1. 就業規則とは?作成義務と重要性を理解しよう
    1. 就業規則はなぜ必要?従業員と企業を守るルールブック
    2. 「常時10人以上」の作成義務を徹底解説
    3. 就業規則の「届出」と「周知」の重要性
  2. 就業規則の作成・改定にかかる費用と節約方法
    1. 専門家への依頼費用相場:社労士、弁護士、コンサルティング会社
    2. BPOサービスやクラウドツールでコストを抑える
    3. 費用を抑えつつ質の高い就業規則を作成する秘訣
  3. 就業規則作成ツール・サンプルで効率化を図る
    1. 厚生労働省提供の無料ツールを徹底活用
    2. 人気のクラウドサービス・アプリでスマートに作成・管理
    3. 規程管理システムで一元化!法改正対応もスムーズに
  4. 就業規則の改定・改正:手順と新旧対照表の役割
    1. 法改正への対応は必須!最新情報で規則をアップデート
    2. 従業員の意見聴取義務と不利益変更のリスク
    3. 改定後の「新旧対照表」作成と確実な周知方法
  5. 就業規則をクラウド化!スタッフサービスとの連携も
    1. 就業規則のクラウド化で得られるメリット
    2. 規程管理システムとクラウド連携の可能性
    3. アウトソーシングサービスとの連携でさらに業務を効率化
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 就業規則の作成義務があるのはどのような会社ですか?
    2. Q: 就業規則の作成・改定にかかる費用はどれくらいですか?
    3. Q: 就業規則作成ツールはどのように役立ちますか?
    4. Q: 就業規則の改定と改正の違いは何ですか?
    5. Q: スタッフサービスを利用している場合、就業規則はどうなりますか?

就業規則とは?作成義務と重要性を理解しよう

就業規則はなぜ必要?従業員と企業を守るルールブック

就業規則は、企業と従業員双方にとって非常に重要な「ルールブック」です。これは単なる書類ではなく、従業員が安心して働ける職場環境を整備し、日々の業務を円滑に進めるための基盤となります。明確なルールがあることで、例えば労働時間、休日、賃金、人事評価、懲戒など、様々な労働条件や職場の規律が明文化され、従業員は自分の権利と義務を理解しやすくなります。

企業側にとっても、就業規則は労使トラブルを未然に防ぐための強力なツールです。従業員との認識のズレや誤解が生じた際に、就業規則に立ち返ることで、客観的な基準に基づいた解決が可能になります。また、法令遵守の姿勢を示すことにも繋がり、企業の信頼性向上にも寄与します。

特に、近年の働き方の多様化や法改正の頻発を考えると、時代の変化に対応した就業規則の整備は不可欠と言えるでしょう。

「常時10人以上」の作成義務を徹底解説

日本の労働基準法では、常時10人以上の従業員を使用する事業場に対し、就業規則の作成、所轄の労働基準監督署への届出、そして従業員への周知が義務付けられています。この「常時10人以上」という基準には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト、契約社員なども含まれます。重要なのは、会社全体ではなく、各「事業所」単位で判断されるという点です。

例えば、本社で8人、支店で5人の従業員がいる場合、会社全体では13人ですが、各事業所は10人未満のため、個々の事業所には法的な作成義務はありません。しかし、本社で12人、支店で5人の場合は、本社には作成義務が発生します。

また、従業員数が9人以下の事業場では、法律上の作成義務はありません。ですが、労使トラブルを未然に防ぎ、透明性の高い職場環境を築くため、そして将来的な従業員増加に備えるためにも、自主的に作成しておくことが強く推奨されています。

就業規則の「届出」と「周知」の重要性

就業規則は、作成するだけではその効力が完全に発揮されません。法律によって、作成した就業規則を所轄の労働基準監督署に「届出」すること、そして何よりも重要な「周知」が義務付けられています。

「周知」とは、従業員がいつでも就業規則の内容を確認できる状態にしておくことを指します。具体的には、社内の見やすい場所に掲示する、従業員一人ひとりに書面で交付する、社内ネットワーク(イントラネット)に掲載してアクセスできるようにする、といった方法があります。

この周知義務を怠ると、たとえ就業規則を作成していても、その内容が従業員に対して適用されない、あるいは効力が認められないといった事態になりかねません。例えば、従業員に不利益となる変更を行ったとしても、それが十分に周知されていなければ、企業側がその変更を主張できないリスクがあります。

つまり、就業規則は作成・届出・周知という一連の流れを経て初めて、従業員と企業双方にとって有効なルールブックとして機能するのです。

就業規則の作成・改定にかかる費用と節約方法

専門家への依頼費用相場:社労士、弁護士、コンサルティング会社

就業規則の作成や改定は専門的な知識を要するため、多くの場合、社会保険労務士や弁護士といった専門家に依頼することになります。依頼先によって費用相場は大きく異なり、企業の規模や依頼内容によっても変動します。

参考情報によると、新規作成の場合の費用相場は以下の通りです。

  • 社会保険労務士: 15万円~50万円
    労働法令や実務に精通しており、労使トラブルの軽減や助成金申請にも強みがあります。一部変更の場合は3万円~15万円程度で対応可能です。
  • 弁護士: 20万円~50万円以上
    複雑な法的問題や将来的な訴訟対応を視野に入れる場合に強みを発揮しますが、費用は高めになる傾向があります。
  • 人事コンサルティング会社: 15万円~100万円以上
    人事制度設計など、より包括的なコンサルティングの一環として就業規則の作成が提供されることが多く、費用も幅広くなります。

専門家に依頼することで、法令遵守はもちろん、自社の実情に合った規則を構築できるため、安心感と確実性が得られます。

BPOサービスやクラウドツールでコストを抑える

専門家への依頼費用が予算と合わない場合や、より手軽に作成したい場合には、BPOサービスやクラウドツールを活用することでコストを抑えることが可能です。

  • BPOサービス提供企業: 5万円~10万円
    就業規則の作成をパッケージ化したサービスを提供しており、比較的低コストで専門的なサポートを受けられます。
  • 就業規則作成ツール(クラウドサービス): 無料~数十万円
    freee就業規則のように無料で利用できるものから、有料で高度な機能を提供するものまで様々です。Canvaのようなデザインツールでもテンプレートを利用して作成・編集が可能です。特に、厚生労働省が提供する「就業規則作成支援ツール」は無料で利用でき、基本的な就業規則を効率的に作成できます。

これらのツールやサービスを上手に活用することで、専門家へ依頼するよりも費用を大幅に抑えつつ、必要な就業規則を整備することができます。ただし、ツールの利用は自社である程度の知識が必要となる場合もあるため、その点には注意が必要です。

費用を抑えつつ質の高い就業規則を作成する秘訣

就業規則の作成・改定において費用を抑えつつ、質の高いものを目指すにはいくつかのポイントがあります。まず、既存の規則がある場合は、新規作成よりも改定の方が費用を抑えられます。一般的には、新規作成費用の50%程度で済む場合もあります。

また、厚生労働省の無料ツールやクラウドサービスのテンプレートをベースに、自社で作成を進め、法改正対応や特定の複雑な条項のみを社会保険労務士にレビューしてもらうといった「ハイブリッド方式」も有効です。これにより、専門家への依頼費用をピンポイントに抑えつつ、品質を担保できます。

重要なのは、自社の状況と予算を総合的に考慮し、最適な方法を選ぶことです。自社で全て作成する際は、労働基準法だけでなく関連法規の知識も必要となり、不備があると後々大きなリスクとなりかねません。そのため、ある程度の費用をかけてでも、専門家の力を借りることも重要な投資と考えられます。

就業規則作成ツール・サンプルで効率化を図る

厚生労働省提供の無料ツールを徹底活用

就業規則の作成を始めるにあたり、まず検討したいのが厚生労働省が無料で提供している「就業規則作成支援ツール」です。このツールは、Web上でいくつかの設問に答えていくだけで、労働基準監督署に提出可能な形式の就業規則を作成できます。

専門知識がなくても、基本的な項目を網羅した就業規則を効率的に作成できるため、初めて就業規則を作成する中小企業や個人事業主の方には特におすすめです。無料で利用できるという点が最大のメリットであり、コストをかけずに法的に準拠した基盤を築くことが可能です。

ただし、ユーザー登録をしない場合は途中保存ができないため、長時間の作業になる場合は注意が必要です。また、一般的な内容に特化しているため、自社の独自のルールや複雑な人事制度を盛り込む際には、追加で専門家のアドバイスが必要になることもあります。

人気のクラウドサービス・アプリでスマートに作成・管理

近年では、就業規則の作成・管理をよりスマートに行うためのクラウドサービスやアプリも数多く登場しています。KiteRa Pro、freee就業規則、Canvaなどがその代表例です。これらのツールは、それぞれ特徴が異なりますが、共通して効率的な作成と管理をサポートします。

  • 設問形式で作成: 専門知識がなくても、ガイドに従って入力するだけで就業規則が完成します。
  • 豊富なテンプレート: 様々な業種や企業規模に対応したテンプレートが用意されており、ゼロから作成する手間を省けます。
  • PDF/Word形式の雛形インポート: 既存の規則を読み込み、編集できる機能を持つものもあります。
  • AIによる法改正レビュー: 法改正があった際に、自動で就業規則の内容が最新の法令に準拠しているかを確認し、修正を提案してくれる高機能なツールも存在します。

無料から利用できるサービスもあれば、より高度な機能を持つ有料サービスもあります。自社のニーズと予算に合わせて最適なツールを選ぶことが重要です。

規程管理システムで一元化!法改正対応もスムーズに

就業規則だけでなく、賃金規程、育児介護休業規程、ハラスメント規程など、企業には多くの社内規程が存在します。これらの規程を個別に管理していると、更新漏れや情報共有の遅れが生じるリスクがあります。そこで有効なのが、規程管理システムです。

規程管理システムは、就業規則を含む様々な社内規程の作成、管理、そして従業員への公開までを一元的に行うことができるシステムです。主なメリットは以下の通りです。

  • 一元管理: 全ての規程がシステム上で管理されるため、どこにどの規程があるか一目で分かり、検索も容易です。
  • 法改正情報の自動配信: 法改正があった際に、関連する規程の変更点を自動で通知し、スムーズな対応を促します。
  • 改訂履歴の管理: いつ、誰が、どのように規程を変更したかの履歴が残り、透明性が保たれます。
  • 周知の効率化: 従業員はシステムを通じていつでも最新の規程を確認できるため、周知義務の履行も容易になります。

規程管理システムを導入することで、人事労務担当者の負担を軽減し、より正確で効率的な規程管理を実現できます。

就業規則の改定・改正:手順と新旧対照表の役割

法改正への対応は必須!最新情報で規則をアップデート

日本の労働関連法規は頻繁に改正されるため、就業規則も一度作成したら終わりではありません。常に最新の法令に準拠しているかを確認し、必要に応じて改定を行うことが企業の義務であり、リスク管理上も不可欠です。例えば、2025年4月・10月には育児・介護休業法の改正が施行される予定であり、これに伴う関連規程の改定が求められます。

法改正に対応しないまま放置してしまうと、法律違反となるだけでなく、従業員とのトラブルに発展する可能性もあります。厚生労働省のウェブサイトや労働局からの情報を定期的に確認することはもちろん、社会保険労務士や人事労務関連のクラウドサービスから提供される法改正情報を活用し、常に最新の状態に保つよう努めましょう。

定期的な見直しとアップデートをルーティン化することで、予期せぬリスクを回避し、従業員にとっても安心できる労働環境を提供できます。

従業員の意見聴取義務と不利益変更のリスク

就業規則を作成または変更する際には、労働基準法により労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務があります。この意見聴取は、会社が一方的に規則を定めるのではなく、従業員の声を反映させる機会を設けることを目的としています。

ただし、注意すべき点は、法律上は「意見を聴くだけ」でよく、その意見に「同意を得る」必要はないということです。もちろん、従業員の意見を真摯に受け止め、可能な範囲で規則に反映させることは、労使関係を良好に保つ上で非常に重要です。

特に、従業員にとって労働条件が不利になる「不利益変更」を行う場合には、慎重な対応が求められます。不利益変更は、原則として従業員の同意がない限り認められず、たとえ就業規則で規定しても無効とされることがあります。高度な必要性や合理的な理由がない限り認められず、裁判になるケースも少なくありません。そのため、不利益変更を行う際は、十分に説明責任を果たし、理解と納得を得る努力が不可欠です。

改定後の「新旧対照表」作成と確実な周知方法

就業規則を改定した際には、変更点を明確にするために「新旧対照表」を作成することが非常に有効です。新旧対照表とは、改定前の条文と改定後の条文を並べて比較できるようにしたもので、どの部分がどのように変わったかを一目で把握できます。

これにより、労働基準監督署への届出がスムーズになるだけでなく、従業員への説明も格段にしやすくなります。従業員は変更内容を正確に理解できるため、不信感や疑問を抱きにくくなり、円滑な規則移行に繋がります。

また、改定後の就業規則も、新規作成時と同様に従業員への確実な周知が義務付けられています。社内掲示板への掲載、従業員への書面交付、社内イントラネットやクラウドシステムへのアップロードなど、従業員がいつでも、どこからでも最新の就業規則を確認できる状態を維持することが重要です。周知を怠ると、改定後の就業規則が従業員に適用されないリスクがあるため、細心の注意を払いましょう。

就業規則をクラウド化!スタッフサービスとの連携も

就業規則のクラウド化で得られるメリット

現代の働き方が多様化し、テレワークが普及する中で、就業規則をクラウド化することのメリットは非常に大きいです。クラウド化された就業規則は、物理的な場所に縛られることなく、従業員がいつでもどこからでもアクセスして内容を確認できます。

これにより、以下のような様々なメリットが生まれます。

  • アクセシビリティの向上: テレワークや出張中の従業員でも、インターネット環境があれば最新の就業規則を確認できます。
  • 最新情報の共有: 法改正や社内規定の変更があった際も、クラウド上で一括更新すれば、全従業員に瞬時に最新版を共有できます。
  • ペーパーレス化: 印刷コストや保管スペースを削減し、環境負荷の軽減にも貢献します。
  • 管理の効率化: 規程管理システムと連携すれば、改訂履歴の管理や従業員からの問い合わせ対応もスムーズに行えます。

特に、情報セキュリティに配慮されたクラウドサービスを選べば、重要な規程情報も安全に管理することが可能です。

規程管理システムとクラウド連携の可能性

前述の規程管理システムをクラウドベースで運用することで、就業規則を含むあらゆる社内規程の管理が格段に進化します。クラウド型の規程管理システムは、勤怠管理システムや給与計算システムなど、他の人事労務関連のクラウドサービスとの連携も視野に入れることができます。

例えば、勤怠システムの打刻情報に基づいて労働時間のルールを自動的に適用したり、給与計算システムと連携して賃金規程に基づいた計算をスムーズに行ったりすることが可能になります。これにより、手作業によるミスのリスクを大幅に削減し、人事労務部門の業務効率を飛躍的に向上させることができます。

さらに、クラウド連携により、法改正があった際のシステム側の自動アップデート機能なども期待でき、常に最新かつ最適な規程運用体制を構築しやすくなります。従業員も、各種規程や自分の労働条件に関する情報を一つのプラットフォームから確認できるようになり、利便性が向上します。

アウトソーシングサービスとの連携でさらに業務を効率化

就業規則の作成・改定、そしてその後の運用管理は、専門的な知識と時間を要する業務です。これらをアウトソーシングサービスと連携させることで、企業のさらなる業務効率化とコスト削減が期待できます。

例えば、社会保険労務士事務所やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス提供企業に、就業規則の作成・改定から、法改正時のアップデート、さらには従業員からの問い合わせ対応までを一括して委託することができます。これにより、自社の人事担当者はより戦略的な業務に集中でき、本来のコア業務にリソースを集中させることが可能になります。

「スタッフサービスとの連携」という点では、専門家が就業規則の作成・運用に関する最新情報や知見を提供し、常に法改正に適合した状態で管理してくれるため、企業は法令違反のリスクを軽減し、安心感を得られます。また、規程に関する従業員からの質問対応をアウトソースすることで、社内担当者の負担軽減にもつながるでしょう。専門家との連携は、就業規則の品質を保ち、企業運営を安定させるための有効な選択肢です。