1. 退職届の基本:目的と作成時の注意点
    1. 退職届の役割と「一身上の都合」の原則
    2. 円満退職のための適切な提出時期
    3. 会社都合退職における退職届の取り扱い
  2. 会社都合退職の退職届:書き方と確認事項
    1. 会社都合退職の定義と「一身上の都合」の落とし穴
    2. 具体的な退職理由の記載方法とテンプレート
    3. 会社都合退職がもたらすメリット:失業保険と退職金
  3. 健康上の理由・精神疾患による退職届:伝えるべきこと
    1. 健康上の理由で退職する際の基本姿勢
    2. 病状を具体的に記載するかどうかの判断と診断書の重要性
    3. 精神疾患による退職に際する配慮と会社への伝え方
  4. 休職中・欠勤中の退職届:知っておきたい手続き
    1. 休職中に退職を決断する際の基礎知識
    2. 休職理由と退職理由の整合性の重要性
    3. 休職中の退職と傷病手当金の関係
  5. 契約社員・契約期間満了時の退職届:ケース別のポイント
    1. 契約期間満了による退職の基本と届出
    2. 契約期間中の自己都合退職の注意点
    3. 会社都合による契約解除と失業保険
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 退職届と退職願の違いは何ですか?
    2. Q: 会社都合退職の場合、退職届に理由を具体的に書くべきですか?
    3. Q: 健康上の理由で退職する場合、診断書は必須ですか?
    4. Q: 休職中に退職する場合、退職届はいつまでに提出すれば良いですか?
    5. Q: 契約社員ですが、契約期間満了の退職届は必要ですか?

退職届の基本:目的と作成時の注意点

退職届は、会社を辞める際に提出する重要な書類です。労働者から会社への労働契約解除の意思表示を正式に証明する目的があります。

その書き方一つで、後の手続きや退職条件に影響を及ぼす可能性もあるため、基本をしっかりと押さえることが大切です。

退職届の役割と「一身上の都合」の原則

退職届は、法的に有効な労働契約解除の意思表示であることを示す書類です。労働者には職業選択の自由があり、原則として退職は自由ですが、その意思を会社に明確に伝える必要があります。

自己都合退職の場合、退職届には「一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします」と記載するのが一般的です。これは、具体的な退職理由を詳細に書く必要がないという慣例に基づいています。

詳細な退職理由は、口頭で上司に伝える方が、円満な退職につながりやすいでしょう。会社に退職理由を深く詮索させないためにも、「一身上の都合」という表現は有効です。

また、個人的な理由(例:キャリアアップ、家庭の事情、職場の人間関係など)で退職する場合も、この表現を用いることで、波風を立てずに退職プロセスを進めることができます。

円満退職のための適切な提出時期

退職届の提出時期は、円満な退職を実現するために非常に重要です。民法では、雇用期間の定めのない労働契約の場合、退職の申し出から2週間で退職が可能とされています。

しかし、ほとんどの会社では就業規則で「退職の〇ヶ月前までに申し出る」と定められています。一般的には1ヶ月前や2ヶ月前とされていることが多く、まずは自社の就業規則を確認しましょう。

この期間は、会社が後任者の手配や業務の引き継ぎを行うための準備期間として設定されています。就業規則に従って余裕をもって申し出ることで、会社に迷惑をかけずにスムーズな引き継ぎが可能となり、円満な退職につながります。

急な退職は、同僚や会社に負担をかけるだけでなく、自身の評判にも影響を及ぼす可能性があるため、計画的に進めることが肝心です。

会社都合退職における退職届の取り扱い

会社都合退職の場合、退職届の提出が不要なケースもありますが、会社から提出を求められる場合があります。この時、最も注意すべき点は、「一身上の都合」と記載しないことです。

「一身上の都合」と記載してしまうと、後に自己都合退職とみなされ、失業保険の受給条件などで不利になる可能性があります。会社都合退職とは、会社の経営上の都合や倒産、解雇など、会社側の理由によって労働契約が解除される場合を指します。

そのため、会社と合意した具体的な理由(例:「事業所閉鎖のため」「事業部門縮小のため」など)を退職届に明記することが重要です。

退職勧奨を受けて退職する場合も、口頭での合意だけでなく、後日のトラブルを避けるために「退職合意書」を交わすことが強く推奨されます。これにより、退職理由が会社都合であることを明確にできます。

不明な点があれば、提出前に人事担当者や専門家(社会保険労務士など)に相談するようにしましょう。

会社都合退職の退職届:書き方と確認事項

会社都合退職は、自己都合退職とは異なり、会社の責任によって雇用契約が終了するケースです。失業保険の受給条件や退職金に大きな影響を与えるため、退職届の書き方には細心の注意が必要です。

ここでは、会社都合退職における退職届の具体的な書き方と、確認すべき重要事項について詳しく解説します。

会社都合退職の定義と「一身上の都合」の落とし穴

会社都合退職とは、会社の倒産、リストラ、事業縮小に伴う人員整理、希望退職募集への応募、解雇など、会社側の都合で退職に至る場合を指します。

この場合、退職届に「一身上の都合」と記載してしまうと、退職理由が自己都合と判断され、失業保険の給付開始時期が遅れたり、給付期間が短くなったりする可能性があります。

厚生労働省のデータによると、転職者の直前の勤め先を離職した理由として「自己都合」が76.6%と最も高いですが、そのうち20.2%は「実際は会社都合だった」と回答しています。これは、会社都合であるにもかかわらず、自己都合として処理されてしまうケースが少なくないことを示唆しています。

退職届の記載は、後の手続きに決定的な影響を与えるため、会社と退職理由について十分に確認し、合意した上で作成することが不可欠です。

具体的な退職理由の記載方法とテンプレート

会社都合退職の場合、退職届には必ず具体的な退職理由を記載する必要があります。「一身上の都合」は避け、会社側と合意した内容を正確に記しましょう。

例えば、事業縮小が理由であれば、「〇〇(会社名)の事業縮小に伴い、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。」と記載します。

また、希望退職制度を利用した場合であれば、「希望退職制度に応募し、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。」といった形になります。

重要なのは、会社側が提示した退職理由と完全に一致させることです。もし会社から退職届のテンプレートを渡された場合は、その内容が会社都合であることを明記しているかを確認し、不明な点があれば修正を求めるか、別紙で合意書を作成するよう交渉しましょう。

退職勧奨の場合も、必ず退職届ではなく「退職合意書」を交わし、退職理由が会社都合であることを明記することがトラブル防止に繋がります。

会社都合退職がもたらすメリット:失業保険と退職金

会社都合退職は、自己都合退職と比較して、退職後の生活保障においていくつかのメリットがあります。

まず、失業保険(基本手当)の受給条件が有利になります。自己都合退職の場合、通常2ヶ月~3ヶ月の給付制限期間が設けられますが、会社都合退職ではこの給付制限がなく、待機期間(7日間)が過ぎればすぐに受給が開始されます。また、給付期間も自己都合退職より長くなる傾向があります。

次に、退職金についても、会社都合退職の方が自己都合退職よりも高額になるケースが多いです。これは、会社が解雇やリストラといった一方的な都合で従業員を退職させることに対する一種の補償として考えられているためです。

ただし、これらのメリットを享受するためには、退職理由が会社都合であることが公的に認められる必要があります。ハローワークでの手続きや離職票の記載内容に注意し、もし自己都合とされている場合は、会社に訂正を求めるか、ハローワークに相談しましょう。

健康上の理由・精神疾患による退職届:伝えるべきこと

健康上の理由、特に精神疾患による退職は、非常にデリケートな問題です。退職届の書き方一つで、会社との関係性や、今後の傷病手当金などの手続きに影響が出る可能性があります。

ここでは、自身の健康状態を理由に退職する際の、伝えるべきことと注意点について解説します。

健康上の理由で退職する際の基本姿勢

病気や怪我、精神的な不調など、健康上の理由で退職する場合も、基本的には退職届を提出します。この際、最も悩むのが「退職理由をどこまで具体的に書くか」という点でしょう。

病状を会社にあまり具体的に伝えたくない場合は、「一身上の都合」と記載するか、あるいは「健康上の理由」と簡潔に記載するのが一般的です。これにより、プライバシーを守りつつ退職の意思表示が可能です。

しかし、就業規則によっては診断書の提出が義務付けられている場合や、長期休職からの復帰が困難で退職に至る場合など、ある程度の説明が必要になるケースもあります。まずは自社の就業規則を確認し、人事担当者と相談することをおすすめします。

無理をして働き続けることは、自身の健康をさらに悪化させることにも繋がりかねません。自身の健康状態を最優先に考え、適切な対応を取ることが重要です。

病状を具体的に記載するかどうかの判断と診断書の重要性

病状を具体的に退職届に記載するかどうかは、慎重に判断する必要があります。具体的に記載する場合、診断書の内容を参考に病名や症状を簡潔に記すことが考えられます。

例えば、「〇〇病の治療に専念するため」や「医師の診断により就労が困難と判断されたため」といった表現が考えられます。ただし、これは会社との関係性や、退職後の手続き(例:傷病手当金の継続受給など)を考慮して決定すべきです。

診断書は、健康上の理由で退職する際の客観的な証拠となります。特に、傷病手当金を受給している場合や、休職期間満了に伴う退職の場合、診断書の提出が必須となることがほとんどです。会社から診断書の提出を求められた場合は、速やかに提出できるよう準備しておきましょう。

診断書を提出することで、会社側も状況を理解しやすくなり、不必要な詮索を避け、円滑な退職手続きにつながる可能性もあります。

精神疾患による退職に際する配慮と会社への伝え方

精神疾患を理由とする退職は、その性質上、伝え方に特に配慮が必要です。自身の心身の負担を最小限に抑えつつ、会社とのコミュニケーションを進めることが大切になります。

診断書がある場合は、それを根拠に「健康上の理由により、休養が必要となったため」といった抽象的な表現を用いるのが良いでしょう。病名や具体的な症状を詳細に伝える義務はありません。

しかし、会社が復帰に向けた支援を検討している場合(休職中の場合など)は、ある程度の情報提供が必要になることもあります。この際は、産業医や保健師、カウンセラーなどを介して会社と情報共有を行うなど、第三者を挟むことも有効な手段です。

精神的な負担が大きい場合は、代理人を立てて手続きを進めることも視野に入れましょう。また、退職後も傷病手当金の受給を継続する可能性があるため、会社との連携を密にし、必要な書類を滞りなく準備することが重要です。

一人で抱え込まず、信頼できる人に相談しながら進めることが、回復への第一歩となります。

休職中・欠勤中の退職届:知っておきたい手続き

休職中や長期欠勤中に退職を決断することは、心身への負担が大きい状況下で行われることが多いでしょう。このような特殊な状況での退職届の提出は、通常の退職とは異なる注意点があります。

ここでは、休職中・欠勤中に退職する際に知っておくべき手続きや、気をつけるべきポイントについて解説します。

休職中に退職を決断する際の基礎知識

休職中に退職する場合も、基本的には通常の退職と同様に退職届を提出し、就業規則に則って退職の意思を伝えます。ただし、すでに休職中であるため、会社への連絡方法や書類の提出方法に工夫が必要となる場合があります。

例えば、出社が困難な状況であれば、郵送での提出や、人事担当者との電話・メールでのやり取りが中心となるでしょう。

休職は、病気や怪我などで一定期間仕事から離れることを会社が認める制度であり、原則として復職を前提としています。しかし、休職期間中に体調が回復せず、復職が困難であると判断された場合や、別の道に進むことを決意した場合、退職という選択肢を選ぶことになります。

この決断は、自身の健康状態や将来のキャリアを考慮した上で慎重に行うべきです。焦らず、自身のペースで決断しましょう。

休職理由と退職理由の整合性の重要性

休職中に退職する場合、休職理由と退職理由の間に整合性があるかが重要になります。もし休職理由が「傷病による療養」であったにもかかわらず、退職理由が「転職」といった大きくかけ離れたものであった場合、会社から疑念を持たれる可能性があります。

特に、休職中に給与の一部が支給されていたり、会社の福利厚生を利用していたりする場合、休職制度を不正に利用したと見なされるリスクもゼロではありません。

そのため、休職中に転職活動を行っていたなど、休職理由と退職理由が異なる場合は、会社に対して正直かつ誠実な説明を心がけることが大切です。可能な限り、休職の本来の目的(療養など)と退職理由(療養の結果、長期的な復帰が困難と判断したなど)を繋がるように説明すると、会社も納得しやすくなります。

事前に弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、適切な伝え方についてアドバイスをもらうことも有効です。

休職中の退職と傷病手当金の関係

休職中に退職する際に特に気になるのが、傷病手当金の扱いです。傷病手当金は、健康保険に加入している方が、病気や怪我で会社を休み、給与が支給されない場合に生活保障として支給される手当です。

原則として、退職日をもって健康保険の被保険者資格を喪失するため、傷病手当金の支給も終了します。しかし、退職日までに支給要件を満たし、かつ被保険者期間が継続して1年以上あれば、退職後も引き続き傷病手当金の支給を受けられる場合があります(任意継続被保険者を除く)。これを「傷病手当金の継続給付」といいます。

継続給付を受けるためには、いくつかの条件があり、退職後の手続きも必要になります。退職後に傷病手当金の受給を希望する場合は、会社の健康保険担当者や健康保険組合、または全国健康保険協会(協会けんぽ)に詳細を確認し、必要な書類を準備しましょう。

この制度は、退職後の生活を支える上で非常に重要ですので、必ず確認するようにしてください。

契約社員・契約期間満了時の退職届:ケース別のポイント

契約社員の場合、正社員とは異なる雇用形態であるため、退職届の扱い方や退職のプロセスにも特別な注意が必要です。特に、契約期間満了時と契約期間中の退職では、法的な扱いが大きく異なります。

ここでは、契約社員が退職する際のケース別のポイントを詳しく見ていきましょう。

契約期間満了による退職の基本と届出

契約社員の退職において最も一般的なのは、契約期間満了によるものです。この場合、契約期間が満了すれば自動的に雇用契約が終了するため、原則として退職届を提出する必要はありません

ただし、会社側が契約更新の意向があるにもかかわらず、労働者側が更新を希望しない場合は、その旨を伝える必要があります。通常は、契約更新の意向確認の際に、更新を希望しないことを伝える書面を提出するか、口頭で伝えることで対応します。

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として「定年・契約期間の満了」が男性16.9%、女性9.8%と、上位に挙げられています。これは、契約期間満了による退職が非常に多いことを示しています。

契約満了に伴う退職は、自己都合退職とは異なり、失業保険の給付が比較的スムーズに開始されることが多いというメリットもあります。

契約期間中の自己都合退職の注意点

契約社員が契約期間中に自己都合で退職する場合、正社員の退職とは異なる法的な制約があります。原則として、「やむを得ない事由」がない限り、契約期間中の退職は認められていません

民法第628条には、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる。」と定められています。ここでいう「やむを得ない事由」とは、病気や怪我、家族の介護、ハラスメントなど、客観的に見て仕事を続けられないと判断されるような重大な事情を指します。

もし、やむを得ない事由なく契約期間中に退職した場合、会社から損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。ただし、実際に損害賠償が認められるケースは非常に稀です。

契約期間中に退職を希望する場合は、まずは契約内容を確認し、人事担当者と相談し、円満な合意形成を目指すことが重要です。一方的な退職は避け、会社との話し合いを重ねましょう。

会社都合による契約解除と失業保険

契約社員の場合でも、会社都合による契約解除となることがあります。これは、会社の経営状況の悪化による人員削減、事業所の閉鎖、または会社側が契約更新を拒否するケースなどが該当します。

特に、契約更新を期待させるような言動があったにもかかわらず、会社側の一方的な都合で更新を拒否された場合は、「会社都合退職」とみなされる可能性があります。

この場合、正社員の会社都合退職と同様に、失業保険の受給において有利な条件が適用されます。具体的には、給付制限期間がなく、待機期間(7日間)経過後から失業保険の給付が開始され、給付期間も長くなる傾向があります。

もし会社から契約更新を拒否された理由に納得がいかない場合や、会社都合退職であるにもかかわらず自己都合とされた場合は、ハローワークや労働基準監督署、弁護士などに相談して、自身の権利を主張することが重要です。離職票の記載内容をしっかりと確認し、誤りがあれば訂正を求めましょう。