概要: 離職票の申請は、自己都合、会社都合、病気退職など、退職理由によって手続きが異なります。本記事では、それぞれのケースにおける離職票の取得方法や注意点を解説します。また、月途中退職やバイト、在職中の場合についても網羅的に説明し、離職票に関する疑問を解消します。
【離職票】自己都合・会社都合・病気退職…ケース別申請方法と注意点
退職にあたり、多くの方が「離職票」という言葉を耳にするかと思います。
離職票は、失業保険(基本手当)の受給手続きに不可欠な書類であり、退職理由によってその申請方法や、受け取れる給付の内容が大きく変わってきます。
本記事では、自己都合退職、会社都合退職、そして病気退職といったケース別に、離職票の申請方法と注意点を最新の情報に基づき解説します。
退職理由で変わる?離職票の基本と申請までの流れ
### 離職票とは?その種類と重要性
離職票は、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、あなたが会社を退職した事実と、雇用保険の被保険者であったことを証明する公的な書類です。
この書類は、退職後の生活を支える重要な制度である失業保険(基本手当)を受給する際に、ハローワークへ提出が必須となります。そのため、退職を控えている方や退職された方にとって、その内容と手続きを正確に理解しておくことが極めて重要です。
離職票には、「離職票-1」と「離職票-2」の2種類があります。
まず、「離職票-1」は雇用保険の資格喪失を証明する書類で、失業手当の振込先口座などを記入する用紙です。次に、「離職票-2」は退職理由や退職前の賃金状況などが詳細に記載される最も重要な書類で、これに基づいて失業手当の支給額や支給期間が決定されます。
会社から退職者へは、退職日から約10~14日後(約2週間後)に郵送で届くのが一般的です。また、2025年1月からは、マイナポータルを通じたデジタルでの受け取りも可能になり、利便性が向上します。
### 会社が負う離職票発行の義務と手続き
離職票は、会社が従業員の退職後に作成し、ハローワークを経由して退職者へと交付される書類です。
会社には、従業員が雇用保険の資格を喪失した日の翌日から10日以内という期限が設けられており、この期間内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークへ提出する義務があります。
この手続きを経て、ハローワークで離職票が作成され、会社を通じて退職者の手元に届く仕組みです。
会社がこの義務を怠ったり、手続きが遅れたりすると、退職者が失業保険の申請をスムーズに行うことができず、生活に支障をきたす可能性があります。
そのため、退職者は会社に対して、離職票の発行状況について適宜確認する権利があります。
万が一、期日を過ぎても離職票が届かない場合は、まず会社に問い合わせを行い、それでも対応が改善されない場合は、管轄のハローワークに相談することが推奨されます。ハローワークは、会社の義務履行を促す立場にあり、適切なアドバイスや介入を行ってくれます。
### 退職者自身の離職票提出期限と失業保険の関係
会社から離職票を受け取った後、退職者自身がハローワークに離職票を提出する期限は、原則として離職日の翌日から1年以内と定められています。
この1年という期間は、失業保険(基本手当)の受給期間が、原則として離職日の翌日から1年間であることに対応しています。つまり、この期限を過ぎてしまうと、失業保険を受け取る権利を失ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
失業保険の申請は、離職後なるべく早く行うことが望ましいとされています。
これは、申請が遅れると、給付を受けられる期間が短くなってしまう可能性があるからです。
特に、自己都合退職の場合には「給付制限期間」が設定されるため、早めに申請を済ませておくことで、待期期間と給付制限期間を短縮し、より早く受給を開始できるメリットがあります。
やむを得ない事情で1年以内に提出できない場合は、病気、出産、介護など、特定の理由がある場合に限り、受給期間の延長が認められることもあります。この制度を利用するには、期限内にハローワークへ申請が必要です。
自己都合・会社都合・病気退職:離職票の取得方法と違い
### 自己都合退職の場合の離職票と失業保険
自己都合退職とは、転職、キャリアアップ、結婚、引っ越しなど、個人の都合によって退職する場合を指します。
この場合、会社から受け取った離職票に必要事項を記入し、ハローワークへ提出するという基本的な申請方法は他の退職理由と変わりません。
しかし、失業保険の受給条件においては、会社都合退職などと比較して制限が設けられる点が大きな違いとなります。
自己都合退職の場合、失業保険の給付を受けるためには、まず「7日間の待期期間」があります。
この待期期間中は失業保険は支給されません。さらに、待期期間終了後、原則として2~3ヶ月の「給付制限期間」が設けられます。
この給付制限期間中も失業保険は支給されないため、離職後すぐに手当を受け取ることができません。ただし、2025年4月1日以降は、給付制限期間が1ヶ月に短縮される方向であり、また特定の教育訓練を受けることで給付制限が解除される可能性もあります。
給付日数については、雇用保険の加入期間によって決まり、加入期間が長いほど長くなります。例えば、雇用保険の加入期間が10~20年未満の場合、給付日数は90日(約3ヶ月)が一般的です。自己都合退職による受給資格決定件数は、全体の約50%前後で推移しており、最も多い退職理由となっています。
### 会社都合退職(特定受給資格者)のメリット
会社都合退職は、倒産、解雇、リストラ、契約更新の不更新(本人が更新を希望していたにも関わらず)など、会社側の都合によって退職に至ったケースを指します。
これらの退職者は、雇用保険制度において「特定受給資格者」として扱われ、自己都合退職者よりも手厚い失業保険の給付が受けられるという大きなメリットがあります。
離職票の申請方法自体は自己都合退職と同様に、会社から離職票を受け取り、必要事項を記入してハローワークに提出します。
特定受給資格者の失業保険受給の最大の特徴は、給付制限期間がないことです。
7日間の待期期間のみで、その後すぐに失業保険の給付が開始されます。
これにより、離職後から経済的な不安が少なく、早期に次の仕事を探すことに専念できます。給付日数も自己都合退職者と比較して長く設定されており、例えば30歳以上35歳未満で雇用保険加入期間10~20年未満の場合、210日(約7ヶ月)となります。
失業保険の金額計算は、離職前の給与の50~80%が目安とされており、特に給与水準が低い方ほど給付率が高くなる傾向があります。これにより、会社都合で職を失った方の生活をよりしっかりと支える仕組みとなっています。
### 病気・怪我等による退職(特定理由離職者)の特例
病気や怪我、障害、あるいは家族の介護といったやむを得ない事情によって働くことが困難となり、退職に至った場合は、「特定理由離職者」として認定される可能性があります。
この制度は、自己都合退職と会社都合退職の中間的な位置づけであり、通常の自己都合退職よりも失業保険の給付条件が優遇されます。
離職票は一時的に「自己都合退職」として作成されることがありますが、ハローワークに医師の診断書や介護が必要であることを証明する書類など、具体的な証拠書類を提出することで、特定理由離職者として認定を受けることができます。
特定理由離職者と認定されると、給付制限期間が適用されない、または短縮されるなど、会社都合退職者に近い優遇措置が受けられます。
給付日数も、自己都合退職の場合よりも長く設定され、90日~330日の範囲で決まることが多いです。
この認定は、病気や怪我で働けない期間中に失業保険を支給してもらったり、受給期間の延長を申請したりする際にも重要となります。
やむを得ない事情での退職を検討している場合は、事前にハローワークや専門機関に相談し、必要な書類や手続きについて確認しておくことを強くお勧めします。
月途中退職・バイト・在職中…離職票に関する疑問を解決!
### 月途中退職の場合の離職票と雇用保険
月途中で会社を退職した場合でも、離職票の発行手続きは通常通り行われます。
雇用保険の資格喪失日は退職日となり、会社は資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出する義務があります。
この場合、離職票に記載される賃金計算期間は、退職月の日割りや、それまでの給与計算期間に基づきます。
月途中退職で特に気になるのが、雇用保険の加入期間への影響でしょう。雇用保険の加入期間は、基本的に「〇〇月〇〇日から〇〇月〇〇日まで」といった月単位で計算され、週の所定労働時間や雇用期間の見込みに応じて被保険者期間が計算されます。
例えば、雇用保険の受給資格を満たすには、原則として離職日以前2年間で、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です(会社都合などの場合は異なる)。
この被保険者期間の計算において、月途中退職でも、その月の一部でも被保険者であった期間があれば、その月を1ヶ月としてカウントされる場合があります。
しかし、具体的な計算方法は複雑なため、疑問がある場合はハローワークに確認するのが確実です。月途中退職だからといって、離職票が発行されない、または失業保険の受給資格に不利に働くということはありませんのでご安心ください。
### アルバイト・パートでも離職票は発行される?
アルバイトやパートとして働いていた場合でも、一定の条件を満たしていれば離職票は発行されます。
この条件は、雇用保険への加入条件と密接に関わっています。
具体的には、週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険の加入対象となります。
もしあなたがこれらの条件を満たして雇用保険に加入していたのであれば、正社員と同様に退職時に離職票が発行されます。
逆に、週の労働時間が20時間未満であったり、短期の雇用契約で31日未満の雇用見込みであった場合は、雇用保険の加入対象外となるため、離職票は発行されません。
この場合、失業保険の受給資格も発生しません。
自身の雇用保険の加入状況が不明な場合は、雇用契約書を確認するか、会社の人事・経理担当者に問い合わせることで確認できます。
雇用保険に加入していたにも関わらず離職票が発行されない場合は、会社に発行を依頼し、それでも対応がない場合はハローワークへ相談しましょう。
### 在職中に離職票はもらえる?
基本的に、離職票は退職した後に発行される書類です。
なぜなら、離職票は「雇用保険被保険者資格喪失届」とセットでハローワークに提出され、雇用保険の資格喪失を証明するための書類だからです。
在職中であるということは、まだ雇用保険の被保険者資格を喪失していない状態であるため、原則として離職票が発行されることはありません。
例えば、転職先が決まっており、現在の会社を退職する前に次の会社の入社日を控えている場合でも、前職を正式に退職して雇用保険の資格が喪失されるまでは、離職票は発行されません。
離職票が必要となるのは、あくまで失業保険の受給手続きを進める際であり、これは退職して失業状態になった後に行われるものです。
もし在職中に離職票を求められたとしても、会社は発行する義務がなく、また制度上も発行することはできません。
必要な場合は、退職日が確定し、会社での手続きが完了するのを待つことになります。
離職票発行前に確認!退職理由の伝え方と注意点
### 会社への退職理由の伝え方と離職票への影響
退職を決意し、会社にその意思を伝える際、どのような理由を伝えるかは非常に重要です。
特に、離職票-2に記載される「離職理由」は、失業保険の給付内容に大きく影響するため、会社との認識にずれがないように慎重に伝える必要があります。
例えば、「キャリアアップのため」という自己都合での退職であっても、会社側が「会社の経営悪化による人員削減に協力した」と認識すれば、会社都合として処理される可能性もゼロではありません。
しかし、多くの場合、会社と従業員の間で退職理由の認識に食い違いが生じることがあります。
特に、解雇や退職勧奨など、会社都合に近い形で退職に至ったにも関わらず、会社が「自己都合」として処理しようとするケースも散見されます。
このような場合、あなたの受け取れる失業保険の額や期間が大きく変わってしまうため、会社に退職理由を伝える段階で、自身の状況を正確に伝え、認識のすり合わせを行うことが肝要です。
曖昧な伝え方は避け、明確な言葉で意図を伝えるように心がけましょう。
### 離職票-2の「離職理由」の重要性と確認ポイント
離職票-2は、退職者の失業保険の給付内容を決定する上で極めて重要な書類です。
特にその中の「離職理由」欄は、自己都合か会社都合か、あるいは特定理由離職者かを判断する決定打となります。
そのため、会社から離職票が届いたら、真っ先にこの「離職理由」欄の記載内容を必ず確認してください。
会社都合で退職したはずなのに自己都合と記載されている、あるいは病気での退職なのに自己都合になっている、といったケースがないか、厳しくチェックする必要があります。
もし記載内容が事実と異なる場合は、決してそのまま放置せず、速やかにハローワークに申し出ることが重要です。
ハローワークは、記載内容の事実関係を調査し、必要に応じて会社への照会を行います。
その際、あなたの主張を裏付ける客観的な証拠(例えば、解雇通知書、退職勧奨の記録、医師の診断書、ハラスメントに関する記録など)があれば、それを提出することで、よりスムーズに正しい離職理由が認定される可能性が高まります。
この確認作業を怠ると、本来受け取れるはずの失業保険の給付が受けられなくなったり、期間が短くなったりするリスクがあるため、細心の注意を払いましょう。
### 会社と認識が異なる場合の対処法
離職票-2に記載された退職理由が、あなたの認識と異なっている場合、まずは会社に直接問い合わせて、訂正を依頼するのが最初のステップです。
その際、感情的にならず、客観的な事実に基づいてあなたの主張を伝えるようにしましょう。
例えば、「〇月〇日の〇〇部長との面談で、会社からの退職勧奨があったため退職に至りました」といった具体的な状況を伝えることが有効です。
もし会社が訂正に応じてくれない、あるいは交渉が困難な場合は、管轄のハローワークに相談してください。
ハローワークは、離職票の記載内容に関するトラブル解決の窓口であり、事実関係の調査や、会社への指導を行う権限を持っています。
相談時には、会社から受け取った離職票の写し、雇用契約書、退職に至るまでの経緯をまとめたメモ、そしてあなたの主張を裏付ける証拠書類(メールのやり取り、診断書など)を持参すると、スムーズに話が進みます。
場合によっては、労働基準監督署や、弁護士などの専門家に相談することも検討すべき選択肢です。早期の行動が、あなたの権利を守る上で非常に重要となります。
離職票についてよくある質問(FAQ)
### 離職票が届かない場合の対処法
Q: 会社を退職してから2週間以上経ちましたが、離職票がまだ届きません。どうすれば良いですか?
A: 離職票は、会社がハローワークに必要書類を提出した後、ハローワークで作成され、会社を経由して退職者へ郵送されるのが一般的です。退職日から約10~14日後が目安とされていますが、それ以上届かない場合は、まず会社の人事または総務部門に連絡し、発行状況を確認しましょう。
会社には、雇用保険の資格喪失日の翌日から10日以内にハローワークへ必要書類を提出する義務があります。この義務が果たされていない可能性も考えられます。もし会社に連絡しても対応が進まない場合や、納得のいく回答が得られない場合は、ご自身の住民票がある管轄のハローワークに相談してください。
ハローワークは、会社への発行状況の確認を促したり、場合によっては会社に対して指導を行ったりすることも可能です。相談時には、退職日や会社の情報を正確に伝えられるように準備しておきましょう。早期に動くことで、失業保険の申請が遅れるリスクを回避できます。
### 失業保険の受給期間延長は可能?
Q: 失業保険の受給期間は1年と聞きましたが、病気で働けない期間があった場合、期間は延長できますか?
A: はい、原則として失業保険の受給期間は離職日の翌日から1年間ですが、特定のやむを得ない事情がある場合は、受給期間の延長が認められることがあります。
主な延長事由としては、以下のケースが挙げられます。
- 病気や怪我により、30日以上続けて働くことができなかった場合
- 出産や育児により、働くことができなかった場合
- 親族の介護により、働くことができなかった場合
これらの事情に該当し、延長を希望する場合は、事情が発生した日から1ヶ月以内にハローワークへ申請する必要があります(ただし、申請期限を過ぎても申請が可能な場合がありますので、まずはハローワークにご相談ください)。延長が認められれば、最長で4年間まで受給期間を延ばすことが可能です。必要な書類(医師の診断書、母子健康手帳など)を揃え、期限内に手続きを行いましょう。
### 離職票を紛失してしまったらどうすれば良い?
Q: 大切な離職票をうっかり紛失してしまいました。再発行はできますか?
A: はい、ご安心ください。離職票を紛失してしまった場合でも、再発行の手続きが可能です。
再発行の手続きは、ご自身の住民票がある管轄のハローワークで行うことができます。ハローワークの窓口で「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」を提出することで、再発行を依頼できます。申請の際には、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と、もしあればマイナンバーを確認できる書類を持参してください。
また、状況によっては、退職した会社に再発行を依頼することも可能です。会社が再発行の申請を行い、ハローワーク経由で再び交付される流れとなります。どちらの方法で再発行するかは、ハローワークに相談して最適な方法を確認することをお勧めします。再発行には数日かかる場合があるため、失業保険の申請期限に余裕を持って早めに手続きを行いましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 離職票はどのような場合に必要になりますか?
A: 離職票は、退職後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受給する際や、転職活動で前職の証明として必要となる場合があります。
Q: 自己都合退職と会社都合退職では、離職票の取得に違いがありますか?
A: 離職票の基本的な発行手続きに大きな違いはありませんが、失業保険の受給開始時期や給付日数において、自己都合退職と会社都合退職では異なります。会社都合退職の方が、一般的に早期に給付が開始され、給付日数も長くなる傾向があります。
Q: 病気退職の場合、離職票はどのように申請しますか?
A: 病気退職の場合でも、会社都合退職と同様の扱いとなることがあります。退職理由を証明できる医師の診断書などを提出し、会社に会社都合退職として処理してもらうことで、自己都合退職よりも有利な条件で失業保険を受給できる可能性があります。詳細はハローワークにご確認ください。
Q: バイトでも離職票はもらえますか?
A: 一定の条件を満たせば、アルバイトでも離職票を受け取ることができます。具体的には、雇用保険の被保険者期間が離職日以前1年間に12ヶ月以上あることなどが条件となります。詳細は勤務先の担当者やハローワークにご確認ください。
Q: 離職票は在職中に発行してもらえますか?
A: 原則として、離職票は退職後に発行される書類です。在籍中に発行を依頼することはできません。退職後、会社から離職票を提出してもらい、ハローワークに申請することになります。