型コロナウイルス感染症対応特例)」は、企業が従業員に有給の特別休暇を与えた場合に助成金の対象となりました。
しかし、これらの助成金制度には期限が設けられており、上記の特例助成金は2023年3月31日までの休暇取得分で終了しています。
助成金を活用することで、企業は従業員に有給の特別休暇を提供しやすくなり、経済的負担を軽減できました。
しかし、制度は常に変化するため、現在利用できる助成金があるかどうか、またその条件は何かを、関係省庁や自治体のウェブサイトで最新の情報を確認することが非常に重要です。
助成金はあくまで一時的な支援であり、企業独自の取り組みとして特別休暇制度を継続・発展させていくことが求められます。
コロナ禍で特別休暇と給料はどう変わった?
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの働き方や休暇の取り方に大きな影響を与えました。特に、特別休暇の概念とその給料の扱いは、社会情勢の変化とともに見直されることとなりました。
コロナ特例の特別休暇導入
コロナ禍では、感染拡大防止や子どもの世話など、これまで想定されていなかった様々な理由で特別休暇が導入・活用されました。
例えば、従業員が発熱などの風邪症状がある場合に、感染リスクを考慮して出勤を控えさせるための休暇や、全国一斉休校に伴い子どもの世話が必要になった親のための休暇などです。
これらは、多くの企業で「感染症対応特別休暇」といった名称で独自に設けられ、従業員が安心して休めるように、有給として扱われるケースが多く見られました。
企業がこうした有給の特別休暇制度を設ける場合、労使の話し合いを経て就業規則に定めることで導入が可能となり、政府の助成金対象となる場合もありました。
これにより、従業員は給料の心配をせずに、自身の健康や家族のケアに専念することができました。
給料支払いの判断基準と企業の対応
コロナ禍において、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、企業は法律上、休業手当を支払う義務はないのが原則でした。
これは、感染症法に基づく就業制限による休業が、労働基準法上の「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないためです。
しかし、企業が感染症対策として発熱などの症状がある従業員の出勤を禁じるなどのルールを設けていた場合は、企業の判断による休業とみなされ、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当の支払い義務が生じる可能性がありました。
法律上の支払い義務がない場合でも、多くの企業は従業員が安心して休めるよう、有給休暇の取得を促したり、傷病手当金の申請方法を案内したりしました。
また、労使の話し合いにより、有給の特別休暇制度を設けることも有効な手段として活用されました。
コロナ禍では、残業時間が平均で2.8時間短縮したというデータもあり、テレワーカーでは3時間、出社者でも2.6時間の短縮が見られました。これは、働き方の変化が休暇や労働時間に影響を与えた一例と言えるでしょう。
助成金制度の終了と今後の展望
コロナ禍で導入された特別休暇に関する助成金制度は、多くのものが終了しています。
前述の「両立支援等助成金(育児休業等支援コース 新型コロナウイルス感染症対応特例)」のように、2023年3月31日で休暇取得分の対象が終了したものが代表的です。
これは、感染症の位置づけが変更されたことや、社会経済活動が正常化に向かっていることを反映したものです。
助成金が終了したことで、企業は今後、従業員の特別な休暇に対して、より自己判断で対応していく必要があります。
既存の有給休暇制度や傷病手当金の活用を促すとともに、企業独自の福利厚生として、引き続き有給の特別休暇を設けるかどうかが問われることになります。
コロナ禍で培われた柔軟な働き方や、従業員の健康・安全を優先する意識は、今後の企業経営においても重要な要素となるでしょう。
労働日の余暇時間については、全体の22.4%、テレワーカーでは32.4%が増加したと回答しており、コロナ禍が労働者の生活スタイルにもたらした影響は小さくありません。
パートやアルバイトの特別休暇、給料はどうなる?
正社員だけでなく、パートやアルバイトといった非正規雇用者の特別休暇や給料の扱いも、コロナ禍で注目されました。多様な働き方をする人々に対する公平な待遇が求められています。
非正規雇用者の特別休暇取得権利
パートやアルバイトといった非正規雇用者であっても、一定の要件を満たせば年次有給休暇が付与されます。
具体的には、雇い入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合に、労働日数に応じて有給休暇が付与されます。
特別休暇については、企業が独自に制度を設けている場合、その対象となるかどうかは就業規則によります。
しかし、非正規雇用であることを理由に特別休暇の対象から一方的に除外することは、パートタイム・有期雇用労働法(いわゆる「同一労働同一賃金」)に違反する可能性があります。
業務内容や責任の範囲が同じであれば、正社員と同様に特別休暇を付与することが求められる場合も多く、近年では非正規雇用者にも公平に特別休暇を適用する企業が増えています。
休業手当の対象となるケース
パートやアルバイトも、会社都合による休業の場合には休業手当の対象となる可能性があります。
労働基準法第26条により、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、企業は平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。
例えば、コロナ禍において、店舗の営業自粛や規模縮小により、パート従業員のシフトが大幅に減少したり、勤務ができなくなった場合などがこれに該当します。
この際、休業が会社都合と判断されれば、パートやアルバイトであっても休業手当を受け取る権利が生じます。
企業がパート・アルバイトを含む従業員に有給の特別休暇を付与した場合、過去には助成金の対象となるケースもあり、非正規雇用者の雇用維持に貢献しました。
自身の状況が休業手当の対象となるか不明な場合は、労働基準監督署や専門家への相談を検討することが大切です。
不合理な待遇差の禁止
「同一労働同一賃金」の原則は、正社員と非正規雇用者の間の不合理な待遇差をなくすことを目的としています。
この原則は、特別休暇の付与についても適用され、業務内容や責任の程度が同じであれば、正社員と非正規雇用者との間で特別休暇の有無や有給・無給の扱いに不合理な差を設けることは禁止されています。
企業は、待遇差がある場合には、その理由を客観的・具体的に説明できる必要があります。
これは、労働者がどのような雇用形態であっても、それぞれの働き方に応じた公正な待遇を受けるべきであるという考え方に基づいています。
企業側は、多様な働き方を受け入れつつ、公平な制度設計を行うことで、すべての従業員が安心して働ける環境を整備する責任があります。
非正規雇用者も自身の権利を理解し、不合理な待遇差がないかを確認することが重要です。
公務員の特別休暇と給料について
公務員の特別休暇制度は、一般企業とは異なる規定に基づいています。特にコロナ禍では、その運用にも特別な配慮がなされました。
公務員特有の特別休暇制度
公務員(国家公務員、地方公務員)の特別休暇は、国家公務員法や地方公務員法、人事院規則、または各自治体の条例や規則に基づいて定められています。
一般企業の特別休暇と同様に、慶弔休暇や病気休暇、介護休暇、ボランティア休暇など多岐にわたりますが、その多くは給与の減額なく取得できるのが特徴です。
これは、公務員が国民全体の奉仕者としての職務を安定的に遂行するため、また公共性の高い業務に携わる特性上、安心して職務に専念できる環境を保障する意味合いが大きいと言えます。
病気休暇は診断書など所定の手続きを踏むことで、一定期間は有給で取得できるなど、手厚い保障が設けられています。
各省庁や自治体によって詳細な規定は異なるため、所属する組織の規則を確認することが重要です。
コロナ禍における公務員の特別休暇
コロナ禍において、公務員も例外なく感染症の影響を受けました。そのため、特別な措置として、以下のような場合に有給の特別休暇が認められるケースが多くありました。
- 検疫法に基づく停留の対象となった場合
- 感染防止のために必要な協力を求められ、勤務しないことがやむを得ない場合
- 発熱などの風邪症状が見られ、勤務しないことがやむを得ないと認められる場合
- 一斉休校により子の世話を行う場合
これらの特別休暇は、原則として給与の減額なしで取得可能でした。
公務員は社会インフラ維持や行政サービス提供の最前線に立つことが多いため、感染リスクを避けつつ職務を継続できるよう、このような配慮がなされたと言えるでしょう。
ただし、公務員の種類や各省庁、自治体の規則により、その取り扱いは異なる場合があるため、自身の所属する組織の最新の通知や規程を確認することが不可欠です。
給料減額なしの理由と注意点
公務員の特別休暇が給料減額なしで付与されるのは、公務の円滑な遂行と、公務員が安心して職務に専念できる環境を保障するためです。
国民全体の奉仕者として、高い倫理観と責任感を持って職務を全うするためには、私的な事情でやむを得ず勤務できない期間も、経済的な不安なく過ごせるよう配慮されるべきだという考え方が背景にあります。
しかし、給料減額なしとはいえ、特別休暇の取得には適正な手続きと理由が必要です。虚偽の申請や不適切な取得は、厳しく処分される対象となります。
また、先述の通り、国家公務員と地方公務員では適用される法律や規則が異なり、地方公務員の場合は各自治体の条例や規則によって詳細な運用が定められています。
常に最新の情報を確認し、規定を遵守して休暇を取得することが求められます。
公務員は、社会情勢の変化に応じて柔軟な対応が求められることもあり、今後も特別休暇の制度が見直される可能性も考慮しておく必要があるでしょう。
特別休暇と給料の関係は、雇用形態や社会情勢によって様々な側面を持つことがお分かりいただけたでしょうか。自身の働く環境におけるルールを理解し、必要に応じて適切に利用することが大切です。
まとめ
よくある質問
Q: 特別休暇とは具体的にどのようなものですか?
A: 特別休暇とは、通常の有給休暇とは別に、慶弔休暇や生理休暇、アニバーティブ休暇など、会社が独自に設けている休暇のことです。法律上の義務はありませんが、多くの企業で導入されています。
Q: 特別休暇中は給料は支払われますか?
A: 特別休暇中の給料の支払いは、休暇の種類や会社の規定によります。慶弔休暇などは有給とされることが多いですが、病気休暇やリフレッシュ休暇などは無給となる場合もあります。事前に会社の就業規則を確認しましょう。
Q: コロナ禍で特別休暇の扱いに変化はありましたか?
A: コロナ禍においては、感染症対策としての特別休暇(コロナ休暇)が設けられるケースがありました。これらの休暇の給与の扱いは企業によって異なり、有給とする企業もあれば、無給とする企業もありました。
Q: パートやアルバイトでも特別休暇はありますか?
A: パートやアルバイトでも、正社員と同様に特別休暇が適用される場合があります。ただし、契約内容や会社の規定によりますので、ご自身の雇用条件を確認することが重要です。給料についても、有給か無給かは確認が必要です。
Q: 公務員の特別休暇にはどのようなものがあり、給料はどうなりますか?
A: 公務員にも慶弔休暇や病気休暇などの特別休暇があります。これらの休暇中の給料については、一般的に国家公務員法や地方公務員法に基づき、職務専念義務を免除された期間であっても給与が減額されない場合が多いです。ただし、詳細な規定は各自治体や所属機関によります。