【会社必見】雇用保険の基礎知識!転籍・グループ会社・合算の疑問を解決

従業員の雇用を安定させ、万が一の失業時にも生活を支える重要な役割を担う「雇用保険」。しかし、その制度は複雑で、特に転籍やグループ会社間の異動、加入期間の合算といった特殊なケースでは、「どう対応すればいいのだろう?」と頭を悩ませる担当者の方も少なくありません。

本記事では、会社が知っておくべき雇用保険の基本から、2024年度の最新情報、そして多くの企業が疑問に感じるであろう転籍・グループ会社間の異動における手続き、さらには加入期間の合算の考え方まで、具体的な疑問を解決していきます。正確な知識を身につけ、適切な手続きを行うことで、従業員が安心して働ける環境を整え、会社のコンプライアンス強化にも繋げましょう。

  1. 雇用保険とは?会社が知っておくべき基本
    1. 雇用保険の基本的な役割と加入義務
    2. 2024年度の雇用保険料率を理解する
    3. 雇用保険の対象となる労働者の条件
  2. 業種別に見る雇用保険の適用と注意点
    1. 一般の事業における雇用保険の適用
    2. 農林水産・清酒製造業の特例
    3. 建設業の雇用保険と二事業料率
  3. 転籍・グループ会社間の異動と雇用保険の扱い
    1. 転籍時の雇用保険資格喪失・取得手続き
    2. グループ会社間の異動における注意点
    3. 離職証明書の発行と離職理由の重要性
  4. 雇用保険の合算・連続:加入期間をどう見る?
    1. 被保険者期間の通算と失業給付の関係
    2. 転籍・再雇用時の加入期間の継続性
    3. 複数事業所での勤務と雇用保険
  5. 偶数月・奇数月の雇用保険料と源泉徴収票のポイント
    1. 雇用保険料の控除タイミングと計算方法
    2. 源泉徴収票における雇用保険料の記載
    3. 従業員への明細書説明とトラブル防止策
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 雇用保険の加入義務がある会社とは具体的にどのような会社ですか?
    2. Q: グリーンサイトという言葉と雇用保険にはどのような関係がありますか?
    3. Q: グループ会社間で従業員が転籍した場合、雇用保険の加入期間は引き継がれますか?
    4. Q: 複数の会社で雇用保険に加入していた場合、加入期間は合算できますか?
    5. Q: 雇用保険料の偶数月・奇数月の支払いや源泉徴収票での扱いはどうなりますか?

雇用保険とは?会社が知っておくべき基本

雇用保険の基本的な役割と加入義務

雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定を図り、再就職を支援するとともに、失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力開発などを目的とした社会保険制度の一つです。

企業は、原則として従業員を雇用する際に雇用保険に加入させる義務があります。これにより、万が一従業員が失業した際には「基本手当(失業保険)」が支給され、育児休業中には「育児休業給付」、介護休業中には「介護休業給付」が受けられるなど、従業員の生活のセーフティネットとしての役割を果たします。

さらに、従業員のスキルアップを支援する「教育訓練給付」や、企業が従業員の雇用維持や能力開発を目的とした場合に活用できる各種助成金制度も雇用保険の枠組みの中で提供されています。これらの給付や助成金を活用することで、企業は従業員の定着促進や生産性向上にも繋げることが可能です。

会社は、これらの制度を正しく理解し、従業員への情報提供や適切な手続きを行う責任があります。社会保険労務士などの専門家と連携しながら、制度を遵守し、従業員にとって働きやすい環境を構築していくことが求められます。

2024年度の雇用保険料率を理解する

雇用保険の運営費用は、事業主と従業員がそれぞれ負担する保険料によって賄われています。この保険料率は、国の経済状況や雇用情勢に基づいて毎年見直しが行われますが、2024年度(令和6年度)の雇用保険料率は、2023年度(令和5年度)と同率で据え置かれています。

具体的には、以下の料率が適用されます。

  • 失業等給付等の保険料率:
    • 一般の事業: 労働者負担 6/1,000、事業主負担 6/1,000
    • 農林水産・清酒製造の事業、建設の事業: 労働者負担 7/1,000、事業主負担 7/1,000
  • 雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担):
    • 一般の事業: 3.5/1,000
    • 建設の事業: 4.5/1,000

これらの料率は、毎年4月1日に適用されるため、会社の人事・経理担当者は必ず最新の情報を確認し、給与計算に反映させる必要があります。

特に、農林水産・清酒製造業や建設業など、業種によって異なる料率が設定されている点には注意が必要です。自社の業種区分を確認し、正しい保険料を徴収・納付することが、法令遵守の観点からも極めて重要となります。

雇用保険の対象となる労働者の条件

雇用保険の被保険者となるのは、原則としてすべての労働者です。しかし、具体的には以下の条件を満たす場合に加入義務が生じます。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
  • 31日以上の雇用見込みがあること。

これらの条件は、正社員だけでなく、パートタイム労働者、アルバイト、契約社員など、雇用形態にかかわらず適用されます。例えば、週3日勤務で1日8時間働くパート従業員(週所定労働時間24時間)や、契約期間が3ヶ月で更新の可能性があるアルバイトも、上記の条件を満たせば雇用保険の対象となります。

一方で、以下の場合は原則として雇用保険の適用除外となります。

  • 日雇い労働者(ただし、一定の要件を満たす場合は例外的に適用)
  • 65歳以上の者で、高年齢雇用継続給付の支給対象外となる場合
  • 会社の役員(労働者としての実態がない場合)
  • 季節労働者で、4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者

これらの適用条件を正確に把握し、対象となる従業員全員を適切に雇用保険に加入させることは、事業主の義務です。加入漏れが発生した場合、遡って保険料を徴収されるだけでなく、従業員が給付を受けられないなどのトラブルに発展する可能性もありますので、十分な注意が必要です。

業種別に見る雇用保険の適用と注意点

一般の事業における雇用保険の適用

一般的なオフィスワークを行う企業、製造業、サービス業など、いわゆる「一般の事業」に該当する企業では、先述した基本原則がそのまま適用されます。

雇用保険の被保険者となるのは、「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」労働者です。これは正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトであっても、これらの条件を満たせば雇用保険の加入対象となります。

例えば、小売店で週5日、1日4時間のシフトで働く従業員(週20時間)や、事務職で週4日、1日6時間の契約社員(週24時間)は、雇用保険の適用対象です。一方で、高校生アルバイトで週15時間しか働かない場合や、単発のイベントスタッフなど、短期間の雇用で31日以上の雇用見込みがない場合は対象外となります。

多くの企業で見落とされがちなのが、短時間労働者の雇用保険適用です。週20時間という基準は意外とすぐにクリアするため、入社時には対象外だと思っていても、契約更新やシフト変更によって条件を満たすようになるケースがあります。

そのため、会社は従業員の労働時間や雇用期間を定期的に確認し、雇用保険の加入要件を満たした場合は速やかに手続きを行う必要があります。これは従業員の権利を守るためだけでなく、企業のコンプライアンスを維持するためにも非常に重要です。

農林水産・清酒製造業の特例

農林水産・清酒製造の事業に携わる企業は、雇用保険の保険料率において一般の事業とは異なる特例が設けられています。

2024年度の失業等給付等の保険料率は、労働者負担・事業主負担ともに7/1,000と、一般の事業(6/1,000)よりも高めに設定されています。これは、これらの産業が季節的な要因や天候に左右されやすく、一時的な休業や離職が発生しやすいという特性を考慮したものです。

例えば、農業における収穫期のみの短期雇用や、漁業における季節操業、清酒製造における冬季の仕込み期間のみの雇用など、他の産業に比べて雇用形態が多様で、かつ不安定になりやすい傾向があります。このような特殊な雇用実態に対応するため、手厚い給付が行えるよう保険料率が高く設定されているのです。

この特例は、法人格を持つ事業所だけでなく、個人事業主で従業員を雇用している場合にも適用されます。該当する事業所の経理担当者は、一般の事業とは異なる料率を適用することに注意が必要です。

また、これらの業種では外国人技能実習生など、多様な国籍の従業員が働くケースも多いため、雇用保険の適用条件や給付制度について、外国人従業員にも分かりやすく説明できる体制を整えることも大切になってきます。

建設業の雇用保険と二事業料率

建設業もまた、雇用保険の保険料率において特例が適用される業種の一つです。

2024年度の失業等給付等の保険料率は、労働者負担・事業主負担ともに7/1,000となっており、これは農林水産・清酒製造業と同様に一般の事業より高い料率です。加えて、雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担)も4.5/1,000と、一般の事業(3.5/1,000)より高めに設定されています。

この二事業の保険料率が高い背景には、建設業の多重下請け構造や現場ごとの短期雇用、季節性による雇用の不安定さといった業界特有の事情があります。これに対応するため、建設業においては労働者の雇用安定や能力開発を目的とした事業が特に重要視され、より多くの費用が充てられているのです。

具体的には、雇用調整助成金や建設労働者向けの能力開発助成金などが、建設業の雇用安定に貢献しています。

また、建設業では元請企業が下請企業の雇用保険料の一部を負担する「請負事業主の適用」といった特殊な取り扱いがある場合もあります。特に、一人親方のような個人事業主が建設現場で働く場合の雇用保険の扱いは複雑になることがあるため、適切な手続きのために専門家への相談も検討すべきでしょう。

建設業の事業主は、これらの特殊な料率と手続きを正確に理解し、適切な雇用保険の運用を行うことが求められます。

転籍・グループ会社間の異動と雇用保険の扱い

転籍時の雇用保険資格喪失・取得手続き

従業員が子会社や関連会社など、別法人であるグループ会社へ転籍する場合、元の会社での雇用契約が終了し、転籍先の会社と新たに雇用契約を結ぶことになります。このため、雇用保険においても資格喪失手続きと資格取得手続きが必要となります。

具体的には、元の会社では「雇用保険資格喪失届」を提出し、「離職等年月日」には転籍前の退職日(例えば3月31日)を記載します。一方、転籍先の会社では「雇用保険資格取得届」を提出し、「被保険者となった年月日」には転籍日(例えば4月1日)を記載します。

重要なのは「喪失原因」の選択です。勤続年数を継続して扱う場合は「1(4分の3未満の事業所へ移行)」とし、離職証明書の発行手続きは行いません。この場合、雇用保険上の被保険者期間は継続しているものと見なされます。

しかし、一旦退職金を清算するなど、雇用契約を完全に終了させる場合は「2(自己都合退職)」とし、従業員の希望があれば離職証明書を発行します。この「2」を選択した場合、雇用保険上の被保険者期間はリセットされ、失業給付の要件を計算する際には、新しい会社での加入期間が改めてカウントされることになります。

どちらを選択するかは、会社の規定や従業員との合意によりますが、従業員の将来の失業給付受給に影響するため、十分に説明し、理解を得ることが不可欠です。

グループ会社間の異動における注意点

グループ会社への異動は、多くの場合、法人格が異なる会社への移籍を意味します。このため、転籍と同様に、原則として元の会社での雇用契約を終了し、異動先の会社と新たに雇用契約を結び直すことになります。

したがって、雇用保険だけでなく、健康保険や厚生年金保険といった社会保険、さらには労働者災害補償保険(労災保険)も含めた、すべての労働・社会保険の手続きが必要となります。

  • 元の会社:社会保険の資格喪失、雇用保険の資格喪失
  • 異動先の会社:社会保険の資格取得、雇用保険の資格取得

これらの手続きを怠ると、従業員の保険給付に影響が出るだけでなく、会社の法的な責任問題にも発展する可能性があります。

また、従業員に対しては、転籍の理由だけでなく、「健康保険証の変更」「退職金の取り扱い」「勤続年数の継続性」「有給休暇の引き継ぎ」など、具体的な影響を丁寧に説明することが極めて重要です。

特に、勤続年数の継続は、退職金規程や社内表彰制度などに影響する場合があるため、グループ会社内で整合性の取れたルールを確立し、明確に伝える必要があります。従業員が不安なく異動できるよう、きめ細やかなサポート体制を整えましょう。

離職証明書の発行と離職理由の重要性

転籍やグループ会社間の異動の際に「喪失原因1」を選択し、勤続年数を継続する場合は、原則として離職証明書は発行しません。しかし、従業員が希望する場合や、一旦雇用契約を清算する「喪失原因2」を選択した場合は、離職証明書の発行が必要になります。

この離職証明書に記載される「離職理由」は、従業員が将来失業給付(基本手当)を受給する際の給付日数や受給開始時期に大きく影響するため、その記載内容は非常に重要です。

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として、男女ともに「その他の個人的理由」(男性 61.5%、女性 75.7%)が最も多くを占めています。これには、結婚、出産、育児、介護、人間関係や待遇への不満などが含まれます。

離職理由が「会社都合」である「特定受給資格者」や、やむを得ない理由による自己都合退職である「特定理由離職者」に該当する場合、一般の自己都合退職(一般受給資格者)よりも給付日数が多くなったり、待期期間なく給付が開始されたりするなど、失業給付において有利な取り扱いが受けられます。

具体的には、「解雇等による離職(離職区分1A)」や「退職勧奨、事業縮小、賃金大幅低下等による正当な理由のある自己都合離職(離職区分3A)」などが特定受給資格者に含まれます。

会社は、転籍に伴う退職の場合でも、その実態を正確に離職証明書に反映させることが、従業員の権利を守る上で非常に大切です。</

雇用保険の合算・連続:加入期間をどう見る?

被保険者期間の通算と失業給付の関係

雇用保険における「被保険者期間」は、失業給付(基本手当)を受給するための要件を満たしているか、またどれくらいの期間給付を受けられるかを決定する上で非常に重要な要素となります。

失業給付を受給するためには、原則として離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが必要です。ただし、倒産や解雇などによる「特定受給資格者」や、正当な理由のある自己都合退職などの「特定理由離職者」の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば受給要件を満たします。

この被保険者期間は、失業給付の受給要件を満たした後に再就職し、再び離職した場合でも、一定の条件下で過去の加入期間が通算されることがあります。具体的には、前回の離職から再就職までのブランク期間が1年以内(一部例外あり)であれば、過去の被保険者期間と現在の被保険者期間を合算して計算することが可能です。

ただし、一度失業給付を受給してしまうと、その際に算定基礎となった被保険者期間はリセットされ、再度受給するためには新たな被保険者期間が必要となります。このように、被保険者期間の通算は従業員のライフプランに大きく影響するため、正確な知識を持つことが重要です。

転籍・再雇用時の加入期間の継続性

転籍や再雇用において、雇用保険の加入期間がどのように扱われるかは、会社の人事担当者が特に注意すべき点です。

前述の通り、転籍時に元の会社での「喪失原因1(4分の3未満の事業所へ移行)」を選択した場合、雇用保険上の被保険者期間は形式的に継続しているものと見なされます。これは、被保険者資格の得喪を伴うものの、実質的には雇用関係が継続しているという考え方に基づいています。この場合、失業給付の算定において、前後の期間が通算されることになります。

一方で、一旦退職し、改めて別の会社(グループ会社を含む)に雇用される「再雇用」の場合、原則として前の会社の被保険者期間はリセットされます。新しい会社での雇用保険加入期間が、再び失業給付の受給要件の算定基礎となります。ただし、退職から再雇用までの期間が短く、失業給付を受給していない場合は、一定の条件で通算される可能性があります。

また、定年退職後に嘱託社員として再雇用される「高年齢再雇用」の場合、被保険者資格は継続しますが、高年齢雇用継続給付などの特定の給付制度の対象となる場合があります。これらのケースは個別の事情によって判断が異なるため、ハローワークや専門家への確認が不可欠です。

会社は、転籍や再雇用の際、従業員に雇用保険の加入期間の扱いや、それが失業給付にどう影響するかを明確に説明し、不要な誤解やトラブルを避けるよう努めるべきです。

複数事業所での勤務と雇用保険

現代では、複数の会社で同時に働く「副業・兼業」が普及しつつあります。このようなケースにおいて、雇用保険の加入はどのように扱われるのでしょうか。

雇用保険は、原則として「主たる生計を維持する会社」で加入することになっています。つまり、複数の事業所で雇用保険の加入要件(週20時間以上、31日以上の雇用見込み)を満たしている場合でも、実際に雇用保険に加入できるのはいずれか一方の事業所のみです。

どちらを主たる事業所とするかは、通常、給与額の多い方や労働時間の長い方を基準に判断されますが、最終的には従業員本人の意向も踏まえて決定されます。この選択によって、将来の失業給付の額や、育児休業給付などの受給要件に影響が出る可能性があります。

例えば、A社で週25時間、B社で週15時間働いている場合、A社で雇用保険に加入するのが一般的です。もしA社を退職した場合、B社での勤務が継続していても、B社での労働時間が20時間未満であれば、原則として雇用保険の適用がなくなることになります。

会社としては、従業員が複数の事業所で働いていることを把握した場合、その従業員の雇用保険の加入状況について確認し、適切なアドバイスを提供することが求められます。特に、副業を認めている企業においては、従業員が雇用保険の仕組みを理解しているかを確認し、必要に応じて手続きをサポートする体制を整えることが、トラブル防止に繋がります。

偶数月・奇数月の雇用保険料と源泉徴収票のポイント

雇用保険料の控除タイミングと計算方法

雇用保険料は、毎月の給与から控除される形で徴収されます。社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が「翌月控除」や「当月控除」など会社によって異なる控除方法があるのに対し、雇用保険料は原則として「当月分の給与から当月分を控除」する形で徴収されます。

計算方法は非常にシンプルで、「賃金総額(手当等を含む) × 雇用保険料率」で算出されます。この賃金総額には、基本給のほか、通勤手当、残業手当、家族手当、住宅手当なども含まれますが、退職金や賞与など一部含まれないものもあります。

月の途中で入社した従業員の場合、入社月から雇用保険料の控除対象となります。例えば、4月15日に入社した場合、4月分の給与から雇用保険料が控除されます。退職した場合も同様で、退職月の給与から最終的な雇用保険料が控除されます。

社会保険料のように日割り計算を行うことはなく、月途中の入退社でも一律で月額の賃金総額に基づいて計算されます。この点は、社会保険料の計算と異なるため、給与計算担当者は注意が必要です。

毎月の給与明細に雇用保険料の控除額が明記されているかを確認し、従業員からの問い合わせに正確に答えられるよう、計算方法を理解しておくことが重要です。

源泉徴収票における雇用保険料の記載

年末調整や確定申告の際に発行される「給与所得の源泉徴収票」には、その年に支払われた給与総額や源泉徴収された所得税額、社会保険料の合計額などが記載されます。

雇用保険料は、この源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に、健康保険料や厚生年金保険料などと合算された形で記載されます。つまり、源泉徴収票上では雇用保険料だけが単独で記載されることはありません。

ここで注意すべき重要なポイントは、雇用保険料は所得税の計算における社会保険料控除の対象にはなりますが、それ自体が所得税の計算を直接左右するものではないという点です。社会保険料控除は、所得税の課税所得を減らすためのものであり、雇用保険料もその「社会保険料等」の一部として控除されます。

従業員によっては、給与明細で「社会保険料」と「雇用保険料」が別々に表示されているため、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄を見たときに、「自分の雇用保険料はどこに記載されているのか?」と疑問に思うことがあります。その際には、雇用保険料が社会保険料等の一部として合算されていることを説明できるように準備しておきましょう。

正確な源泉徴収票の発行は、従業員の確定申告にも影響するため、給与計算と連携し、ミスなく処理することが会社の義務です。

従業員への明細書説明とトラブル防止策

従業員が毎月受け取る給与明細書には、支給項目と控除項目が詳細に記載されています。この控除項目の中で、社会保険料と並んで雇用保険料が控除されていることを示す必要があります。

多くの従業員は「社会保険料」という言葉を健康保険料と厚生年金保険料の総称として認識しているため、そこに雇用保険料も含まれることや、雇用保険料が別途「雇用保険」という名目で控除されている場合は、その違いについて混乱する可能性があります。

会社としては、給与明細の項目名を分かりやすく設定するだけでなく、新入社員研修時や料率変更時などに、雇用保険料の計算方法、控除の仕組み、そして社会保険料との違いについて丁寧に説明する機会を設けることが重要です。例えば、2024年度の料率据え置きの際も、改めて従業員に周知することで理解を深めることができます。

特に、給与明細に記載される「総支給額」や「課税対象額」の概念と、そこから控除される各種保険料の関係性を説明することで、従業員の疑問や不安を解消し、給与計算に関する透明性を高めることができます。

万が一、従業員から雇用保険料に関する質問があった場合でも、正確かつ迅速に回答できるよう、人事・経理担当者は常に最新の情報を把握し、対応できる体制を整えておくことが、従業員との信頼関係構築とトラブル防止に繋がります。