最新データで見る日本人英語力の現状

EF EPI英語能力指数2024:過去最低の92位

EFエデュケーション・ファーストが発表した「EF EPI英語能力指数2024」は、非英語圏の英語能力を測る重要な指標です。
この最新データによると、日本人の英語能力は世界的に見て厳しい状況にあります。
全116カ国・地域中、日本は過去最低となる92位という結果に沈みました。

これは日本の英語能力が「低い能力レベル」に分類されることを意味し、国際的なコミュニケーション能力の課題が深刻であることを示唆しています。
さらにアジア23カ国・地域の中でも16位と、その後退傾向は顕著です。
2024年の日本の平均スコアは454ポイントで、前年の457ポイントからわずかながらも低下しており、改善の兆しは見えにくい状況です。

このランキングは、日本がグローバル社会で競争力を維持・向上させていく上で、英語教育と学習方法の抜本的な見直しが急務であることを強く訴えかけています。
特にビジネスや学術分野において、この低い英語力は日本人の活躍機会を制限する要因となりかねません。
私たちはこの結果を真摯に受け止め、具体的な改善策を講じる必要があります。

主要国とのスコア比較:圧倒的な差

日本の英語能力指数が92位という結果は、他の主要国やアジアの近隣諸国と比較すると、その差が歴然としています。
世界の首位に立つオランダは636ポイントという高得点を誇り、日本の454ポイントとは約180ポイントもの大きな隔たりがあります。
これは単なる数値の違いではなく、実際のコミュニケーション能力において、両国間に大きな壁が存在することを物語っています。

アジア圏に目を向けても、日本は多くの国に後れを取っています。
例えば、シンガポールは609ポイントで世界3位、フィリピンは570ポイントで22位、マレーシアは566ポイントで26位と、いずれも日本を大きく上回る高水準を維持しています。
これらの国々は、英語を公用語の一部としていたり、教育システムに英語教育をより深く組み込んでいたりする歴史的・社会的な背景がありますが、日本の現状との比較は目を背けられない現実です。

以下に主要国との比較をまとめました。

国・地域 EF EPI順位 スコア レベル
オランダ 1位 636 非常に高い
シンガポール 3位 609 非常に高い
フィリピン 22位 570 高い
マレーシア 26位 566 高い
日本 92位 454 低い

この比較は、日本が国際舞台で競争していく上で、英語力の向上が不可欠であることを改めて浮き彫りにしています。
特に、ビジネスや学術、観光など多様な分野での国際交流が活発化する現代において、この英語力の差は大きなハンディキャップとなり得ます。

「低い能力レベル」が意味するもの

EF EPIで日本が分類された「低い能力レベル」とは、具体的にどのような英語力を指すのでしょうか。
このレベルの英語力では、簡単な自己紹介や、日常的な挨拶、ごく基本的な旅行中のやり取りなど、限定的な状況でのみ英語を使用できることが多いとされています。
複雑な議論に参加したり、専門的な内容を理解したり、自分の意見を流暢に表現したりすることは非常に困難です。

これは、国際的なビジネス会議での発言や、海外のニュースを直接理解すること、異文化の人々と深い議論を交わすことなど、グローバル社会で求められる多くの能力において支障が生じることを意味します。
学術論文の読解や作成、海外からの情報収集においても、語学の壁は大きな障壁となります。
「低い能力レベル」に甘んじることは、個人のキャリアチャンスの損失だけでなく、日本全体の国際競争力低下にも直結する深刻な問題です。

特に、日本が「観光立国」を目指す中で、インバウンド対応における課題も浮上します。
観光客との円滑なコミュニケーションは、日本の魅力を最大限に伝える上で不可欠です。
現在の英語力では、その期待に応えきれない部分が多いでしょう。
この状況を打破するためには、個人の意識改革と同時に、国を挙げた大規模な英語教育改革が不可欠です。

主要国との比較:ギリシャやデンマークは?

世界トップクラスの非英語圏諸国

非英語圏でありながら、世界トップクラスの英語能力を誇る国々からは、日本が学ぶべき多くの教訓があります。
例えば、首位のオランダ(636ポイント)をはじめとする北欧諸国や、ドイツなどのヨーロッパ諸国は、その優れた英語力で知られています。
これらの国々では、幼少期からの英語教育が充実しているだけでなく、日常生活においても英語に触れる機会が豊富です。

テレビ番組や映画は吹き替えではなく、英語のオリジナル音声に字幕を付けて放送されることが一般的であり、これにより自然とリスニング力が養われます。
また、ビジネスや学術の分野でも英語が広く使用されており、実用的なコミュニケーション能力の育成に重きが置かれています。
完璧な文法よりも、まずは意思疎通を図ることを重視する文化も、英語学習への心理的ハードルを下げています。

これらの成功要因は、単一の政策に依存しているわけではなく、教育制度、メディア環境、ビジネスニーズ、そして国民の意識が複合的に作用している結果と言えるでしょう。
日本が目指すべきは、これらの国々のように、英語が特別視されることなく、社会全体に溶け込んだ学習・使用環境を整備することです。

アジア圏の隣国との明確な差

日本と同じアジア圏においても、多くの国が日本をはるかに上回る英語力を有しています。
シンガポールは世界3位(609ポイント)、フィリピンは22位(570ポイント)、マレーシアは26位(566ポイント)と、いずれも高いレベルを誇ります。
これらの国々では、歴史的背景から英語が公用語の一部として機能している場合が多く、日常生活や教育、ビジネスの場で英語を使用する機会が圧倒的に多いという特徴があります。

特にフィリピンでは、公用語の一つとして英語が教育課程の初期から深く組み込まれており、経済活動においても英語は不可欠なツールです。
コールセンター産業など、英語を活かしたサービス産業が経済を牽引している点も特徴的です。
マレーシアやシンガポールも多民族・多言語国家であり、共通語としての英語がコミュニケーションを円滑にする上で重要な役割を果たしています。

これらの国々との比較は、日本が「非英語圏」という同じカテゴリーに属しながらも、英語が社会に浸透している度合いにおいて、大きな隔たりがあることを示しています。
日本も国際化が進む中で、英語の役割を再認識し、教育現場だけでなく社会全体で英語を使用する機会を意図的に創出していく必要があります。
アジアの隣国が示している成功事例は、日本にとって大きなヒントとなるでしょう。

日本が学ぶべき他国の成功要因

世界トップクラスの非英語圏諸国や、アジアの隣国の成功事例から、日本が英語力向上のために学ぶべき要因は多岐にわたります。
まず重要なのは、「実践的なコミュニケーション能力の重視」です。
文法や読解に偏重した学習ではなく、スピーキングやリスニングといったアウトプット能力を幼少期から体系的に育む教育への転換が求められます。

次に、「英語に触れる機会の圧倒的な増加」です。
メディアにおける英語の吹き替え文化を見直し、字幕による視聴を推奨することや、オンライン英会話、国際交流イベントへの積極的な参加を促す施策が有効です。
日常生活や職場で英語を使用する機会が少ないという日本の現状を打破し、英語が「使える道具」であるという認識を社会全体で共有することが重要です。

さらに、「間違いを恐れない学習文化の醸成」も成功の鍵です。
完璧主義による心理的ハードルが高いと指摘される日本人に対し、まずは「伝わること」を最優先する姿勢を促し、積極的に英語を使うことを奨励する環境作りが不可欠です。
他国の成功事例は、単なる語学教育の改善だけでなく、社会全体の英語に対する意識と環境を改革することの重要性を示唆しています。

データから読み解く、日本人の英語力の強みと弱み

従来の教育がもたらす「強み」

日本人の英語力は全体的に低いとされていますが、従来の英語教育が培ってきた特定の強みも存在します。
日本の英語教育は長年、文法や読解に重点を置いてきました。
この結果、多くの日本人は、複雑な英文の構造を分析する能力や、正確な文法知識、語彙の知識に関して、高い基礎力を持っている場合があります。

特に、難解な英文を正確に読み解く力は、学術論文の読解や専門書からの情報収集において、潜在的な強みとなり得ます。
「完璧主義」とされる国民性も、一度その心理的ハードルを乗り越えれば、正確でミスの少ない英語を習得しようとする原動力となる可能性を秘めています。
こうした基礎知識は、アウトプット能力と結びつけることで、非常に質の高い英語力へと発展する可能性を秘めているのです。

つまり、インプット能力の土台は比較的しっかりしていると言えるかもしれません。
この強みを活かし、いかにアウトプットへと繋げるかが、今後の日本人の英語力向上における重要なカギとなります。
既存の文法・読解力を、会話やライティングといった実践的なスキルへと橋渡しする教育や学習方法が求められています。

構造的な「弱み」とその背景

EF EPIのデータが示す低い英語力の背後には、複数の構造的な問題が横たわっています。
まず「教育政策の問題」として、従来の日本の英語教育が文法や読解に偏重し、実践的なスピーキングやリスニングのスキル育成を軽視してきた点が挙げられます。
さらに、入試制度が特定の形式に偏った学習を促し、実際のコミュニケーションで必要な能力が育ちにくい状況があります。

次に、「使用機会の少なさ」も大きな課題です。
日常生活や職場で英語を使う機会が限られているため、学習意欲の低下や実践力不足につながっています。
メディアで英語が吹き替えで放送されることも、英語に触れる機会を制限し、自然なリスニング力の向上を妨げています。

また、「学習方法の偏り」も指摘されており、日本人の学習者の7割がアプリや書籍などの自己学習ツールに頼る傾向がある一方、対面やオンラインの正規プログラムの受講者は世界平均より低いという調査結果もあります。
最後に、「完璧主義による心理的ハードル」です。
間違いを恐れる完璧主義が、英語を話すことへの心理的な障壁となり、実践的なコミュニケーション能力の向上を妨げているという指摘は、多くの日本人学習者に当てはまるでしょう。
これらの要因が複合的に絡み合い、日本人の英語力低下の一因となっています。

弱みを強みに変えるための視点

日本人の英語力の構造的な弱みを克服し、潜在的な強みへと転換するためには、発想の転換と具体的な行動が必要です。
まず、「実践機会の創出」が最重要です。
オンライン英会話や国際交流イベントへの積極的な参加を促し、日常生活や職場での英語使用を奨励する文化を醸成することで、「使用機会の少なさ」を打破できます。

次に、「教育のパラダイムシフト」が必要です。
文法や読解の基礎力を維持しつつ、スピーキングとリスニングに重点を置いたカリキュラムへの移行は必須です。
入試制度も、より実践的な英語能力を評価する方向へと見直すことで、学習者のモチベーションを高めることができます。

また、「完璧主義」という心理的ハードルに対しては、「エラーを恐れないマインドセット」の育成が不可欠です。
「間違えてもいい、まずは話してみる」という姿勢を奨励し、学習者が自信を持って英語を使えるような心理的安全性を確保する教育的アプローチが求められます。
これらの視点を取り入れることで、日本人の英語力は大きく飛躍する可能性を秘めています。

英語力向上のための具体的なステップ

教育現場での改革の方向性

日本の英語力向上には、教育現場での抜本的な改革が不可欠です。
最も重要なのは、「スピーキングとリスニングを重視したカリキュラムの導入」です。
従来の読み書き中心の教育から脱却し、実際に英語を使ってコミュニケーションする機会を増やさなければなりません。
具体的には、ディベートやプレゼンテーション、グループワークなど、アクティブラーニングを導入し、生徒が積極的に発話する場を増やすことが求められます。

また、「幼少期からの英語教育の開始」も効果的な対策の一つです。
子どもの脳は言語習得に非常に柔軟であり、早い段階から英語に触れることで、自然な形で英語の音やリズムに慣れ親しむことができます。
遊びを通じて英語を学ぶプログラムの導入や、外国人講師との交流機会を増やすことも有効でしょう。

さらに、大学入試制度の改革も、教育現場の変革を後押しする重要な要素です。
ペーパーテストだけでなく、面接やプレゼンテーションなど、実践的な英語コミュニケーション能力を評価する仕組みを導入することで、学習者もより実用的な英語学習に意欲的に取り組むようになるでしょう。
教育現場全体の意識と実践を変えることが、未来の日本人の英語力を左右します。

個人の学習者が取り組むべきこと

教育現場の改革を待つだけでなく、個人の学習者が自ら積極的に英語力向上に取り組むことも非常に重要です。
最も効果的なのは、「実践的な英語を使う機会を増やす」ことです。
オンライン英会話のレッスンを定期的に受講することは、スピーキングとリスニングの能力を効率的に鍛える上で非常に有効です。

また、国際交流イベントへの参加や、言語交換パートナーを見つけることも、生きた英語に触れる貴重な機会となります。
「英語漬け」の環境を意識的に作り出すことも効果的です。
例えば、海外の映画やドラマを字幕なしで視聴したり、英語のニュースやポッドキャストを日常的に聞いたりすることで、自然とリスニング力を向上させることができます。

自己学習ツールの活用も有効ですが、それに加えて対面やオンラインでの正規プログラムの受講を検討することで、より体系的かつ実践的な学習が可能になります。
何よりも、間違いを恐れずに積極的に英語を話す「度胸」を養うことが大切です。
まずは完璧でなくても伝わることを目指し、失敗を恐れずに挑戦し続ける姿勢が、個人の英語力を大きく伸ばす鍵となります。

テクノロジーと文化理解の活用

現代の英語学習において、テクノロジーは強力な味方となります。
AIを活用した発音矯正アプリや、単語・フレーズを効率的に学習できるスマートフォンアプリなど、学習をサポートするツールは豊富に存在します。
これらのテクノロジーを上手に活用することで、個人のレベルや学習スタイルに合わせたパーソナライズされた学習が可能になります。

また、オンラインでの国際交流プラットフォームを活用すれば、世界中の人々と手軽にコミュニケーションを取ることができ、実践的な英語使用の機会を大幅に増やすことができます。
英語のニュースサイトやYouTubeチャンネル、ポッドキャストなどを通じて、リアルタイムで世界の情報に触れることで、語学力だけでなく国際的な知識や視野も広げられます。

さらに、言語の背景にある「文化理解」も英語力向上の鍵となります。
単語や文法を覚えるだけでなく、英語圏の人々の思考様式や習慣、価値観を学ぶことで、より深いコミュニケーションが可能になります。
異文化理解は、相手の意図を正確に読み取り、自分のメッセージを効果的に伝える上で不可欠です。
テクノロジーを駆使しつつ、文化への好奇心を持つことで、より豊かで実践的な英語力を身につけることができるでしょう。

大学別英語力ランキングから見る教育現場の課題

大学卒業時の英語力:国際競争力の現状

日本の大学を卒業する学生たちの英語力は、国際的な視点で見ると依然として課題を抱えています。
EF EPIのデータが示す日本の低い英語力は、そのまま大学卒業生の国際競争力にも影響を及ぼします。
多くの学生が大学受験の段階で英語を学習しますが、その多くが入試対策に特化しており、実践的なコミュニケーション能力が十分に育たないまま卒業を迎えるケースが少なくありません。

この結果、日本の大学卒業生は、海外の大学を卒業した学生や、英語力が高いアジアの他国(シンガポールやフィリピンなど)の卒業生と比較して、グローバルビジネスや国際的な学術分野での活躍においてハンディキャップを負うことになります。
特に外資系企業や国際機関では、即戦力となる英語コミュニケーション能力が求められるため、日本の学生が活躍できる機会が限定される可能性があります。

大学教育が、学生が社会に出た後に直面するグローバルな課題に対応できる英語力を身につけさせる役割を果たせているか、現状では疑問符が付きます。
国際社会でリーダーシップを発揮できる人材を育成するためには、大学卒業時に求められる英語力の水準を明確にし、それを達成するための教育体制を強化することが急務です。

大学教育における英語学習の課題

日本の大学における英語学習には、いくつかの根本的な課題が存在します。
一つは、高校までの英語教育と同様に、「読み書き中心の受動的な学習スタイル」が大学でも継続されがちな点です。
多くの大学英語科目では、文法や長文読解、リスニングテストといった形式が中心となり、学生が実際に英語を使って発言したり、議論したりする機会が不足しています。

また、「入試制度が特定の形式に偏った学習を促し」ているという指摘は、大学入試にも当てはまります。
大学入試で測定される英語力が、実際のコミュニケーション能力とは必ずしも直結しないため、学生は入試のための英語学習に終始しがちです。
この結果、大学入学後も「受験英語」の延長線上にある学習が続き、本当に必要な実践力が育ちにくい状況が生まれます。

さらに、大学における英語教育の目標設定も課題です。
卒業要件としてTOEICのスコアが設定されている大学は多いですが、スコアだけを追い求める学習は、必ずしも会話力や表現力の向上に繋がるとは限りません。
大学は、学生が卒業後にグローバルな環境で活躍するための、より実用的な英語力を身につけさせるための教育カリキュラムと評価方法を再構築する必要があります。

グローバル化時代に対応する大学の役割

グローバル化が進む現代において、日本の大学は学生の英語力向上に対し、より積極的かつ戦略的な役割を果たすべきです。
まず、「英語を学ぶ目的を明確化する」必要があります。
単に単位取得のためだけでなく、国際的な視点を持つ専門家や研究者、ビジネスリーダーを育成するという強い意識を持って、英語教育に取り組むべきです。

具体的には、英語で専門科目を学ぶ「英語による授業(EMI: English Medium Instruction)」を増やすことが有効です。
これにより、学生は専門知識を深めながら、実践的な英語力を同時に養うことができます。
また、留学プログラムの充実や、海外からの留学生を積極的に受け入れ、学内に国際的な交流の場を増やすことも重要です。

さらに、キャリア教育と英語教育を連携させ、卒業後のキャリアパスを見据えた実践的な英語力を育成するプログラムを導入することも効果的です。
例えば、英語でのプレゼンテーションスキルや交渉術、ビジネスライティングなどを教える科目を取り入れることが考えられます。
大学が主体となって、学生が英語を「使える」環境を提供し、国際社会で通用する人材を育成することが、日本の未来を左右する重要な役割と言えるでしょう。