確定申告は、毎年多くの人にとって頭を悩ませるイベントかもしれません。特に、毎年期間が微妙にずれたり、初めて申告する方にとっては「いつからいつまで?」という疑問がつきものです。

本記事では、2025年・2026年の確定申告期間を明確にし、さらに早期準備の重要性とその具体的なポイント、期間前に確認しておきたい制度について詳しく解説します。スムーズな確定申告を迎えられるよう、ぜひ参考にしてください。

確定申告の期間:原則いつからいつまで?

原則的な確定申告期間

所得税の確定申告は、通常、毎年2月16日から3月15日までと定められています。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、税務署へ申告書を提出し、納税を行う必要があります。例えば、2025年2月16日から3月15日までの申告期間であれば、2024年1月1日から12月31日までの所得が対象となります。

ただし、この原則期間が土曜日、日曜日、祝日に重なる場合は、その翌開庁日が期限となります。そのため、毎年正確な日付を確認することが重要です。申告を忘れてしまうと、さまざまなペナルティが発生する可能性があるので、注意が必要です。

多くの方が年末調整で税金計算が完結しますが、給与所得者でも医療費控除やふるさと納税の寄付金控除などを利用する場合や、副業などで20万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要です。個人事業主やフリーランスの方は、原則として全員が確定申告を行う義務があります。

納税期間と申告期間の違い

確定申告期間は、申告書の提出だけでなく、所得税の納税も原則として同じ期間内に行う必要があります。つまり、2月16日から3月15日(またはその年の期限日)までに、申告書を提出し、税金を納めるのが基本的な流れです。

納税方法には、金融機関の窓口での納付やe-Taxによる電子納付、クレジットカード納付など、いくつかの選択肢があります。中でも「振替納税」は、事前に税務署に依頼することで、預貯金口座から自動で引き落とされる便利な制度です。

振替納税を利用した場合、所得税は原則として4月下旬に、消費税は5月下旬に引き落とされます。これにより、確定申告期間中に現金を用意する手間が省け、納税忘れを防ぐことができます。ただし、振替納税の申請には期限があるため、早めの手続きが必要です。

期間を過ぎてしまった場合の対応(期限後申告)

「うっかり申告期間を過ぎてしまった!」という場合でも、申告を受け付けてもらえないわけではありません。これを「期限後申告」といいます。しかし、期限後申告にはいくつかのペナルティが課されるため、極力避けるべきです。

主なペナルティとしては、「無申告加算税」と「延滞税」があります。無申告加算税は、原則として納付すべき税額に対して15%または20%が課されます。延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた利息のようなものです。

さらに、青色申告をしている方は、最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられなくなる可能性があります(10万円の控除は受けられる場合があります)。このような不利益を避けるためにも、期限内の申告が最も重要です。もし期間を過ぎてしまった場合は、速やかに税務署に相談し、自主的に申告することをおすすめします。自主的な申告であれば、加算税が軽減される場合があります。

【2025年・2026年】申告・納税期間の確認

2025年(令和7年)分の確定申告期間

2025年(令和7年)分の所得税の確定申告期間は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)までとなります。これは、前述の原則期間(2月16日〜3月15日)に照らすと、3月15日が土曜日にあたるため、翌開庁日である3月16日月曜日が期限に繰り下がったためです。

対象となる所得は、2025年1月1日から2025年12月31日までの1年間です。まだ少し先のように感じられるかもしれませんが、年が明けてからすぐに準備に取り掛かれるよう、今のうちから心づもりをしておくことが大切です。

特に、個人事業主の方や副業をされている方は、この期間に慌てないよう、日々の記帳や書類整理を習慣化しておきましょう。年末にまとめて行うと、思わぬミスや漏れが生じるリスクが高まります。

2024年(令和6年)分の確定申告期間

一方、現在進行形で準備を進めている方も多いであろう2024年(令和6年)分の確定申告期間は、2025年2月17日(月)から2025年3月17日(月)までと定められています。こちらも、2月16日が日曜日にあたるため、開始日が2月17日に、そして3月15日が土曜日のため、終了日が3月17日に繰り下がっています。

対象となる所得は、2024年1月1日から2024年12月31日までの1年間です。この期間はもう間もなく到来しますので、まだ準備が不十分だと感じる方は、急いで書類の整理や記帳を進める必要があります。

特に、e-Taxでの申告を検討している方は、ICカードリーダーの準備やマイナンバーカードの読み取り、各種ソフトの導入・更新など、事前のセットアップに時間がかかる場合があります。余裕を持って準備に取り掛かりましょう。

なぜ日付がずれるのか?(土日祝日による影響)

確定申告の期間が毎年微妙にずれる主な理由は、期限日が土曜日、日曜日、または祝日に該当する場合、その翌開庁日まで自動的に延長されるというルールがあるためです。これは国税通則法で定められたものです。

たとえば、2026年の3月15日は土曜日であるため、確定申告の期限は翌週の月曜日である3月16日に延長されます。また、2025年の2月16日は日曜日であるため、確定申告の開始日も翌日の2月17日に繰り下げられます。

このように、毎年暦によって期間が変動する可能性があるため、国税庁のウェブサイトなどで発表される正式な期間を必ず確認することが重要です。特に、土日祝日が続く場合などは、例年よりも期間が短く感じることもあるため、早めの確認と準備がスムーズな申告の鍵となります。

確定申告はいつから準備を始めるべき?

年明けでは遅い理由

「確定申告は年が明けてからで大丈夫」と考えている方もいるかもしれませんが、実際には年明けから準備を始めるのでは、遅い場合が多いです。その理由はいくつかあります。

  • 税務署や相談窓口の混雑: 確定申告期間が近づくと、税務署や税理士事務所は大変混み合います。質問があってもすぐに回答が得られなかったり、相談の予約が取れなかったりする可能性があります。
  • e-Taxのアクセス集中: e-Taxを利用してオンラインで申告する方も増えていますが、期限直前はアクセスが集中し、システムが繋がりにくくなることがあります。
  • 書類不足や不明点の発生: いざ準備を始めた時に、必要な書類が見つからなかったり、記帳内容に不明な点が出てきたりすることがあります。これらを解決するには時間がかかります。
  • 心理的な負担: 期限が迫る焦りから、ミスが増えたり、精神的な負担が大きくなったりします。

これらの理由から、確定申告の準備は年が明ける前に始めることが賢明です。

年内にやっておきたい準備

確定申告をスムーズに進めるためには、年内に以下の準備を進めておくことが非常に重要です。

  1. 書類の整理: 1年間の収入や支出に関するすべての書類を集め、整理しましょう。
    • 収入に関するもの: 源泉徴収票(給与・報酬)、支払調書、売上伝票など
    • 支出に関するもの: 領収書、レシート、請求書、クレジットカード明細、銀行口座の入出金履歴など(特に事業関連)
    • 控除に関するもの: 医療費の領収書・明細、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、寄付金受領証明書(ふるさと納税など)、iDeCoの掛金証明書など

    Amazonなどのオンライン購入で受け取った電子形式の領収書も忘れずに保存し、必要に応じて印刷またはデータで整理しておきましょう。

  2. 記帳: 日々の取引を記録する作業です。特に個人事業主やフリーランスの方は、日々の記帳が必須です。口座の入出金明細などを定期的に確認し、何にいくら使ったのか、何の収入があったのかを記録します。会計ソフトの口座連携機能などを活用すると効率的です。
  3. 決算仕訳: 年末に、減価償却費の計上や家事按分、棚卸資産の評価、売掛金・買掛金の確認など、決算特有の仕訳を行います。これらは年間の損益計算に大きな影響を与えるため、漏れなく正確に行う必要があります。

これらの準備を年内に済ませておけば、年明けは最終確認と申告書の作成に集中できます。

会計ソフト活用で効率アップ

確定申告の準備を効率的に進める上で、会計ソフトの導入は非常に有効な手段です。特に、青色申告を検討している方や、事業規模が大きくなってきた方には強くおすすめします。

会計ソフトの主なメリットは以下の通りです。

  • 自動仕訳機能: 銀行口座やクレジットカード、電子マネーと連携し、入出金履歴を自動で取り込み、AIが勘定科目を推測して仕訳を提案してくれます。これにより、手入力の手間が大幅に削減されます。
  • 集計・レポート機能: 収入・支出の集計や、月ごとの損益状況などを自動でグラフ化し、事業の状況を視覚的に把握しやすくなります。
  • 確定申告書作成支援: 入力されたデータに基づいて、所得税の確定申告書や青色申告決算書などを自動で作成してくれます。e-Tax連携機能を使えば、そのままオンラインで提出することも可能です。
  • 法改正への対応: 税制改正があった場合でも、会計ソフトが自動でアップデートされるため、常に最新の税法に対応した申告ができます。

また、記帳を容易にするためにも、事業用の口座をプライベートとは別に開設することをおすすめします。これにより、事業のお金とプライベートのお金が混同せず、記帳の正確性が高まり、税務調査の際にも説明がしやすくなります。

12月分の収入はいつの確定申告になる?

所得税の課税期間の原則

所得税の確定申告は、前年1月1日から12月31日までの1年間を課税期間と定めています。これは、収入も経費も、その「発生主義」に基づいて計上されるのが原則です。

発生主義とは、実際にお金が入金されたり、支払われたりした日ではなく、その収入や経費が発生した事実があった日(権利が確定した日、義務が確定した日)を基準として会計処理を行う考え方です。これにより、正確な期間損益を把握することができます。

したがって、12月分の収入や経費は、たとえ入金や支払いが翌年の1月以降になったとしても、原則として「その年の」確定申告の対象となるということです。この原則を理解しておくことが、正確な確定申告を行う上で非常に重要になります。

給与所得と事業所得の考え方

12月分の収入がどの年の確定申告に計上されるかは、その収入の種類によって考え方が少し異なります。

  • 給与所得の場合:

    会社員の方の給与所得は、原則として給与の「支給日」が基準となります。例えば、12月分の給与が翌年1月25日に支払われる場合、その給与は翌年の所得として計上されます。源泉徴収票に記載されている「支払金額」や「支払年月日」を確認することで、どの年の所得になるかが明確になります。

  • 事業所得の場合:

    個人事業主やフリーランスの方の事業所得は、原則として「発生主義」に基づいて計上します。例えば、12月にサービスを提供したり商品を販売したりして売上が発生した場合、その代金が翌年1月に入金されたとしても、売上が発生した日は12月であるため、その年の事業所得として計上します。

このように、給与所得と事業所得では計上基準が異なるため、ご自身の収入の種類に合わせて正しく判断する必要があります。不明な場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。

経費計上のタイミングと注意点

収入と同様に、経費についても原則として発生主義に基づき、1月1日から12月31日までの1年間に「発生した」費用が対象となります。

例えば、12月に仕入れを行った商品の代金を翌年1月に支払ったとしても、その仕入れの事実が12月中に発生していれば、その年の経費として計上することができます。これは、消耗品費や外注費など、他の経費についても同様です。

特に注意が必要なのが、クレジットカード払いの場合です。クレジットカードの決済日は後日になりますが、経費として計上するタイミングは、実際に商品やサービスを利用した日(発生した日)が基準となります。カード明細には利用日と決済日が記載されているため、利用日を基準に整理しましょう。

また、経費として計上する際は、領収書や請求書、レシートといった証拠書類の保管が必須です。これらの書類がなければ、税務調査などで経費として認められない可能性があります。年間の全ての支出について、しっかりと書類を整理・保管しておくことが、正確な経費計上の基本となります。

期間前に確認しておきたいこと

税金を減らせる制度(還付申告、ふるさと納税)

確定申告は、税金を納めるためだけの制度ではありません。場合によっては、納めすぎた税金が還ってくる「還付申告」や、税金が軽減される制度を利用することができます。

  • 還付申告:

    給与所得者で年末調整が済んでいる場合でも、以下のような控除を受けられる場合は、確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。還付申告は、課税年度の翌年1月1日から5年間行うことができるため、過去の分を遡って申告することも可能です。

    • 医療費控除: 1年間で一定額以上の医療費を支払った場合
    • 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除): 住宅ローンを利用してマイホームを取得・増改築した場合(初回のみ確定申告が必要)
    • 寄付金控除: 特定の団体に寄付した場合
    • 災害減免法による所得税の軽減免除: 災害で大きな損害を受けた場合

    これらの控除対象となる支出がないか、年内に再確認してみましょう。

  • ふるさと納税:

    ふるさと納税を行った場合、原則として「ワンストップ特例制度」を利用すれば確定申告は不要です。しかし、以下のような場合は、確定申告で寄附金控除を申請する必要があります。

    • ワンストップ特例制度の申請を忘れた、または間に合わなかった場合
    • 6団体以上にふるさと納税を行った場合
    • 医療費控除など、他の理由で確定申告を行う場合
    • 個人事業主や副業所得のある方で、確定申告が義務付けられている場合

    ふるさと納税の寄付金受領証明書は大切に保管しておきましょう。

納付を柔軟にする制度(延納制度)

「確定申告は済んだけど、納税資金の準備が間に合わないかも…」という時に役立つのが「延納制度」です。この制度は、確定申告期間内に納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日まで延長できるというものです。

ただし、延納期間中は「利子税」がかかることに注意が必要です。利子税は、延納する税額と期間に応じて発生するもので、現在の利率は比較的低いですが、納税額が大きくなるほど負担も増えます。延納制度は、一時的な資金繰りの困難を解決するための手段として有効ですが、可能な限り期限内納付を目指すのが望ましいでしょう。

延納制度を利用するためには、確定申告書にその旨を記載して提出する必要があります。特別な申請書は不要ですが、事前に残りの税額の支払い計画を立てておくことが大切です。急な出費などで納税資金の準備が難しい場合に備えて、このような制度があることを知っておくと安心です。

個人事業主特有の確認事項(消費税、インボイス)

個人事業主やフリーランスの方は、所得税の確定申告だけでなく、以下の点も確認しておく必要があります。

  • 消費税の確定申告:

    消費税の課税事業者である個人事業主の場合、消費税の確定申告も必要になります。所得税の確定申告期間とは異なり、消費税の確定申告期間は翌年の3月31日までです。所得税とは締め切りが異なりますので、混同しないように注意しましょう。ご自身の事業が消費税の課税対象になるかどうか、事前に確認しておくことが重要です。

  • インボイス制度(適格請求書等保存方式):

    2023年10月に開始されたインボイス制度により、適格請求書発行事業者として登録した場合、それまで免税事業者だった方も課税事業者となります。これにより、開業の翌年から消費税の確定申告が義務付けられます。

    適格請求書発行事業者になった場合は、消費税の計算方法(原則課税または簡易課税)を選択し、所定の帳簿付けや請求書発行を行う必要があります。インボイス制度は事業の経理処理に大きな影響を与えるため、ご自身の登録状況や制度への理解を深めておくことが、確定申告前に確認すべき重要なポイントです。

これらの制度は複雑に感じるかもしれませんが、早期に準備を進めることで、期限内にスムーズに確定申告を完了させ、ペナルティを回避することができます。不明な点があれば、国税庁のウェブサイトや税務署、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。