概要: 「働きがい」とは、仕事を通じて得られる満足感や達成感のことです。本記事では、その定義や実態を調査結果を交えて解説し、働きがいを感じる瞬間や、ビジネスシーンで働きがいを醸成するための具体的な方法を探ります。
「働きがい」の定義と辞書的な意味
その本質:やりがいと働きやすさの融合
「働きがい」とは、仕事に対する価値や誇りを感じ、自発的に意欲を持って取り組む姿勢を指します。これは、単なる楽しさや満足感を超え、従業員が能力を最大限に発揮し、組織の成長に貢献できる包括的な概念です。
「働きがい」は、具体的に「やりがい」と「働きやすさ」の両立によって生まれると考えられています。
- やりがい(動機付け要因):仕事への誇り、社会貢献実感、仲間との連帯感、経営陣への信頼などが含まれます。これらは、仕事の達成感や自己成長を通じてモチベーションを高めます。
- 働きやすさ(衛生要因):公正な評価・処遇、良好な人間関係、快適な労働環境、安定した雇用などが含まれます。従業員が安心して働くための基盤となる要素です。
片方だけでは不十分であり、特に「働きやすさ」だけを整備しても、長期的なモチベーション維持には繋がりにくいとされています。
辞書的・一般的な解釈:「仕事への価値と誇り」
「働きがい」という言葉は、仕事から得られる価値や意義、そしてそれに対する誇りを感じる状態を指します。これは、与えられた業務をただこなすのではなく、自身の意思と意欲をもって積極的に関わる姿勢を伴います。
辞書的な意味合いでは、「働くことの価値や喜び」といったニュアンスで捉えられることが多く、単なる金銭的報酬を超えた精神的な充足感を強調します。
従業員一人ひとりが自身の能力を最大限に活かし、組織目標の達成に貢献することで得られる充実感が、まさに「働きがい」の核となる部分と言えるでしょう。
なぜ今、「働きがい」が注目されるのか
現代社会において、「働きがい」は企業の持続的成長に不可欠な要素として、その重要性が急速に高まっています。従来の経済優先の価値観から、従業員の幸福や Well-being を重視する動きが広がっているためです。
働きがいが向上すると、従業員の意欲が84.2%も高まり、企業の生産性や業績向上にも直結します。実際に、「働きがいがある」と回答した人の48.0%が「会社の業績が上がっている」と答えています。
さらに、優秀な人材の獲得・定着にも効果を発揮し、離職率の低下にも寄与します。少子高齢化が進む日本において、人材確保は喫緊の課題であり、「働きがい」は企業が競争力を維持するための重要な鍵となっているのです。
「働きがい」の現状:実態調査から見えてくるもの
日本の「働きがい」は世界的に低い水準
残念ながら、日本の従業員の「働きがい」は、国際的に見ても低い水準にあることが多くの調査で指摘されています。
ギャラップ社の2022年の調査によると、日本の「仕事満足度」(ワークエンゲージメント)を感じる従業員の割合はわずか5%で、調査対象145カ国中、イタリアと並んで最低の結果でした。これは、多くの日本企業において「働きがい」の向上が喫緊の課題であることを示唆しています。
また、別の調査では、現在の職場に満足していない人の割合が約40%に上るという結果もあり、多くの従業員が仕事に対して何らかの不満や不充足感を抱えている実態が浮き彫りになっています。
「働きがい」がもたらす企業への多大なメリット
「働きがい」の向上は、企業に計り知れないメリットをもたらします。まず、従業員の意欲が飛躍的に向上します。調査では、「働きがいがある」と答えた人の84.2%が仕事に対する意欲が高いと回答しています。
次に、生産性や業績の向上です。「働きがい」を感じている従業員は、個々のパフォーマンス向上だけでなく、チーム内の創造性や連携を活発化させます。結果として、48.0%の従業員が「会社の業績が上がっている」と回答しており、組織全体の成果に直結していることが分かります。
さらに、人材の獲得・定着にも大きな効果があります。2019年の厚生労働省の資料でも、「働きがい」が向上するほど離職率が下がる傾向が見られており、優秀な人材を引き付け、長く定着させる魅力的な職場づくりに貢献します。これらのメリットは、企業の持続的な成長には不可欠です。
なぜ日本は「働きがい」が低いのか?課題の考察
日本の「働きがい」が低い背景には、いくつかの構造的な課題が考えられます。一つは、成果主義への移行が不十分なまま、年功序列や終身雇用といった旧来の慣習が残り、個人の努力や成果が適切に評価・報酬に結びつきにくい環境が挙げられます。
また、長時間労働や過度な同調圧力、上意下達の組織文化なども、従業員が主体的に仕事に取り組む意欲を削ぎ、やりがいを感じにくくする要因となっています。
「働きやすさ」の整備は進みつつありますが、「やりがい」を構成する要素、例えば仕事への誇りや自己成長の機会が不足している企業も少なくありません。この「やりがい」の欠如が、日本の働きがいが世界的に低い水準にある主因の一つと言えるでしょう。
「働きがい」を感じる瞬間と、その源泉
「やりがい」を感じる具体的な瞬間
人々が「やりがい」を感じる瞬間は多岐にわたります。例えば、困難なプロジェクトをチーム一丸となって成功させた時、顧客から直接感謝の言葉をいただいた時、自分のアイデアが形になり、社会に貢献できたと実感した時などが挙げられます。
また、新しい知識やスキルを習得し、自身の成長を実感できた時や、責任ある役割を任され、期待に応えられた時にも、大きなやりがいを感じます。これらは、仕事を通じて得られる達成感や自己肯定感、社会貢献の実感が源泉となります。
仲間との連帯感を感じながら目標に向かって協働する過程や、経営陣のビジョンに共感し、その実現に貢献しているという意識も、従業員のモチベーションを強く刺激する要因です。
「働きやすさ」が支える安心感
「働きやすさ」は、従業員が安心して仕事に集中し、自身の能力を最大限に発揮するための土台となります。例えば、透明性があり納得感のある評価制度や、公正な処遇が保証されている職場では、従業員は不公平感なく業務に取り組むことができます。
また、良好な人間関係は、心理的安全性を確保し、オープンなコミュニケーションを促進します。快適な労働環境や、ワークライフバランスを重視した福利厚生(テレワーク、時短勤務、有給休暇の取得促進など)も、従業員のストレスを軽減し、心身の健康を保つ上で不可欠です。
これらの「働きやすさ」が確保されていることで、従業員は不安なく「やりがい」を追求し、長期的に高いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。
個人の成長と組織への貢献実感
「働きがい」の重要な源泉の一つは、個人の成長と組織への貢献を実感できることです。自分の能力が最大限に活かされていると感じる時、あるいは新しいスキルや知識を習得し、キャリアアップに繋がっていると実感できる時に、従業員は大きな充実感を得ます。
例えば、資格取得支援や社内研修、チャレンジングなプロジェクトへのアサインメントなどは、従業員の成長意欲を刺激し、自己効力感を高めます。
さらに、自分の仕事が組織全体の目標達成にどう貢献しているのかが明確であると、従業員は自身の存在意義を感じ、より一層仕事に意欲的に取り組むようになります。この「貢献実感」が、個人の「働きがい」を深める上で極めて重要な要素です。
「働きがい」を高めるためのビジネス的アプローチ
理念共有と成長機会の提供
「働きがい」を高めるためには、まず企業の理念やビジョンを従業員と共有し、仕事の意義を明確にすることが不可欠です。経営理念に共感し、「経営の一端を担っている」という意識が生まれることで、従業員の主体性とモチベーションが高まります。
また、従業員が自身の成長を実感できる機会を提供することも重要です。
- 資格取得支援
- 社内検定制度
- 表彰制度やサンクスカードによる承認機会
これらを通じて、従業員は自身の能力向上を実感し、周囲から認められていると感じることができます。成長と承認の機会は、従業員の自己肯定感を高め、長期的なエンゲージメントに繋がります。
コミュニケーションと公正な評価制度の確立
オープンなコミュニケーションは、組織内の信頼関係を構築し、「働きがい」を高める上で不可欠です。従業員同士や部門間の活発なコミュニケーションは、一体感や貢献感を生み出します。
さらに、公正な評価制度の整備と適切なフィードバックも重要です。
- 透明性と納得感のある評価基準の明確化
- 評価結果に対する丁寧なフィードバック
これにより、従業員は自身の強みや改善点を理解し、次の成長へと繋げることができます。公正な評価は、従業員のモチベーションを維持し、組織への信頼感を深める基盤となります。
労働環境の整備と継続的な改善
「働きがい」を高めるには、「働きやすさ」を担保する労働環境の整備も欠かせません。長時間労働の是正、テレワークや時短勤務といった柔軟な働き方の導入、有給休暇の取得促進などは、ワークライフバランスの実現に貢献します。
また、「適材適所」の実現も重要です。従業員一人ひとりの強みや思考性を活かした配置、キャリア面談の実施、スキル可視化、社内公募制度などは、従業員が自身の能力を最大限に発揮し、成長できる機会を提供します。
これらの取り組みは一度行えば終わりではありません。定期的なエンゲージメント・サーベイを実施し、課題を分析、改善計画を策定するというPDCAサイクルを回し、継続的に「働きがい」の向上に取り組むことが重要です。
「働きがい」と「生きがい」の繋がり
仕事が人生に与えるポジティブな影響
「働きがい」は、単に職場での満足感に留まらず、個人の人生全体にポジティブな影響をもたらします。仕事を通じて自己肯定感が高まったり、自身の成長を実感したりすることは、自信となり、プライベートでの充実感にも繋がります。
仕事で得たスキルや経験は、趣味や地域活動など、職場以外の場でも役立つことが多く、新たな挑戦への意欲を生み出すこともあります。経済的な安定はもちろんのこと、精神的な充足感や目的意識は、日々の生活を豊かにする基盤となります。
「働きがい」がある状態は、ストレスを軽減し、心身の健康を保つ上でも有効です。仕事が人生の重要な一部としてポジティブに機能することで、より充実した日々を送ることができるのです。
ワークライフバランスを超えた「ワークライフインテグレーション」
近年、「ワークライフバランス」という概念に加え、「ワークライフインテグレーション」という考え方が注目されています。これは、仕事とプライベートを厳密に区切るのではなく、それぞれが相互に良い影響を与え合い、相乗効果で人生全体の質を高めていこうというアプローチです。
「働きがい」のある仕事は、従業員に充実感や達成感、成長の機会を提供し、それがプライベートでの活動や人間関係にも良い影響を及ぼします。例えば、仕事で培った問題解決能力を家庭生活に活かしたり、趣味で得たインスピレーションを仕事に生かしたりするようなイメージです。
このように、仕事が人生の一部として有機的に結びつき、全体としての満足度を高めることで、個人の「生きがい」がより深く、豊かになります。
自分らしい「生きがい」を見つけるための「働きがい」
「働きがい」を追求することは、最終的に自分らしい「生きがい」を見つけることにも繋がります。仕事を通じて自身の価値観や強みを再認識し、社会に対してどのような貢献ができるのかを深く考える機会となります。
自身の能力が最大限に活かされ、それが誰かの役に立っていると実感する時、人は深い充足感を得ます。この貢献感や存在意義の自覚こそが、個人の「生きがい」の核となり得るのです。
企業が従業員の「働きがい」を高める努力をすることは、単に生産性向上だけでなく、従業員一人ひとりの人生を豊かにし、ひいては社会全体の活力向上に貢献します。働くことの意義を見出し、人生を豊かにする手段として「働きがい」は、企業にとっても個人にとっても、かけがえのない価値を持つと言えるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 「働きがい」とは具体的にどのような意味ですか?
A: 「働きがい」とは、仕事を通して得られる満足感、達成感、貢献感、自己成長感などを指します。辞書的な意味合いでは、仕事がやりがいがある、価値があると感じる状態のことです。
Q: 「働きがい」の類義語にはどのようなものがありますか?
A: 「働きがい」の類義語としては、「やりがい」「達成感」「充実感」「モチベーション」「エンゲージメント」などが挙げられます。文脈によってニュアンスは異なります。
Q: 「働きがい」を感じるのはどのような時ですか?
A: 「働きがい」は、目標達成時、困難な課題を乗り越えた時、自分の能力が活かせていると感じる時、他者からの感謝や貢献を実感する時などに感じやすいとされています。
Q: ビジネスにおいて「働きがい」を醸成するためには何が必要ですか?
A: ビジネスにおいては、明確なビジョン共有、公正な評価制度、成長機会の提供、良好な人間関係の構築、裁量権の付与などが、「働きがい」を醸成するために重要です。
Q: 「働きがい」と「生きがい」はどのように関係していますか?
A: 「働きがい」は「生きがい」の一部となり得ます。仕事で得られる満足感や自己実現感が、人生全体の幸福感や充実感、すなわち「生きがい」に大きく貢献することがあります。