60歳からの雇用保険:定年後も安心!受給条件と手続きを解説

2025年4月1日より、雇用保険制度の一部が改正され、特に60歳以上の方を対象とした「高年齢雇用継続給付」の支給率が変更されます。
定年後も安心して働き続けるために、雇用保険制度を正しく理解することは非常に重要です。
本記事では、最新の情報に基づき、60歳以降の雇用保険の受給条件や手続きを分かりやすく解説します。
この情報が、皆さんのセカンドキャリアをより充実させる一助となれば幸いです。

  1. 60歳以降の雇用保険、何が変わる?基本を理解しよう
    1. 高年齢雇用継続給付の概要と目的
    2. 2025年4月1日改正のポイント
    3. 高年齢雇用継続給付の種類と対象者
  2. 60歳以降も雇用保険を受給できる?年齢別の受給条件
    1. 高年齢雇用継続給付の具体的な受給資格
    2. 賃金低下率と支給率の仕組み
    3. 被保険者期間の重要性と計算方法
  3. 65歳以上、70歳以上、75歳以上:それぞれの雇用保険事情
    1. 65歳以降の雇用保険(高年齢雇用継続給付の終了)
    2. 65歳以降の失業給付(高年齢求職者給付金)
    3. 年金との調整と注意点
  4. 雇用保険の加入・退職・免除・保険料:知っておきたいポイント
    1. 60歳以降の雇用保険加入条件
    2. 退職時の手続きと基本手当
    3. 雇用保険料の計算と免除規定
  5. 離職票の準備と手続き:スムーズな受給のために
    1. 会社が行う受給資格確認と初回申請
    2. 継続申請の具体的な流れと必要書類
    3. 電子申請とハローワーク相談の活用
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 60歳になったら、雇用保険の受給資格はどうなりますか?
    2. Q: 59歳で退職した場合と65歳で退職した場合で、雇用保険の受給額は変わりますか?
    3. Q: 70歳以上で雇用保険に加入できますか?また、退職したら受給できますか?
    4. Q: 65歳以上や75歳以上の場合、雇用保険料は免除されますか?
    5. Q: 離職票はいつ頃、どのように受け取れますか?

60歳以降の雇用保険、何が変わる?基本を理解しよう

高年齢雇用継続給付の概要と目的

高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける場合に、その低下した賃金の一部を補填する給付金制度です。
これは、高齢者の就業意欲を維持し、65歳までの雇用継続を支援することを大きな目的としています。
定年後の再雇用などで賃金が下がった場合でも、生活の安定を図り、安心して働き続けられるようにするための重要なセーフティネットと言えるでしょう。
賃金が大幅に減少することで働く意欲を失ってしまうことがないよう、国が積極的に支援している制度です。
この給付金は、継続雇用で働く高齢者の生活を支えるための、非常に重要な役割を担っています。

2025年4月1日改正のポイント

2025年4月1日より、高年齢雇用継続給付の支給率が変更されることになりました。
これは、制度を利用する方々にとって特に重要な変更点です。
変更前は最高15%だった支給率が、改正後は最高10%となります。
この新しい支給率は、2025年4月1日以降に60歳に達した方、またはその日以降に雇用保険の被保険者期間が5年を満たすことになった方が対象となります。
すでに給付を受けている方、つまり2025年3月31日以前に60歳に達し、給付を開始している方については、改正後も従前の支給率(最高15%)が適用されますのでご安心ください。
この変更により、今後の受給額が変わる可能性があるため、ご自身の状況を早めに確認しておくことが賢明です。

高年齢雇用継続給付の種類と対象者

高年齢雇用継続給付には、大きく分けて二つの種類があります。
一つは「高年齢雇用継続基本給付金」、もう一つは「高年齢再就職給付金」です。
高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以降も失業保険(基本手当)や再就職手当などを受け取らずに、同じ会社で働き続ける場合に支給されます。
これは、継続して働く意欲のある方を支援するものです。
一方、高年齢再就職給付金は、60歳で定年退職した後、失業保険(基本手当)を受給し、その後、別の企業に再就職した場合に支給されます。
それぞれの給付金は、置かれた状況によって対象者が異なりますので、ご自身のキャリアプランに合わせてどちらの給付金が適用される可能性があるかを確認することが重要です。

60歳以降も雇用保険を受給できる?年齢別の受給条件

高年齢雇用継続給付の具体的な受給資格

高年齢雇用継続給付を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、年齢が「60歳以上65歳未満」の雇用保険の一般被保険者であることが前提です。
次に、60歳到達時点の賃金と比較して、60歳以降の賃金が「75%未満に低下している」必要があります。
これは、賃金が一定水準以下に下がったことに対する補填を目的としているためです。
さらに、雇用保険の被保険者期間が「5年以上」あることも条件の一つです。
この期間は60歳以前の期間も通算されますので、長年のキャリアがしっかりと評価されます。
高年齢再就職給付金の場合は、再就職した日の前日において、基本手当の支給残日数が100日以上あることも条件となりますので、注意が必要です。

賃金低下率と支給率の仕組み

高年齢雇用継続給付の支給額は、60歳到達時点の賃金と、60歳以降の各月の賃金の比率に基づいて計算されます。
具体的には、賃金の低下率によって支給率が変動する仕組みです。
例えば、60歳時点の賃金が30万円で、60歳以降の賃金が18万円に低下した場合、賃金低下率は60%(18万円 ÷ 30万円)となります。
この場合、60歳時点の賃金の64%以下に低下しているため、支給額は賃金の10%相当額(18万円 × 10% = 18,000円)となります。
しかし、賃金が26万円に低下した場合は、低下率が約73.3%(26万円 ÷ 30万円)となり、64%超75%未満に該当するため、支給額は賃金の10%未満となります(具体的な計算は複雑なため、ハローワーク等にご確認ください)。
このように、賃金の低下度合いによって支給額が変わるため、ご自身の状況でどれくらいの給付が見込まれるか、事前に確認することが大切です。

被保険者期間の重要性と計算方法

高年齢雇用継続給付の受給資格において、「雇用保険の被保険者期間が5年以上あること」は非常に重要な条件です。
この被保険者期間は、60歳以前に雇用保険に加入していた期間も通算されるため、これまでの職歴が長く雇用保険に継続して加入していれば、比較的容易にこの条件を満たすことができます。
例えば、転職経験がある方でも、それぞれの職場で雇用保険に加入していた期間が途切れずに積み重なっていれば、合計で5年以上となっていれば問題ありません。
ご自身の被保険者期間を確認したい場合は、ハローワークで発行される「雇用保険被保険者期間等証明書」などで確認することができます。
この期間が不足していると、他の条件を満たしていても給付を受けられないため、特に注意が必要です。
将来的に給付の可能性がある方は、ご自身の雇用保険加入期間を把握しておくことをお勧めします。

65歳以上、70歳以上、75歳以上:それぞれの雇用保険事情

65歳以降の雇用保険(高年齢雇用継続給付の終了)

高年齢雇用継続給付は、その名の通り「60歳以上65歳未満」を対象とした制度です。
したがって、原則として65歳になる月で支給が終了します。
例えば、65歳の誕生日が月の途中であった場合、その月までの給付となり、翌月以降は高年齢雇用継続給付の対象外となります。
しかし、65歳以降も働き続ける場合、雇用保険の被保険者としての扱いは継続されます。
65歳以降も雇用保険の適用事業所で働く限り、基本的には雇用保険の被保険者となります。
この場合、雇用保険料の支払いも継続されますが、万が一離職した場合には、別の給付金制度の対象となる可能性があります。
65歳以降の雇用保険は、高年齢雇用継続給付とは異なる制度に移行することを理解しておくことが重要です。

65歳以降の失業給付(高年齢求職者給付金)

65歳以降に離職した場合、原則として通常の基本手当(失業保険)ではなく、「高年齢求職者給付金」の対象となります。
高年齢求職者給付金は、一時金として支給されるのが特徴です。
被保険者期間が1年未満の場合は30日分、1年以上の場合は50日分の基本手当日額が支給されます。
これは、65歳未満の離職者が受け取る基本手当のように、一定期間にわたって分割して支給されるものではありません。
この給付金を受給するためには、離職後1年以内にハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に求職活動を行う必要があります。
65歳以降の離職は、若い世代とは異なる失業給付の仕組みが適用されるため、いざという時のために制度を把握しておくことが大切です。

年金との調整と注意点

高年齢雇用継続給付を受給する上で、特に注意が必要なのが年金との調整です。
60歳代前半で特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受給している方が高年齢雇用継続給付を受け取る場合、年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。
これは、年金と給付金で収入が一定額を超える場合に調整が行われるためです。
支給限度額も設けられており、賃金と給付金の合計額には上限があります。
例えば、2022年7月31日までは364,595円が上限額とされており、この上限額は毎年8月1日に見直されます。
賃金と給付金の合計がこの上限額を超える場合は、合計額が上限額になるように調整されます。
年金受給額に影響が出る可能性があるため、事前に年金事務所やハローワークでご自身の状況を確認し、シミュレーションを行うことを強くお勧めします。

雇用保険の加入・退職・免除・保険料:知っておきたいポイント

60歳以降の雇用保険加入条件

60歳以降も働き続ける場合、雇用保険の加入条件は基本的に他の年齢層と変わりません。
雇用保険の適用事業所で働いている従業員であれば、原則として年齢に関わらず雇用保険の被保険者となります。
具体的には、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上引き続き雇用される見込みがあることが条件です。
正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトであっても、これらの条件を満たせば雇用保険の対象となります。
65歳以降も雇用保険の加入は継続されるため、定年後も再雇用などで働き続ける限り、雇用保険料を支払い、万が一の離職時には給付を受けられる可能性があります。
自身の労働条件が雇用保険の加入要件を満たしているか、改めて確認してみましょう。

退職時の手続きと基本手当

60歳以降に会社を退職した場合、その状況によって受給できる雇用保険の給付が変わってきます。
もし、高年齢雇用継続給付の対象期間中(60歳~65歳未満)に退職した場合は、高年齢雇用継続給付ではなく、通常の失業保険(基本手当)の受給対象となる可能性があります。
この場合、離職票をハローワークに提出し、求職の申し込みを行う必要があります。
また、基本手当の受給中は、積極的に求職活動を行うことが義務付けられています。
一方、65歳以降に退職した場合は、前述の「高年齢求職者給付金」の対象となります。
いずれのケースでも、会社から交付される離職票が手続きの第一歩となるため、退職時には必ず離職票を受け取り、速やかにハローワークで相談することがスムーズな受給につながります。

雇用保険料の計算と免除規定

かつては65歳以上の労働者は雇用保険料が免除されていましたが、2017年1月1日以降、この免除制度は廃止されました。
現在では、年齢に関わらず、雇用保険の被保険者であれば原則として雇用保険料を支払う必要があります。
雇用保険料は、賃金総額に定められた保険料率を乗じて計算されます。
この保険料は、労働者と事業主がそれぞれ負担する形になっています。
保険料率は業種によって異なりますが、毎年見直しが行われます。
ご自身の給与明細を確認すれば、雇用保険料がいくら控除されているかを確認することができます。
60歳以降も働き続ける場合、年金との調整だけでなく、雇用保険料の支払いも継続されることを理解しておくことが、家計の計画を立てる上で重要です。

離職票の準備と手続き:スムーズな受給のために

会社が行う受給資格確認と初回申請

高年齢雇用継続給付の申請手続きは、原則として事業主(会社)を経由して行われます
従業員が60歳に達した際、会社は「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」と「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」をハローワークに提出し、従業員の受給資格の確認を行います。
この確認が完了すると、いよいよ初回申請の手続きに進みます。
初回申請は、最初に給付を受けようとする支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内に行う必要があります。
会社側もこの制度を理解し、従業員へのサポート体制が整っているかを確認することも重要です。
円滑な手続きのためにも、会社との連携が不可欠となります。

継続申請の具体的な流れと必要書類

初回申請が承認された後も、継続して高年齢雇用継続給付を受け取るためには、定期的な申請が必要です。
原則として、2か月に一度、支給申請書をハローワークに提出します。
この申請では、申請期間中の賃金状況などを報告することになります。
必要な書類としては、雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書、高年齢雇用継続給付受給資格確認票、(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書の他に、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)や、直近2ヶ月分の賃金証明書などが求められます。
書類が不足していたり、記載内容に不備があったりすると、支給が遅れる原因となりますので、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。
詳細な必要書類については、お勤めの会社の人事担当者または最寄りのハローワークにご確認ください。

電子申請とハローワーク相談の活用

高年齢雇用継続給付の申請は、ハローワーク窓口での手続きだけでなく、電子申請も可能です。
電子申請を利用すれば、自宅や職場からインターネットを通じて手続きができるため、窓口に出向く手間を省くことができます。
特に、継続して申請が必要な給付金であるため、電子申請を活用することで手続きの負担を大きく軽減できるでしょう。
ただし、電子申請には事前の登録や準備が必要な場合がありますので、利用を検討する際はハローワークのウェブサイトで詳細を確認してください。
また、制度の内容やご自身の状況で不明な点がある場合は、最寄りのハローワークや社会保険労務士に相談することを強くお勧めします。
専門家のアドバイスを受けることで、安心して制度を利用し、スムーズな受給につなげることができます。