2025年4月1日から、雇用保険料率が改定されることをご存知でしょうか?

働き方や雇用形態に関わらず、私たち労働者にとって雇用保険は非常に身近な制度です。失業時のセーフティネットとなるだけでなく、育児休業や介護休業中の生活を支える大切な役割も担っています。

本記事では、2025年度の最新情報に基づき、雇用保険料の計算方法を徹底的に解説します。パート・アルバイトの方や、交通費の扱いに疑問を持つ方も、ぜひこの記事で理解を深めてください。

正確な知識を身につけて、自身の給与明細や企業の経理業務に役立てましょう!

雇用保険料の計算、基本を理解しよう

1-1. 雇用保険料の目的と重要性

雇用保険は、国が運営する社会保険制度の一つで、働く人々の生活と雇用の安定、そして再就職の支援を目的としています。

万が一失業してしまった際や、育児・介護のために仕事を休む際に支給される給付金は、労働者の生活を経済的に支える重要な役割を果たします。日々の給与から控除される雇用保険料は、こうしたセーフティネットを維持するための大切な財源となっているのです。

私たち労働者だけでなく、事業主も保険料を負担することで、持続可能な雇用環境づくりに貢献しています。

1-2. 計算式の基本と賃金総額の考え方

雇用保険料の計算は、以下のシンプルな式で算出されます。

雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

ここで重要なのが「賃金総額」の定義です。これは、税金や社会保険料が控除される前の、会社が従業員に支払う全ての賃金の合計額を指します。

具体的には、基本給、残業代、役職手当、住宅手当、通勤手当、そして賞与なども含まれます。例えば、基本給20万円、残業代3万円、通勤手当1万円の場合、賃金総額は24万円となります。

1-3. 端数処理のルールと実際の計算例

雇用保険料を計算した結果、1円未満の端数が生じた場合には、特定のルールに沿って処理されます。

  • 50銭以下の場合:切り捨て
  • 50銭を超える場合:切り上げ

例えば、計算結果が1,234.5円であれば1,235円に、1,234.4円であれば1,234円となります。このルールは、全国一律で適用されます。

【計算例】

賃金総額:250,000円
労働者負担の雇用保険料率(一般の事業):0.55% (2025年度)

雇用保険料 = 250,000円 × 0.55% = 1,375円

もし計算結果が1,375.3円であれば1,375円、1,375.6円であれば1,376円となります。

パート・アルバイトの場合の雇用保険料計算

2-1. パートも対象?雇用保険の加入条件

「パートだから雇用保険は関係ない」と思われがちですが、一定の条件を満たせばパートやアルバイトの方も雇用保険の被保険者となります。

主な加入条件は以下の通りです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用が見込まれること

これらの条件を満たす場合、正社員と同様に雇用保険料が給与から控除され、万が一の際には雇用保険の給付を受けることができます。自身の労働条件を確認し、加入対象かどうかを把握しておきましょう。

2-2. パート・アルバイトの賃金総額の考え方

パートやアルバイトの場合でも、雇用保険料の計算における賃金総額の考え方は正社員と基本的に同じです。

時給で働く方の場合、その月の総労働時間に応じた基本給に加えて、残業手当、深夜手当、そして交通費なども全て賃金総額に含まれます。これら税金や社会保険料を控除する前の合計額が、雇用保険料の計算のベースとなります。

短時間勤務であっても、支払われた全ての賃金が対象となるため、月々の給与明細で賃金総額をしっかり確認することが大切です。

2-3. ケーススタディ:パートの雇用保険料計算

具体的な例で、パートの雇用保険料を計算してみましょう。

【計算例】

時給:1,200円
月の労働時間:週25時間 × 4週 = 100時間
月の賃金総額:1,200円 × 100時間 = 120,000円
労働者負担の雇用保険料率(一般の事業):0.55% (2025年度)

雇用保険料 = 120,000円 × 0.55% = 660円

このように、パートやアルバイトであっても、条件を満たせば雇用保険の対象となり、給与から所定の保険料が控除されます。自身の働き方と照らし合わせて、計算方法を理解しておくことが重要です。

交通費・通勤手当は雇用保険料にどう影響する?

3-1. 交通費が賃金に含まれる理由

通勤手当や定期券代などの交通費は、多くの場合、雇用保険料の計算対象となる「賃金総額」に含まれます。

これは、交通費が労働契約に基づいて事業主から労働者へ支払われる「労働の対価」の一部であるとみなされるためです。給与明細では基本給とは別に項目が設けられていることもありますが、雇用保険の計算上は合算して考えるのが原則です。

交通費が給与の一部として支給されている場合は、その金額も雇用保険料の計算に影響することを覚えておきましょう。

3-2. 非課税枠と雇用保険料計算の注意点

税法上、一定額までの通勤手当は所得税・住民税が非課税となりますが、雇用保険料の計算においては、この非課税枠の概念が直接適用されるわけではありません。

原則として、会社から支払われる通勤手当は全て雇用保険の賃金総額に含まれます。ただし、非常にまれなケースですが、特別な契約形態や会社の規約によっては、非課税となる範囲の通勤費が対象外となる場合も存在します。

自身のケースで不明な点があれば、会社の経理担当者や社会保険労務士に確認することが最も確実です。

3-3. 交通費込みでの具体的な計算例

交通費を含む賃金総額で、雇用保険料を計算してみましょう。

【計算例】

基本給:240,000円
通勤手当:10,000円
月の賃金総額:240,000円 + 10,000円 = 250,000円
労働者負担の雇用保険料率(一般の事業):0.55% (2025年度)

雇用保険料 = 250,000円 × 0.55% = 1,375円

もし通勤手当が賃金総額に含まれないと仮定すると、240,000円 × 0.55% = 1,320円となり、支払う保険料が異なります。正確な計算のためには、交通費も賃金総額に含めて計算することを忘れないようにしましょう。

2025年度の雇用保険料計算に影響する変更点

4-1. 2025年度の雇用保険料率改定の概要

2025年4月1日から2026年3月31日までの期間で、雇用保険料率が改定されます。

これは、雇用保険財政の健全化や、失業等給付・育児休業給付などの制度維持のために定期的に見直しが行われるものです。今回の改定によって、労働者負担分、そして事業主負担分の料率が一部変更されます。

自身の給与明細に記載される控除額や、事業主が負担する費用に直接影響するため、最新の料率を正確に把握しておくことが重要です。

4-2. 事業の種類別・最新雇用保険料率一覧

雇用保険料率は、事業の種類によって異なります。2025年度の主要な事業ごとの料率は以下の通りです。

【2025年度 雇用保険料率】

事業の種類 労働者負担 事業主負担(内訳) 事業主負担(合計)
一般の事業 0.55% 失業等給付・育児休業給付:0.9%
雇用保険二事業:0.35%
1.25%
農林水産・清酒製造の事業 0.65% 失業等給付・育児休業給付:1.0%
雇用保険二事業:0.35%
1.35%
建設の事業 0.65% 失業等給付・育児休業給付:1.1%
雇用保険二事業:0.45%
1.55%

※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の率が適用されます。

4-3. 改定が労働者・事業主に与える影響

今回の雇用保険料率の改定は、労働者と事業主の双方に影響を与えます。

労働者にとっては、給与から控除される雇用保険料が増減する可能性があり、手取り額に影響が出ることが考えられます。事業主にとっては、従業員を雇用する際の人件費(法定福利費)が増減することになるため、経営計画にも影響を及ぼします。

特に、失業等給付・育児休業給付の保険料率や雇用保険二事業の保険料率の変動が、それぞれの負担額に直結します。改定後の料率に基づき、自身の負担額や企業の負担額を再確認し、適切な会計処理を行うようにしましょう。

雇用保険料計算を楽にするツールと早見表の活用法

5-1. オンライン計算ツールのメリットと選び方

雇用保険料の計算は、特に従業員が多い企業や、複雑な給与形態を持つ個人事業主にとって手間のかかる作業です。

そんな時に役立つのが、オンラインの計算ツールです。これらのツールを利用すれば、賃金総額を入力するだけで自動的に雇用保険料が算出され、計算ミスを防ぎ、大幅な時間短縮につながります。

ツールを選ぶ際は、最新の雇用保険料率に確実に対応しているか、操作が簡単か、信頼できる提供元であるかなどを確認することが重要です。

5-2. 早見表を使った効率的な確認方法

日々の給与計算や、大まかな保険料の目安を知りたい場合には、雇用保険料の早見表が非常に便利です。

賃金総額のレンジとそれに伴う保険料が一覧でまとめられているため、手軽に確認することができます。自社で従業員向けの早見表を作成する際は、2025年度の最新料率を基に、よくある賃金帯で保険料を計算し、表にまとめておくと良いでしょう。

特に、パートやアルバイトが多い事業所では、給与計算の効率化に大きく貢献します。

5-3. 専門家への相談と情報収集の重要性

雇用保険料の計算は基本的なルールは明確ですが、個別の事情(休職期間、特定の労働契約など)によっては複雑な判断が必要となる場合があります。

もし自身のケースで計算方法に不安を感じたり、企業として正確な処理に自信が持てない場合は、社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。また、厚生労働省やハローワークの公式サイトで提供される最新情報やQ&Aも、常に確認しておくことが重要です。

正確な知識と適切な対応で、安心して雇用保険制度を活用しましょう。

2025年度の雇用保険料率は改定され、労働者と事業主の双方に影響が出ます。本記事では、雇用保険料の基本的な計算方法から、パート・アルバイト、交通費の扱い、そして最新の料率までを詳しく解説しました。

自身の給与明細や会社の経理業務において、正確な知識は不可欠です。オンラインツールや早見表を上手に活用し、不明な点は専門家に相談しながら、適切な雇用保険料の計算と管理を心がけましょう。

この情報が、皆様の雇用保険に関する理解の一助となれば幸いです。