「副業を始めた」「ブログやYouTubeで収益が出た」など、近年、本業以外の収入を得る機会が増えています。

このような収入の中には「雑所得」に分類され、確定申告が必要になるケースがあることをご存じでしょうか?

「いくらから申告が必要なの?」「書き方がわからない」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

この記事では、2024年(令和6年分)の最新情報をもとに、雑所得の確定申告について、いくらから必要なのか、書き方、よくある疑問、そしてスムーズに進めるためのポイントをわかりやすく解説します。

あなたの確定申告を円滑に進めるための一助となれば幸いです。

雑所得とは?確定申告が必要になるケース

雑所得の定義と具体例

雑所得とは、所得税法で定められた10種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得)のいずれにも当てはまらない所得を指します。

つまり、どの区分にも当てはまらない「その他の所得」が雑所得に分類されるわけです。

具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 公的年金の一部(公的年金等に係る雑所得)
  • 副業による収入(クラウドソーシング、Webライティング、ハンドメイド販売など)
  • ブログやYouTubeの広告収入
  • アフィリエイト収入
  • FXや暗号資産(仮想通貨)の売却益
  • シェアリングエコノミーによる収入(フリマアプリの売却益で、生活用動産以外のもの)

近年増加しているインターネットを利用した副業や投資の多くが、この雑所得に該当する可能性が高いと言えるでしょう。

これらの収入を得ている方は、ご自身の所得が雑所得に該当するかどうかを確認し、適切に申告準備を進めることが重要です。

確定申告が必要になる条件(給与所得者の場合)

会社勤めをしていて給与所得がある方が、他に雑所得などの所得を得ている場合、確定申告が必要になる主な条件は以下の通りです。

給与所得以外(雑所得など)の所得金額の合計が20万円を超える場合」です。

ここで言う「所得金額」とは、収入から必要経費を差し引いた後の金額を指します。

例えば、副業の収入が30万円あっても、経費が15万円かかっていれば所得は15万円となり、20万円以下なので原則として確定申告は不要となります。

ただし、雑所得が20万円以下であっても確定申告が必要になるケースもあります。

  • 医療費控除や寄附金控除など、年末調整では適用されない控除を受けたい場合
  • 給与収入が2,000万円を超える場合
  • 2か所以上から給与を受け取っており、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える場合

これらのケースに該当する場合は、雑所得の金額に関わらず確定申告を検討する必要があります。

確定申告が必要になる条件(給与所得がない場合)

給与所得がない方、例えば個人事業主の方や年金受給者の方、専業主婦(夫)の方などで、雑所得のみがある場合の確定申告の基準は以下の通りです。

雑所得を含めた所得金額が基礎控除額(48万円)を超える場合」に確定申告が必要です。

基礎控除額とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律に適用される控除のことです。

2024年現在、基礎控除額は48万円ですが、2025年12月1日以降は58万円に引き上げられる予定となっています。

つまり、給与所得がなく、雑所得から必要経費を差し引いた金額が48万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要となります。

しかし、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります

住民税には所得税とは異なる独自の控除基準があるため、お住まいの市区町村の役場に確認することをおすすめします。

確定申告をすれば所得税と住民税の両方の申告を兼ねることができるため、どちらが必要か迷う場合は確定申告をしておくのが確実な方法と言えるでしょう。

雑所得の確定申告、いくらから必要?【20万円の壁】

「20万円の壁」とは?給与所得者の基準

給与所得者にとって、雑所得の確定申告を考える上で最も重要な目安となるのが「20万円の壁」です。

これは、給与所得以外の所得金額の合計が年間20万円を超える場合に、確定申告が必要になるというルールを指します。

ここで重要なのは、「収入」ではなく「所得」であるという点です。

例えば、副業の売上が年間30万円あったとしても、その売上を得るためにかかった経費(材料費、交通費、通信費など)が15万円だった場合、雑所得は「30万円 – 15万円 = 15万円」となります。

この15万円は20万円以下なので、原則として確定申告は不要です。

しかし、もし経費が5万円だった場合、雑所得は「30万円 – 5万円 = 25万円」となり、20万円を超えるため確定申告が必要になります。

副業をされている方は、自身の収入と経費を正確に把握し、所得金額を計算することが非常に重要です。

日々のレシートや領収書を保管し、年末にまとめて計算する習慣をつけましょう。

給与所得がない場合の「48万円の壁」

会社からの給与所得がなく、雑所得のみを主な収入源としている方には、「48万円の壁」が適用されます。

これは、すべての納税者に適用される基礎控除額48万円(2024年現在)を基準としたものです。

具体的には、公的年金のみを受給している方や、副業収入だけで生計を立てている個人事業主、専業主婦(夫)の方などがこのケースに該当します。

雑所得から必要経費を差し引いた金額がこの基礎控除額48万円を超えた場合、所得税の確定申告が必要となります。

例えば、年間でブログ収入が60万円あり、経費が10万円かかったとします。

この場合、雑所得は「60万円 – 10万円 = 50万円」となり、48万円を超えるため確定申告が必要です。

一方で、雑所得が40万円(経費差し引き後)であれば、48万円以下なので所得税の申告は不要です。

なお、2025年12月1日以降は基礎控除額が58万円に引き上げられる予定ですので、今後の税制改正にも注目しましょう。

確定申告が不要なケースと住民税の注意点

これまでの説明で、確定申告が必要なケースが見えてきたかと思いますが、改めて確定申告が不要なケースも整理しておきましょう。

  • 給与所得者で、雑所得を含む給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合。
  • 給与所得や公的年金等を受け取っていない場合で、雑所得を含めた総所得金額が基礎控除額(48万円)以下の場合。
  • 所得税額を計算した結果、納めるべき税額がない場合。

これらの条件に当てはまる場合は、所得税の確定申告は原則として不要となります。

しかし、ここで一点注意が必要です。

所得税の確定申告が不要な場合でも、「住民税の申告」は必要になることがあります。

所得税と住民税は管轄が異なり、所得税の確定申告をしない場合、市区町村はあなたの所得情報を把握できません。

そのため、所得税の申告は不要でも、住民税の課税対象となる所得がある場合は、別途市区町村へ住民税の申告を行う必要があります。

この申告を怠ると、住民税の決定が遅れたり、最悪の場合、無申告加算税が課される可能性もあります。

住民税の申告については、お住まいの市区町村の窓口にお問い合わせください。

雑所得の確定申告の書き方:基本編(e-Taxも解説)

雑所得の計算方法と必要経費

雑所得の確定申告を行う上で、最も基本となるのが「雑所得の金額」を正しく計算することです。

雑所得は、以下の計算式で求められます。

雑所得の金額 = 収入金額 - 必要経費

ここで言う「必要経費」とは、その収入を得るために直接かかった費用を指します。

具体的には、以下のようなものが経費として認められる可能性があります。

  • 副業で使う文房具や消耗品代
  • Webサイト運営のサーバー代、ドメイン代
  • 副業関連の書籍購入費
  • 打ち合わせのための交通費
  • 副業に使用するパソコンやスマートフォンの購入費(一定額まで)
  • 通信費(自宅兼事務所の場合は家事按分が必要)

一方で、業務に直接関係のない支出、例えば業務外の友人との昼食代などは経費として認められません

経費を計上する際は、必ず領収書やレシートなどの証拠書類を保管しておくことが重要です。

また、業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、または1,000万円を超える場合(令和4年分以後)は、帳簿書類の保存が必要となることがありますので、規模が大きくなってきたら注意が必要です。

確定申告書の記入箇所と流れ

確定申告書には主に「第一表」と「第二表」があります。

雑所得を申告する際の主な記入箇所と流れは以下の通りです。

  1. 収入金額の記入:
    • 第一表の「収入金額等」欄にある「雑(その他)」の箇所に、年間の雑所得の総収入金額を記入します。
  2. 所得金額の記入:
    • 第一表の「所得金額等」欄にある「雑(その他)」の箇所に、収入金額から必要経費を差し引いた雑所得の金額を記入します。
  3. 所得の内訳の記入:
    • 第二表の「所得の内訳(所得の種類・所得の生ずる場所・給与などの支払者の氏名・名称等)」欄に、雑所得の内容を具体的に記入します。
    • 「所得の種類」には「雑」と記入し、「所得の生ずる場所」にはクラウドソーシングサイトの名称やアフィリエイト広告主の名称、ブログ・YouTubeの運営会社などを記入します。
    • 「収入金額」と「必要経費」もそれぞれ記入します。

申告書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署や市区町村の窓口でも入手可能です。

初めての申告で不安な場合は、国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すると、画面の案内に従って入力するだけで申告書が作成できるため、おすすめです。

e-Taxでスマートに申告!

近年、確定申告の主流となっているのが、国税庁が提供する電子申告システム「e-Tax(イータックス)」です。

e-Taxを利用することで、税務署に出向くことなく、自宅のパソコンやスマートフォンから確定申告を完結させることができます。

e-Taxの主なメリットは以下の通りです。

  • 24時間いつでも申告が可能(メンテナンス時間を除く)
  • 添付書類の一部提出省略
  • 還付金がスピーディーに振り込まれる
  • 画面の案内に沿って入力するだけで簡単に申告書を作成できる

e-Taxを利用するためには、原則として「マイナンバーカード」と「ICカードリーダーライタ(または対応スマートフォン)」が必要です。

マイナンバーカード方式のほか、税務署で発行されるID・パスワード方式もありますが、よりセキュリティが高く、今後の利用も便利なマイナンバーカード方式の準備をおすすめします。

e-Taxを利用すれば、入力ミスを自動でチェックしてくれる機能もあるため、手書きに比べて正確な申告が期待できます。

国税庁のウェブサイトではe-Taxの利用方法が詳しく解説されていますので、ぜひ活用してみてください。

確定申告でよくある疑問Q&A

雑所得の損失は損益通算できる?

残念ながら、雑所得の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算することはできません

損益通算とは、所得の種類によって生じた損失を他の所得の利益と相殺することで、全体の課税所得を減らすことができる制度です。

例えば、事業所得で損失が出た場合、給与所得と損益通算することで、納めるべき所得税を減らすことが可能です。

しかし、雑所得は他の所得と性質が異なると考えられているため、損失が生じても、その損失を他の給与所得や事業所得などと合算して所得を減らすことは認められていません。

仮に副業の雑所得で赤字が出たとしても、その赤字を給与所得から差し引くことはできないということを覚えておきましょう。

ただし、同じ雑所得の内部であれば、異なる雑所得間で損益通算することは可能です。

例えば、ブログ収入で利益が出て、FXで損失が出た場合、それらを相殺することはできます。

青色申告はできるの?

雑所得の申告は、青色申告ではなく白色申告のみとなります。

青色申告は、事業所得や不動産所得、山林所得がある場合に適用される特別な申告制度であり、最大65万円の青色申告特別控除など、様々な税制上の優遇措置を受けることができます。

しかし、青色申告を利用するためには、事業を開始する際に「青色申告承認申請書」を提出し、複式簿記による帳簿付けを行うなど、白色申告よりも厳格な要件と手間が必要です。

雑所得は、基本的には規模の小さい副業や一時的な所得を想定しているため、青色申告の対象とはなりません。

したがって、雑所得の確定申告は、簡易な帳簿付けと書類で済む白色申告の形式で行うことになります。

もし、副業の規模が拡大し、継続的に安定した収入が得られるようになった場合は、事業所得として青色申告に切り替えることも検討できます。

その際は、税務署や税理士に相談し、適切な判断を仰ぐことをおすすめします。

税金はどれくらいかかるの?具体的な計算例

雑所得にかかる税金は、雑所得の金額だけで決まるわけではありません。

雑所得は総合課税の対象となるため、事業所得や給与所得など、他の所得と合算して「総所得金額」を算出し、それに基づいて所得税額が計算されます。

所得税の税率は、所得金額に応じて5%から45%まで変動する「累進課税制度」が採用されています。

住民税は、所得に対して原則として一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)が課されます。

具体的な計算例を見てみましょう。

例えば、給与所得があり、さらに雑所得が年額200万円(経費0円)の場合、税金は以下のようになります(40歳未満・独身で、他の控除がないシンプルなケース)。

項目 金額(目安)
所得税(約5%の税率適用の場合) 約5.6万円
住民税(一律10%) 約12万円
合計税額 約17.6万円

(この計算は非常に簡略化されたものであり、給与所得の金額、その他の控除、社会保険料などによって大きく変動します。あくまで目安としてご参照ください。)

雑所得は総合課税であるため、本業の給与所得が高い方ほど、雑所得にかかる所得税の税率も高くなる傾向があります。

ご自身の状況に合わせた正確な税額を知るためには、税理士に相談するか、国税庁の確定申告書作成コーナーでシミュレーションを行うのが確実です。

雑所得の確定申告をスムーズに進めるためのポイント

日頃からの記録が重要!レシート・領収書の整理術

雑所得の確定申告をスムーズに進める上で、最も重要と言えるのが「日頃からの記録」です。

特に、収入から差し引くことができる必要経費を正確に計上するためには、その証拠となるレシートや領収書の保管が不可欠となります。

確定申告の時期になって慌てて探すことのないよう、以下の点に注意して日頃から整理しておきましょう。

  • こまめに整理する:レシートや領収書を受け取ったら、すぐに日付順に整理したり、月ごとにまとめて封筒に入れたりする習慣をつけましょう。
  • 費目ごとに分ける:交通費、消耗品費、通信費など、費目ごとに分けておくと、後で集計する際に便利です。
  • デジタル化を活用する:スマートフォンのアプリでレシートを撮影・データ化したり、クラウド会計ソフトを利用して入力したりするのも有効です。紙の書類を紛失するリスクを減らせます。
  • 摘要をメモする:何のために購入したのか、領収書に手書きでメモを加えておくと、後で経費の正当性を証明する際に役立ちます。

これらの記録が、正確な所得金額の計算と、税務調査があった際の重要な証拠となります。

早めの準備と情報収集のすすめ

確定申告は、毎年2月16日から3月15日までと期間が定められています(土日祝日の場合は翌平日)。

この短期間で全ての準備を整えるのは大変な作業となることもあります。

特に初めての方や、複数の収入源がある方は、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。

以下のポイントを参考に、早めに準備を始めましょう。

  • 情報収集:国税庁のウェブサイトは、確定申告に関する最新の情報やQ&Aが豊富に掲載されています。まずは自分の疑問を調べてみましょう。
  • 必要書類の確認:源泉徴収票(給与所得者の場合)、支払調書(特定口座の取引がある場合など)、生命保険料控除証明書、医療費の領収書など、ご自身に必要な書類をリストアップし、早めに揃えましょう。
  • 疑問点の解消:不明な点や不安な点があれば、税務署の相談窓口や税理士に相談しましょう。早めに相談することで、申告期限間際の混雑を避けられます。
  • e-Taxの利用準備:e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードの取得やICカードリーダーの準備など、事前に行うべき手続きがあります。早めに済ませておきましょう。

直前になって慌てないためにも、年が明けたらすぐに確定申告の準備に取り掛かることをおすすめします。

申告漏れ・期限後申告のペナルティを避けるために

確定申告には厳格な期限が設けられており、これを守らない場合や、誤った内容で申告をした場合には、様々なペナルティが課される可能性があります。

主なペナルティは以下の通りです。

  • 無申告加算税:申告期限内に申告しなかった場合に課されます。本来納めるべき税額に対し、原則として50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の税率が加算されます。自主的に期限後申告を行った場合は軽減されることがあります。
  • 延滞税:期限までに税金を納付しなかった場合に課される利息のようなものです。納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算されます。
  • 過少申告加算税:本来納めるべき税額よりも少ない金額で申告した場合に課されます。税率は10%が原則です。
  • 重加算税:意図的な申告漏れ、隠蔽、虚偽の申告など、悪質と判断された場合に課されます。税率は本来納付すべき税額の40%と非常に重いペナルティです。

これらのペナルティは、追加で税金を支払うだけでなく、信用問題にも関わることがあります。

何よりも、正確な情報に基づき、期限内に申告を完了させることが重要です。

もし、申告期限に間に合いそうにない場合や、申告内容に不安がある場合は、早めに税務署に相談するようにしましょう。

意図せずともペナルティの対象とならないよう、細心の注意を払って確定申告を行いましょう。