「やりがい」という言葉は、仕事の満足度や達成感を超え、自己成長や社会貢献の実感をもたらす深い概念です。しかし、日本の労働者の「やりがい」は世界的に見て低い水準にあることが多くの調査で示されています。

このブログ記事では、「やりがい」の本当の意味を世界と比較しながら紐解き、日本が抱える課題、そして自分らしい「やりがい」を見つけるための具体的なヒントを探ります。

「やりがい」という言葉、海外ではどう表現される？

「Yarigai」が持つ独特なニュアンス

「やりがい」は「やる甲斐」と書き、単なる達成感や報酬以上の、自己成長や社会貢献の実感、内発的な充足感を意味します。これは「Purpose」や「Meaningful Work」といった英語表現では捉えきれない、日本独自の深い精神性が込められた言葉と言えるでしょう。仕事を通じて自己実現を図るだけでなく、他者や社会へポジティブな影響を与えることに価値を見出すという、独特の文化観が反映されています。

各国で重視される価値観の違い

海外では、「やりがい」に相当する概念が多様です。参考情報にもある通り、アジア諸国ではスキルアップやキャリアアップの機会を重視する傾向が強く、欧米では自律的に働けるような働き方の工夫が「やりがい」に繋がると考えられています。これらの違いは、各国の文化的背景や経済発展の段階、社会システムが色濃く反映された結果と言えるでしょう。

日本独自の「やりがい」への意識とは

興味深いことに、日本の調査では、95%の人が「仕事においてやりがいは必要だと思う」と回答している一方で、実際に自身の仕事に「やりがい」を感じている人の割合は海外より低いというギャップがあります。この矛盾は、日本の「やりがい」が個人的な充足感だけでなく、組織への貢献や社会的な役割といった、より大きな枠組みで捉えられがちであることに起因するのかもしれません。

ネパール、フランス、英語圏での「やりがい」に迫る

英語圏における「やりがい」の捉え方

英語圏では、「やりがい」という単一の言葉ではなく、文脈に応じて複数の表現が使われます。例えば、「Purpose」（目的意識）、「Meaningful Work」（意義のある仕事）、「Job Satisfaction」（仕事の満足度）などが代表的です。これらの言葉を通じて、個人の達成感や社会への貢献、自己成長といった要素がバランス良く求められ、仕事を通じて個人の価値観と合致する社会貢献を目指す「Purpose-driven」な働き方が注目されています。

フランスにおける仕事と人生のバランス

フランスでは、仕事は人生の一部であり、決してすべてではないという考え方が根強いです。彼らにとっての「やりがい」は、仕事そのものよりも、仕事とプライベートの調和の中に求められることが多いです。労働時間に関する厳格な規制や長期休暇の取得が一般的であることからも、その文化が伺えます。仕事で得られる精神的な充実感を重視しつつも、家族や友人との時間、趣味の充実といった仕事以外の要素が人生の豊かさを構成する上で不可欠だと考えられています。

アジア諸国における「やりがい」の多様な側面

ネパールを含む多くのアジア諸国では、仕事における「やりがい」の捉え方が多様です。参考情報にあるように、スキルアップやキャリアアップの機会を重視する傾向が強いです。これは、個人の成長が経済的安定や社会的な地位向上に繋がりやすいという背景があります。また、家族やコミュニティとの繋がりが強く、仕事が家族の生活を支え、コミュニティに貢献するという意識も「やりがい」に大きく影響を与えることがあります。

日本独特？「やりがい」と仕事の結びつき

低いエンゲージメント率が示す日本の現状

日本の労働者の「やりがい」に関する現状は、非常に厳しい数字によって示されています。2023年のギャラップ社の調査によると、日本の労働者のエンゲージメント率はわずか6%であり、これは世界平均23%、東アジア平均18%と比較しても著しく低い水準です。

さらに、PwCの2025年の調査では、自身の仕事に満足している日本の労働者は29%にとどまり、OECD加盟国中で低い結果となっています。この低エンゲージメントは、個人の精神的な不調だけでなく、企業全体の生産性の低下、ひいては日本経済に年間約86兆円もの機会損失をもたらしていると分析されており、看過できない問題です。

伝統的仕事観の影響と現代の課題

日本の低いエンゲージメント率の背景には、伝統的な仕事観が深く関係している可能性が高いです。これまで日本では、年功序列、終身雇用、そして会社への忠誠といった価値観が重んじられてきました。このようなシステムは、安定をもたらす一方で、個人の自律的な成長意欲や内発的な「やりがい」を阻害する要因となり得ると指摘されています。

与えられた仕事をこなすことが重視され、自らのアイデアや意見が反映されにくい環境では、仕事に対する熱意も生まれにくいでしょう。現代の多様な働き方や価値観が尊重される時代において、伝統的な仕事観だけでは個人の「やりがい」を引き出し、高いエンゲージメントを維持することは困難になっています。

「お金より働きがい」の時代の到来

世界的に見ても「お金より働きがい」という価値観は広まっており、特に若い世代では、仕事が単なる生計を立てる手段ではなく、人生を豊かにする重要な要素であるという認識が浸透しています。日本においても、この傾向は例外ではありません。

95%が「やりがいが必要」と認識しているというデータは、労働者が単なる報酬以上の価値を仕事に見出そうとしている証拠です。企業側も、従業員のエンゲージメントを高めるためには、単なる福利厚生の充実だけでなく、仕事の意義や目的を明確にし、自己成長の機会を提供することが不可欠であると認識し始めています。この「働きがい」を重視するトレンドは、今後の日本の労働環境を大きく変革していく原動力となるでしょう。

「やりがい」を見つけるためのヒント

自己成長と貢献の視点

「やりがい」を見つける上で最も重要な視点の一つは、自己成長の実感と社会への貢献です。参考情報にもあるように、仕事を通じて「自己成長を感じたり、社会に貢献している実感を得たりすること」が「やりがい」の核を成します。自分の仕事がどのように社会や顧客に役立っているのかを具体的に考えてみることが大切です。新しいスキルの習得や、これまで経験したことのない業務に挑戦することで、自身の能力が向上している実感を得ることも重要です。

内発的動機付けを追求する

「やりがい」は、外部からの評価や報酬だけでなく、自身の内側から湧き上がる「やる価値があること」「やるだけの値打ちがあること」という感覚に深く根差しています。これを内発的動機付けと呼びます。自分の興味や関心、得意なこと、情熱を傾けられることは何かを深く掘り下げてみましょう。現在の仕事内容に直接結びつかなくても、その要素を仕事の一部に取り入れる方法はないでしょうか。自分の価値観と仕事内容が一致する部分を見つけ出すことで、仕事が「やらされるもの」から「自ら進んで行うもの」へと変わり、より深い充足感を得られるようになるはずです。

仕事以外の活動との関連性

「やりがい」は必ずしも仕事の中だけで完結するものではありません。仕事以外のプライベートな活動が、仕事の「やりがい」に良い影響を与えることも多々あります。趣味やボランティア活動、地域活動などを通じて得られる充実感やスキルが、仕事に応用できるケースも少なくありません。仕事以外の時間を充実させることで、心身のリフレッシュに繋がり、仕事に対する新たな視点やエネルギーが生まれます。結果として、仕事へのモチベーションが高まり、より大きな「やりがい」を感じられるようになるでしょう。ワークライフバランスを意識し、多角的な視点から「やりがい」を育んでいきましょう。

自分らしい「やりがい」の見つけ方

自分の価値観を再認識する

「やりがい」は一人ひとり異なります。自分にとって何が本当に重要なのか、自分の価値観を明確にすることが、自分らしい「やりがい」を見つける第一歩です。例えば、安定、成長、貢献、自由、創造性など、自分が仕事や人生に何を求めているのかを具体的に書き出してみるのも良いでしょう。過去に「楽しかった」「充実していた」と感じた経験を振り返り、その時何が満たされていたのかを分析するのも効果的です。自分の核となる価値観が明確になれば、現在の仕事がそれにどれだけ合致しているかが見えてきます。

小さな「やりがい」から始めるアプローチ

いきなり大きな「やりがい」を見つけようと焦る必要はありません。日々の業務の中で、少しでも「楽しい」「意味がある」と感じる瞬間を見つけることから始めてみましょう。例えば、資料がうまく作れた、顧客から感謝の言葉をもらえた、同僚の役に立てたなど、些細なことでも構いません。そうした小さな成功体験やポジティブな感情を意識的に認識し、積み重ねていくことが重要です。そうすることで、仕事全体に対する見方が徐々に変わり、「やりがい」の総量が増えていくのを感じられるようになるでしょう。また、目標設定と達成感を意識することも効果的です。

環境と働き方の見直し

もし現在の職場環境や働き方が、あなたの「やりがい」を阻害していると感じるなら、環境や働き方の見直しも検討すべきです。これは、必ずしも転職を意味するわけではありません。例えば、上司や同僚と「やりがい」について話し合ってみる、業務内容の改善提案をする、部署異動を希望するなど、まずは現状を変えるためのアクションを起こしてみましょう。リモートワークやフレックスタイム制度など、より柔軟な働き方を活用することでプライベートとのバランスが取れ、「やりがい」を見出しやすくなる場合もあります。

もし、それでも状況が改善しない場合は、新たなキャリアパスを模索することも選択肢の一つです。自分らしい「やりがい」を追求するためには、時に大きな決断も必要になります。自分の心に正直になり、より良い環境を求めて行動する勇気を持つことが大切です。