副業禁止の境界線！年間20万円以下なら大丈夫？

「副業がバレたらどうしよう…」「年間20万円以下なら申告しなくていいって聞いたけど、会社にバレない？」
近年、働き方の多様化とともに副業への関心が高まる一方で、会社員の皆さんからはこのような疑問や不安の声がよく聞かれます。

副業解禁の流れがあるとはいえ、依然として多くの企業で副業が禁止されているのが現状です。しかし、法律上、全ての副業が禁止されているわけではありません。
本記事では、副業禁止規定の基本から、よく耳にする「年間20万円ルール」の真実、そして賢く副業と本業を両立させるためのポイントまで、詳しく解説していきます。

あなたの副業ライフを成功させるために、ぜひ最後までお読みください。

副業禁止規定の基本と例外

会社の副業規定の現状と法的背景

多くの企業が就業規則で副業を禁止している背景には、企業側のさまざまな懸念があります。例えば、従業員が副業に時間を割きすぎて本業がおろそかになることによる生産性の低下、競合他社での副業による情報漏洩やノウハウの流出、あるいは本業の社会的信用を損なう行為などです。

しかし、近年では働き方改革や多様な人材の活用を背景に、副業を解禁したり、奨励したりする企業が増えています。2024年の調査によると、副業が認められている企業で働く人の割合は27.5%と、前年調査から増加傾向にあります。一方で、依然として47.5%の人が副業禁止の会社に勤務しており、副業を巡る企業のスタンスは二極化していると言えるでしょう。

法的には、労働者は労働時間外の活動については原則自由とされており、企業が一方的に副業を禁止することは難しい面もあります。しかし、就業規則に明確な副業禁止規定があり、合理的な理由（本業への支障、企業秘密の漏洩、競業避止など）がある場合は、その規定が有効となる可能性が高いです。
したがって、ご自身の会社の就業規則をまずは確認することが最も重要となります。

副業が認められるケース、禁止されるケース

一概に「副業禁止」と言っても、全ての副業が一律に禁止されているわけではありません。一般的に、企業が副業を容認しやすいのは、以下のようなケースです。

• 本業に支障が出ない範囲での活動
• 本業と競合しない業種での活動
• 情報漏洩のリスクがない活動
• スキルアップや自己成長を目的とした活動
• 社会貢献的な活動

一方で、明確に禁止され、違反すると厳しい処分が下される可能性が高いのは、以下のような副業です。

• 業務時間中に副業を行う
• 本業の職務専念義務に反し、著しく本業に支障が出る（過度な疲労など）
• 競合他社で働く、または競合他社に情報を提供する
• 本業で知り得た機密情報を利用する
• 会社の社会的信用を低下させるような活動

これらの規定に違反した場合、就業規則の内容によっては、減給や降格といった懲戒処分、悪質な場合は解雇理由として認められるケースもあります。
特に、競合他社での副業や情報漏洩は、企業にとって致命的な損害を与えかねないため、非常に重く受け止められます。

企業側と労働者側の視点

企業が副業を容認するメリットとしては、従業員が副業で得た新たな知識やスキルを本業に活かせる点や、従業員のモチベーション向上、多様なキャリア形成への支援などが挙げられます。優秀な人材の定着にも繋がり、結果として企業全体の生産性向上に寄与する可能性もあります。

一方で、労働者が副業を行う際には、本業への影響を最小限に抑えるための自己管理が不可欠です。特に注意すべきは、本業で負っている秘密保持義務や職務専念義務です。これらの義務に違反しないよう、常に意識しておく必要があります。

副業を始める前に、会社の人事部や上司に事前に相談し、許可を得ることが、トラブルを未然に防ぐ最も賢明な方法です。特に、就業規則で副業が「原則禁止」となっている場合は、相談なしに進めるのはリスクが高すぎます。相談することで、副業の内容や時間、本業への影響などを考慮し、会社として容認される道が開けることもあります。正直な姿勢で向き合うことが、信頼関係を築く上で重要となるでしょう。

年間20万円の壁とは？具体例で解説

「20万円ルール」の基本的な理解

副業をしている会社員の方々がよく耳にする「年間20万円ルール」とは、副業による所得（収入から経費を差し引いた額）が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告が不要になる、という特例のことです。これは所得税法に基づいたルールであり、多くの副業従事者にとって重要なポイントとなります。

ここで重要なのは「収入」ではなく「所得」が20万円以下という点です。例えば、副業で得た収入が30万円であっても、その副業を行うためにかかった経費が15万円であれば、所得は15万円（30万円 – 15万円）となり、20万円以下に該当するため、所得税の確定申告は不要となるわけです。経費をきちんと計上することで、所得を抑え、申告の要否が変わる可能性があります。

ただし、この「20万円ルール」は所得税の確定申告にのみ適用されるものです。住民税に関しては別途申告が必要な場合がありますので、この点を誤解しないように注意が必要です。住民税は所得税とは異なり、所得の金額にかかわらず、収入があれば申告が必要となるケースがあります。

具体例で見る20万円の境界線

では、具体的なケースで「20万円の壁」を考えてみましょう。

例えば、あなたがWebライターとして副業をしているとします。1年間の収入が50万円で、執筆のための書籍購入費やインターネット回線費用、PCの減価償却費などの経費が35万円かかったとします。この場合、あなたの副業所得は「収入50万円 – 経費35万円 = 15万円」となります。この15万円は20万円以下であるため、所得税の確定申告は不要です。

別の例として、オンライン講師として副業をしている場合。年間収入が40万円、教材作成費用やオンライン会議システムの利用料、電気代の一部などの経費が10万円かかったとすると、副業所得は「収入40万円 – 経費10万円 = 30万円」となります。この場合、所得が20万円を超えるため、所得税の確定申告が必要になります。

このように、副業の種類や内容によって経費の計上方法は異なりますが、日々の領収書やレシートをきちんと保管し、どのような費用が副業に必要な経費として認められるかを理解しておくことが、正確な所得計算には不可欠です。国税庁のウェブサイトなどで経費に関する情報を確認し、不安な場合は税理士に相談することをおすすめします。

住民税の申告義務と注意点

「年間20万円以下の所得なら確定申告は不要」という話を聞くと、住民税も申告しなくて良いと誤解しがちですが、これは間違いです。住民税には所得税のような「20万円ルール」はありません。副業による所得が20万円以下であっても、原則として住民税の申告（市区町村への住民税申告書提出）は必要です。

なぜなら、住民税は地方税であり、その地域の行政サービスを維持するための重要な財源だからです。所得税の確定申告を行えば、その情報が税務署から市区町村に連携されるため、別途住民税の申告は不要となります。しかし、所得税の確定申告が不要な場合（つまり所得が20万円以下の場合）は、自分で住民税の申告を行う必要があるのです。

住民税の徴収方法には、「特別徴収」（給与から天引きされる方法）と「普通徴収」（自分で納付する方法）があります。副業の住民税が特別徴収されると、会社に副業がバレる可能性が高まります。なぜなら、給与以外の所得に対する住民税額が給与からの天引き額に上乗せされ、会社の経理担当者が不審に思う可能性があるからです。
これを避けるためには、確定申告書や住民税申告書で、副業分の住民税を「普通徴収」に選択する手続きを忘れないようにしましょう。これにより、副業分の住民税は自宅に送付される納付書で自分で納める形となり、会社にバレるリスクを軽減できます。

確定申告と副業禁止の関係

確定申告が「不要」でも「した方が良い」ケース

副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、あえて確定申告をした方が税金面でメリットがあるケースがいくつか存在します。

• 税金の還付を受けられる場合: 副業で源泉徴収（報酬からあらかじめ税金が引かれていること）された所得税が、本来納めるべき税額よりも多い場合があります。確定申告をすることで、払いすぎた税金が還付される可能性があります。
• 所得控除を受けたい場合: 年末調整では適用されない、特定の所得控除（例: 医療費控除、住宅ローン控除の初年度、寄付金控除など）を受けたい場合、確定申告を行うことで所得税を軽減できます。副業所得が少なくても、本業の所得も含めた総所得から控除が適用されるため、結果的に還付につながることもあります。
• 損益通算をしたい場合: 不動産経営や事業所得として扱われる副業で赤字が出た場合、その損失を本業の給与所得などと相殺（損益通算）することができます。これにより、本業で納める所得税も軽減され、結果として還付を受けられる可能性があります。

これらのケースに該当する場合は、20万円以下であっても積極的に確定申告を検討する価値があります。税金を取り戻せるチャンスを逃さないようにしましょう。

確定申告が会社にバレるリスク

副業が会社にバレる主な原因として、住民税の通知が挙げられます。所得税の確定申告を行うと、その情報が税務署から市区町村に共有され、それに基づいて住民税額が決定されます。

もし副業分の住民税が本業の給与から天引きされる「特別徴収」として会社に通知されてしまうと、会社の経理担当者は「あれ？この人の住民税、給与額の割に高いな…」と気づき、そこから副業が発覚する可能性があります。これが、副業が会社にバレる最も典型的なパターンです。

このリスクを回避するためには、確定申告書を作成する際に、「住民税に関する事項」の欄で「自分で納付（普通徴収）」を選択することが非常に重要です。この選択をすることで、副業による住民税は自宅に直接納付書が送付される形となり、会社に通知されず、自分で納めることができます。これにより、会社に副業がバレる可能性を大幅に低減できます。

ただし、会社によっては特別徴収以外の方法を認めないケースや、住民税の通知書の内容から何らかの形で副業を推測される可能性もゼロではありません。完全にバレない保証はありませんが、適切な手続きを行うことでリスクを最小限に抑えることは可能です。

副業所得の種類と申告時の注意点

副業の所得は、その内容によって「給与所得」「事業所得」「雑所得」などに分類されます。この分類によって、確定申告の際の扱いが大きく異なるため、自分の副業がどの所得に該当するかを正しく理解しておく必要があります。

• 給与所得: 複数の会社から給与を受け取っている場合など。年末調整は主たる給与支払者で行い、副業の給与所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
• 事業所得: 継続的に独立して事業を行っていると認められる場合。青色申告を選択することで、最大65万円の青色申告特別控除や損失の繰り越しといった大きな節税メリットを受けることができます。ただし、帳簿付けなどの要件があります。
• 雑所得: 上記のいずれにも該当しない所得。Webライターやアフィリエイト、フリマアプリでの販売益（事業として規模が小さい場合）などがこれに該当することが多いです。所得が20万円を超えたら確定申告が必要です。

所得の種類によって、経費として認められる範囲や控除の種類も変わってきます。例えば、事業所得や雑所得では、副業に直接かかった費用（PC代、通信費、消耗品費など）を広く経費として計上できますが、給与所得の場合は必要経費の概念が異なります。

特に、青色申告を選択すると大きな節税効果が期待できますが、事前に税務署への届出が必要であり、複式簿記による帳簿付けが求められます。副業の規模が大きくなってきたら、青色申告の検討や税理士への相談を強くおすすめします。

副業禁止規定をクリアするための注意点

就業規則の確認と事前相談

副業を始める前に、まず何よりも大切なのが、あなたの会社の就業規則を徹底的に確認することです。就業規則は会社と従業員の間の重要な契約であり、副業に関する規定が明記されている場合があります。

多くの企業では、副業が「原則禁止」または「許可制」となっていることが多いです。中には、特定の条件を満たす副業（例：ボランティア活動、資産運用など）は認めるという柔軟な規定を設けている企業もあります。就業規則の内容は企業によって様々ですので、インターネット上の一般的な情報だけでなく、必ず自身の会社の規定を確認してください。

もし就業規則に副業禁止の明確な規定があり、かつあなたが副業を検討している場合は、上司や人事部に事前に相談し、許可を得るようにしましょう。この時、どのような副業を、どのくらいの時間で行う予定か、本業に支障が出ないことをどのように担保するかなどを具体的に説明できるように準備しておくことが重要です。

無許可で副業を始め、後から発覚した場合、就業規則違反として懲戒処分の対象となるリスクがあります。最悪の場合、減給や降格、あるいは解雇といった厳しい処分を受ける可能性もゼロではありません。正直に相談することで、会社との信頼関係を維持し、安心して副業に取り組むことができます。

本業に支障を出さないための自己管理

副業禁止規定をクリアし、会社から容認されるためには、何よりも「本業に支障を出さないこと」が絶対条件となります。

副業に熱中しすぎて、本業の業務に集中できなかったり、残業が増えたり、疲労困憊で体調を崩して欠勤が増えたりするようでは、会社は副業を認められません。企業が副業を容認する最大の理由は、従業員が副業で得たスキルや経験が本業にも良い影響を与えることを期待しているからです。

そのためには、以下のような自己管理が不可欠です。

• 業務時間外での活動の徹底: 副業は必ず本業の勤務時間外に行い、休憩時間中も本業に関連しない業務は避けるべきです。
• 十分な休息と健康管理: 副業によって睡眠不足になったり、健康を害したりしないよう、自分の体と心の状態を常に把握し、無理のない範囲で活動しましょう。
• 時間の使い方を明確にする: 副業に充てる時間を具体的に決め、本業の時間と明確に区別するスケジュール管理が重要です。過度な副業は、かえってストレスとなり本業にも悪影響を及ぼします。

副業はあくまで「副」業であり、本業が最優先という意識を常に持ち続けることが、会社との良好な関係を維持し、長く副業を続けるための秘訣です。

情報漏洩や競業避止義務の遵守

副業を行う上で、特に注意しなければならないのが、情報漏洩のリスクと競業避止義務の遵守です。

本業で知り得た顧客情報、技術情報、企画内容、営業秘密などを副業で利用したり、外部に漏らしたりすることは、企業にとって非常に大きな損害となります。これは就業規則違反だけでなく、不正競争防止法などの法律に違反する行為でもあり、損害賠償請求や刑事罰の対象となる可能性もあります。いかなる理由があっても、本業の情報を副業に持ち出すことは絶対に避けましょう。

また、競業避止義務とは、会社と競合する事業を行わない義務のことです。例えば、あなたがIT企業のエンジニアである場合、競合するIT企業で副業としてシステム開発を行うことは、この義務に違反する可能性が極めて高いです。たとえ情報漏洩がなかったとしても、本業で培ったスキルやノウハウが競合他社に流出するリスクがあるため、多くの企業で禁止されています。

副業を選ぶ際には、本業と全く関係のない分野を選ぶか、もし関連する分野であっても、競合しない、情報漏洩のリスクがないことを明確に確認する必要があります。不安な場合は、弁護士や法律の専門家に相談することも検討してください。これらの義務を軽視すると、取り返しのつかない事態を招く可能性がありますので、十分に注意しましょう。

賢く副業と本業を両立させるために

スキルアップとキャリア形成に繋がる副業選び

副業は単なる収入源だけでなく、自身のスキルアップやキャリア形成の機会と捉えることで、より大きな価値を生み出します。賢く副業を選ぶポイントは、現在の本業や将来のキャリアプランにどのように繋がるかを考えることです。

例えば、本業でマーケティングの仕事をしている方が、副業でWebライティングやSNS運用を行うことで、実践的なデジタルマーケティングスキルを習得できます。これは、本業での成果にも直結し、自身の市場価値を高めることにも繋がるでしょう。また、将来的に独立を考えているのであれば、それに必要なスキルや経験を副業で積むことができます。

自分の強みや興味を活かせる分野を選ぶことも大切です。苦痛に感じる副業は長続きしませんし、本業への悪影響も懸念されます。趣味の延長線上にあることや、これまで学んできたことを活かせる副業であれば、モチベーションを高く維持しやすく、楽しみながらスキルを磨くことができるでしょう。

副業を通じて得られた新たな知識や人脈が、本業に思わぬシナジーをもたらすことも少なくありません。ただ稼ぐだけでなく、「自分にとってどんな価値があるか」という視点で副業を選ぶことが、充実した両立生活を送るための鍵となります。

効率的な時間管理とタスク管理術

本業と副業を両立させる上で、時間管理とタスク管理は非常に重要です。限られた時間の中で最大の成果を出すためには、効率的な方法を身につける必要があります。

まずは、自分の生活リズムや本業の状況を考慮し、副業に充てる時間を具体的にスケジュールに組み込むことから始めましょう。例えば、「平日の夜2時間」「土曜の午前中3時間」など、具体的な時間を確保します。この際、無理のない範囲で継続できる時間設定を心がけることが大切です。

次に、タスク管理ツール（Trello, Asana, Google Keepなど）やシンプルな手帳を活用し、副業でやるべきことを細分化してリストアップします。そして、それぞれのタスクに優先順位をつけ、期日を設定します。これにより、「何を」「いつまでに」「どれくらいやるか」が明確になり、効率的に作業を進めることができます。

• ポモドーロテクニック: 25分集中＋5分休憩を繰り返すことで集中力を維持します。
• GTD（Getting Things Done）: すべてのタスクを洗い出し、整理・実行することで心の余裕を生み出します。
• 重要度・緊急度マトリクス: タスクを「重要度」と「緊急度」で分類し、優先順位を明確にします。

これらのテクニックも参考にしながら、自分に合った時間管理術を見つけ、無理なく継続できる仕組みを構築することが、両立の成功には不可欠です。

税金・保険に関する正しい知識の習得

副業を始める上で、税金や社会保険に関する正しい知識は避けて通れません。これらの知識不足は、思わぬトラブルや損失に繋がりかねないからです。

まず、税金に関しては、本記事で解説した「20万円ルール」や住民税の申告、所得の種類による違いをしっかりと理解しましょう。特に、経費の計上は節税の基本であり、日々の領収書管理や帳簿付けは怠らないようにしてください。所得税や住民税だけでなく、副業の規模が大きくなれば消費税の課税事業者となる可能性も出てきます。

社会保険に関しても、注意が必要です。会社員として健康保険や厚生年金に加入している場合、副業の所得や形態によっては、国民健康保険や国民年金への加入義務が生じたり、扶養から外れることになったりするケースもあります。特に、個人事業主として本格的に副業を行う場合は、社会保険の切り替えが必要となることもあります。

これらの情報は、国税庁のウェブサイトや税務署、年金事務所などで常に最新の情報を確認することが大切です。また、少しでも不安や疑問がある場合は、専門家である税理士に相談することを強くおすすめします。初回無料相談を実施している税理士事務所も多いので、積極的に活用しましょう。正しい知識を身につけることが、安心して副業を継続するための基盤となります。