概要: 雇用保険の納付額は、毎月の給与や賞与から一定の料率で計算されます。この記事では、雇用保険の徴収タイミング、納付方法、そして給付額との関連性について詳しく解説します。
【徹底解説】雇用保険、いくら払う?給付額との関係も!
会社員として働く私たちにとって、雇用保険は万が一の時に生活を支えてくれる大切なセーフティネットです。
しかし、「毎月いくら引かれているんだろう?」「給付額ってどうやって決まるの?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。
この記事では、2025年度の最新情報に基づき、雇用保険料の計算方法から給付額の仕組みまで、分かりやすく徹底解説します。
ご自身の雇用保険について理解を深め、将来に備えましょう。
雇用保険の基本:納付率と計算方法
雇用保険は、失業時の生活保障や育児休業中の収入補填、そして雇用の安定・能力開発を目的とした重要な社会保険です。
私たちが毎月支払う保険料が、これらの制度を支えています。
2025年度の雇用保険料率:最新情報
2025年4月1日からは、雇用保険料率が引き下げられることが決定しています。
これは、雇用保険財政の改善傾向を背景にしたもので、労働者と事業主双方にとって負担軽減につながります。
一般の事業の場合、主な料率は以下の通りです。
給付の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
---|---|---|---|
失業等給付、育児休業給付 | 5.5/1,000 (0.55%) | 9/1,000 (0.90%) | 14.5/1,000 (1.45%) |
雇用保険二事業 | ― | 3.5/1,000 (0.35%) | 3.5/1,000 (0.35%) |
この料率は、農林水産業・清酒製造業や建設業といった一部の業種では異なります。
例えば、建設業では失業等給付・育児休業給付の保険料率が労働者負担6.5/1,000、事業主負担11/1,000とやや高めに設定されています。
ご自身の勤務先の業種を確認し、正確な料率を把握しておくことが重要です。
労働者と事業主の負担割合:公平性の原則
雇用保険料は、その目的に応じて労働者と事業主の負担割合が異なります。
主に失業等給付や育児休業給付にかかる保険料は、労働者と事業主がほぼ半分ずつ負担する「労使折半」が原則です。
これにより、制度の安定性を保ちながら、両者が公平に責任を分かち合っています。
一方で、「雇用保険二事業」と呼ばれる、失業の予防や労働者の能力開発、雇用機会の拡大などを目的とした事業にかかる保険料は、事業主のみが全額を負担します。
これは、事業主が雇用を維持し、労働者のスキルアップを支援することの重要性を反映したものです。
このように、雇用保険料は単なる税金ではなく、雇用を取り巻く様々なリスクから労働者を守り、企業の健全な発展をサポートするための費用として、その負担割合が決められています。
雇用保険料の計算式と対象賃金
雇用保険料は、あなたの給与や手当といった「賃金総額」に、前述の「雇用保険料率」を掛けて計算されます。
計算式は非常にシンプルで、「賃金総額 × 雇用保険料率 = 雇用保険料」となります。
ここでいう「賃金総額」とは、基本給に加えて、残業手当、役職手当、住宅手当、通勤手当など、税金や社会保険料を控除する前のあらゆる手当を含んだ金額を指します。
ただし、ボーナス(賞与)や退職金は雇用保険料の計算対象には含まれません。
例えば、月収が30万円の場合、労働者負担分は2025年度の一般事業の料率0.55%を適用すると、300,000円 × 0.0055 = 1,650円となります。
給与明細で「雇用保険料」の項目を確認すると、この計算によって算出された金額が毎月天引きされていることがわかるでしょう。
自分の給与額が変われば、雇用保険料もそれに合わせて変動することを覚えておきましょう。
雇用保険の徴収タイミングと納付時期
雇用保険料は、社会保険料の一部として、毎月の給与から自動的に天引きされています。
この徴収の仕組みと、事業主による国への納付時期について見ていきましょう。
毎月の給与からの天引き:徴収の仕組み
雇用保険料は、労働者の負担分について、事業主があなたの給与を支払う際に天引きする形で徴収されます。
これは、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料などと同じく、「源泉徴収」という仕組みの一部です。
給与から天引きされた雇用保険料は、後ほど説明する事業主負担分と合算され、事業主から国へ納められます。
給与明細には、基本給や各種手当の合計額から雇用保険料がいくら控除されたかが明記されていますので、毎月確認する習慣をつけると良いでしょう。
この天引きシステムによって、労働者は個別に保険料を納める手間がなく、確実に制度に参加できるようになっています。
事業主による納付:国の財源となるまで
事業主は、労働者から天引きした雇用保険料(労働者負担分)と、自身が負担する雇用保険料(事業主負担分)を合わせて、国に納付する義務があります。
この納付は、原則として毎月行われ、給与支払い月の翌月10日が期限とされています。
例えば、4月に支払われた給与から天引きされた雇用保険料は、事業主が5月10日までに国に納めることになります。
雇用保険料は、実は「労働保険料」の一部として扱われており、労災保険料と合わせて一括で納付されます。
これらの保険料は、最終的に厚生労働省が所管する雇用保険財政の重要な財源となり、失業給付や育児休業給付、さらには様々な雇用安定事業の資金として活用されます。
事業主が適切に納付を行うことで、制度全体が円滑に機能し、労働者の安定が守られているのです。
年末調整・確定申告と雇用保険料
雇用保険料は、所得税や住民税の計算において「社会保険料控除」の対象となります。
つまり、支払った雇用保険料の全額を所得から差し引くことができるため、その分、課税対象となる所得が減り、結果として税金が安くなるというメリットがあります。
会社員の場合、通常は年末調整の際に、会社がこの控除手続きを行ってくれます。
給与明細に記載されている毎月の雇用保険料の合計額が、自動的に控除対象として申告されるため、特に自分で何かをする必要はありません。
しかし、中途退職して年内に再就職しなかった場合や、自分で事業を営んでいる場合などは、確定申告で社会保険料控除を適用する必要があります。
このように、雇用保険料は単に支払われるだけでなく、税制上の優遇措置も受けられる点で、労働者にとって重要な役割を果たしています。
雇用保険の納付額はどう決まる?年収・月収・通勤手当の扱い
雇用保険料は、毎月の給与額に基づいて計算されます。
どのような手当や報酬が「賃金」として計算対象になるのか、具体的に見ていきましょう。
雇用保険料の対象となる賃金:どこまで含まれる?
雇用保険料の計算対象となる「賃金」とは、労働の対価として会社から支払われるすべてのものを指します。
これには、基本給はもちろんのこと、役職手当、住宅手当、扶養手当、精勤手当など、名称を問わずほとんどの手当が含まれます。
特に多くの人が気になるのが「通勤手当」の扱いです。所得税法上は非課税となる部分がありますが、雇用保険の計算においては、通勤手当も賃金に含めて計算されます。
そのため、たとえ通勤手当が非課税扱いであっても、雇用保険料の計算対象からは外れませんので注意が必要です。
ただし、結婚祝い金や出産祝い金、災害見舞金といった慶弔見舞金や、労働の対価ではないとされる恩恵的な給付は賃金には含まれません。
ご自身の給与明細を確認し、何が賃金総額に含まれているかを把握しておきましょう。
年収・月収と雇用保険料の関係性
雇用保険料は、月々の給与額に料率を掛けて計算されるため、あなたの月収が高ければ高いほど、納める雇用保険料も高くなります。
これは、健康保険や厚生年金保険のように「標準報酬月額」に基づいて上限額が設定されているわけではなく、支払われた賃金の全額が計算対象となるためです。
したがって、年収が高くなれば、それに比例して年間で支払う雇用保険料の総額も増加します。
ただし、年収が上がれば給与から天引きされる雇用保険料の負担感も相対的に小さくなる傾向があります。
また、雇用保険料率は国によって定められているため、個人の月収や年収によって料率が変わることはありません。
自身の所得と雇用保険料の関係を理解することは、家計管理にも役立つでしょう。
賃金総額の考え方:残業代や手当も忘れずに
雇用保険料の計算において重要な「賃金総額」には、基本給だけでなく、毎月変動する可能性のある残業代や休日出勤手当も含まれます。
たとえば、繁忙期で残業が増え、普段よりも多くの残業代が支払われた月は、その月の賃金総額が大きくなるため、結果として雇用保険料も増加します。
これは、日々の労働の対価として支払われるすべての報酬を、雇用保険料の計算対象とするという考え方に基づいています。
そのため、毎月の給与額に変動がある場合、雇用保険料もそれに合わせて変動することになります。
自分の給与明細をよく確認し、どのような内訳で賃金が支払われているかを把握することで、雇用保険料がどのように計算されているかをより正確に理解することができます。
賃金総額が正確に把握されることで、適切な保険料が徴収され、将来の給付にも反映されることになります。
雇用保険の納付書と納付先:知っておきたい手続き
雇用保険料の納付は事業主の責任で行われますが、労働者もその手続きの概要を知っておくことは重要です。
万が一、事業主が納付を怠った場合の影響なども理解しておきましょう。
事業主が使用する納付書の種類
事業主が雇用保険料を国に納付する際に使用するのが「労働保険料等納付書」です。
この納付書は、雇用保険料と労災保険料を合わせて納めるためのもので、一般的な社会保険料とは異なります。
納付方法には主に二種類あります。
- 毎月納付:賃金総額が年間で比較的小さい事業所の場合、毎月の給与計算時に徴収した保険料を翌月に納付します。
- 年一回納付(概算・確定保険料):多くの事業所は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を対象期間とし、まず「概算保険料」を予測して納付します。翌年度の6月〜7月に、実際に支払った賃金総額に基づいて確定した「確定保険料」を算出し、概算保険料との差額を精算します。
近年では、e-Gov(電子政府の総合窓口)を利用した電子申請・電子納付も普及しており、手続きの利便性が向上しています。
どこに納める?納付先と手続きの流れ
事業主が労働保険料等納付書を用いて雇用保険料を納める主な場所は以下の通りです。
- 日本銀行(歳入代理店):全国の日本銀行本支店
- 金融機関:全国の銀行、信用金庫、労働金庫など
- 郵便局(ゆうちょ銀行):全国のゆうちょ銀行・郵便局
納付書に必要事項を記入し、現金または預金口座振替で納付します。
また、先述の通り、e-Govを通じた電子納付(Pay-easy(ペイジー)払いなど)も可能です。
事業主は、労働保険料の確定申告書などを所管の労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)に提出し、その後に保険料を納付するという流れになります。
労働者はこれらの手続きを直接行うことはありませんが、事業主が適切に手続きを行っていることが、自身の雇用保険の権利を守る上で不可欠です。
納付を怠るとどうなる?遅延損害金と罰則
事業主が雇用保険料の納付を怠った場合、様々なペナルティが課せられます。
まず、納付期限を過ぎると、未納期間に応じて「延滞金」が発生します。
この延滞金は、税金と同様に日割りで加算されていくため、納付が遅れるほど負担が大きくなります。
さらに、悪質な未納の場合や、度重なる督促にも応じない場合は、法律に基づく「追徴金」が課せられたり、財産の差し押さえといった強制徴収が行われたりすることもあります。
事業主が雇用保険料を適切に納付していないと、その事業所で働く労働者の雇用保険の加入状況が不明確になり、いざ失業した際に基本手当が支給されない、あるいは支給が遅れるといった重大な影響が出る可能性があります。
労働者自身も、年に一度送られてくる「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」などで、自身の加入状況を確認しておくことが大切です。
雇用保険の給付額はどう計算される?日額の目安
雇用保険の最も主要な給付の一つが「基本手当」、いわゆる失業保険です。
この基本手当がいくらもらえるのか、その計算方法を見ていきましょう。
賃金日額の算出方法:基本手当のベース
基本手当の金額を計算する上で、まず基準となるのが「賃金日額」です。
賃金日額は、原則として離職日以前6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で割って算出されます。
ここでいう「賃金総額」には、毎月の基本給や各種手当(残業手当、通勤手当なども含む)が含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれません。
例えば、離職前6ヶ月間の賃金総額が150万円だった場合、賃金日額は1,500,000円 ÷ 180日 ≒ 8,333円となります。
この賃金日額が、次に説明する基本手当日額を決定するための重要な基礎となります。
もし離職前6ヶ月間に病気や怪我で長期休業していたなど、賃金が著しく少なかった期間がある場合は、その期間を除いて賃金日額を算出する特例が適用されることもあります。
基本手当日額の決定:給付率と年齢・上限下限
賃金日額が算出されたら、それに一定の「給付率」を掛けて「基本手当日額」が決定されます。
給付率は、あなたの年齢や賃金日額の高さによって異なります。
- 29歳以下: 賃金日額の約80%~50%
- 30歳以上45歳未満: 賃金日額の約80%~50%
- 45歳以上60歳未満: 賃金日額の約80%~50%
- 60歳以上65歳未満: 賃金日額の約80%~45%
特徴として、賃金日額が低いほど給付率が高くなる「逆進性」が導入されており、生活保障の側面が強化されています。
また、基本手当日額には、毎年見直される上限額と下限額が定められています。
例えば、2024年8月1日時点での基本手当日額の上限額は、60歳以上65歳未満の方で7,094円、それ以外の方で8,490円となっています(賃金日額に基づく)。
賃金日額が非常に高い場合でも、上限額を超える額は支給されません。
給付制限と所定給付日数:もらえる期間と注意点
基本手当が支給される期間は「所定給付日数」と呼ばれ、これはあなたの離職理由、離職時の年齢、そして雇用保険の被保険者期間(加入期間)によって決まります。
例えば、会社都合退職(倒産・解雇など)の場合は、自己都合退職よりも所定給付日数が長めに設定されています。
また、自己都合退職の場合には、手当の支給が開始されるまでに「給付制限」という期間が設けられています。
通常、ハローワークで求職の申し込みをした日を含めて7日間の「待期期間」の後に、原則2ヶ月間(または3ヶ月間)の給付制限期間が続きます。
しかし、令和7年4月1日以降は、自己都合退職であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮される場合があります。
これは、労働者の再就職をよりスムーズに支援するための変更点と言えるでしょう。
失業手当を受給するためには、ハローワークでの求職活動が必須となるため、ご自身の状況に応じて早めに手続きを進めることが大切です。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用保険の料率(何パーセント)はどのように決まりますか?
A: 雇用保険の料率は、事業の種類(一般の事業、農林水産業、建設業など)や、被保険者の雇用形態(一般被保険者、高年齢被保険者など)によって定められています。政府が年度ごとに見直すことがあります。
Q: 雇用保険の納付はいつ行われますか?
A: 雇用保険料は、原則として毎月の給与から控除され、翌月10日までに納付されます。賞与からも控除され、その場合は賞与支払月の翌月10日までに納付されます。
Q: 雇用保険の給付額(月いくら、日額)はどのように計算されますか?
A: 雇用保険の基本手当(失業給付)の日額は、離職日以前6ヶ月間の賃金総額を180で割った「賃金日額」に、一定の給付率を乗じて計算されます。給付率は年齢や所得によって変動します。
Q: 雇用保険の計算で、通勤手当はどのように扱われますか?
A: 通勤手当は、原則として賃金として扱われ、雇用保険料の計算対象となります。ただし、非課税となる範囲など、一定の条件があります。
Q: 雇用保険の納付書はどこで入手できますか?
A: 雇用保険の納付書は、会社(事業主)が労働局や年金事務所から受け取るか、電子申告システムを通じて手続きを行います。個人が直接納付書を入手する機会は少ないです。