退職届の基本!記載すべき項目とは?

退職届は、あなたが会社に退職の意思を正式に伝えるための重要な書類です。スムーズな退職準備のためには、その基本をしっかりと理解しておく必要があります。

退職届と退職願、辞表の違いを理解する

「退職」と一口に言っても、提出する書類にはいくつかの種類があり、それぞれ意味合いが異なります。

まず、「退職願」は、会社に退職の意思を「願い出る」ための書類です。退職の意思が固まった段階で提出し、会社との合意を経て退職日が決定する、いわば交渉のスタート地点となる書類です。

これに対し、「退職届」は、会社に退職が承認された後、退職の意思を「届け出る」ための書類を指します。会社との合意形成後、正式に退職を通知する最終的な書類となります。

そして、「辞表」は、公務員や企業の役員などが職を辞する際に提出する書類であり、一般的な会社員が提出する退職届とは明確に区別されます。自分がどの書類を提出すべきか、まずはこの違いを理解することがスムーズな退職準備の第一歩となるでしょう。

正確な退職届作成のための準備物

退職届は、会社に提出する正式な書類であるため、適切な準備が必要です。不備があると再提出を求められたり、会社の印象を損ねたりする可能性もあります。

まず、用紙については、白の便箋(B5またはA4サイズが一般的)か、白のB5かA4用紙を使用します。罫線があってもなくても構いませんが、手書きで綺麗に書きたい場合は罫線入りがおすすめです。

筆記用具は、黒のボールペンまたは万年筆を選びましょう。摩擦で消えるタイプのボールペンは、公的な書類には不適切なので絶対に避けてください。

作成方法については、手書きでもPC作成でも可能とされていますが、会社から特定の指定がある場合はそれに従うようにしてください。特に指定がない場合、手書きであれば縦書きが一般的です。これらの準備を怠らず、丁寧に作成することで、あなたの誠意を伝えることができるでしょう。

退職届の基本フォーマットと記載順序

退職届には、記載すべき必須項目と、一般的な書き方の順序があります。これらを守ることで、誰が見ても分かりやすい正式な書類を作成できます。

具体的な記載内容は以下の通りです。

  • タイトル:1行目に中央揃えで「退職届」と記載します。
  • 書き出し:「私儀」(わたくしぎ)と記載し、これは個人的な事柄を申し述べます、という意味合いがあります。
  • 退職理由:自己都合退職の場合は、「一身上の都合により」と記載するのが一般的です。具体的な理由をここで詳細に述べる必要はありません。
  • 退職日:上司と合意した正式な退職日を記載します。年号は西暦・和暦どちらでも構いませんが、会社の規定があればそれに従いましょう。
  • 所属部署・氏名・捺印:提出時点での正式な部署名を記載し、氏名はフルネームで記入します。最後に認印または実印(シャチハタは避ける)を捺印します。
  • 提出日:退職届を提出する日付を記載します。

これらの項目を正しい順序で、丁寧に記入することで、スムーズな退職手続きを進めることができます。

「事由」欄の書き方:勉強・キャリアアップなど具体例

退職届の「事由」欄は、最も多くの人がどのように書くべきか悩むポイントの一つです。しかし、実は自己都合退職の場合、細かく記述する必要はありません。

「一身上の都合」で十分な理由

自己都合による退職の場合、退職届に記載する退職理由は「一身上の都合により」とすることが一般的で、これで十分です。具体的な退職理由に触れる必要は基本的にありません。

これは、個人のプライバシー保護の観点から推奨されている書き方であり、円満退職を目指す上でも有効です。詳細な理由を記載することで、会社側から不必要な質問や引き止めにあったり、退職理由を巡ってトラブルに発展したりするリスクを避けることができます。

特に、転職先が決まっている場合や、会社への不満が理由である場合など、具体的な理由を伝えることが必ずしも自身のメリットにならないケースも多いでしょう。簡潔に「一身上の都合」と記載することで、波風を立てずに手続きを進めることが可能です。

具体的な理由を明記するケースとは?

「一身上の都合」が一般的である一方で、状況によっては具体的な退職理由を明記すべきケースも存在します。これらのケースは、退職後の自身の権利や、トラブル対応のために重要となります。

例えば、会社の倒産や事業所の廃止、リストラといった「会社都合」による退職の場合は、「会社都合により退職」と記載し、その理由を具体的に明記することがあります。これは、失業手当の給付条件や期間に大きく関わるため、正確な記載が求められます。

また、パワハラやセクハラ、長時間労働の常態化など、会社側の問題が原因で退職せざるを得ない場合には、後に証拠として残すため、具体的な理由を退職届に明記することも考えられます。ただし、この場合は法的なアドバイスを事前に受けることをおすすめします。

さらに、ポジティブな理由であっても、円満退職を強く意識し、会社との良好な関係を保ちたい場合に限り、口頭で詳細を伝え、退職届には「一身上の都合」とするケースがほとんどです。退職届に記載する具体的な理由は、上記の特別な事情がある場合に限定されると理解しておきましょう。

ポジティブな退職理由の伝え方例

退職届では「一身上の都合」で済ませるのが一般的ですが、直属の上司に退職の意思を伝える際には、ポジティブな理由を伝えることで、円満退職につながりやすくなります。具体的な伝え方の例をいくつかご紹介します。

  • キャリアアップ、自己成長を目的とする場合
    「自身のキャリアアップのため、新たな環境で挑戦したいと考えております。」
    「これまで培ってきたスキルを活かし、さらなる自己成長を目指したく、退職を決意いたしました。」
  • 資格取得やスキルアップを目的とする場合
    「かねてより目標としていた〇〇資格の取得に専念するため、退職させていただきたく存じます。」
    「新しいスキルを習得し、異なる分野で活躍するため、退職を申し出させていただきます。」
  • その他、前向きな理由
    「これまで御社で得た経験を活かし、より社会貢献できるフィールドで働きたいと考えております。」

これらの伝え方は、会社への感謝や、今後の発展を願う気持ちを添えることで、より良い印象を与えられます。退職届では簡潔に、上司との面談では丁寧かつ前向きに理由を説明することが、円満退職への鍵となります。

部署名・宛名の書き方:迷いがちな「殿」と「様」の違い

退職届は正式な書類であるため、宛名や自身の所属部署の記載も正確に行う必要があります。特に敬称の使い分けには注意が必要です。

正式な宛名の書き方:会社の最高責任者へ

退職届の宛名は、会社の最高責任者の名前を記載するのが一般的です。多くの場合、代表取締役社長の名前を宛名とします。役職名と氏名を正確に記載しましょう。

例えば、「株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇 〇〇」のように記述します。氏名がわからない場合は、会社のウェブサイトや名刺などで確認するか、総務部や人事部に問い合わせて確認することをおすすめします。

役職名は省略せずに正式名称を記載し、氏名の敬称には後述の「様」を用いるのが適切です。誰に提出すべきか不明なまま作成すると、失礼にあたる可能性もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

「殿」と「様」の使い分けのポイント

退職届の宛名で迷いがちなのが、敬称を「殿」にするか「様」にするかという点です。

  • 「殿」:かつては企業や団体宛、あるいは目下の人への敬称として使われることが多かったですが、現代では個人名に対して用いると、やや古風に感じられたり、人によっては失礼だと受け取られたりする可能性もあります。
  • 「様」:個人名に対して使われる最も丁寧で一般的な敬称です。相手の役職や年齢に関わらず、広く使用できる汎用性の高い敬称です。

退職届の場合、宛名は会社の最高責任者という「個人」に対して書くため、「様」を使用するのが最も適切で丁寧な表現とされています。例えば、「株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇 〇〇 様」のように記載しましょう。敬称の誤りは、事務的なミスにとどまらず、相手への配慮が欠けていると受け取られる可能性もあるため、注意が必要です。

所属部署名の正しい記載方法

退職届には、あなたの氏名とともに、提出時点での正式な所属部署名を記載する必要があります。

所属部署名は、会社で用いられている正式名称を正確に記述してください。例えば、「営業部 営業一課」「経理部」「〇〇事業部」など、あなたの名刺や社内規定で確認できる名称を用いるのが確実です。もし、部署名が正式に定まっていない、あるいは小規模な会社で部署という概念がない場合は、会社名のみ、または「所属」と記載し、氏名のみで問題ないこともあります。不安な場合は、会社の人事担当者などに確認すると良いでしょう。</p{p}

自分の氏名のフルネームの前に記載し、その後に捺印をすることで、あなたがその部署に所属していたことを明確に示す役割を果たします。正確な記載を心がけましょう。

部署がない場合やテンプレートの活用法

会社の組織体制は様々であり、全ての会社に明確な部署が存在するわけではありません。また、効率的な書類作成のためにテンプレートを活用したいと考える人もいるでしょう。ここでは、そうした場合の対処法を解説します。

部署異動が多い場合の所属部署の記載

部署異動が多い職場では、退職届にどの部署名を記載すべきか迷うことがあります。しかし、原則として退職届提出時点での最新の所属部署を記載するのが正しい方法です。

もし、会社に明確な部署が存在しない、あるいは従業員が数名の小規模な会社で部署分けがされていないといったケースでは、「所属」とだけ記載し、氏名のみで問題ない場合もあります。会社によっては、会社名のみを記載するよう指示されることもありますので、不明な場合は人事部や直属の上司に確認するのが最も確実です。

重要なのは、あなたが会社に在籍していたことを示す情報として、その時点での最も正確な所属情報を伝えることです。不安であれば、事前に確認し、指示に従って記載しましょう。

テンプレートを活用する際の注意点

退職届の作成に際し、インターネット上などで公開されているテンプレートを活用することは、時間と手間を省く上で非常に有効です。しかし、テンプレートを利用する際にはいくつかの注意点があります。

  • 内容の調整:テンプレートはあくまで一般的なひな形です。必ず自分の状況(退職日、氏名、会社名、宛名など)に合わせて内容を調整してください。
  • 会社指定の書式:会社によっては、特定の書式やフォーマットを指定している場合があります。その場合は、テンプレートよりも会社の指定を優先しましょう。
  • 信頼性:無料のテンプレートを利用する際は、信頼できる情報源からダウンロードするように心がけてください。
  • 誤字脱字の確認:PCで作成した場合でも、氏名や日付、会社名などに誤字脱字がないか、最終確認を怠らないようにしましょう。

テンプレートはあくまでツールであり、最終的な責任は作成者であるあなたにあります。自己責任で慎重に活用しましょう。

手書き・PC作成どちらが良い?

退職届の作成方法については、手書きとPC作成のどちらでも良いとされていますが、会社から特定の指定がある場合はそれに従うのが最優先です。特に指定がない場合の、それぞれのメリット・デメリットを考慮して選びましょう。

  • 手書きの場合
    • メリット:より丁寧で誠意が伝わりやすいという印象を与えます。
    • デメリット:誤字脱字があった場合に修正が難しい、書き損じるリスクがある、時間がかかる。手書きの場合は縦書きが一般的です。
  • PC作成の場合
    • メリット:誤字脱字があっても簡単に修正できる、時間を節約できる、統一感のある綺麗な書類を作成しやすい。
    • デメリット:手書きほどの「心のこもった」印象を与えにくいと感じる人もいる。

どちらの作成方法を選ぶにしても、誤字脱字がなく、読みやすいように丁寧に作成することが最も重要です。最終チェックを必ず行い、完璧な状態で提出しましょう。

退職届を提出する際の注意点とマナー

退職届は、提出して終わりではありません。提出する際のタイミングやマナー、そして封筒の準備に至るまで、細やかな配慮が円満退職へと繋がります。最後のステップまで気を抜かず、丁寧に進めましょう。

提出のタイミングと伝え方

退職届を提出する際には、適切なタイミングと伝え方が非常に重要です。まず、最も大切なのは、直属の上司に口頭で退職の意思を伝えることです。退職届をいきなり提出するのはマナー違反とみなされることが多いので避けましょう。

上司に退職の意思を伝えた後、退職日や引き継ぎについて話し合い、合意が取れてから退職届を提出するのが一般的な流れです。会社の就業規則に退職の申し出時期に関する規定(例:退職日の1ヶ月前までに申し出る)があれば、それに従いましょう。

また、会社の繁忙期を避けるなど、会社の状況を考慮したタイミングを選ぶことも、円満退職のためには不可欠です。あなたの退職によって会社に与える影響を最小限に抑える配慮が求められます。

封筒の準備と封入方法

退職届は、そのまま手渡しするのではなく、封筒に入れて提出するのがマナーです。封筒の選び方や書き方にも注意が必要です。

  • 封筒:白無地の封筒(郵便番号枠なし)を使用します。サイズは、便箋のサイズに合わせて長形3号(A4用紙を三つ折り)または長形4号(B5用紙を三つ折り)が一般的です。
  • 表面:封筒の中央やや上寄りに、縦書きで「退職届」と記載します。
  • 裏面:封筒の裏面左下に、あなたの所属部署とフルネームを記載します。
  • 封入:便箋は三つ折りにし、封筒の裏面上部に、退職届の書き出し部分(私儀)が来るように入れます。
  • 封字:封入口はのりで閉じ、封をしたことを示す「〆」マークを記載します。ただし、直属の上司に手渡しする場合は、封をせずに提出することもあります。

これらの手順を丁寧に行うことで、あなたの誠意とマナーが伝わるでしょう。

円満退職のための最終チェックリスト

退職届を提出する前に、もう一度以下の項目をチェックし、漏れがないか確認しましょう。これが円満退職への最後の仕上げとなります。

  1. 記載内容の最終確認
    • 退職日、氏名、部署名、宛名に間違いはないか。
    • 誤字脱字がないか、文章に不自然な点はないか。
  2. 捺印の確認
    • 氏名の横に認印または実印が捺印されているか(シャチハタは避ける)。
  3. 封筒の確認
    • 封筒の表面・裏面の記載は正しいか。
    • 便箋の封入方法は適切か、封はされているか(手渡しの場合を除く)。
  4. 事前準備の確認
    • 直属の上司に口頭で退職の意思を伝え、合意が取れているか。
    • 会社の就業規則に則ったタイミングで提出しようとしているか。
  5. 会社の指示への準拠
    • 会社から退職届に関する特定の書式や提出方法の指示があれば、それに従っているか。

これらのチェックを徹底することで、あなたは自信を持って退職届を提出でき、会社との良好な関係を保ったまま、次のステップへと進むことができるでしょう。