「研修」は、自身のスキルアップやキャリア形成に欠かせない重要な機会です。しかし、その研修期間中の賃金や、研修に伴う交通費、宿泊費といった費用がどのように扱われるのか、疑問に感じる方も多いのではないでしょうか?

特に、法律上の取り扱いや会社の規定によって対応が異なるため、漠然とした不安を抱えることも少なくありません。この記事では、研修中の賃金や各種費用に関する疑問を、最新の正確な情報に基づいて徹底的に解説します。

内定者研修から出張を伴う専門研修まで、あなたが知りたい情報を網羅し、安心して研修に臨めるようサポートします。ぜひ最後までお読みいただき、あなたの疑問を解消してください。

  1. 研修中の賃金はもらえる?最低賃金は適用される?
    1. 強制参加なら賃金支払い義務あり!内定者研修も例外ではない
    2. 最低賃金は保証される?減額は合意が大前提
    3. 日当は給与と違う?支給される条件とは
  2. 研修中に発生する交通費・駐車場代・宿泊費はどうなる?
    1. 交通費は会社が負担するのが原則!ただし規定を確認
    2. 宿泊を伴う研修の費用は?上限や内訳をチェック!
    3. 交通費・宿泊費は「旅費交通費」として計上
  3. 出張研修、展示会・セミナー研修の相場と注意点
    1. 一人あたりの研修費用は平均いくら?
    2. 出張研修で注意すべき労働時間と移動時間
    3. 展示会・セミナー参加も「研修」とみなされる?
  4. 「研修」と「トレーニング」の違いとは?
    1. 「研修」は知識習得、多角的な視点
    2. 「トレーニング」は技能習得、実践的
    3. 両者の境界線は曖昧、目的が重要
  5. 研修参加前に確認すべきことリスト
    1. 【賃金・費用関連】確認必須の項目
    2. 【労働時間・評価関連】事前に確認を!
    3. 【万が一のトラブル対策】会社の規定を把握しよう
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 研修中に賃金は必ず支払われるべきですか?
    2. Q: 研修参加のためにかかった交通費や駐車場代は会社が負担してくれますか?
    3. Q: 出張研修や展示会・セミナー研修の場合、宿泊費はどのように扱われますか?
    4. Q: 「研修」と「トレーニング」に法的な違いはありますか?
    5. Q: 研修参加前に、賃金や費用の負担について何を確認すれば良いですか?

研修中の賃金はもらえる?最低賃金は適用される?

強制参加なら賃金支払い義務あり!内定者研修も例外ではない

研修への参加が会社から義務付けられている場合、または業務遂行に不可欠な内容であると判断される場合、その研修時間は労働とみなされ、会社には賃金を支払う義務が発生します。これは労働基準法に基づいた原則であり、会社が一方的に「研修だから賃金は発生しない」とすることはできません。

たとえ内定者研修であっても、会社が参加を強制し、具体的な業務指示やスケジュール管理が行われる場合は、労働時間とみなされ賃金が発生すると考えられます。例えば、新入社員研修でビジネスマナーや業界知識を学ぶ時間は、将来の業務に直結するため、賃金が発生するのが一般的です。

もし会社から「研修は無給」と説明されていても、その研修が会社の指揮命令下で行われ、不参加の場合に不利益を被る可能性がある場合は、労働時間として賃金請求できるケースもあるため、自身の状況をよく確認することが重要です。

最低賃金は保証される?減額は合意が大前提

研修期間中に支払われる給与は、会社が自由に設定できるものではなく、労働基準法で定められた最低賃金以上の金額を支払う必要があります。例外的なケースを除き、最低賃金を下回る賃金での支払いは違法となる可能性がありますので注意が必要です。

また、研修期間中の給与が通常業務時よりも減額される場合、必ず会社と社員の間での合意が不可欠となります。就業規則や労働条件通知書に、研修期間中の給与に関する規定が明確に記載されており、それに合意している場合にのみ減額が許されます。

もし何の事前説明や合意もなく、研修期間中に一方的に給与を減額された場合は、不当な減額として会社に是正を求めることができます。自身の賃金が最低賃金を下回っていないか、減額の合意があったかを確認しましょう。

日当は給与と違う?支給される条件とは

一般的に「日当」とは、出張や研修など特別な場所での業務に伴う肉体的・精神的な負担や、雑費などを補償するために支給される費用であり、賃金(給与)とは区別されます。つまり、日当は労働の対価ではなく、旅費交通費の一部として扱われるのが通常です。

しかし、会社の指示・命令による研修参加であれば、他の出張と同様に日当を支給することが望ましいとされています。日当の支給の有無や金額は、多くの場合、会社の出張旅費規程などに詳細が定められています。規程に「日当は支給しない」と明記されている場合は、原則として支給されません。

会社によっては、本人の希望による研修参加の場合や、業務出張とは異なる「教育出張」と位置付けて、日当を廃止するケースも見られます。研修に参加する前に、自身が参加する研修が会社の規程上、日当の対象となるかを確認することをおすすめします。

研修中に発生する交通費・駐車場代・宿泊費はどうなる?

交通費は会社が負担するのが原則!ただし規定を確認

会社の指示や命令によって研修に参加する場合、自宅から研修場所までの交通費は、通常の通勤や業務上の移動と同様に、会社が全額支給するのが原則です。これは、研修が業務の一環とみなされるためであり、社員が自己負担すべきものではありません。

内定者研修であっても、会社が参加を強制するのであれば、交通費を会社が支払うことが望ましいとされています。交通費の支給方法については、各社の旅費規程に準じます。公共交通機関の利用が原則とされたり、実費精算が求められたり、上限額が設定されたりする場合があります。

また、研修場所までの移動に自家用車を使用した場合の駐車場代も、交通費の一部として会社が負担するのが一般的です。ただし、事前に会社の許可を得る必要がある場合や、上限額が設定されている場合もあるため、事前に確認が必要です。研修前に会社の旅費規程や担当部署に確認し、不明な点は解消しておきましょう。

宿泊を伴う研修の費用は?上限や内訳をチェック!

宿泊を伴う研修の場合、宿泊費も原則として会社の規定に基づいて支給されます。多くの会社では、宿泊費に対して上限額が設定されており、例えば「1泊2食付きで上限13,100円」といった具体的な規定や、「宿泊費8,000円、夕食費3,000円、朝食費2,000円」といった内訳ごとに上限が定められているケースもあります。

研修主催者から滞在費用があらかじめ通知されている場合は、その費用を宿泊日数で除した額が支給されることがありますが、会社の規定額を超える場合は、規定額が優先されることが一般的です。重要な注意点として、ほとんどの場合、アルコール類は宿泊費や飲食費の支給対象外となります。

万が一のトラブルを避けるためにも、宿泊を伴う研修に参加する際は、事前に会社の旅費規程を確認し、宿泊費の上限額、支給対象となる費用(食事代の有無など)、領収書の提出方法などを把握しておくことが非常に重要です。

交通費・宿泊費は「旅費交通費」として計上

研修参加のために発生した交通費や宿泊費は、会社が費用を計上する際に、「研修費」としてではなく、会計上は「旅費交通費」として扱われるのが一般的です。これは、これらの費用が「研修そのものにかかる費用」ではなく、「研修場所への移動・滞在にかかる費用」と区別されるためです。

例えば、研修の受講料そのものが「研修費」として計上されるのに対し、それに伴う電車賃やホテル代は「旅費交通費」として処理されます。この区分は、会社の経費管理や税務上の処理において重要となります。

社員側としては、費用精算の際に会社から指示される勘定科目や精算ルールに従って、正確に申請を行う必要があります。領収書の提出期限やフォーマットなども確認し、適切に手続きを進めるようにしましょう。

出張研修、展示会・セミナー研修の相場と注意点

一人あたりの研修費用は平均いくら?

企業が従業員一人あたりにかける研修費用は、業界や企業規模によって異なりますが、一定の目安があります。産労総合研究所の「2024年度教育研修費用の実態調査」によると、従業員一人あたりの教育研修費用の平均額は34,606円という結果が出ています。

また、厚生労働省の「能力開発基本調査(企業調査)」では、2023年度のOFF-JT(Off-the-Job Training:職場外研修)における一人あたりの平均支出額は15,000円でした。これらのデータから、企業が従業員の能力開発に投じる費用の規模感が伺えます。

この金額には、外部講師への謝礼、研修会場費、教材費、そして今回議論している交通費や宿泊費などが含まれます。企業がどれだけ人材育成に投資しているかを知る指標となり、社員にとっては自身のスキルアップの機会が会社から提供されていることの裏付けとも言えるでしょう。

出張研修で注意すべき労働時間と移動時間

出張を伴う研修の場合、研修時間だけでなく、自宅から研修場所までの移動時間も労働時間とみなされるかどうかが重要なポイントになります。基本的には、会社の指示・命令に基づいて行われる移動時間は労働時間とみなされる可能性が高いです。特に、移動中に業務を行うことが指示されている場合は、明確に労働時間となります。

また、研修中の怪我や病気に関する労災保険の適用についても確認が必要です。研修が労働とみなされる場合、労災保険の対象となりますが、もし自由参加の研修で労働とみなされない場合は、労災保険の対象外となることがあります。この場合、会社が別途、傷害保険などを用意しているか、または事前に社員にその旨を説明する義務があります。

トラブルを避けるためにも、出張研修に参加する際は、事前に労働時間の考え方、移動時間の取り扱い、そして万が一の際の労災保険の適用範囲について、会社の担当部署に確認しておくことが賢明です。

展示会・セミナー参加も「研修」とみなされる?

業界の動向把握や情報収集、最新技術の学習を目的とした展示会やセミナーへの参加も、実質的に「研修」とみなされる場合があります。会社からの業務命令として参加する場合であれば、一般的な研修と同様に、参加時間は労働時間とみなされ、参加費、交通費、宿泊費などが会社負担となるのが原則です。

しかし、自主的なスキルアップを目的とした自由参加の展示会やセミナーの場合、それが直接的な業務命令ではないため、労働時間とはみなされず、費用も自己負担となるケースが多くなります。ただし、参加が推奨され、その結果が人事評価に影響を与えるような場合は、労働時間とみなされる可能性もあります。

企業によっては、自己啓発の一環として社員の展示会・セミナー参加を奨励し、費用の一部を補助する制度を設けている場合もあります。参加前に、それが会社の業務命令によるものか、自由参加だが会社が推奨するものか、費用負担の有無などを明確に確認することが重要です。

「研修」と「トレーニング」の違いとは?

「研修」は知識習得、多角的な視点

「研修」は、一般的に広範な知識や理論、概念を習得することに重点を置いた教育プログラムを指します。座学形式の講義が多く、ビジネススキル、業界知識、リーダーシップ論、コンプライアンスなど、多岐にわたるテーマが扱われます。目的は、受講者の視野を広げ、思考力を高め、将来的なキャリアアップや役割拡大に繋がる基礎固めを行うことです。

特定の技術や技能を反復練習で身につけるよりも、むしろ問題解決能力や意思決定能力など、より抽象的な能力の向上を目指します。企業内では、新入社員研修や階層別研修、マネジメント研修などがこれにあたります。

「研修」は、しばしば集合形式で行われ、他の参加者との意見交換を通じて、多角的な視点を得る機会も提供されます。知識の定着を促すために、グループワークやディスカッションが取り入れられることも多いのが特徴です。

「トレーニング」は技能習得、実践的

一方で「トレーニング」は、特定のスキルや技術を効率的かつ実践的に習得することに特化したプログラムを指します。繰り返し練習を行うことで、特定の業務に必要な具体的な行動や操作、手順を身につけ、即戦力となることを目指します。

例えば、営業スキルを磨くためのロープレ(ロールプレイング)、特定のソフトウェア操作を習得するための実習、機械の操作方法を学ぶOJT(On-the-Job Training)などが「トレーニング」に該当します。スポーツや楽器の練習に例えられるように、実践を通じて身体で覚える要素が強いのが特徴です。

「トレーニング」は、個人の能力レベルや目標に合わせてカスタマイズされることが多く、少人数制やマンツーマン指導で行われることも少なくありません。具体的な行動変容やパフォーマンス向上に直結する成果が求められます。

両者の境界線は曖昧、目的が重要

「研修」と「トレーニング」は、それぞれ異なるニュアンスを持つ言葉ですが、その境界線は必ずしも明確ではありません。多くの企業研修プログラムでは、知識の習得(研修要素)と実践的な技能の習得(トレーニング要素)の両方が組み合わされています。例えば、営業研修では、営業戦略に関する座学(研修)と、実際の顧客対応を想定したロールプレイング(トレーニング)が一体となって行われます。

重要なのは、そのプログラムの「目的」がどこにあるかです。理論や概念理解が主であれば「研修」、特定のスキル習得や行動変容が主であれば「トレーニング」と呼ぶことが多いですが、どちらも人材育成という大きな目標に向かって行われます。

呼称の違いに過度にこだわるよりも、そのプログラムが自身のキャリア目標や業務内容に合致しているか、どのようなスキルや知識が得られるのかを理解することが、参加者にとって最も重要です。企業側も、プログラムの目的を明確にすることで、社員のモチベーション向上と効果的な人材育成に繋がります。

研修参加前に確認すべきことリスト

【賃金・費用関連】確認必須の項目

研修に参加する前に、金銭面での不安を解消するためにも、以下の項目を必ず確認しましょう。

  • 賃金の有無と計算方法:研修時間は労働時間とみなされ、賃金が支払われるのか。その場合、通常の給与計算と同じか、または別途の規定があるのかを確認します。特に、減額がある場合はその合意がきちんと得られているか再確認が必要です。
  • 日当の有無と金額:出張を伴う研修の場合、日当が支給されるのか、支給される場合の金額や条件について会社の出張旅費規程を参照するか、担当部署に直接問い合わせます。
  • 交通費の支給範囲:自宅から研修場所までの交通費は全額支給か、上限があるか、公共交通機関のみか、自家用車利用時の駐車場代は出るのかなど、具体的な範囲を確認します。領収書の提出方法も確認しましょう。
  • 宿泊費の支給範囲と上限:宿泊を伴う研修の場合、宿泊費は全額会社負担か、上限があるか、食事代は含まれるのか、アルコール類は対象外かといった詳細を確認します。事前に宿泊費の目安を把握し、規程に沿った手配を心がけましょう。
  • 領収書の提出要否:交通費や宿泊費など、費用精算に必要な領収書の要否、提出期限、提出先、指定のフォーマットがあるかなどを確認します。紛失や不備がないよう、計画的に準備を進めましょう。

これらの項目を事前に確認することで、研修中の不必要な金銭的ストレスを回避できます。

【労働時間・評価関連】事前に確認を!

研修は自身のキャリアに大きく影響するため、労働時間や人事評価に関する確認も欠かせません。

  • 研修時間は労働時間とみなされるか:研修が会社の指示・命令による強制参加の場合、労働時間として扱われるのが原則です。もし自由参加であっても、その結果が人事評価に影響する可能性があれば、労働時間とみなされるケースもありますので、会社の判断基準を確認しましょう。
  • 研修中の業務(メールチェックなど)の扱い:研修中に業務連絡の確認や簡単なメール返信など、業務を行う必要がある場合の扱いについて確認します。これが労働時間の一部としてカウントされるのか、休憩時間中に対応すべきなのか、事前に明確にしておくことが大切です。
  • 研修結果が人事評価にどう影響するか:研修の成績や参加態度が、昇給・昇格、配置転換などの人事評価にどのように反映されるのかを確認します。自身のキャリアパスにどう影響するかを理解することで、研修へのモチベーションを高めることにも繋がります。
  • 研修中の労災保険の適用について:万が一、研修中に怪我や病気に見舞われた場合の労災保険の適用範囲を確認します。特に自由参加の研修の場合、労災の対象外となる可能性があるため、会社が別途傷害保険などに加入しているか、またはその旨が事前に説明されているかを確認することが重要です。

これらの情報を事前に把握しておくことで、研修をより有意義なものにし、安心して取り組むことができるでしょう。

【万が一のトラブル対策】会社の規定を把握しよう

予期せぬトラブルに備え、研修参加前に会社の規定をしっかり把握し、疑問点を解消しておくことが大切です。

  • 就業規則や出張旅費規程の確認:研修に関する賃金や費用、労働時間の取り扱いについては、会社の就業規則出張旅費規程に詳細が定められています。これらの規定を事前に熟読し、不明な点があれば必ず確認しましょう。
  • 疑問点は担当部署に事前に確認:この記事で解説した内容や、個人的な状況に基づく疑問点があれば、遠慮せずに人事部や研修担当部署に具体的に質問しましょう。口頭での確認だけでなく、書面やメールで回答をもらうことで、後々のトラブルを防ぐことにも繋がります。
  • 緊急時の連絡先、対応フロー:研修中に体調不良や緊急事態が発生した場合の連絡先、および会社としての対応フローを事前に確認しておきましょう。特に宿泊を伴う研修や遠隔地での研修では、この情報が非常に重要になります。
  • キャンセルポリシーの確認:研修の申し込み後に、やむを得ない事情で参加をキャンセルする場合の規定(キャンセル料の発生など)も確認しておくことをおすすめします。

これらの事前の確認と準備によって、研修中の不安を最小限に抑え、研修に集中できる環境を整えることができます。会社との良好なコミュニケーションを保ち、安心して研修に臨みましょう。