「そろそろ給料上がらないかな…」「他の会社ってどれくらい昇給してるんだろう?」

中小企業にお勤めのあなたなら、一度はこんな風に考えたことがあるのではないでしょうか?物価高騰が続く今、昇給への期待は高まるばかりですよね。

本記事では、中小企業における昇給額の平均を、年代、学歴、時給など様々な角度から徹底解説します。2023年〜2025年の最新データに基づき、具体的に月々いくら給料が増えるのか、そして昇給を勝ち取るための交渉術まで、分かりやすくご紹介します。

あなたの頑張りが正当に評価され、理想の給与アップを実現するための一助となれば幸いです。

昇給額とは?基本を理解しよう

昇給額の定義と種類

昇給額とは、文字通りあなたの給与が「いくら」増えるかを示す金額です。これにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる背景や目的を持っています。

最も一般的なのは、個人の勤務年数や実績、評価に応じて毎年行われる「定期昇給」です。これは個人の成長や貢献度を反映するもので、一般的に多くの企業で導入されています。

一方、「ベースアップ(ベア)」は、企業全体の業績向上や物価上昇への対応として、全従業員の基本給を一律に引き上げることを指します。近年は物価高騰を受け、ベースアップの動きが活発化しています。

その他、特定の成果を上げた際や役職に就いた際に支払われる「特別昇給」などもあります。2023年の昇給率の平均は3.67%とされており、単に額面だけでなく、前年度からの上昇率も重要な指標となります。

なぜ昇給するのか?その背景

企業が昇給を行う背景には、様々な要因があります。最も直接的なのは、個人の働きぶりや会社への貢献を評価し、モチベーションを高めることです。

また、企業の業績が好調であれば、従業員への利益還元として昇給が実施されることも少なくありません。さらに、労働市場での競争力を維持し、優秀な人材を確保・定着させるためにも、適切な昇給は不可欠です。

近年では、日本全体で深刻化する物価上昇に対応するため、従業員の生活水準を維持・向上させる目的で昇給が行われるケースも増加しています。実際、2023年には89.1%の企業が昇給を実施、または実施予定と回答しており、これは前年比で3.4%の増加です。

2023年の中小企業の昇給額平均が8,012円(3%アップ)と、前年の5,036円(1.92%アップ)と比較して大幅な増加を見せたのも、こうした複合的な要因が背景にあると言えるでしょう。

昇給額と昇給率の違い

昇給額と昇給率は、どちらも給与の増加を示す指標ですが、その表現方法と意味合いが異なります。

昇給額は、基本給や月給が「具体的な金額でいくら増えたか」を示します。例えば、「月給が5,000円上がった」という場合の5,000円が昇給額です。これは、毎月の手取り額に直接影響するため、従業員にとっては分かりやすい指標と言えるでしょう。

一方、昇給率は、「元の給与に対して何パーセント増えたか」を示す割合です。例えば、月給20万円の人が5,000円昇給した場合、昇給率は「(5,000円 ÷ 200,000円) × 100 = 2.5%」となります。昇給率は、物価上昇率や経済成長率などと比較することで、実質的な賃上げ状況を把握する際に用いられます。

企業が昇給を発表する際には、両方の数値が示されることが多く、どちらも従業員の給与アップを測る上で重要な情報です。例えば、2023年の中小企業の昇給額平均が8,012円3%アップというデータは、額と率の両方を示している好例です。

中小企業の昇給額平均:年代・学歴・働き方でどう変わる?

2023-2024年の昇給トレンド:過去最高の伸び

近年の昇給トレンドは、中小企業においても顕著な伸びを見せています。特に2023年は、中小企業の昇給額平均が8,012円(3%アップ)と、前年の5,036円(1.92%アップ)と比較して大幅な増加を記録しました。

この背景には、コロナ禍からの経済回復、物価高騰、そして人手不足に伴う賃上げ競争が挙げられます。昇給を実施した企業の割合も89.1%と非常に高く、多くの企業が賃上げに踏み切ったことが分かります。

さらに、2024年度の昇給動向を見ると、この流れは加速しています。中小企業の全年齢平均で、男女ともに基本給が約10,000円の昇給となりました。

具体的には、男性基本給が10,000円(4.1%増)、女性基本給が10,000円(5.6%増)と、前年をさらに上回る勢いです。大企業(平均11,220円)との差はまだあるものの、中小企業も賃上げに力を入れている現状がうかがえます。

年代別の昇給額:若い世代ほど伸び率が高い?

昇給額は、年代によって大きく異なる傾向があります。一般的に、若い世代ほど昇給額が大きい傾向が見られます。

2024年4月昇給組のデータを見てみましょう。

  • 男性20代: 基本給12,050円
  • 男性50代: 基本給6,450円
  • 女性20代: 基本給11,650円
  • 女性50代: 基本給5,625円

このデータから、20代の若手社員が50代のベテラン社員に比べて、約2倍の昇給額を得ていることが分かります。これは、若手社員がスキルや経験を急速に積み上げ、企業への貢献度が年々高まる時期であるためと考えられます。

特に30代は、役職に就くタイミングと重なることも多く、成果次第で昇給の幅が広がる傾向があります。30代の昇給額の目安は5,000円~7,000円程度とされていますが、個人の実績によってはさらに大きな昇給も期待できるでしょう。

経験を積むにつれて昇給カーブは緩やかになる傾向がありますが、管理職への昇進などで再び大きく昇給するケースもあります。

学歴・雇用形態による昇給額の違い

昇給額は、学歴や雇用形態によっても違いが生じることがあります。

学歴に関しては、大卒と高卒では初任給に差があるのが一般的ですが、その後の昇給カーブも異なることがあります。大卒の方がより専門的な知識やスキルを求められる職種に就くことが多く、それに伴い昇給額も高くなる傾向が見られます。

ただし、学歴よりも個人の実績や貢献度を重視する企業も増えており、高卒でも高いスキルや経験を持つ人材は、十分な昇給を期待できる時代になっています。

次に、雇用形態による違いです。正社員は定期昇給やベースアップの対象となることがほとんどですが、契約社員やパート・アルバイトといった非正規雇用の場合、昇給の仕組みは企業によって様々です。

時給制の場合、労働基準法の最低賃金引き上げに加え、企業の判断で時給がアップすることがあります。また、正社員登用制度を活用することで、昇給の機会を増やすことも可能です。

いずれにせよ、自身の学歴や雇用形態に関わらず、日々の業務で成果を出し、スキルアップを継続することが、昇給への近道となります。

昇給で月々いくら増える?具体的な金額の目安

2024年度の最新昇給額でシミュレーション

2024年度の最新データに基づいて、あなたの月々の給与がどれくらい増えるのかを具体的に見ていきましょう。中小企業の平均的な昇給額は、男女ともに基本給で約10,000円という大きな数字が出ています。

もしあなたの基本給が10,000円上がると、年収ベースでは12万円の増加となります。ただし、手取り額は社会保険料(健康保険、厚生年金)や所得税、住民税が差し引かれるため、額面通りには増えません。

例えば、月給25万円の人が10,000円昇給して26万円になった場合、手取りは約7,000円~8,000円程度の増加になることが多いです。社会保険料は給与額によって変動し、税金も同様に増えるため、実質的な手取り増加額は額面よりも少なくなることを理解しておきましょう。

参考情報では、男性の所定内賃金が10,800円増、女性が10,350円増とされており、これは基本給に加え、各種手当なども含めた金額です。この増加額がそのまま手取りに反映されるわけではない点に注意が必要です。

年代・性別で見る昇給による影響

昇給による家計への影響は、年代や性別によっても異なります。

前述の通り、20代の昇給額は他の年代に比べて大きく、男性20代で基本給12,050円、女性20代で11,650円の増加が見込まれます。若いうちにこれだけの昇給があれば、将来の貯蓄や自己投資に回せる資金が増え、キャリア形成にも大きく寄与するでしょう。

例えば、一人暮らしの20代であれば、月々1万円強の昇給は、生活のゆとりや趣味に使えるお金が増えることを意味します。スキルアップのための書籍購入やセミナー参加など、自己成長のための投資もしやすくなるでしょう。

一方、50代になると昇給額は緩やかになり、男性50代で6,450円、女性50代で5,625円程度です。この年代は子どもの教育費や住宅ローンの返済など、大きな支出を抱えていることが多いため、昇給額が生活に与える影響は20代とは異なります。

それでも、着実な昇給は老後の資金計画やライフイベントへの備えとして、非常に重要な意味を持ちます。

昇給額を最大限に活かす方法

せっかく勝ち取った昇給額、賢く活用して将来のために役立てましょう。

まず考えるべきは、「貯蓄」や「投資」です。昇給した分を全額使ってしまうのではなく、一部でも毎月積み立てる習慣をつけることで、将来の大きな資産形成に繋がります。

特に、インフレが続く現代においては、ただ貯蓄するだけでなく、NISAやつみたてNISAなどの非課税制度を活用した投資も検討する価値があります。

次に、「自己投資」です。昇給したお金を、自身のスキルアップやキャリアアップのために使うのも有効な手段です。

  • 資格取得のための学習費用
  • ビジネス書や専門書の購入費用
  • セミナーや研修への参加費用

これらは、さらなる昇給やキャリアチェンジの機会を生み出す可能性があり、長期的に見れば最もリターンが大きい投資となることもあります。

もちろん、日々の生活を豊かにするために使うことも大切です。ただし、昇給によって生活水準を急激に上げてしまうと、その後の家計管理が難しくなることもあるため、バランスを意識することが重要です。

昇給交渉を成功させるためのポイント

自分の市場価値を把握する

昇給交渉を成功させるためには、まず客観的に自身の市場価値を把握することが重要です。漠然と「給料を上げてほしい」と伝えるだけでは、なかなか希望は通りません。

自身の市場価値とは、同業他社や同業界の類似職種における給与水準、そして自身のスキルや経験がどれほどの価値を持つかということです。

インターネット上の求人情報や業界レポート、転職エージェントの情報を活用し、あなたのスキルセットが外部でどれくらいの年収に相当するのかを調べてみましょう。これにより、交渉の際に具体的な根拠を示すことができます。

また、これまでの仕事で培ってきた専門スキル、語学力、マネジメント経験などもあなたの市場価値を高める要素です。これらを整理し、自信を持ってアピールできるよう準備しておくことが、交渉の第一歩となります。

具体的な実績と貢献をアピールする

昇給交渉において最も説得力を持つのは、あなたの「具体的な実績」と「会社への貢献」です。

単に「頑張っています」と伝えるのではなく、どれだけの成果を出してきたのかを数値で示しましょう。例えば、

  • 「〇〇プロジェクトで売上を〇%向上させた」
  • 「業務改善により年間〇万円のコスト削減に成功した」
  • 「新規顧客を〇件獲得し、事業拡大に貢献した」
  • 「チームリーダーとして〇人のメンバーを育成し、生産性を〇%向上させた」

といったように、具体的な数字やエピソードを交えて説明することで、あなたの貢献度を明確に伝えることができます。

これらの実績は、普段から業務日報や月次報告書などで記録しておくと、いざという時にスムーズに提示できます。交渉の際には、これらの情報をまとめた資料を作成し、上司に提示するのも効果的です。客観的なデータに基づいた交渉は、上司も納得しやすくなります。

交渉のタイミングと伝え方

昇給交渉は、タイミングと伝え方が非常に重要です。

最も適切なタイミングは、個人の人事評価の時期や、会社の決算後など、企業の業績が明確になり、人事異動や給与改定の検討が行われる時期です。会社の業績が好調な時期であれば、交渉が通りやすくなる傾向があります。

交渉を切り出す際は、まずは上司に「昇給についてご相談したい」とアポイントを取り、真剣に話し合う姿勢を見せましょう。伝え方としては、感情的にならず、論理的かつ建設的に話すことが肝要です。

具体的な希望額を伝える際は、その根拠として前述した市場価値や具体的な実績を提示します。例えば、「これまでの実績と業界の平均水準を鑑み、月給〇円への昇給を希望します」といった形で、丁寧かつ明確に伝えましょう。

不満をぶつけるのではなく、「今後も会社に貢献していきたい」という前向きな姿勢を示すことで、上司もあなたの意見に耳を傾けやすくなります。もし一度で希望が通らなくても、今後の目標設定や評価基準について確認し、次回の交渉に繋げることも大切です。

昇給についてよくある質問(Q&A)

Q1: 昇給がなくても賃金が上がることはありますか?

はい、昇給がなくても賃金が上がるケースはあります。

代表的なのは、「役職手当」や「資格手当」の支給です。昇進して役職がつけば役職手当が、特定の資格を取得すれば資格手当が支給され、月々の給与が増えることがあります。これらは基本給の昇給とは異なりますが、総支給額を増やす効果があります。

また、「残業時間の増加」も一時的に給与を増やす要因となります。もちろん、残業は健康面やプライベートに影響を及ぼすため、望ましい方法とは限りませんが、一時的な収入増に繋がることは事実です。

さらに、会社全体の業績が向上し、従業員への利益還元として「賞与(ボーナス)」が増額されることもあります。これは月々の給与とは別ですが、年収ベースで見れば賃金アップに繋がります。

これらの要素を把握し、昇給だけに頼らず多角的に賃金アップを目指すことも可能です。

Q2: 2025年以降の昇給見通しはどうなっていますか?

2025年以降も、中小企業における賃上げの動きは続くと見られています。参考情報によると、2025年度に賃上げを「実施する」と回答した企業は85.2%に上り、これは2016年度以降で最高を更新する見込みです。

特に大企業では92.8%が実施予定である一方、中小企業でも84.6%が賃上げを計画しており、企業規模に関わらず賃上げへの意欲が高いことが伺えます。

賃上げ率の見込みとしては、2025年計画で2.90%とされており、前年同時期の調査結果(2024年計画2.58%)を上回る見込みです。これは、人手不足や物価高騰が続く中で、企業が従業員の待遇改善に前向きに取り組む姿勢を示していると言えるでしょう。

労働組合の連合は、2025年の春闘方針で中小企業に「6%以上」の賃上げを掲げています。調査では、これに対し9.1%の企業が「6%以上」の賃上げを見込んでいるという結果も出ており、今後の動向が注目されます。

全体として、2025年以降も賃上げの機運は高まっていくと予想されます。

Q3: 昇給以外で年収を増やす方法はありますか?

昇給以外で年収を増やす方法はいくつか考えられます。本業の給与アップが難しい場合でも、以下のような選択肢を検討してみましょう。

  • 副業・兼業: 会社の規定に反しない範囲で、自身のスキルや特技を活かして副業を始めることで、収入源を増やすことができます。Webライティング、プログラミング、デザイン、オンライン講師など、様々な選択肢があります。
  • 転職: より給与水準の高い企業や、自身のスキルがより高く評価される企業へ転職することで、年収を大幅にアップさせることも可能です。転職市場の動向を常にチェックし、自身の市場価値を高めておくことが重要です。
  • 資格取得・スキルアップ: 業務に直結する専門資格の取得や、ITスキル、語学力などの向上は、社内での評価アップや手当支給に繋がり、また転職時のアピールポイントにもなります。
  • 投資・資産運用: 給与以外の収入源として、株式投資、投資信託、不動産投資などを始めることも考えられます。ただし、リスクも伴うため、しっかりと勉強し、専門家のアドバイスも参考にしながら慎重に進めることが大切です。

これらの方法を組み合わせることで、昇給だけに頼らず、年収を増やすチャンスを広げることができます。ご自身の状況や目標に合わせて、最適な方法を見つけてみてください。