1. ダブルワークにおける社会保険の基本:扶養と二重加入
    1. ダブルワークにおける社会保険の基本的な考え方
    2. 二つの勤務先で社会保険に加入する場合の手続き
    3. 社会保険加入のメリット・デメリット
  2. 社会保険の加入条件:20時間未満でも加入できるケースとは?
    1. 社会保険の基本加入条件を再確認
    2. 20時間未満では基本的に社会保険に加入できない
    3. 2024年10月からの適用拡大による影響
  3. ダブルワークで社会保険料を節約する方法:賢く扶養を活用
    1. 年収の壁と社会保険料の関係性
    2. 扶養を維持するための収入調整戦略
    3. 社会保険加入によるメリット・デメリットの再考
  4. 社会保険加入を避けるには?知っておくべき「バレる」リスク
    1. 社会保険の加入は個人の意思で避けられない
    2. ダブルワークが勤務先に「バレる」仕組み
    3. 条件を満たしているのに加入しないリスク
  5. ダブルワークの社会保険に関するよくある質問とその回答
    1. Q1: 複数の職場で働いている場合、社会保険料はどのように計算されますか?
    2. Q2: 扶養内でダブルワークを続けたいのですが、注意点はありますか?
    3. Q3: ダブルワークで社会保険に加入するメリットはありますか?
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: ダブルワークで社会保険は片方だけ加入できますか?
    2. Q: ダブルワークで社会保険の二重加入になる条件は何ですか?
    3. Q: ダブルワークで、どちらの勤務先も週20時間未満ですが社会保険に加入しますか?
    4. Q: ダブルワークの社会保険、入りたくない場合はどうすればいいですか?
    5. Q: ダブルワークで月88,000円を超えると、社会保険料はいくらくらいかかりますか?

ダブルワークにおける社会保険の基本:扶養と二重加入

近年、働き方の多様化に伴い、ダブルワーク(副業・兼業)を選択する方が増えています。しかし、ダブルワークにおける社会保険の扱いは、非常に複雑で誤解も少なくありません。特に「扶養」や「二重加入」といったキーワードは、多くの人が疑問を抱くポイントでしょう。

ここでは、ダブルワークで社会保険に加入する際の基本的なルールと、知っておくべき重要なポイントをわかりやすく解説していきます。

ダブルワークにおける社会保険の基本的な考え方

ダブルワークをしている場合でも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、それぞれの勤務先で個別に判断されます。

つまり、「A社での収入とB社での収入を合算して、社会保険の加入条件を満たすかどうか」を見るわけではありません。あくまでそれぞれの勤務先で、単独で加入条件を満たしているかが問われます。

社会保険の主な加入条件は以下の通りです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 賃金の月額が88,000円以上(年収106万円以上)であること
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと(※夜間・定時制学生は加入対象となる場合あり)
  • 勤務先の従業員数が51人以上であること(※2024年10月からは101人以上の企業も対象となる予定)

例えば、A社で週25時間勤務、月収10万円、B社で週15時間勤務、月収5万円の場合、A社では加入条件を満たしますが、B社では週の労働時間が20時間未満であるため、社会保険の加入対象とはなりません。この場合、A社のみで社会保険に加入することになります。

このように、まずはそれぞれの勤務先で自身の働き方が上記の条件に当てはまるかを確認することが、社会保険の基本を理解する第一歩です。

二つの勤務先で社会保険に加入する場合の手続き

もし、ダブルワーク先の両方の勤務先で社会保険の加入条件を満たした場合は、どのようにすれば良いのでしょうか?

この場合、どちらか一方の勤務先を選ぶのではなく、両方の勤務先で社会保険に加入する必要があります。これは法律で定められた義務であり、避けられるものではありません。

両方の勤務先で社会保険に加入することになった場合、重要な手続きとして「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出する必要があります。この書類を提出することで、二つの勤務先での収入が合算され、その合算された総報酬額に基づいて社会保険料が計算されることになります。

手続きが完了すると、健康保険証はどちらか一方の勤務先の健康保険組合から発行されます。しかし、保険料の計算には両方の収入が反映されるため、手取り額に大きな影響を与える可能性があります。

この手続きは従業員自身が行う必要があるため、両方の勤務先で加入条件を満たすことが分かった時点で、速やかに年金事務所に相談し、必要な手続きを進めるようにしましょう。

社会保険加入のメリット・デメリット

ダブルワークで社会保険に加入することは、メリットとデメリットの両面があります。自身のライフプランや働き方に応じて、どちらの側面がより大きいかを慎重に検討することが重要です。

【メリット】

  • 将来の年金受給額の増加: 厚生年金に加入することで、国民年金のみの場合と比較して、将来受け取れる年金額が増加する可能性があります。老後の生活設計において、これは大きな安心材料となるでしょう。
  • 保障の手厚さ: 健康保険の保障が手厚くなる場合があります。例えば、病気やケガで休業した場合の傷病手当金、出産時の出産手当金など、国民健康保険にはない手厚い給付が受けられることがあります。

【デメリット】

  • 社会保険料の負担増: 両方の職場で保険料を支払うことになり、手取り収入が減少する可能性があります。特に、複数の職場でそれぞれが小規模な収入であっても、合算されることで社会保険料が高額になるケースもあります。
  • 手続きの複雑化: 複数の職場での加入手続きや、年金事務所への届出など、事務的な負担が増加します。また、確定申告の際も複数の勤務先の情報をまとめる必要があります。

参考情報にあるように、月額賃金88,000円の場合でも、健康保険料、介護保険料(40歳以上の場合)、厚生年金保険料を合わせると約14,489円(折半額)が毎月手取りから差し引かれます。これが二つの勤務先の合算収入で計算されるとなると、さらに負担が増える可能性があることを認識しておく必要があります。

社会保険の加入条件:20時間未満でも加入できるケースとは?

社会保険の加入条件は複雑に見えますが、いくつかの主要なポイントを押さえれば理解しやすくなります。特に「週の所定労働時間20時間以上」という条件は、ダブルワーカーにとって非常に重要な基準です。ここでは、社会保険の基本条件を改めて確認し、例外的なケースや将来的な変更点について解説します。

社会保険の基本加入条件を再確認

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は、企業に勤める労働者にとって非常に重要な制度です。ダブルワークをしている場合でも、それぞれの勤務先が以下の条件を単独で満たすかどうかで加入義務が生じます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること。
  • 賃金の月額が88,000円以上(年収に換算すると106万円以上)であること。
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること。
  • 学生ではないこと(ただし、夜間・定時制の学生は加入対象となる場合があります)。
  • 勤務先の従業員数が51人以上であること。

この「従業員数51人以上」という条件は、2024年10月からは「101人以上」の企業にも拡大される予定です。これにより、これまで社会保険の適用対象外だった企業で働くダブルワーカーも、新たに加入対象となる可能性が高まります。

重要なのは、これらの条件が「それぞれの勤務先ごと」に適用されるという点です。複数の勤務先の労働時間や賃金を合算して判断するわけではないため、自身の働き方を個々の勤務先で確認することが不可欠です。

20時間未満では基本的に社会保険に加入できない

見出しでは「20時間未満でも加入できるケースとは?」とありますが、参考情報に基づいて言えば、原則として「週の所定労働時間が20時間未満」であれば、社会保険の加入対象とはなりません。これは、社会保険の適用拡大の主要な条件の一つとして「週20時間以上」が明確に定められているためです。

したがって、「20時間未満で社会保険に加入できる特別なケース」は基本的に存在しないと理解してください。

ただし、唯一の例外として挙げられるのは、「夜間学生または定時制の学生」の場合です。通常の学生は社会保険の加入対象外とされていますが、夜間や定時制で学ぶ学生は、生計を維持するために労働に従事しているとみなされ、上記の他の加入条件(週20時間以上、月額8.8万円以上など)を満たせば、社会保険に加入できる場合があります。

しかし、これはあくまで学生のケースであり、一般のダブルワーカーにとっては「週20時間以上」の条件は揺るぎない基準となります。この条件を満たさない限り、その勤務先で社会保険に加入することはありません。

そのため、社会保険への加入を避けたい場合は、各勤務先での週の労働時間を20時間未満に調整することが一つの方法となりますが、それには自身の収入計画とのバランスを考慮する必要があります。

2024年10月からの適用拡大による影響

社会保険の適用範囲は、段階的に拡大されてきており、2024年10月には新たな変更が実施されます。

現在の社会保険の短期労働者に対する適用拡大は、従業員数101人以上の企業が対象となっていますが、2024年10月からはこの基準が「従業員数51人以上の企業」に引き下げられます

この変更は、多くのダブルワーカーに影響を及ぼす可能性があります。これまで勤めていた職場が、従業員数101人未満で社会保険の適用対象外だったとしても、2024年10月以降に51人以上の企業に該当する場合、自身の働き方が他の加入条件(週20時間以上、月額8.8万円以上など)を満たしていれば、新たに社会保険への加入義務が生じることになります。

例えば、現在従業員数70人の企業で週25時間勤務、月額9万円の収入を得ている方がいたとします。現行制度では社会保険の加入対象外ですが、2024年10月からは上記の条件を満たすため、社会保険への加入義務が生じます。これにより、手取り収入が減少する可能性があります。

自身の勤務先の従業員数を把握し、2024年10月以降の制度改正が自身の働き方にどう影響するかを事前に確認しておくことが賢明です。必要であれば、勤務先の人事担当者や社会保険労務士などの専門家にも相談し、最新の情報を得るようにしましょう。

ダブルワークで社会保険料を節約する方法:賢く扶養を活用

ダブルワークを考える際、収入を増やしたいという目的と同時に、社会保険料の負担をいかに抑えるかという点は、多くの人が悩む部分です。特に、配偶者や親の扶養に入っている場合、年収の「壁」を意識した働き方が重要になります。ここでは、社会保険料を節約するための賢い方法と、扶養制度を最大限に活用する戦略について解説します。

年収の壁と社会保険料の関係性

ダブルワークで収入を得る上で、特に意識すべきなのが、社会保険や税金に影響を及ぼす「年収の壁」です。主な「壁」は以下の通りです。

  • 103万円の壁: この年収を超えると、所得税がかかり始めます。また、配偶者がいる場合、配偶者控除の対象から外れる可能性があります。
  • 106万円の壁: 週20時間以上勤務、月額賃金8.8万円以上、2ヶ月を超える雇用見込み、学生でない、勤務先の従業員数が51人以上(2024年10月からは101人以上)といった条件を全て満たす場合、この年収を超えると社会保険への加入義務が発生します。これにより、自分で社会保険料を支払う必要が生じ、手取りが大きく減少する可能性があります。
  • 130万円の壁: この年収を超えると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れることになります。扶養から外れた場合、自身で国民健康保険料と国民年金保険料を支払う必要が生じ、年間で数十万円の負担増となることが一般的です。

これらの壁を正確に理解し、自身の収入計画に照らし合わせることが、社会保険料を賢く節約するための第一歩です。特に106万円と130万円の壁は、社会保険料の負担が直結するため、注意が必要です。

扶養を維持するための収入調整戦略

配偶者や親の扶養に入りながらダブルワークをする場合、最も重要なのは「扶養の範囲内で収入をコントロールする」ことです。

社会保険料の節約という観点から見ると、年収130万円未満に抑えることが最も効果的な戦略となります。130万円を超えてしまうと、強制的に扶養から外れ、自身で国民健康保険と国民年金に加入し、その保険料を支払わなければならなくなるためです。

具体的には、毎月の収入が約108,333円(130万円 ÷ 12ヶ月)を超えないように、労働時間やシフトを調整する必要があります。

また、週20時間以上勤務などの条件を満たす場合、106万円の壁も意識しなければなりません。月額賃金88,000円(年収106万円)を超えると、勤務先で社会保険に加入することになり、手取りが減少します。

扶養を維持しつつ社会保険料の負担を避けるには、以下の点を考慮して働き方を調整することが有効です。

  • 各勤務先での週の所定労働時間を20時間未満に抑える。
  • 各勤務先での月額賃金を88,000円未満に抑える。
  • 年間収入の合計を130万円未満に抑える。

これらの条件を全て満たすように計画的に働くことで、社会保険料の自己負担を回避し、手取りを最大化することが可能です。

社会保険加入によるメリット・デメリットの再考

社会保険料の節約を考える一方で、社会保険に加入することのメリットも考慮に入れることが重要です。

たしかに、社会保険料の負担は手取りを減少させますが、その分、将来の安心や保障という大きなメリットも得られます。

  • 将来の年金受給額の増加: 厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額が国民年金のみの場合よりも手厚くなります。老後の生活設計において、これは非常に大きなメリットです。
  • 健康保険の手厚い保障: 健康保険の加入者は、病気やケガで仕事を休んだ場合の傷病手当金、出産時の出産手当金など、国民健康保険にはない手厚い給付を受けられる可能性があります。また、雇用保険に加入していれば、失業給付も受けられます(雇用保険は主たる勤務先でのみ加入)。

一時的に手取りが減るデメリットと、将来の安心や保障が手厚くなるメリットを比較検討し、ご自身のライフステージや将来設計に合わせた働き方を選ぶことが賢明です。特に、将来の年金不安が大きい現代において、厚生年金に加入することは、長期的な視点で見れば大きなリターンをもたらす可能性があります。

「節約」という視点だけでなく、「投資」という視点も持って、社会保険への加入を検討してみましょう。

社会保険加入を避けるには?知っておくべき「バレる」リスク

ダブルワークをしている方の中には、「社会保険料の負担を避けたい」「勤務先に副業を知られたくない」と考える方もいるでしょう。しかし、社会保険への加入は法律で定められた義務であり、条件を満たせば個人の意思で避けることはできません。ここでは、社会保険加入を避けることはできないこと、そしてダブルワークが勤務先に「バレる」可能性と、そのリスクについて詳しく解説します。

社会保険の加入は個人の意思で避けられない

「社会保険加入を避けたい」という気持ちは理解できますが、結論から言うと、社会保険の加入条件を満たしている場合は、個人の意思で加入を避けることはできません。これは、健康保険法や厚生年金保険法などの法律によって義務付けられているためです。

もし、あなたの勤務先が社会保険の適用事業所であり、あなたが以下の条件を全て満たしている場合、その勤務先で社会保険に加入しなければなりません。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金の月額が88,000円以上(年収106万円以上)
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと(夜間・定時制学生は例外あり)
  • 勤務先の従業員数が51人以上(2024年10月からは101人以上)

したがって、「避ける」というよりは、「社会保険の加入条件を満たさないように労働時間や収入を調整する」という考え方が現実的です。

例えば、週の労働時間を20時間未満に抑える、または月額賃金を88,000円未満に調整するといった方法が考えられます。ただし、これにより得られる収入が減ってしまうため、自身の生活設計と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

社会保険に加入しないことが目的で、本来の働き方を制限するのは、メリットばかりではありません。将来の保障や年金受給額にも影響が出ることを理解しておきましょう。

ダブルワークが勤務先に「バレる」仕組み

ダブルワークをしている場合、「今の勤務先に副業がバレてしまうのではないか」と心配する方は少なくありません。社会保険の加入状況は、副業が勤務先に知られる可能性のある要因の一つです。

特に、二つの勤務先で社会保険の加入条件を満たし、両方の職場で社会保険に加入する場合は、勤務先にダブルワークが知られるリスクが高まります。

その理由は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」という書類を年金事務所に提出する必要があるためです。この届出は、両方の勤務先での雇用情報に基づいて行われ、年金事務所から各勤務先へ通知が行われることで、副業の事実が間接的に伝わる可能性があります。

ただし、健康保険証に他の勤務先の情報が直接記載されることはありません。あくまで、年金事務所を通じて事務的に情報が共有されることで「バレる」という形になります。

一方、雇用保険については、社会保険とは異なり、原則として主たる勤務先1か所のみで加入します。雇用保険の二重加入は認められていないため、雇用保険を通じて副業が判明するケースは、社会保険とは少し異なります。

多くの企業が就業規則で副業を禁止している場合があるため、副業を始める前に必ず就業規則を確認し、必要であれば事前に会社に相談することが賢明です。

条件を満たしているのに加入しないリスク

もし、あなたが社会保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、何らかの理由で社会保険に加入しなかった場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

まず、加入条件を満たしているにもかかわらず社会保険に加入していないことが判明した場合、年金事務所から指導が入ります。そして、過去に遡って社会保険料を徴収される可能性があります。この場合、最大で2年間分の保険料を一括で支払うことになり、大きな経済的負担となるでしょう。

さらに、遡及加入となった場合、勤務先にも連絡が行くため、会社側も社会保険料の支払いを求められることになります。これにより、会社との信頼関係が損なわれるだけでなく、就業規則違反として懲戒処分の対象となる可能性もゼロではありません。

社会保険は、病気やケガ、老後の生活、出産、育児など、人生の様々な局面で私たちを支える重要なセーフティネットです。保険料の負担は一時的に重く感じるかもしれませんが、その恩恵は計り知れません。

安易に加入を避けようとすることは、結果的に自身を不利な状況に追い込むことになりかねません。社会保険の加入条件を正しく理解し、もし条件を満たしている場合は、適切に加入手続きを行うことが、長期的な視点で見ても最も安全で賢明な選択と言えるでしょう。

ダブルワークの社会保険に関するよくある質問とその回答

ダブルワークにおける社会保険の制度は複雑で、多くの疑問や不安がつきものです。ここでは、ダブルワークをしている方からよく寄せられる社会保険に関する質問とその回答をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら、不明点を解消する手助けとしてください。

Q1: 複数の職場で働いている場合、社会保険料はどのように計算されますか?

A: 複数の職場で社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件をそれぞれ満たした場合は、両方の職場の賃金を合算して社会保険料が計算されます

この場合、従業員自身が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出する必要があります。この届出により、年金事務所はあなたの全ての社会保険加入事業所での報酬月額を把握し、それらを合算した額を「標準報酬月額」として保険料を計算します。

計算された保険料は、原則としてそれぞれの勤務先の賃金額に応じて按分され、各勤務先があなたの給与から天引きし、会社負担分と合わせて納付します。例えば、A社で月15万円、B社で月10万円稼いでいる場合、合計25万円が標準報酬月額の基準となり、その保険料がA社とB社の給与割合(15万:10万)に応じて天引きされる形になります。

これにより、社会保険料の総額が増加し、手取り収入が減少する可能性がありますが、将来受け取れる年金額が増えるといったメリットもあります。

Q2: 扶養内でダブルワークを続けたいのですが、注意点はありますか?

A: 扶養内でダブルワークを続けたい場合、最も重要なのは「年収の壁」を超えないように収入をコントロールすることです。

特に意識すべきは以下の2つの壁です。

  1. 106万円の壁: 週20時間以上勤務、月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、勤務先の従業員数が51人以上(2024年10月からは101人以上)といった条件を全て満たした場合、この年収を超えると社会保険への加入義務が発生します。これにより、自身で社会保険料を支払うことになり、手取りが減少します。
  2. 130万円の壁: この年収を超えると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険料と国民年金保険料を支払う必要が生じます。年間で数十万円の負担増となる可能性が高く、手取りが大幅に減少する可能性があります。

扶養を維持しつつ社会保険料の負担を避けるには、以下の戦略が有効です。

  • 各勤務先での週の所定労働時間を20時間未満に抑える。
  • 各勤務先での月額賃金を88,000円未満に抑える。
  • 年間収入の合計を130万円未満に抑える。

これらの条件を全て満たすように計画的に労働時間や収入を調整することが、扶養内で社会保険料の負担を避けるための鍵となります。自身の年間収入がどのくらいになりそうか、常に意識して働き方を調整しましょう。

Q3: ダブルワークで社会保険に加入するメリットはありますか?

A: 社会保険料の負担増はデメリットとして挙げられますが、ダブルワークで社会保険に加入することには、将来に向けた大きなメリットもあります。

  1. 将来の年金受給額の増加: 厚生年金に加入することで、国民年金のみの場合と比較して、将来受け取れる年金額が増加します。複数の勤務先での報酬が合算されて年金計算に反映されるため、老後の生活設計において大きな安心材料となります。
  2. 健康保険の手厚い保障: 健康保険に加入すると、病気やケガで仕事を休んだ際に支給される「傷病手当金」や、出産時の「出産手当金」など、国民健康保険にはない手厚い給付を受けられる場合があります。これにより、予期せぬ事態が起こった際の経済的リスクを軽減できます。
  3. 信用力の向上: 社会保険に加入していることは、安定した収入があることの証明にもなり、住宅ローンや各種ローンの審査において有利に働く場合があります。

参考情報にあるように、月額賃金88,000円で加入した場合でも、年間で約17万円(14,489円 × 12ヶ月)の保険料負担(折半額)が生じますが、その対価として将来の安心と手厚い保障が得られます。

社会保険への加入は、目先の収入だけでなく、長期的な視点での安心と保障を得るための「投資」と考えることもできます。デメリットだけでなく、メリットもしっかりと理解した上で、ご自身のキャリアプランやライフプランに最適な選択をすることが大切です。