概要: 退職届の「理由」欄を具体的に書くべきか悩んでいませんか?本記事では、体調不良や労働条件の相違など、状況に応じた具体的な理由の書き方と例文を解説します。
【退職届】具体的な理由の書き方と例文集|体調不良・労働条件の相違
退職は、キャリアにおいて重要な転換点です。その際に必要となる退職届について、「具体的な理由をどこまで書くべきか」と悩む方は少なくありません。体調不良や労働条件の相違など、様々な退職理由がある中で、どのように書けば円満に退職できるのでしょうか。
この記事では、退職届に記載する理由の基本ルールから、具体的な例文、そして提出前に確認すべきことまで、網羅的に解説します。あなたの退職がスムーズに進むよう、ぜひ参考にしてください。
退職届の「理由」欄、具体的に書くべき?基本の書き方
「一身上の都合」が原則?理由の基本ルール
退職届の提出は、人生の節目となる重要な行為です。その際に多くの人が悩むのが、「退職理由をどこまで具体的に書くべきか」という点でしょう。結論から言えば、退職届に記載する退職理由は、「一身上の都合」と書くのが一般的かつ安全な選択です。
これは、自身のプライバシーを守り、不要なトラブルや引き止めを避けるための賢明な方法とされています。会社側も、「一身上の都合」という表現であれば、それ以上の詳細な説明を求めないケースがほとんどです。
また、民法では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し出から2週間が経過すれば退職できると定められています。しかし、多くの会社では就業規則に「退職希望日の〇ヶ月前までに申し出る」といった規定がありますので、円満退職のためには、会社の規定に則り、余裕をもって意思を伝えることが望ましいでしょう。
退職届は、あくまで会社への「退職の意思表示」を行うための書面であり、詳細な理由を書き連ねる場ではありません。具体的な事情は、上司との面談などの口頭で伝えるのが、円滑なコミュニケーションのポイントとなります。
「本音」と「建前」の理由の使い分け方
退職理由には、しばしば「本音」と「建前」が存在します。エン・ジャパンの調査によると、退職時に企業に伝えない「本当の退職理由」がある人は54%にも上るとされています。これは半数以上の人が、会社に本当の理由を伝えていないことを意味します。
本当の退職理由の第1位は「人間関係が悪い」(46%)であり、次いで「給与が低い」(34%)、「会社の将来性に不安を感じた」(23%)などが挙げられています。これらの理由は、直接会社に伝えることで関係が悪化したり、改善が見込めないと判断されたりするため、伏せられる傾向にあります。
一方、会社に伝える「建前」の退職理由としては、「別の職種にチャレンジしたい」(22%)や「家庭の事情」(21%)が上位を占めています。
このように本音と建前を使い分けるのは、会社との円満な関係を保ち、スムーズに退職手続きを進めるための配慮です。ネガティブな理由を伝えることで、残りの期間の業務に支障が出たり、後任者への引き継ぎに悪影響が出たりするのを避ける目的もあります。
具体的な理由を伝えるメリットとデメリット
基本的には「一身上の都合」とするのが望ましい退職理由ですが、場合によっては具体的な理由を伝えることでメリットが生じるケースもあります。例えば、ハラスメントや長時間労働など、会社側に明確な原因がある場合は、「会社都合退職」として処理される可能性があり、失業給付などの面で有利になることがあります。
その際は、医師の診断書や客観的な証拠を提示することで、退職理由の正当性を示すことができます。しかし、具体的な理由を伝えることにはデメリットも伴います。
まず、会社から引き止めにあったり、退職理由について不要な詮索を受けたりする可能性があります。また、ネガティブな理由を伝えた場合、退職までの期間、職場での人間関係が悪化するリスクも考慮しなければなりません。
したがって、具体的な理由を伝えるかどうかは、自身の状況と会社の文化を考慮し、慎重に判断する必要があります。基本は「一身上の都合」とし、本当に必要な場合にのみ、上司との面談で口頭で伝える程度に留めるのが賢明です。
【体調不良】退職届で使える具体的な理由の例文
体調不良を理由にする際の「一身上の都合」例文
体調不良が原因で退職を検討する場合でも、退職届には「一身上の都合」と記載するのが最も一般的で安全な方法です。具体的な病名や症状を記載する必要は一切ありませんし、むしろプライバシー保護の観点からも避けるべきとされています。
会社によっては産業医面談などを求められることもありますが、退職届自体はシンプルな記載で問題ありません。
例文としては、以下のようになります。
私事、令和〇年〇月〇日をもって、一身上の都合により退職いたします。
この短い一文で、退職の意思表示は十分に果たされます。もし上司から理由を尋ねられた場合は、「体調が優れず、療養に専念するため」といった漠然とした表現で口頭で伝えるのが良いでしょう。無理に詳細を話す必要はありません。医師の診断書は退職届に添付する必要はありませんが、もし会社側から求められたり、退職の意思が固いことを示すために役立つ場面がある場合は、準備しておくと安心です。
体調不良を具体的に伝える場合の注意点と例文
「一身上の都合」とするのが基本ですが、体調不良が深刻で、会社側にもその状況を理解してもらいたい、あるいは特別な配慮を求めたいといった場合には、具体的に伝えることも選択肢の一つです。ただし、この場合も病名を明記することは避け、「療養に専念するため」といった表現に留めるのが無難です。
例文としては、次のような形で口頭で伝えるのが良いでしょう。
「この度、体調を崩してしまい、医師からも一定期間の療養が必要との診断を受けました。現在の業務を継続することが難しく、回復に専念するため、誠に勝手ながら退職させていただきたく存じます。」
このように、医師の診断があることを示唆しつつ、具体的な病名には触れないことで、自身の状況を伝えつつもプライバシーを守ることができます。もし会社側にハラスメントや過重労働など、体調不良の原因がある場合は、会社都合退職の可能性も出てきますので、その際は専門家への相談も検討しましょう。
体調不良が原因で会社都合退職となるケース
通常、体調不良による退職は自己都合退職とみなされます。しかし、体調不良の原因が会社の労働環境やハラスメントなど、会社側に明確な責任がある場合は、「会社都合退職」として処理される可能性があります。
例えば、長時間労働による過労、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントによる精神的な不調、安全配慮義務違反による健康被害などがこれに該当します。この場合、退職後の失業給付において、自己都合退職よりも有利な条件で給付を受けられるメリットがあります。
会社都合退職として認められるためには、医師の診断書はもちろんのこと、ハラスメントの記録や労働時間の記録など、客観的な証拠を揃えることが非常に重要です。
もし会社都合退職を希望する場合は、まずは労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談し、適切なアドバイスを受けることを強くお勧めします。退職届自体は「一身上の都合」として提出しつつ、交渉によって会社都合と認められるケースもあります。
【労働条件の相違】退職届で使える具体的な理由の例文
労働条件の相違を「一身上の都合」とする例文
入社時に提示された労働条件と、実際の労働実態が大きく異なる場合、それが退職理由となることは少なくありません。厚生労働省の調査でも、男女ともに「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」という理由が離職理由の上位に挙げられています。特に男性の若年層でこの傾向が顕著です。
しかし、このような状況であっても、退職届には「一身上の都合」と記載するのが最も穏便な方法です。
具体的な例文は、体調不良の場合と同様にシンプルで構いません。
私事、令和〇年〇月〇日をもって、一身上の都合により退職いたします。
この表現であれば、会社側との不要な摩擦を避けつつ、自身の退職の意思を明確に伝えることができます。もし上司から退職理由の詳細を尋ねられた際は、面談の場で「入社時に伺っていた労働条件と実態に乖離があり、このまま働き続けることに困難を感じたため」といった形で、感情的にならず客観的な事実に基づいて伝えるよう心がけましょう。
具体的な労働条件の相違を伝える場合の例文とポイント
面談の場で労働条件の相違について具体的に説明する際は、感情的になるのではなく、事実に基づいた冷静な説明を心がけることが重要です。例えば、「残業時間」や「休日出勤の頻度」、「給与体系」など、具体的な項目を挙げて説明すると、会社側も理解しやすくなります。
例文としては、次のような伝え方が考えられます。
「入社時の説明では残業は月〇時間程度と伺っておりましたが、実際には常に〇時間を超える状況が続いており、体力的な負担が大きくなっています。また、休日の取得についても難しい状況が常態化しており、このままでは長期的に業務を継続することが困難だと判断いたしました。」
このように、具体的な数字や状況を挙げることで、説得力が増します。ただし、あくまで「自分の判断」として伝えることで、会社への非難に聞こえないよう配慮することも忘れてはなりません。契約書や就業規則などの証拠がある場合は、それらを基に説明するとより効果的です。
違法な労働条件が原因の場合の対処法
労働条件の相違が、残業代の未払いや過労死ラインを超える長時間労働の強制、ハラスメントを伴う業務命令など、違法性の高いものである場合は、適切な対処が必要です。このようなケースでは、退職届を提出する前に、まずは現状を記録に残すことが重要となります。
具体的には、タイムカードや日報、メールのやり取り、上司や同僚との会話メモなど、客観的な証拠をできる限り多く収集しましょう。
その後、労働基準監督署への相談や、弁護士などの専門家に相談することを検討してください。これらの機関は、あなたの権利を守るための具体的なアドバイスや支援をしてくれます。
違法な労働条件が原因での退職は、会社都合退職として認められる可能性が高く、退職後の生活保障や転職活動に大きな影響を与えます。退職届は「一身上の都合」として提出しつつ、専門家の助言を得ながら、会社と交渉を進めるのが賢明な選択と言えるでしょう。
退職届の例文:横書きやその他シチュエーション別
基本的な退職届の構成と横書き・縦書きの選択
退職届は、会社に対して退職の意思を正式に伝えるための重要な書類です。その構成は、基本的に日付、宛先、提出者の情報(部署・氏名)、退職理由、退職希望日から成り立ちます。
現代では、パソコンで作成し、横書きで提出するのが一般的になりつつあります。手書きで縦書きの退職届も伝統的な形式ですが、特に指定がなければ、ビジネス文書として読みやすい横書きで作成することをおすすめします。重要なのは、形式よりも内容の正確性と明確性です。
いずれの形式でも、誤字脱字がないか、日付や氏名が正確かなどを提出前に必ず確認しましょう。会社によっては特定のフォーマットがある場合もあるため、事前に確認するか、総務部などに問い合わせてみるのも良いでしょう。シンプルな書面ですが、あなたの会社での最後の印象を左右する可能性もあります。
自己都合退職における基本的な退職届例文
多くの自己都合退職において、「一身上の都合」を理由とする基本的な退職届の例文は以下のようになります。この例文は、A4用紙1枚に収まる程度の簡潔な内容が望ましいです。
退職届
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇 〇〇殿
〇〇部 〇〇課
氏名:〇〇 〇〇 印
私事、
この度、一身上の都合により、
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
以上
ポイントは、「私事」の後に一文字下げてから退職理由を記載し、退職希望日を明記することです。署名欄には捺印(認印で可)を忘れずに行いましょう。また、円満退職を目指すのであれば、「これまでお世話になりました」といった感謝の気持ちを口頭で添えることも大切です。
期間の定めのある労働契約(有期雇用)の場合の退職届
期間の定めのある労働契約(有期雇用契約)の場合、原則として契約期間の途中での退職は認められていません。しかし、民法第628条には「やむを得ない事由がある場合」には契約期間中であっても直ちに解除できるとされています。
「やむを得ない事由」とは、自身の病気や家族の介護、ハラスメントなど、客観的に見て労働契約を継続することが困難な状況を指します。この場合、退職届にはその旨を簡潔に記載する必要がありますが、やはり具体的な病名などは避け、「やむを得ない事由のため」とぼかすのが賢明です。
例文としては、次のような形式が考えられます。
退職届
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇 〇〇殿
〇〇部 〇〇課
氏名:〇〇 〇〇 印
私事、
この度、やむを得ない事由により、
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
以上
有期雇用契約の途中退職は、自己都合であってもトラブルになりやすいケースがありますので、事前に弁護士や労働基準監督署に相談し、適切な手続きを踏むことをお勧めします。
退職届の提出前に確認しておきたいこと
就業規則の確認と提出期限
退職を決意したら、まず会社の就業規則を確認することが最も重要です。就業規則には、退職の申し出に関する規定(「退職希望日の〇ヶ月前までに申し出ること」など)が明記されています。
民法では原則として退職の申し出から2週間で退職が可能とされていますが、円満な退職を目指すのであれば、会社の就業規則に従うのが望ましいとされています。規則を無視して強引に退職を進めると、会社との関係が悪化したり、引き継ぎが滞ったりして、最終的にあなた自身が困る可能性もあります。
余裕を持ったスケジュールで退職の意思を伝え、円滑な引き継ぎ期間を確保できるよう準備しましょう。一般的には、退職希望日の1ヶ月~2ヶ月前には上司に退職の意向を伝えるのがマナーとされています。退職届の提出は、上司に口頭で伝えた後が適切です。
業務の引き継ぎと有給消化について
円満退職のためには、業務の引き継ぎを丁寧に行うことが不可欠です。後任者がスムーズに業務を継続できるよう、担当業務のリストアップ、進捗状況、重要顧客情報、マニュアル作成など、可能な限りの準備をしましょう。引き継ぎが不十分だと、会社に迷惑がかかるだけでなく、あなた自身の評価を下げてしまうことにもつながりかねません。
また、退職時には残っている有給休暇の消化を希望する人も多いでしょう。有給休暇は労働者に与えられた正当な権利ですので、会社と相談の上、計画的に消化することをおすすめします。
ただし、引き継ぎ期間と重なる場合は、会社の業務に支障が出ないよう調整が必要です。会社側との良好な関係を保ちながら、お互いに納得のいく形で退職日を迎えられるよう努めましょう。
退職後の手続きと必要な書類の確認
退職後の生活に備えて、必要な手続きや書類について事前に確認しておくことも大切です。主な手続きとしては、健康保険、年金、雇用保険(失業給付)、住民税などがあります。次の転職先が決まっているかいないかで、手続きの内容は大きく異なります。
会社から受け取るべき書類としては、以下のようなものがあります。
- 離職票(雇用保険の手続きに必要)
- 源泉徴収票(確定申告や年末調整に必要)
- 雇用保険被保険者証(次の会社への提出や失業給付に必要)
- 年金手帳(基礎年金番号が記載されている)
- 健康保険資格喪失証明書(国民健康保険への加入に必要)
これらの書類は退職後の生活や転職活動において非常に重要ですので、必ず受け取り、紛失しないよう保管しましょう。不明な点があれば、会社の総務担当者に確認しておくことをお勧めします。
まとめ
よくある質問
Q: 退職届の理由欄は具体的に書いた方が良いですか?
A: 一般的には、具体的な理由を正直に書くことが推奨されます。ただし、会社によっては「一身上の都合」で問題ない場合もあります。会社の就業規則や上司との相談内容に合わせて判断しましょう。
Q: 体調不良を理由にする場合、どこまで具体的に書くべきですか?
A: 「一身上の都合により、体調不良のため」のように、病名まで明記する必要はありません。ただし、面談などで医師から静養が必要と診断された旨を伝えられると、より説得力が増します。
Q: 労働条件の相違を理由にする場合、注意点はありますか?
A: 面接時や入社後に提示された労働条件と、実際の労働条件との相違点を具体的に記載します。ただし、感情的にならず、客観的な事実を淡々と記述することが重要です。
Q: 退職届は横書きでも問題ありませんか?
A: 会社の規定によりますが、一般的には縦書きが正式とされることが多いです。もし横書きで提出する場合は、事前に人事部や上司に確認することをおすすめします。
Q: 退職届を提出する前に、誰かに相談した方が良いですか?
A: 退職の意向を固める前に、まずは直属の上司に口頭で相談するのが一般的です。その上で、退職届の提出方法や時期について確認し、円滑に手続きを進めましょう。