雇用保険番号とは?何のためにあるの?

雇用保険番号の基本

雇用保険番号、正式には「雇用保険被保険者番号」とは、あなたが雇用保険制度に加入する際に割り振られる、個人を識別するための11桁の固有の番号です。
この番号は、一度付与されると原則として生涯変わることはありません。

なぜこの番号が重要なのでしょうか。それは、失業した際の給付金(失業手当)を受け取る時や、育児休業給付金、介護休業給付金、教育訓練給付金など、さまざまな公的手続きで必要となるからです。
まさに、あなたの社会保障制度における「パスポート」のような役割を果たす、非常に大切な番号なのです。

転職を繰り返しても番号は引き継がれ、過去の被保険者期間が合算されることで、将来の給付条件にも影響します。もしこの番号がなければ、あなたの雇用保険の加入履歴を正確に追跡することができません。
そのため、社会人として働く上で、この番号がどこに記載されているか、どのように確認できるかを知っておくことは非常に重要だと言えるでしょう。

雇用保険の役割と加入対象

雇用保険は、単に失業したときに給付金がもらえる制度、というだけではありません。労働者の生活と雇用の安定を図り、再就職を促進するための大切な社会保障制度です。
具体的には、失業給付の他にも、育児休業や介護休業中の生活支援、労働者の能力開発やスキルアップを支援する教育訓練給付など、多岐にわたるサポートを提供しています。

この雇用保険に加入できるのは、原則として週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある労働者です。学生アルバイトなどでなければ、ほとんどの労働者がこの条件に当てはまるでしょう。
実際に、日本における雇用保険の加入率は非常に高く、企業単位では99%、労働者単位でも2024年調査で99%という高い水準に達しています。これは、ほとんどの企業と労働者が雇用保険制度の恩恵を受けていることを示しています。

雇用保険に加入していれば、万が一の事態に備えることができるだけでなく、スキルアップのための支援なども受けられるため、安心して働く上でのセーフティネットとして機能しています。
雇用主側にとっても、適正な労務管理を行う上で、従業員の雇用保険加入は必須の要件となっています。

なぜ番号が必要なのか?

雇用保険番号は、雇用保険制度において個々の労働者を一意に識別し、その加入履歴を一元的に管理するために不可欠なものです。
例えば、あなたが複数の会社を経験し、それぞれで雇用保険に加入していたとしても、この11桁の番号を通じてすべての被保険者期間が合算され、将来の失業給付やその他の給付金の計算に反映されます。

番号がなければ、過去の勤務履歴や保険料の納付状況を正確に把握することが困難になり、適切な給付金の支給や制度運営ができなくなってしまいます。
また、不正受給の防止や、制度の公平性を保つ上でも、各労働者に固有の識別番号を割り振ることは非常に重要です。

この番号によって、あなたの被保険者期間や給付実績がデータベースで管理され、ハローワークなどの関係機関が迅速かつ正確な情報を提供できる基盤が築かれています。
つまり、雇用保険番号は、あなたが雇用保険制度の恩恵をスムーズに、そして正しく受けるために、そして制度が円滑に運用されるために、なくてはならない「鍵」のような存在なのです。

雇用保険番号の調べ方・確認方法を徹底解説

手元にある書類で確認する

雇用保険番号を確認する最も一般的な方法は、手元にある関係書類を確認することです。特に以下の書類には、あなたの雇用保険番号が記載されています。

  • 雇用保険被保険者証: 雇用保険に加入した際に会社から交付される書類で、多くの場合、入社時に渡されるか、後日郵送されます。給与明細と一緒に保管されていることも多いです。
  • 離職票(雇用保険喪失確認通知書): 会社を退職した際に発行される書類で、失業保険の申請に必要となります。通常、退職後2週間程度で郵送されます。
  • 受給資格者証: ハローワークで失業保険(基本手当)の申請手続きをした後に交付される書類です。

これらの書類は、非常に重要な個人情報が記載されていますので、大切に保管するようにしましょう。もし見当たらない場合は、次の方法を試してみてください。

オンライン・公的機関で確認する

書類が見つからない場合や、すぐに番号を知りたい場合は、以下の方法で確認することができます。

  • マイナポータル: マイナンバーカードをお持ちであれば、「マイナポータル」を通じて雇用保険関連の情報を照会できます。自宅のパソコンやスマートフォンからアクセスでき、24時間いつでも確認可能です。
    ただし、利用者登録やマイナンバーカード読み取りに対応した機器が必要になります。
  • 在職中の企業: 現在働いている方は、勤務先の人事・労務担当者に問い合わせるのが最も手軽な方法です。会社があなたの雇用保険番号を管理していますので、すぐに教えてもらえるでしょう。
  • ハローワーク: 書類を紛失してしまった場合や、すでに退職している場合は、最寄りのハローワークで確認・再発行の手続きが可能です。
    本人確認のため、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を持参し、窓口で相談しましょう。場合によっては、その場で番号を教えてもらえることもあります。

ハローワークでの手続きは少し手間がかかるかもしれませんが、最も確実な方法と言えます。

書類がない場合の対処法

「雇用保険被保険者証も離職票もないし、会社も退職してしまっている…」
そんな状況でも、ご安心ください。雇用保険番号を知る方法はあります。

最も確実なのは、やはり最寄りのハローワークの窓口に直接行くことです。
ハローワークでは、あなたの個人情報(氏名、生年月日、住所など)と身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)を提示することで、雇用保険番号の照会や、雇用保険被保険者証の再発行手続きが可能です。

ハローワークの担当者が、過去の加入履歴を調べてあなたの雇用保険番号を特定してくれます。
また、もし過去に複数回転職している中で、意図せず複数の雇用保険番号が付与されてしまっているケースも稀にあります。
その場合も、ハローワークでそれらの番号を一つに統合する手続きを案内してもらえるので、安心して相談しましょう。

事前に電話で問い合わせをして、必要な持ち物や手続きの流れを確認しておくと、よりスムーズに手続きを進めることができます。
焦らず、まずはハローワークに相談することが、番号確認への第一歩です。

雇用保険番号は変わる?変わらない?ケース別解説

原則として生涯変わらない

雇用保険番号は、原則として一度あなたに付与されたら、生涯変わることがありません。
これは、あなたの雇用保険に関する全ての履歴(加入期間、保険料納付状況、給付実績など)を一元的に管理するための重要な仕組みだからです。

例えば、あなたがA社を退職し、B社に転職したとしても、雇用保険番号はA社で取得したものがそのまま引き継がれます。
新たにB社で雇用保険に加入する際も、この既存の番号が使用され、A社での被保険者期間とB社での被保険者期間が合算される形になります。

この「変わらない」という原則は、転職を繰り返すことが多い現代社会において、労働者がスムーズに失業給付などの制度を利用できるよう、大きな役割を果たしています。
過去の加入期間が正しく評価され、それが将来の給付条件に結びつくため、雇用保険番号はまさにあなたの「労働履歴のID」と言えるでしょう。

しかし、特定の状況下では、番号の取り扱いに注意が必要なケースも存在します。

氏名変更や住所変更の場合

雇用保険番号自体は変わらない、という原則は理解できても、「結婚して姓が変わった」「引っ越して住所が変わった」といった個人情報に変更があった場合はどうすれば良いのでしょうか?

氏名や住所などの個人情報に変更があった場合でも、雇用保険番号そのものが変わることはありません。
しかし、登録されている情報を最新の状態に更新する必要があるため、速やかにハローワークに届け出る必要があります。

在職中であれば、勤務先の人事・労務担当者に氏名変更などの届出をすれば、会社が代わりにハローワークに手続きを行ってくれるのが一般的です。
退職している場合は、ご自身でハローワークに出向き、「雇用保険被保険者氏名変更届」や「住所変更届」などの手続きを行うことになります。

これらの変更手続きを怠ると、ハローワークからの重要書類が届かなかったり、失業給付などの手続きがスムーズに進まなかったりする可能性があります。
大切な給付金に関わることですから、個人情報に変更があった際は、速やかに手続きを行うよう心がけましょう。

複数番号が付与されてしまったら?

原則として雇用保険番号は一つですが、稀に意図せず複数の雇用保険番号が付与されてしまうケースがあります。
これは、例えば過去に勤めていた会社から交付された雇用保険被保険者証を紛失してしまい、次の会社に転職した際に「雇用保険に初めて加入する」と誤って申告してしまった場合などに起こり得ます。

この「複数番号取得」の状態を放置しておくと、それぞれの番号に紐付く被保険者期間が別々に管理されてしまい、本来合算されるはずの期間が途切れてしまう恐れがあります。
その結果、失業給付の受給条件(例えば、自己都合退職なら離職日以前2年間で通算12ヶ月以上の被保険者期間が必要)を満たせなくなってしまう可能性も出てきます。

もし複数の雇用保険番号を持っていることが判明した場合は、速やかにハローワークに相談し、番号の統合手続きを行う必要があります。
ハローワークの窓口で「雇用保険被保険者番号等複数統合届」などの手続きを行うことで、過去のすべての被保険者期間を一つの番号に集約し、正しく管理してもらうことができます。

統合手続きは少し手間がかかりますが、あなたの雇用保険の権利を守るために非常に重要な作業です。心当たりのある方は、放置せずに必ず手続きを行いましょう。

雇用保険番号とマイナンバーの関係性

マイナンバー制度導入後の変化

2016年1月に本格的に運用が開始されたマイナンバー制度は、社会保障、税、災害対策の分野で個人の情報を効率的に管理し、行政サービスの利便性向上を目指しています。
この制度導入は、雇用保険の手続きにも大きな変化をもたらしました。

以前は、雇用保険の手続きには雇用保険番号が必須であり、各種申請書類にその番号を記載する必要がありました。
しかし、マイナンバー制度導入後は、雇用保険の手続きにおいてもマイナンバー(個人番号)の提出が義務付けられるようになりました。
これにより、行政機関がマイナンバーを介してあなたの税や社会保険情報を連携させることが可能になり、手続きの簡素化や行政事務の効率化が図られています。

例えば、入社時の雇用保険加入手続きや、育児休業給付金の申請など、多くの場面で雇用保険番号に加えてマイナンバーの記載が求められるようになっています。
これにより、申請書に記載する情報が一部省略されたり、確認作業がスムーズになったりといった恩恵があります。

それぞれの役割の違い

雇用保険番号とマイナンバーは、どちらも個人を識別するための番号ですが、その役割と適用範囲には明確な違いがあります。

  • 雇用保険番号: 雇用保険制度に特化した個人識別番号です。あなたの雇用保険の加入履歴や給付実績を管理するために使用されます。転職してもこの番号は変わらず、生涯を通じてあなたの雇用保険の記録に紐付いています。
  • マイナンバー(個人番号): 社会保障、税、災害対策の3分野における共通の個人識別番号です。国や地方公共団体が管理する様々な情報(住民票コード、健康保険、年金、税金など)を、個人の同意なしに無断で連携することはできませんが、番号を介して紐付けることで、行政手続きの効率化や情報連携の基盤を築いています。

つまり、雇用保険番号は「雇用保険専用のID」であるのに対し、マイナンバーは「社会保障・税分野全般の共通ID」と考えると分かりやすいでしょう。
両者はそれぞれ異なる役割を持ちながらも、行政手続きの効率化という観点から、関連付けて利用されるようになっています。

マイナポータルでの連携活用

マイナンバー制度の大きなメリットの一つに、「マイナポータル」を通じた情報確認の利便性向上が挙げられます。
マイナポータルは、マイナンバーカードを利用して、ご自身の行政記録を確認したり、行政サービスをオンラインで利用したりできる政府のウェブサービスです。

このマイナポータルを活用することで、あなたの雇用保険に関する情報もオンラインで照会できるようになりました。
例えば、ご自身の雇用保険の加入状況や、ハローワークで申請した給付金の処理状況などを、自宅のパソコンやスマートフォンから手軽に確認することができます。

これにより、わざわざハローワークの窓口に出向いたり、書類を探したりする手間が省け、よりスムーズに自身の雇用保険情報を把握できるようになります。
マイナンバーカードの普及とともに、このマイナポータルの利用範囲はさらに拡大しており、今後も様々な行政サービスとの連携が期待されています。

雇用保険番号や各種給付金に関する情報を知りたい時は、まずはマイナポータルを確認してみるのが、現代におけるスマートな方法と言えるでしょう。

知っておくと便利!雇用保険の基本と役立つ情報

失業保険(基本手当)の受給条件と金額

失業保険、正式には「雇用保険の基本手当」は、失業時の生活の安定を図り、再就職を支援するための重要な給付金です。しかし、誰でももらえるわけではなく、いくつかの受給条件を満たす必要があります。

主な受給条件:

  • 失業状態であること: 就職の意思と能力があるにもかかわらず、職業に就けない状態であること。単に仕事を辞めただけでは対象になりません。
  • 求職の申し込み: ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に転職活動をしていること。
  • 雇用保険の被保険者期間:

    • 自己都合退職の場合: 離職日以前2年間で通算して12ヶ月以上の被保険者期間があること。
    • 会社都合退職(倒産・解雇など)の場合: 離職日以前1年間で通算して6ヶ月以上の被保険者期間があること。
    • 特定理由離職者(正当な理由による自己都合退職、契約更新されなかった場合など): 離職日以前1年間で通算して6ヶ月以上の被保険者期間があること。

受給金額と給付日数:

受給金額は、一般的に離職前の給与の50%~80%程度が支給されます。具体的な金額は、離職前6ヶ月間の賃金を基に算出される「基本手当日額」と「給付日数」で決まります。
給付日数は、雇用保険の被保険者期間や離職理由によって異なり、例えば自己都合退職の場合は90日~150日、会社都合退職の場合は90日~330日など、状況に応じて大きく変動します。

雇用保険料率の仕組みと推移

雇用保険料は、失業給付や育児休業給付、能力開発事業などの財源となる重要なものです。この保険料は、労働者と事業主がそれぞれ負担し、賃金に一定の料率を掛けて算出されます。
この雇用保険料率は、国の経済状況や雇用情勢によって変動することがあります。

過去の雇用保険料率(一般の事業における労使合計)の推移:

適用期間 労使合計料率
平成25年度~27年度 1.35%
平成28年度 1.1%
平成29年度~令和3年度 0.9%
令和4年10月~令和5年3月 1.35%
令和5年4月~ 1.55%

(注:上記は一般の事業における料率であり、農林水産・清酒製造の事業、建設事業では料率が異なります。最新の料率については、厚生労働省の発表等をご確認ください。)

このように、雇用情勢の変動に応じて料率は見直されています。特に、コロナ禍で失業者が増加した時期には、給付金の支出が増えたため、料率が引き上げられる傾向にありました。
毎月の給与明細で差し引かれている雇用保険料は、このような制度を支える大切な財源となっているのです。

その他、雇用保険にまつわるQ&A

雇用保険には、失業保険以外にもさまざまな制度や、知っておくと便利な情報があります。

  • 雇用保険適用事業所番号とは?

    雇用保険番号(個人に付与される番号)とは別に、企業に割り振られる「雇用保険適用事業所番号」というものもあります。これは「4桁-6桁-1桁」の11桁で構成され、企業が雇用保険制度の適用を受けていることを示す番号です。個人ではなく、事業所(会社)を識別するためのものと理解しておきましょう。

  • 失業保険以外の給付金にはどんなものがある?

    雇用保険制度には、失業時の基本手当だけでなく、以下のようないくつかの給付金があります。

    1. 育児休業給付金: 育児のために休業する期間中の生活を支援する給付金。
    2. 介護休業給付金: 家族の介護のために休業する期間中の生活を支援する給付金。
    3. 教育訓練給付金: 労働者のスキルアップや再就職を支援するため、指定された教育訓練の費用の一部を支給する給付金。

    これらの給付金も、雇用保険の被保険者期間などの条件を満たすことで受給できます。

  • 雇用保険に関する疑問はどこに問い合わせればいい?

    雇用保険に関するご不明な点は、最寄りのハローワークに問い合わせるのが最も確実です。電話での問い合わせも可能ですが、具体的な相談や手続きが必要な場合は、本人確認書類を持参して窓口で相談することをおすすめします。専門の職員があなたの状況に合わせて適切なアドバイスをしてくれるでしょう。