概要: 就業規則の副業禁止規定は、従業員の労働時間外の活動を制限するものです。記載がない場合や、その有効性、服務規律との関係、そして具体的な記載例について解説します。
近年、働き方改革や多様なキャリア志向の高まりとともに、副業を検討する人が増えています。しかし、多くの企業では未だ就業規則に副業禁止規定が設けられており、「自分の会社は副業してもいいのか?」「もし記載がなければどうなるのか?」といった疑問を抱く方も少なくありません。
本記事では、就業規則における副業禁止規定の法的側面から、記載がない場合の注意点、違法性の判断基準、そして副業解禁の動向と服務規律との関連性までを詳しく解説します。これから副業を始めたい方、企業の担当者として規定を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。
就業規則における副業禁止規定とは?
法的原則と例外
就業規則における副業禁止規定の法的有効性を考える上で、まず押さえておくべきは労働者の「私的活動の自由」です。原則として、企業は従業員の私的な時間における活動を制限することはできません。これは、憲法で保障された職業選択の自由や、個人の生活を尊重するという考え方に基づくものです。
しかし、この自由には一定の制約が存在します。例外的に、副業が本業に具体的な支障をきたす場合には、企業が副業を禁止する規定を設けることが認められています。具体的には、例えば以下のようなケースが該当します。
- 競合他社で勤務し、会社の機密情報やノウハウが流出するリスクがある場合
- 副業による過労で本業の労務提供に支障が生じる、あるいは安全衛生上の問題が生じる場合
- 副業の内容や行為が、会社の信用や名誉を著しく損なうと判断される場合
このような合理的な理由がない限り、企業が従業員の副業を一方的に禁止することは難しいとされています。
副業解禁の現状と背景
近年、政府の働き方改革推進や、従業員のスキルアップ、収入補填へのニーズの高まりを受け、副業を認める企業が急速に増加しています。パーソル総合研究所の2023年の調査では、企業の副業容認率は60.9%に達し、さらに2025年上半期の調査では72.5%へと大幅に上昇しています。特に大企業においては、その動きが顕著です。
具体的なデータを見ると、2025年の調査では、常用労働者数5,000人以上の大企業では、実に8割以上の企業が正社員の副業・兼業を「認めている」または「認める予定」と回答しています。これは、企業の採用競争力強化、従業員のエンゲージメント向上、そして多様な働き方への対応が求められている現代において、副業解禁が企業の持続的な成長戦略の一部となっていることを示しています。
コロナ禍を経てリモートワークが普及したことも、副業への心理的ハードルを下げ、解禁を後押しする要因の一つとなっています。企業は副業を通じて従業員が新たなスキルや知見を獲得し、それが本業にも還元されることを期待しているのです。
企業が副業を禁止・容認する理由
企業が副業に対してどのような姿勢を取るかは、その経営戦略やリスク認識に大きく左右されます。副業を禁止する主な理由としては、以下のような懸念が挙げられます。
- 本業への支障 (55.4%): 副業による疲労蓄積が本業のパフォーマンス低下や過労に繋がり、生産性を損なうことを懸念します。
- 労務管理の困難さ (40.2%): 従業員の労働時間を正確に把握することが難しくなり、健康管理や適切な残業代の計算などに課題が生じることを危惧します。
- 機密情報流出のリスク (36.6%): 副業先が競合他社である場合や、情報管理体制が不十分な場合、企業秘密が外部に漏洩するリスクを警戒します。
一方で、副業を容認する企業が増えている背景には、以下のようなメリットへの期待があります。
- 従業員のモチベーション向上 (39.3%): 自身のスキルを活かしたり、新たな分野に挑戦したりすることで、従業員の仕事への意欲が高まると考えます。
- スキルアップ: 副業を通じて新たな知識やスキルを習得し、それが本業にも活かされることで、組織全体の能力向上に繋がります。
- 社員の収入補填: 物価高騰や経済状況の不安定さから、従業員の収入不安を解消し、生活の安定を支援する目的もあります。
企業はこれらのメリットとリスクを慎重に比較検討し、自社の状況に合った副業に関する方針を定めています。
副業禁止規定が「記載なし」の場合の注意点
就業規則違反にならないが…
もし就業規則に副業禁止に関する規定が一切記載されていない場合、従業員が副業を行ったとしても、形式的には就業規則違反にはあたりません。これは、明文化されたルールがない限り、それを理由に懲戒処分などを科すことは難しいという考え方に基づくものです。
しかし、「就業規則に記載がないから何をしても良い」というわけではありません。たとえ規定がなくても、副業の内容やそれが本業に与える影響によっては、民法上の信義誠実義務や職務専念義務、あるいは秘密保持義務といった労働契約上の義務に違反する可能性があります。
例えば、副業によって過度に疲労し、本業の業務に重大な支障をきたした場合や、会社の機密情報を漏洩させた場合、あるいは会社の信用を著しく傷つける行為を行った場合は、就業規則に副業禁止の記載がなくとも、別の服務規律違反として懲戒処分の対象となったり、損害賠償請求の対象となったりする可能性は十分にあります。副業を始める際には、就業規則の有無に関わらず、これらの義務を常に意識することが重要です。
税務上の注意点と発覚リスク
副業禁止規定がない場合でも、税務上の手続きから会社に副業が発覚するリスクがあるため注意が必要です。
特に重要なのは、副業による所得が年間20万円を超えた場合には、翌年に確定申告が必要となる点です。確定申告を行うと、副業による所得に応じた住民税額が計算され、通常は本業の給与と合算されて会社を通じて徴収される「特別徴収」となります。この際、会社が従業員の住民税額を把握する際に、本業の給与額と住民税額が明らかに不均衡であることから、副業の存在に気づくことがあります。
この発覚リスクを低減するためには、確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収」に切り替え、副業分の住民税を会社を通さずに自分で納付する方法があります。しかし、地方自治体によっては普通徴収への切り替えが認められなかったり、切り替えができたとしても何らかの形で会社に情報が伝わる可能性もゼロではありません。
また、税務申告を怠ると、延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性もあるため、適正な申告が不可欠です。</副業を行う際は、税務上の知識をしっかりと身につけ、適切な対応をとることが求められます。
本業への影響とトラブル事例
就業規則に副業禁止規定がなくても、副業が本業に与える具体的な影響によっては、思わぬトラブルに発展することがあります。
例えば、以下のようなケースが挙げられます。
- 疲労による業務効率の低下: 副業に時間を使いすぎた結果、睡眠不足や疲労が蓄積し、本業での集中力や判断力が低下。ミスが増えたり、生産性が落ちたりして、会社に損害を与える可能性があります。
- 情報漏洩のリスク: 副業の内容が本業と競合するものでなくても、知らず知らずのうちに本業で得た情報やノウハウを副業で利用してしまい、会社の秘密保持義務違反に問われることがあります。
- 会社の信用失墜: 副業としてSNSなどで情報発信をする際、不適切な内容を投稿したり、会社の情報と混同されるような発信をしたりすることで、所属する会社の名誉や信用を傷つける事態に発展する可能性があります。
- 顧客の引き抜きや競業: 副業が本業と同一または類似の業種である場合、本業の顧客を副業に引き抜いたり、競合する事業を展開したりすることは、会社への背信行為となり、重大なトラブルを引き起こします。
これらのトラブルは、たとえ就業規則に副業禁止規定がなくても、懲戒処分の対象となったり、場合によっては民事上の損害賠償責任を負うことになる可能性があります。副業を行う際には、常に本業への影響を考慮し、リスク管理を徹底することが求められます。
就業規則の副業禁止規定は違法?判断基準と事例
法的有効性の判断基準
就業規則に副業禁止規定がある場合でも、その規定が無条件に有効であるとは限りません。労働者の「職業選択の自由」や「私生活の自由」は憲法で保障されており、企業がこれを制限するには合理的な理由が必要です。裁判所は、副業禁止規定の有効性を判断する際に、主に以下の4つの基準を総合的に考慮します。
- 労務提供上の支障がある場合: 副業によって従業員の疲労が蓄積し、本業の業務遂行に悪影響が出たり、健康を害したりするリスクがあるか。
- 企業秘密漏洩のリスクがある場合: 副業先が競合他社であるなど、企業の機密情報やノウハウが外部に漏洩する可能性が高いか。
- 会社の名誉・信用を損なう行為の場合: 副業の内容が社会的に不適切であったり、会社のイメージを著しく低下させたりする可能性があるか。
- 競業避止義務に違反する場合: 本業と同種・類似の事業を副業として行い、会社の利益を不当に害する可能性があるか。
これらの基準に該当しない限り、企業が従業員の副業を一方的に禁止することは、違法または無効と判断される可能性が高いです。特に、単に「会社の許可なく副業を行った」という理由だけで重い処分を下すことは、ほとんどの場合認められません。
具体的な事例と判例の傾向
過去の判例では、企業が就業規則で副業を全面的に禁止する規定を設けていても、それが無効とされるケースが多く見られます。裁判所は、個別の事情、特に副業が本業に与える「具体的な影響」や「会社の損害」を重視する傾向があります。
例えば、以下のような事例があります。
- 飲食店勤務の従業員が深夜にコンビニでアルバイト: 本業の業務に支障がないと判断され、副業禁止規定の適用が不当とされたケース。体力的な負担が大きくなく、本業への影響が限定的であれば、副業は認められやすい傾向にあります。
- 競合他社での副業: 本業と同業種の企業で副業を行った従業員が、情報漏洩や顧客引き抜きのリスクが高いと判断され、副業禁止が正当とされたケース。特に、役職者や機密情報にアクセスできる従業員の場合、より厳しく判断されます。
- SNSでの情報発信: 個人のブログやSNSでの副業が、会社の信用を傷つける内容であったり、職務上知り得た情報を含んでいたりした場合、禁止が認められたケース。
これらの事例から分かるように、判例は、副業禁止規定の有効性を判断する上で、その規定の目的や必要性、そして副業が本業に与える具体的な弊害の有無を慎重に検討しています。企業は、単に禁止するだけでなく、その理由と必要性を明確に示す必要があります。
労働契約法と民法の原則
就業規則の副業禁止規定の法的有効性は、労働契約法や民法における基本的な原則とも深く関連しています。</労働契約法第3条第4項には「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、義務を履行しなければならない」と定められており、これは信義誠実の原則と呼ばれます。
この原則に基づき、従業員には会社に対して「職務専念義務」や「忠実義務」があります。つまり、労働者は、労働時間中は会社の業務に専念し、会社の利益を損なう行為を避ける義務を負うとされています。副業がこの義務に反すると判断される場合、企業は副業を制限する正当な理由を持つことになります。
一方で、従業員には憲法上の職業選択の自由や、プライベートな時間を自由に使う私生活の自由が保障されています。企業が副業を禁止する規定を設ける場合、この労働者の自由を不当に侵害しない範囲である必要があります。そのため、前述したように、副業禁止規定は、会社の秩序維持や業務遂行に具体的な支障が生じる場合に限定して、その有効性が認められるのです。
つまり、企業と従業員は、互いの権利と義務を尊重し、信義則に則って行動することが求められます。</
「服務規律」との関連性:副業が与える影響
服務規律における副業の位置づけ
服務規律とは、従業員が企業で働く上で守るべき基本的なルールやマナーを定めたものです。これには、勤務態度、会社の機密保持、ハラスメントの禁止、職場秩序の維持などが含まれ、多くの場合、就業規則の一部として明記されています。副業に関する規定も、この服務規律の一部として位置づけられることがあります。
企業が服務規律に副業に関する規定を設ける目的は、主に以下の点にあります。
- 従業員の職務専念義務の徹底
- 会社の信用や名誉の保持
- 企業秘密の保護
- 従業員の健康と安全の確保
- 労務管理の適正化
しかし、単に「服務規律だから」という理由だけで、従業員の副業を全面的に禁止することは、その有効性が認められにくいのが現状です。服務規律の内容は、労働者の自由を不当に制限しない範囲で、かつ会社の正当な利益保護のために必要かつ合理的なものでなければなりません。
そのため、多くの企業では、全面禁止ではなく、事前届出制や許可制を導入し、一定の条件の下で副業を認めるという形で、服務規律と副業のバランスをとっています。
本業への具体的な影響(マイナス面)
副業が本業に与える影響は多岐にわたりますが、特に懸念されるマイナス面としては、以下のような点が挙げられます。
- 疲労の蓄積とパフォーマンスの低下: 副業により労働時間が過度に長くなり、睡眠不足や疲労が蓄積することで、本業での集中力や判断力が低下し、業務ミスが増加したり、生産性が落ちたりする可能性があります。
- 健康リスクの増大: 長時間労働が常態化することで、心身の健康を害するリスクが高まります。これにより、欠勤や休職が増え、企業の労務管理上の負担も増大します。
- 機密情報漏洩のリスク: 副業先が競合他社である場合や、無関係な業種であっても、従業員が意図せず本業の顧客情報や技術情報、営業ノウハウなどを漏洩させてしまうリスクがあります。
- 企業イメージの損害: 副業の内容が会社のイメージと合わなかったり、社会的に不適切とみなされるものであったりした場合、従業員の所属する会社の信用や名誉が損なわれる可能性があります。
- 利益相反の発生: 本業と同業種での副業は、会社の顧客や取引先を奪うなど、直接的な利益相反を引き起こし、企業に具体的な損害を与える可能性があります。
これらのマイナス面は、企業にとって事業運営上のリスクとなるため、副業を認める場合でも、その内容や程度について一定の管理体制を設けることが不可欠となります。
企業が副業容認で期待する効果(プラス面)
副業を容認することは、企業にとってリスクがある一方で、多くのポジティブな効果も期待できます。近年、多くの企業が副業解禁に踏み切っているのは、以下のようなメリットに注目しているからです。
- 従業員のスキルアップと能力開発: 副業を通じて、従業員は本業では得られない知識、技術、経験を習得できます。これが本業にも還元され、組織全体のスキル向上に繋がる可能性があります。
- モチベーションとエンゲージメントの向上: 自分の興味や関心に基づいた副業を行うことで、従業員の仕事に対するモチベーションが高まり、会社へのエンゲージメント(愛着心や貢献意欲)も強化されることが期待されます。
- 新たな視点やイノベーションの促進: 副業で得た多様な経験やネットワークは、社内に新しいアイデアや視点をもたらし、イノベーション創出のきっかけとなることもあります。
- 人材の定着と採用競争力の向上: 副業を許可することで、従業員は自身のキャリアを自由に設計できると感じ、会社への満足度が高まります。結果として離職率の低下に繋がり、また多様な働き方を求める優秀な人材を引き付けるための採用ブランディングにも寄与します。
- 従業員の収入補填と生活の安定: 副業によって収入の選択肢が増え、従業員の経済的な不安が軽減されます。これは、従業員がより安心して本業に集中できる環境を整えることにも繋がります。
企業はこれらのプラス面を最大限に引き出しつつ、リスクを適切に管理することで、従業員と企業の双方にとって有益な副業制度を構築することを目指しています。
就業規則で副業禁止を設ける際の記載例とポイント
厚生労働省のモデル就業規則を参考に
就業規則に副業に関する規定を設ける際、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」は非常に参考になります。このモデル就業規則では、「労働者は、労働時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と記載されており、原則として副業・兼業を容認する方向性が示されています。
ただし、その一方で、会社が労働者の副業を制限できる条件も明記されています。具体的には、以下のような場合に会社は副業を禁止または制限できるとしています。
- 労務提供上の支障が生じる場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により会社の利益を害する場合
モデル就業規則は、一方的な禁止ではなく、これらの合理的な理由がある場合に限り制限を設けるという考え方に基づいています。そのため、副業禁止規定を設ける企業は、このモデルを参考にしつつ、自社の実情に合わせて具体的に条件を記載することが推奨されます。
明確な判断基準と申請・許可制の導入
就業規則で副業に関する規定を設ける際の最も重要なポイントの一つは、明確な判断基準を設けることです。従業員が「どんな副業なら認められるのか」「何をすれば禁止されるのか」を理解できるように、曖昧さを排除した具体的な記述が求められます。
具体的な禁止事項の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 会社の競合となる事業での勤務や、関連情報の提供
- 会社の顧客を副業先に誘導する行為
- 過重労働に繋がり、本業の業務遂行に著しい支障をきたす可能性のある副業
- 会社の信用や名誉を著しく損なう可能性のある行為(例:反社会的な活動、公序良俗に反する活動など)
また、トラブルを未然に防ぎ、適切な労務管理を行うためには、事前申請・許可制の導入が有効です。従業員には副業を開始する前に会社に届け出させ、会社は届け出られた内容を前述の判断基準に照らして審査し、許可または不許可の決定を下します。申請時には、業務内容、就業時間、報酬、事業主の情報などを具体的に記載させることで、会社はリスクを評価しやすくなります。
不許可とする場合には、具体的な理由を従業員に説明することも、納得感を得る上で重要です。
トラブルを避けるための運用のポイント
就業規則に副業に関する規定を定めただけでは不十分であり、その適切な運用がトラブル回避の鍵となります。以下のポイントに留意して、円滑な運用を目指しましょう。
- 従業員への丁寧な説明と周知: 規定の目的、申請手順、許可基準、そして副業を行う上での注意点などを、従業員研修や説明会を通じて徹底的に周知します。なぜ副業を制限するのか、何がリスクになるのかを理解してもらうことが重要です。
- 公平かつ柔軟な対応: 申請された副業に対しては、個別の事情を考慮し、画一的な判断を避けるように努めます。同じ内容の副業であっても、従業員の役職や業務内容、健康状態などによって判断が異なる場合があるため、公平性を保ちつつ柔軟な対応が求められます。
- 定期的な規定の見直し: 社会情勢や働き方の変化は速いため、副業に関する規定も定期的に見直し、必要に応じてアップデートすることが重要です。厚生労働省のモデル就業規則の改定なども参考にしましょう。
- 秘密保持契約の徹底: 副業を認める場合でも、機密情報漏洩のリスクを最小限にするため、必要に応じて秘密保持に関する誓約書を取り交わすなど、情報管理体制を強化します。
- 相談窓口の設置: 従業員が副業について疑問や不安を感じた際に、気軽に相談できる窓口を設けることで、潜在的なトラブルを早期に発見し、解決に導くことができます。
これらの運用上の工夫により、企業は従業員の多様な働き方を支援しつつ、自社のリスクを管理し、健全な職場環境を維持することが可能になります。
まとめ
よくある質問
Q: 就業規則で副業が禁止されている場合、どのようなリスクがありますか?
A: 副業禁止規定に違反した場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。程度によっては、減給、降格、最悪の場合は解雇に至ることもあります。また、無断で副業を行うことで、本業の業務に支障をきたしたり、会社の信用を失墜させたりするリスクも考えられます。
Q: 就業規則に副業禁止の記載がない場合、副業は自由にできますか?
A: 就業規則に明記されていない場合でも、直ちに副業が全面的に認められるわけではありません。就業規則の「服務規律」や、労働契約上の義務(誠実義務、秘密保持義務など)に照らして、副業が問題ないか判断する必要があります。例えば、競合他社での勤務や、本業の信用を損なうような副業は、記載がなくても禁止される可能性があります。
Q: 就業規則の副業禁止規定は、常に有効ですか?違法になることはありますか?
A: 一律に副業を禁止する就業規則は、労働者の職業選択の自由を過度に制限するとして、違法と判断される可能性があります。原則として、副業が本業に支障をきたす場合(例:過労によるパフォーマンス低下、競合行為、情報漏洩リスクなど)に限り、禁止または制限することが認められます。個別のケースや、副業の内容によって判断が異なります。
Q: 「服務規律」とは具体的にどのような内容ですか?副業とどう関係しますか?
A: 服務規律とは、従業員が企業秩序を維持するために遵守すべき行動規範全般を指します。これには、法令遵守、信義誠実、機密保持、会社の信用維持などが含まれます。副業がこれらの服務規律に違反する可能性がある場合(例:競合行為による利益相反、本業の秘密情報の漏洩リスク、労働時間の過剰消費による心身の疲労など)、たとえ副業禁止規定がなくても、服務規律違反として問題視されることがあります。
Q: 就業規則で副業禁止を設ける場合、どのような点に注意して記載すれば良いですか?
A: 副業禁止を設ける場合は、単に禁止するだけでなく、「原則として副業を禁止するが、事前に承認を得た場合はこの限りではない」といった形にし、承認基準を明確にすることが推奨されます。承認基準には、副業の内容、労働時間、本業への影響などを考慮する旨を具体的に記載し、透明性を持たせることが重要です。また、身だしなみや前科、無断欠勤日数に関する条項なども、服務規律の一部として関連付けて整備すると良いでしょう。