「昇給」は、働く人にとって最大の関心事の一つですよね。毎年の頑張りが給与に反映されることは、モチベーション維持にも直結します。

しかし、「いつ昇給するの?」「どうすれば昇給できるの?」「社会保険料はどうなるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、新卒からベテランまで、年代別の昇給のタイミング、昇給の仕組み、そして社会保険料への影響まで、昇給に関するあらゆる疑問を徹底的に解説します。

あなたのキャリアアップと賢いお金の管理に役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までお読みください。

入社1年目から3年目:昇給の基礎知識

新卒・若手社員の昇給事情

入社したばかりの新卒や入社数年の若手社員にとって、最初の昇給は大きな節目です。多くの企業では、新卒入社後、最初の1年~2年は昇給がないか、わずかな昇給に留まるケースもあります。

これは、まだ基本的な業務習得段階であるため、評価が定まっていないことが理由の一つです。しかし、入社3年目あたりから、定期昇給考課昇給(査定昇給)の対象として、本格的な給与改定が始まる企業が増えてきます。

定期昇給は、勤続年数に応じて自動的に給与が上がる仕組みで、若手のうちは特に恩恵を受けやすいでしょう。一方、考課昇給は個人の業績や勤務態度が評価され、給与に反映されるものです。

若手のうちは、目の前の業務に真摯に取り組み、積極的にスキルを習得し、成果を出すことが昇給への近道となります。

昇給額の平均と期待値

若手社員が具体的にどれくらいの昇給を期待できるのか、気になるところですよね。全体の平均値を見ると、2023年の平均昇給額は10,923円というデータがあります。また、別の調査では7,864円という数字も出ています。

ただし、これは全年代・全企業の平均です。特に、基本給が上がった人の平均昇給額は14,701円で、1~3万円未満の人が48.2%を占めているという興味深いデータもあります。

若手社員の場合、一度の昇給で数千円から1万円程度の昇給が一般的ですが、企業規模や業績、個人の評価によって大きく変動します。

大手企業の方が昇給額や昇給率が高い傾向にあり、2024年のデータでは大企業の平均昇給額は19,480円、中小企業は10,420円と、約2倍の差があります。若手のうちは、自身の市場価値を高める努力をすることが、将来的な大きな昇給につながるでしょう。

早期昇給のための行動と戦略

「早く昇給したい」と考える若手社員は多いでしょう。早期昇給のためには、単に指示された業務をこなすだけでなく、能動的な行動が求められます。

具体的には、「資格取得」「スキルアップ」は分かりやすいアピールポイントとなります。業務に関連する資格取得は、専門性を高め、会社への貢献度を示す具体的な証拠となります。

また、新しい業務や困難なプロジェクトに積極的に手を挙げ、成果を出すことも重要です。上司との定期的な面談を通じて、自身の目標設定と進捗を共有し、評価されるべきポイントを明確に伝えることも効果的です。

「自ら課題を見つけ、改善提案を行う」といった主体的な行動は、若手社員の中でも特に目を引くでしょう。入社数年で実績を積み重ねることは、その後のキャリアを大きく左右する重要な期間となります。

40代・50代の昇給:ベテランだからこそのポイント

ベテラン社員の昇給の現実

40代・50代のベテラン社員になると、昇給の考え方やタイミングは若手時代とは大きく変わってきます。若手のうちは、定期昇給や勤続年数による自動昇給の恩恵を受けることが多いですが、この年代になるとその影響は小さくなり、給与の伸びは緩やかになる傾向があります。

特に、役職が一定の段階に達すると、定期昇給だけでの大きな賃上げは難しくなります。この年代での昇給は、「考課昇給(査定昇給)」「特別昇給」、そして「昇進・昇格」が主な要因となります。

会社の業績への貢献度や、若手育成などマネジメント能力がより厳しく評価されるため、これまでの経験とスキルをいかに発揮し、組織全体の成果に結びつけるかが重要になります。

経験とスキルを活かした昇給戦略

ベテラン社員が昇給を目指すには、自身の豊富な経験と培ってきたスキルを最大限に活かす戦略が必要です。単に業務をこなすだけでなく、「部門の目標達成への具体的な貢献」「新たな事業・プロジェクトの立ち上げ」など、より上位の視点での成果が求められます。

また、若手社員の指導・育成を通じて、組織全体の生産性向上に寄与することも重要な評価ポイントです。マネジメント能力リーダーシップを発揮し、チームや部門を成功に導くことで、昇給や昇格のチャンスが生まれます。

専門性の高い職種であれば、市場価値の高いスキルや知識を常にアップデートし、社内外でのプレゼンスを高めることも有効です。企業によっては、難易度の高い資格取得研修が昇給・昇格の条件となる場合もあります。

役職定年とセカンドキャリア

一部の企業では、40代後半から50代にかけて「役職定年」制度が導入されていることがあります。これは、一定の年齢に達すると役職を解かれ、給与が減少する可能性がある制度です。

このような状況に備え、ベテラン社員は自身のキャリアパスを早期に検討する必要があります。役職定年を機に、専門職としてさらにスキルを磨く道や、「セカンドキャリア」として異業種・異職種への転職、独立・起業を考えるケースもあります。

昇給の頭打ちを感じ始めたら、社内での新たな役割(例:専門職、プロジェクトリーダーなど)を探るか、あるいは外部に目を向け、自身の経験が活かせる場を模索することも重要です。

人生100年時代において、この年代でのキャリア戦略は、その後の人生設計に大きな影響を与えるため、慎重かつ戦略的に取り組むことが求められます。

昇給はいつ?4月・6月・7月・8月の疑問に答えます

最も一般的な昇給タイミング:4月

多くの日本企業で最も一般的な昇給のタイミングは「4月」です。これは、年度が替わる新年度に合わせて、人事異動や組織体制の見直しが行われるため、それに伴い給与改定も実施されることが多いためです。

特に、「年1回」の昇給制度を採用している企業では、ほぼ例外なく4月に昇給が行われます。この4月の昇給は、主に定期昇給考課昇給が含まれることが多く、従業員にとっては自身の評価が給与に反映される重要な時期となります。

3月までの評価期間を経て、4月からの新年度で新たな給与が適用されるため、もし昇給を期待している場合は、年度末までの働き方が特に重要になります。

4月以外の昇給タイミングとその理由

4月が一般的である一方で、企業によっては4月以外のタイミングで昇給が行われることもあります

例えば、「年2回」の昇給制度を採用している企業では、「4月と10月」に昇給が行われるケースが多く見られます。これは、半期ごとの評価サイクルに合わせて給与を見直すためです。

その他にも、会社の会計年度が1月始まりであれば「1月」に、株主総会後の取締役会で決定される場合は「7月」に昇給が行われる企業もあります。

また、会社の業績が著しく好調な時や、特定のプロジェクトで大きな成果を出した際などには、時期を定めない「臨時昇給」が行われることもあります。資格取得やスキルアップに応じて随時昇給する企業もあります。

これらのタイミングは、企業の就業規則や給与規定によって異なるため、ご自身の会社の規定を確認することが最も確実です。

昇給時期を把握し、準備する

昇給のタイミングを正確に把握することは、自身のキャリアプランを立てる上で非常に重要です。まずは、ご自身の会社の就業規則給与規定を確認し、昇給が年に何回、いつ行われるのかを明確にしましょう。

また、人事評価のサイクルも把握しておくことが大切です。例えば、4月昇給であれば、その前の半年間や1年間が評価期間となることが多いです。この評価期間中に、具体的な目標を設定し、それを達成するための行動計画を立て、実行することが昇給につながります。

上司との定期的な面談を通じて、自身のパフォーマンスや貢献度をアピールし、昇給への意欲を伝えることも効果的です。計画的に準備を進めることで、漠然とした不安を解消し、より具体的な昇給の可能性を高めることができるでしょう。

昇給の仕組みと社会保険料への影響

昇給の種類とそれぞれの特徴

昇給と一口に言っても、実はいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

昇給の種類 特徴
定期昇給 毎年決まった時期(多くは4月)に、勤続年数や年齢に応じて行われる昇給。
ベースアップ 個々の成績に関係なく、全従業員の基本給を一律に引き上げる制度。物価上昇や企業業績向上に伴う。
自動昇給 年齢や勤続年数などの客観基準に基づき、能力・業績に関係なく一律に昇給。
考課昇給(査定昇給) 従業員の業績や勤務態度などの評価結果に基づいて行われる昇給。
臨時昇給 特定の時期を定めず、企業の業績好調時などに臨時で行われる昇給。
特別昇給 特別な功労や実績を上げた従業員に対し、昇進・昇格と同時に実施されることが多い。

これらの種類は単独で実施されることもあれば、組み合わされて行われることもあります。ご自身の会社の昇給制度を理解することで、どのような努力が昇給につながるのかが明確になります。

昇給が社会保険料に与える影響

昇給は手取りが増える嬉しい出来事ですが、同時に社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)にも影響を与えることを忘れてはいけません。

社会保険料は、「標準報酬月額」という基準に基づいて計算されます。この標準報酬月額は、基本給だけでなく、各種手当(残業手当、通勤手当など)を含んだ総支給額を基に決定されます。

昇給によって給与が大幅に上がると、標準報酬月額が改定され、結果として社会保険料も上昇します。特に、年1回の定期昇給であれば、通常は9月に標準報酬月額が改定され、その年の9月分(10月支給の給与から天引き)から新しい社会保険料が適用されます。

しかし、昇給によって給与が大幅に変動し、これまでの標準報酬月額と2等級以上の差が生じた場合、「随時改定」(通称:固定的賃金の変動による改定)が行われることがあります。これは、昇給月から3ヶ月間の平均給与を基に、4ヶ月目から社会保険料が改定される仕組みです。

手取り額を計算する際は、社会保険料の増加も考慮に入れることが重要です。

昇給額の計算と実質手取り

昇給額は、「昇給後の基本給 – 昇給前の基本給」で簡単に計算できます。また、昇給率は以下の計算式で求められます。

昇給率 = (昇給後の基本給 – 昇給前の基本給) ÷ 昇給前の基本給 × 100

例えば、基本給が20万円から21万円に昇給した場合、昇給額は1万円、昇給率は(10,000 ÷ 200,000) × 100 = 5% となります。

しかし、この昇給額がそのまま手取りに反映されるわけではありません。前述の社会保険料に加え、所得税や住民税も給与額に応じて変動します。

昇給によって所得が増えると、これらの税金も増えるため、実際に手元に残る金額(手取り)は、額面上の昇給額よりも少なくなります。

昇給は喜ばしいことですが、手取りが思ったより増えないと感じることもあります。家計の計画を立てる際は、額面だけでなく、社会保険料や税金の影響を考慮した実質手取り額で考えることが賢明です。

昇給の目標設定とキャリアアップのヒント

昇給目標の具体的な立て方

漫然と「昇給したい」と考えるだけでなく、具体的な目標を設定することが昇給への第一歩です。目標設定にはSMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限付き)を活用すると効果的です。

例えば、「次回の昇給で基本給を1万円上げたい」という目標に対し、「そのためには、○○プロジェクトで目標を20%上回る成果を出し、さらに○○の資格を取得する。期限は次回の評価期間末まで」といった形で具体化します。

自身の強み弱みを把握し、会社が求めるスキルや役割と照らし合わせながら、実現可能な目標を設定しましょう。

また、上司との定期的な面談で、自身の目標を共有し、達成へのアドバイスを求めることも重要です。目標達成に向けた進捗を可視化し、評価者と認識を共有することで、昇給の可能性が高まります。

キャリアアップと連動した昇給戦略

昇給は単に給与が上がるだけでなく、自身のキャリアアップと密接に連動しています。長期的な視点でのキャリアプランを立て、それと昇給戦略を結びつけることが重要です。

具体的には、将来就きたい役職や専門分野を定め、そこに到達するために必要なスキル経験資格をリストアップします。そして、それらを習得するための計画を立て、日々の業務や自己学習に取り入れていくのです。

例えば、マネジメント職を目指すなら、チームリーダーの経験を積んだり、プロジェクトマネジメントの研修を受けたりすることが昇給・昇格につながります。

また、社内での昇給・昇格が見込めない場合や、より高い報酬を求める場合は、転職も一つの選択肢となります。自身の市場価値を高め、それを評価してくれる企業を探すことも、キャリアアップと昇給を実現する有効な手段です。

上司との交渉術と自己アピールの重要性

昇給の評価は、多くの場合、上司によって行われます。そのため、上司との良好な関係を築き、自身の貢献度成果を適切にアピールすることが極めて重要です。

評価面談の場では、単に「頑張りました」と伝えるだけでなく、具体的なデータや実績を提示し、それが会社にもたらした利益や効果を明確に説明しましょう。

例えば、「○○プロジェクトでコストを15%削減しました」「新規顧客を20%増加させました」といった具体的な数字は、説得力が増します。

また、昇給を希望する意思を率直に伝えることも大切ですが、それは会社の業績や自身の評価に基づいて、論理的かつ建設的な姿勢で行うべきです。

日頃から目標達成に向けて努力し、成果を積み重ねることで、上司もあなたの昇給を後押ししやすくなります。自己アピールは、自分の価値を正しく評価してもらうための重要なスキルです。