「昇給がないのは違法?」この疑問は、多くの労働者が一度は抱くものです。毎年頑張って働いていても給料が上がらない、あるいは周りは上がっているのに自分だけ、という状況に直面すると、不安や不満を感じるのは当然のことでしょう。

本記事では、昇給に関する法的な義務から、昇給できない人の特徴、さらには男女間の賃金格差といったデリケートな問題まで、詳しく解説していきます。あなたの疑問を解消し、より良い働き方やキャリア形成の一助となれば幸いです。

昇給がないのは違法?労働者の疑問に答えます

昇給は、日々の労働に対する正当な評価と感じる一方で、その仕組みは意外と知られていません。果たして、昇給がないことは法的に問題ないのでしょうか。

昇給は法律上の義務ではない?基本を解説

結論から言うと、法律上、企業に毎年昇給する義務は課されていません。昇給の有無や頻度は、原則として企業の裁量に委ねられています。そのため、昇給がないこと自体が直ちに違法となるわけではありません。賃金体系は、労働契約や就業規則に基づいて企業が定めるのが一般的です。

昇給しないことが問題になるケースとは

ただし、例外的に昇給しないことが問題となるケースも存在します。例えば、就業規則や労働契約で「毎年〇月に昇給する」といった明確な規定がある場合です。企業はこれらの規定を守る義務があるため、不履行は問題となり得ます。また、同一労働同一賃金の原則に反する場合も、昇給しないことが問題視される可能性があります。

就業規則や契約内容の重要性

自身の労働条件、特に昇給に関する規定については、入社時や定期的に就業規則や労働契約書をしっかり確認することが非常に重要です。もし昇給について具体的な記載があるにもかかわらず実施されない場合は、会社に確認する、あるいは労働基準監督署に相談することも検討できます。

昇給の義務とは?会社は昇給しなければならないのか

法律で昇給が義務付けられていないのはなぜでしょうか。企業の昇給に対する姿勢と、労働者の権利について掘り下げていきます。

昇給の法的義務がない理由

日本の労働基準法には最低賃金に関する規定はあるものの、企業が毎年従業員の賃金を上げなければならないという直接的な義務は明記されていません。これは、企業の経営状況や業績、個々の従業員の評価に基づいて、柔軟な賃金運用ができるようにするためです。多くの企業では、労使間の合意や就業規則で昇給の仕組みが定められています。

「同一労働同一賃金」原則と昇給の関係

「同一労働同一賃金」の原則は、同じ業務内容や責任を持つ労働者に対して、雇用形態に関わらず不合理な待遇差を設けてはならないというものです。この原則は、正社員と非正規社員の間だけでなく、同じ雇用形態であっても、不合理な昇給の有無や額の差が問題となる可能性があります。例えば、正社員は毎年昇給するのに、同じ業務内容の契約社員が一切昇給しないといったケースが該当します。

企業の裁量と労働者の権利

企業には昇給に関して一定の裁量が認められていますが、それは無制限ではありません。就業規則や労働契約に明記された昇給規定がある場合、企業はそれを遵守する義務を負います。労働者は自身の労働契約内容を理解し、不当な扱いに当たると感じた場合は、会社との対話や、必要に応じて外部機関への相談を通じて権利を主張することが重要です。

昇給できない原因と、昇給できない人の特徴

昇給は、個人の努力や貢献が評価される結果でもあります。では、昇給に繋がりやすい人とそうでない人にはどのような違いがあるのでしょうか。

昇給できない人の具体的な特徴

昇給に繋がりにくい人の特徴として、指示待ちで積極性がない点が挙げられます。自分の実力に自信がなく、与えられた仕事しかこなさない傾向は、やる気がないと見なされがちです。また、失敗を恐れて新しい仕事や多くの人と関わる仕事に消極的になることも、成長機会を逃し、結果として昇給を遠ざけます。

スキル不足や行動特性が評価にどう影響するか

昇給には、現在の業務遂行能力だけでなく、将来的な貢献が期待できるかどうかも評価されます。特に年収が一定額を超えると、マネジメント能力や周囲を巻き込む力が重要視されます。これらのリーダーシップや影響力が不足していると、高い評価を得にくく、昇給の機会が減少する可能性があります。自己成長への意欲や具体的な行動が評価に直結するのです。

勤怠・人間関係の重要性

意外に思われるかもしれませんが、勤怠状況の悪さも昇給に大きく影響します。遅刻や無断欠勤が多いと、仕事への責任感やプロ意識が低いと判断されかねません。また、職場での人間関係が円滑でない場合も、チームワークを重視する企業では評価が下がる原因となり、昇給の妨げとなることがあります。日々の真面目な勤務態度と良好な人間関係は、評価の土台となります。

昇給の逆?減給・減額の可能性と注意点

昇給がないだけでなく、給与が減らされる可能性も気になるところです。減給の条件や、もし減給されてしまった場合の対処法について見ていきましょう。

減給・減額とは?基本的な知識

昇給とは逆に、労働者の給与が一方的に引き下げられることを「減給」や「減額」と呼びます。通常、企業は就業規則や労働契約に基づき、懲戒処分や役職変更、あるいは会社の業績悪化などを理由に減給を行うことがあります。しかし、労働者の同意なしに不当な減給を行うことは原則として許されません。

減給が認められるケースと法的な制限

減給が法的に認められるのは、明確な理由と手続きがある場合です。例えば、就業規則に定められた懲戒処分としての減給、労働者の同意を得た上での降格に伴う減給、または会社の経営危機に伴う労使合意による賃金カットなどです。労働基準法では、懲戒処分としての減給には上限(一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない)が設けられています。

不当な減給への対処法

もし自身の減給が不当だと感じた場合は、まず会社に理由を明確に問い質し、説明を求めるべきです。それでも納得できない場合は、労働基準監督署や弁護士など、専門機関に相談することを検討しましょう。自身の権利を守るためにも、賃金明細や雇用契約書などの関連書類は大切に保管しておくことが重要です。

昇給の男女差は?実態と改善への動き

最後に、昇給における男女差という社会的な課題に目を向けます。日本の現状と、格差解消に向けた取り組みについて解説します。

日本の昇給率と平均昇給額の現状

日本の昇給率は、近年緩やかに上昇傾向にあります。2023年の日本の平均昇給率は2.94%でした。昇給額の平均は、企業全体で10,923円(2023年)とされています。ただし、企業規模による差は大きく、大企業では11,220円に対し、中小企業では8,328円という実態が見られます。

依然として存在する男女間の賃金格差

残念ながら、日本においては男女間の賃金格差が依然として存在しています。2022年の調査では、男性の月額賃金を100とした場合、女性は75.7という結果でした。この格差は2年連続での縮小ですが、まだ大きいと言えます。賃金格差の要因としては、勤続年数や学歴、職階における男女差だけでなく、業務内容や職務遂行能力における評価の差も指摘されています。

格差解消に向けた企業の取り組みと今後の展望

男女間の賃金格差解消に向けて、企業は公平で客観的な評価制度の確立や、育児休業取得後のキャリア復帰支援など、ワークライフバランスの推進が求められています。また、性別によるイメージに依存しない文化作りも重要です。政府も情報開示の義務化を進めるなど、社会全体でこの問題に取り組む動きが加速しており、今後の改善が期待されます。