概要: 退職や転職を検討している方にとって、ボーナスをいつ受け取るかは重要なポイントです。本記事では、ボーナスをもらってから退職・転職する際の条件、在籍期間との関係、そして会社都合や自己都合によるボーナス支給の注意点について詳しく解説します。
ボーナス(賞与)をもらってから退職したいと考える人は多いですが、ボーナス支給の権利や、退職のタイミングについては、会社の就業規則によって大きく左右されます。ここでは、ボーナスを受け取ってから円満に退職・転職するためのポイントを徹底解説します。
ボーナス支給日と退職・転職のタイミング:もらえる条件とは?
ボーナス支給の基本的なルールと「在籍要件」
一般的に、ボーナスは「支給日に会社に在籍している社員」に対して支払われるルールになっています。つまり、ボーナス支給日より一日でも早く退職してしまうと、原則としてボーナスは支給されません。
これは、ボーナスが単なる過去の労働の対価としてだけでなく、将来への期待や会社への貢献意欲なども加味して支給される性質があるためです。ボーナス支給に関する法的な義務はなく、その支給条件は、会社の就業規則や労働契約で定められていることがほとんどです。
したがって、まずはご自身の会社の就業規則を確認することが何よりも重要となります。ここにボーナス支給に関する詳細が記載されており、それが支給されるかどうかの第一の判断基準となります。
就業規則による例外と具体的な確認ポイント
「支給日に在籍していること」が原則ですが、就業規則によっては例外的な条件が定められている場合もあります。
- 例えば、「賞与支給月の末日時点で在籍している人に賞与を支給する」といった記載があれば、支給日当日に退職する人には支給されないことになります。
- 逆に、「支給日の1ヶ月前に在籍していること」とあれば、支給日前に退職してもボーナスを受け取れる可能性があります。
このように、会社のルールによってボーナスがもらえるかどうかの条件は大きく変わるため、必ず就業規則の「賞与(ボーナス)」に関する項目を細部まで確認してください。もし就業規則にボーナス支給に関する具体的な規定がない場合は、会社の判断で支給されない可能性もあるため、注意が必要です。
賞与の「査定期間」と「支給対象期間」を理解する
ボーナスは通常、過去の一定期間(査定期間)の業績や個人の評価に基づいて支給額が決定されます。この査定期間と、実際にボーナスが支払われる支給日は必ずしも一致しません。
例えば、夏のボーナスの場合、査定期間が前年の10月から今年の3月まで、支給日が6月や7月というケースが一般的です。もしこの査定期間中に退職の意思を伝えてしまうと、「将来の貢献が見込めない」と判断され、評価に影響し、ボーナス額が減額されてしまう可能性があります。
支給日だけでなく、査定期間やその評価方法についても就業規則で確認し、ボーナスを満額受け取るための戦略を立てることが賢明です。
在籍期間がボーナスに影響?退職・転職時の確認事項
退職意思表示の「タイミング」がボーナス額を左右する理由
ボーナスは、過去の労働に対する対価であると同時に、将来の貢献への期待も込めて査定されることがあります。そのため、退職が決まっている従業員に対しては、将来的な貢献が期待できないと判断され、支給額が減額される可能性があります。
このようなリスクを避けるためには、ボーナス支給後に退職の意思を表明するのが、満額を受け取るためのより確実な方法とされています。支給前に退職の意思を伝えると、評価に影響し、減額につながるケースが少なくありません。
実際、ある調査では、20代の33.9%が「賞与後1ヶ月以上経ってから退職意思を伝える」と回答しており、「賞与をもらってすぐに辞めたと思われたくない」「賞与後すぐに申し出るのは気が引ける」といった心理が背景にあることがわかります。
転職活動とボーナス支給スケジュールの戦略的連携
ボーナスを満額受け取り、かつ円滑に転職を進めるためには、転職活動のスケジュールとボーナス支給日を戦略的に連携させる必要があります。
例えば、夏のボーナスが6月〜7月に支給される場合、逆算して4月頃に転職活動を開始し、5月末までには内定を獲得しておくのが理想的な流れです。これにより、ボーナス支給後に安心して退職の意思を伝え、次のステップに進むことができます。ただし、内定から入社までの期間が長すぎると、企業側が待ってくれない可能性もあるため、長くても3ヶ月以内を目安に調整することが重要です。
自身の希望する入社時期とボーナス支給日を考慮し、計画的に転職活動を進めましょう。
円満退職のための「引き継ぎ期間」確保の重要性
ボーナス支給後に退職する場合でも、円満な退職を実現するためには、十分な引継ぎ期間を設けることが不可欠です。突然の退職は、同僚や会社に大きな負担をかけることになり、自身の評価や退職後の人間関係にも悪影響を及ぼしかねません。
理想的には、退職日の少なくとも1ヶ月〜2ヶ月前には退職の意思を伝え、業務の引継ぎを計画的に進めるべきです。担当業務のマニュアル作成や後任者への丁寧な説明を心がけ、会社に残る人たちが困らないように配慮しましょう。
円満退職は、あなたの今後のキャリアにとっても大切な要素です。有給休暇の消化計画も忘れずに考慮に入れ、最終出社日から逆算してスケジュールを組んでください。
ボーナスをもらってから退職・転職するメリット・デメリット
最大のメリット:経済的な安定と退職後の安心感
ボーナスを受け取ってから退職する最大のメリットは、何といっても経済的な安定です。まとまった資金があることで、転職活動中の交通費や面接のための準備費用、もし転職先がすぐに決まらなかった場合の生活費など、様々な支出に対応できる余裕が生まれます。
特に、次の仕事が見つかるまでの期間に不安を感じることなく、じっくりと自分に合った転職先を探せる精神的な安心感は非常に大きいでしょう。退職後の急な出費にも対応できるため、生活の質を維持しながら次のキャリアへスムーズに移行することが可能になります。
また、住宅ローンや子どもの教育費など、固定費がかさむ場合でも、ボーナスが緩衝材となり、家計の急な悪化を防ぐことができます。
考慮すべきデメリット:退職の意思表示の遅れと引き継ぎの難しさ
ボーナスをもらってから退職する計画には、いくつかのデメリットも存在します。まず、ボーナス支給を待つことで、退職の意思表示が遅れてしまい、結果的に次の職場の入社希望時期との兼ね合いが難しくなる
可能性があります。特に人気の職種や企業では、入社時期の調整が困難な場合もあります。
また、ボーナス支給後すぐに退職の意思を伝えると、会社側から「ボーナス目当て」と見られ、人間関係に亀裂が入ったり、十分な引継ぎ期間が確保できずに、周囲に負担をかけてしまったりするリスクも考えられます。円満退職を目指すのであれば、ボーナス受給後も一定期間在籍し、慎重に退職時期を見極める必要が出てきます。
データで見る「ボーナス後転職」の実態と心理
実際に、ボーナスを受け取ってから転職を考える人は非常に多いことが、様々な調査から明らかになっています。2025年のある調査では、転職を検討している正社員のうち、約6割が「夏の賞与支給後に転職する予定」と回答しています。
特に20代では66.4%と高い割合を示しており、若い世代ほどボーナスの重要性を認識していることが伺えます。また、「賞与額が高かった場合に転職を思いとどまる可能性がある」と回答した人も51.5%にのぼり、こちらも20代が63.1%と最多でした。
さらに、転職経験者の約7割が転職理由として「賞与が少ない」ことを挙げており、ボーナスは転職を考える上での重要な動機の一つであることがデータからも裏付けられています。これらのデータからも、ボーナスを受け取ってから退職することの経済的・心理的意義は大きいと言えるでしょう。
ボーナスがもらえない?在籍していないのに請求できる?
原則として「支給日不在」はボーナス不支給
ボーナス支給の最も基本的なルールは、「支給日に会社に在籍している社員」に支払われるという点です。したがって、もしボーナス支給日が6月30日であり、あなたが6月29日に退職した場合、原則としてボーナスは支給されません。
たとえ査定期間中に全うに勤務し、高い評価を得ていたとしても、支給日の在籍要件を満たさない限り、ボーナスを受け取る権利は発生しないのが一般的です。これは、ボーナスが単なる過去の労働の対価ではなく、将来への期待や継続雇用へのインセンティブといった意味合いも含むためです。
退職の意思を固めたら、まずはボーナス支給日を正確に把握し、その日を含めて在籍するよう退職日を調整することが肝要です。
「在籍していないのに請求できる」特殊なケースとは
原則として支給日不在ではボーナスはもらえませんが、稀に「在籍していないのに請求できる」特殊なケースも存在します。これは、会社の就業規則に明確な例外規定がある場合に限られます。
例えば、「支給日の1ヶ月前まで在籍していれば支給対象とする」といった独自の規定がある会社では、支給日前に退職してもボーナスが支給される可能性があります。また、会社都合による退職の場合や、退職合意書や労働契約書で個別にボーナス支給が明記・合意されている場合なども、支給対象となることがあります。
ただし、これはあくまで例外的なケースであり、一般的には就業規則の「支給日在籍要件」が優先されます。ご自身のケースがこれに該当するかどうかは、必ず就業規則を確認し、必要であれば会社の人事担当者に相談することをお勧めします。
未払いボーナスを請求するための法的根拠と注意点
もし、就業規則や労働契約において明確にボーナス支給の条件が定められており、あなたがその条件を満たしているにもかかわらず、会社が不当にボーナスを支払わない場合は、未払いボーナスとして請求できる可能性があります。
ただし、ボーナス支給に関する法的な義務はなく、あくまで就業規則や労働契約が請求の法的根拠となります。そのため、請求を行う前に、以下の点を明確にしてください。
- 就業規則にボーナス支給条件が明記されているか。
- 自分がその条件をすべて満たしているか。
- 会社がどのような理由で不支給としているのか。
不当な不支給であると確信した場合、まずは会社の人事担当者や上司に事実関係を確認し、書面で回答を求めるのが第一歩です。それでも解決しない場合は、労働基準監督署への相談や、弁護士への依頼を検討することも可能です。
ボーナス減額・不支給は違法?会社都合と自己都合の違い
退職が決まっている場合のボーナス減額の合法性
ボーナスは、過去の労働に対する対価として支払われる側面がある一方で、将来の会社への貢献への期待なども考慮されて査定されることがあります。このため、退職が決まっている従業員に対しては、将来的な貢献が期待できないと判断され、支給額が減額される可能性があります。
会社の就業規則によっては、「ボーナス支給後〇日未満で退職する場合は、〇%減額する」といった具体的な規定が設けられている場合もあります。減額の割合の目安としては、支給額の2割程度とされることもあります。
このような規定が存在し、それに則って減額される場合は、原則として違法とはなりません。重要なのは、就業規則に減額の規定が明確に示されているかどうかです。
不当な減額・不支給と感じたら?違法性の判断基準
もし、あなたの会社の就業規則にボーナスの減額に関する明確な規定がないにもかかわらず、退職の意思表示のみを理由に一方的に減額されたり、不支給とされたりした場合は、その減額・不支給が不当であると主張できる可能性があります。
違法性の判断基準は、その減額・不支給に合理的な理由と手続きがあったかどうかです。過去の査定期間中の評価が良好であったにも関わらず、退職の意向を伝えただけでボーナスが大幅に減額されたり、ゼロにされたりすることは、労働契約法第20条の「不合理な待遇の禁止」に抵触する可能性も考えられます。
不当だと感じたら、まずは会社の就業規則を確認し、会社に書面で説明を求めましょう。それでも納得がいかない場合は、労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談することを検討してください。
「会社都合退職」と「自己都合退職」でボーナスはどう変わる?
退職の理由が「会社都合退職」か「自己都合退職」かによって、失業保険の給付期間や条件に違いが出ますが、ボーナスの支給については、基本的には就業規則が最優先されます。
会社都合退職の場合、自己都合退職よりも会社側が退職者に対して配慮を示すことが期待される場面もありますが、ボーナス支給の「在籍要件」などの条件が変わることは稀です。会社都合で退職する場合でも、ボーナス支給日に在籍していなければ、原則としてボーナスは支給されません。
ただし、会社都合退職の場合の退職交渉の過程で、ボーナスについて個別の合意がなされるケースも皆無ではありません。これも、あくまで個別の交渉結果によるものであり、一般的なルールではありませんので、注意が必要です。
まとめ
よくある質問
Q: ボーナスはいつ支給されますか?
A: ボーナスの支給時期は会社の就業規則によって定められています。一般的には夏と冬の年2回支給されることが多いですが、業績連動型や一時金として支給される場合もあります。退職・転職を検討されている場合は、まず会社の就業規則でボーナス支給日を確認しましょう。
Q: ボーナスをもらってから退職・転職しても問題ないですか?
A: 原則として、ボーナス支給日以降に退職・転職することは問題ありません。ただし、会社によっては就業規則で「支給日に在籍していること」などの条件が設けられている場合があります。これらの条件を満たしていれば、ボーナスを受け取った後に退職・転職しても法的な問題はありません。
Q: 在籍期間が短いとボーナスはもらえませんか?
A: ボーナスの支給条件に在籍期間が関係することはよくあります。例えば、「支給日に〇ヶ月以上在籍していること」といった条件が設けられている場合、在籍期間が満たない場合はボーナスが支給されないことがあります。ご自身の在籍期間と会社の規定を照らし合わせて確認することが重要です。
Q: ボーナスを会社から一方的に減額されたり、出してもらえなかったりすることはありますか?
A: ボーナスの減額や不支給は、会社の就業規則に定められた正当な理由(業績不振、個人の成績不振など)に基づいて行われる必要があります。正当な理由なく一方的に減額・不支給としたり、支給条件を満たしているにも関わらず出さなかったりすることは、違法となる可能性があります。不当だと感じた場合は、専門家や労働基準監督署に相談することをおすすめします。
Q: 自分だけボーナスがもらえないのはなぜですか?
A: 自分だけボーナスがもらえない場合、個人の成績が基準に達していない、就業規則で定められた条件を満たしていない(例:遅刻・欠勤が多い、懲戒処分を受けたなど)、といった理由が考えられます。まずは、同僚や上司に支給条件を確認したり、人事担当者に相談したりすることをおすすめします。ただし、他者と比較して不当に支給されていないと感じる場合は、その理由を明確に確認することが重要です。