離職票は、退職者が失業給付(基本手当)を受給するために不可欠な公的書類であり、その正確な作成が非常に重要です。特に、労災による休業期間や休業補償、そして日々の労働時間や賃金支払いの基礎となる暦日数といった項目は、失業給付の金額や期間に直接影響を与えるため、慎重な確認と正確な記載が求められます。

本記事では、企業の人事担当者や、ご自身の離職票について理解を深めたい方に向けて、これらの複雑な項目をどのように記載し、また確認すべきかについて、具体的なポイントを分かりやすく解説していきます。

正確な知識を身につけ、トラブルのない離職票作成を目指しましょう。

離職票と労災の関係性を理解しよう

離職票の重要性と発行義務

離職票は、退職者がハローワークで失業給付(雇用保険の基本手当)の受給手続きを行う際に、必ず提出を求められる重要な書類です。

この書類には、離職者の氏名や住所といった基本情報に加え、離職理由、離職前の賃金支払い状況、被保険者期間など、失業給付の受給資格の有無、給付額、給付日数を決定するための詳細な情報が記載されています。

企業(事業主)には、従業員が退職する際、原則としてその退職日の翌々日から10日以内に、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出する義務があります。

ハローワークはこれらを受理した後、「離職票-1」(雇用保険資格喪失通知書)と「離職票-2」(離職証明書)を企業に交付します。企業はこれらを速やかに退職者本人に交付することで、退職者はスムーズに失業給付の手続きに進むことができます。

離職票の記載内容に誤りがあったり、交付が遅れたりすると、退職者の失業給付受給が遅延するだけでなく、企業側が行政指導の対象となる可能性もあるため、その重要性は非常に高いと言えます。

特に、離職理由の記載は、自己都合退職か会社都合退職か、または特定理由離職者に該当するかによって、給付制限の有無や給付期間に大きな違いが生じるため、慎重な事実確認と適切な記載が求められます。

労災期間中の離職票発行の特殊性

従業員が労災(労働災害)による傷病で休業している期間中に退職した場合、離職票の作成と失業給付の受給に関しては、通常の離職とは異なる特殊な取り扱いが必要となります。

まず、大原則として、労災保険から休業補償給付を受けている期間は、雇用保険の失業給付と同時に受給することはできません。

これは、失業給付が「働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず職に就けない状態」にある人に対して支給されるものであるのに対し、労災による休業中は「傷病のため働くことができない状態」とみなされるためです。

したがって、労災による休業期間が継続している状態で離職した場合、その期間は失業給付の対象とはなりません。

しかし、離職票自体は、労災による休業期間中であっても、退職という事実が発生すれば作成・交付する義務があります。この際、離職票の「備考欄」に、労災による休業期間とその間に支払われた休業手当の有無、金額などを具体的に記載することが求められます。

この記載は、後のハローワークでの審査において、労災期間と失業給付受給資格期間の区別を明確にするために非常に重要となります。企業側は、労災休業中の従業員が離職する際には、これらの点を踏まえた上で、離職票の正確な作成と適切な説明を行う必要があります。

労災終了後の失業給付への影響

労災による休業期間が終了し、傷病が治癒(症状固定)した後に退職する場合、失業給付の受給資格が改めて検討されます。

労災が治癒し、医師から「就労可能」と判断されれば、「働く意思と能力がある状態」とみなされ、失業給付の受給資格を満たす可能性があります。この場合、離職票を提出してハローワークで手続きを進めることになります。

ただし、労災による傷病が治癒せず、障害が残るようなケースでは、労災保険から障害補償給付傷病補償年金が支給される可能性があります。これらの給付を受けている間も、原則として失業給付との併給はできません。

しかし、障害補償給付や傷病補償年金を受けながらでも、「働く意思と能力」があり、障害の程度に応じた職種で求職活動を行う場合は、失業給付の受給が可能となるケースもあります。この判断は非常に専門的であり、個々の状況によって異なるため、管轄のハローワークや労働基準監督署、社会保険労務士などの専門家へ相談することが不可欠です。

労災期間中の休業によって、失業給付の受給資格となる被保険者期間が不足してしまう可能性も考慮しなければなりません。雇用保険の受給資格には、一定期間の被保険者期間が必要です。

労災による休業期間は、賃金が支払われない期間として扱われる場合があるため、賃金支払いの基礎となる日数が不足し、受給資格期間に影響を与えることがあります。このような複雑な状況では、離職票の記載内容が非常に重要になるため、企業側は詳細な情報提供に努め、退職者側も積極的にハローワークへ相談することが推奨されます。

労災期間・休業補償の記載方法

労災による休業期間の正確な記入

従業員が労働災害により休業し、その期間中に離職に至った場合、離職票への記載は細心の注意を払う必要があります。

特に重要なのは、離職票(離職証明書)の賃金支払い状況を記載する欄とは別に、「備考欄」に労災による休業に関する具体的な情報を記入することです。

ここに記載すべきは、休業を開始した日と終了した日、休業した総日数、そして休業期間中に会社から支払われた休業手当の有無と具体的な金額です。

例えば、会社が労働基準法に基づく休業手当(平均賃金の60%以上)を支払った場合、その日数と金額は、離職票の「賃金支払基礎日数」および「賃金額」に含めて記載する必要があります。これは、休業手当が労働の対価ではないものの、雇用保険の計算上、賃金として扱われるためです。

一方で、会社が休業手当を一切支払わず、労災保険から直接休業補償給付が支給された場合は、その期間の賃金支払基礎日数や賃金額には含めません。

しかし、労災による休業であったという事実は非常に重要であるため、この場合も必ず備考欄に「〇月〇日~〇月〇日まで労災休業。休業補償給付は労災保険から支給」といった具体的な内容を記載するようにしましょう。

正確な記載は、退職者が失業給付を受給する際の審査において、休業期間と求職活動期間の区別を明確にし、スムーズな手続きを可能にします。不明な点があれば、企業側は管轄のハローワークに事前に確認することが賢明です。

休業補償給付と離職票

労災保険における休業補償給付は、業務上の怪我や病気によって労働ができない期間に対して、被災労働者本人に直接支給されるものです。

この給付は、平均賃金の60%に相当する額に、特別支給金として20%が上乗せされ、合計で平均賃金の80%相当額が支給される制度ですが、会社が支払う休業手当とは性質が異なります。

参考情報にもある通り、休業補償給付は労災保険から支給されるものであり、原則として離職票の賃金支払基礎日数や賃金額には含めません。なぜなら、これは雇用保険の算定対象となる「賃金」とは異なる性質を持つからです。

したがって、離職票の作成においては、会社が労災休業中に直接賃金や休業手当を支払った場合のみ、その日数と金額を賃金欄に記載し、労災保険からの休業補償給付については備考欄にその旨を記す、という区別が重要になります。

例えば、「〇月〇日から〇月〇日まで労災休業。会社からの休業手当はなし。労災保険より休業補償給付を受給」といった具体的な記載が必要です。

この情報の正確性が、ハローワークでの審査において、失業給付の受給資格や給付額を正しく判断するために不可欠となります。誤った記載は、退職者が失業給付を適正に受給できない原因となりかねません。

企業としては、労災による休業期間中の賃金支払い状況と、労災保険からの給付状況を正確に把握し、離職票に反映させる責任があります。記録の確認には、賃金台帳や労災申請書類などが役立つでしょう。

併給できない場合の対応と注意点

労災保険の休業補償給付と雇用保険の失業給付は、原則として同時に受給することはできません。

この「併給できない」という原則は、それぞれの制度が異なる目的を持つためです。失業給付が「働く意思と能力があるが職に就けない人」を支援するのに対し、休業補償給付は「業務上の傷病により働くことができない人」を支援するものです。

労災の認定を受けている期間は、一般的に「すぐに働ける状態」とはみなされないため、失業給付の受給資格を満たしません。したがって、退職者が労災休業中に離職した場合、休業補償給付が支給されている期間は失業給付は停止されます。

では、この期間、退職者はどう対応すべきでしょうか。重要なのは、労災の休業補償給付が終了した後の対応です。傷病が治癒し、医師から就労可能と診断され、働く意思と能力が回復した場合には、速やかにハローワークに離職票を提出し、失業給付の受給手続きを行うことができます。

ただし、労災の休業補償給付が終わった後も、傷病が治癒せずに障害が残るようなケースでは、労災保険による障害補償給付傷病補償年金を受給できる可能性があります。これらの給付を受けている間も、原則として失業給付との併給はできませんが、障害の程度に応じて就労が可能と判断される場合は、個別の相談が必要になります。

企業側は、労災による休業・離職の経緯と、労災保険からの給付状況を離職票に正確に記載することで、退職者が後の手続きで不利益を被らないように配慮する義務があります。

退職者本人も、自分の状況をハローワークに正確に伝え、適切なアドバイスを受けることが、スムーズな給付受給への鍵となります。

労働時間と暦日数の正確な記入ポイント

労働時間の記載と賃金支払基礎日数

離職票(雇用保険被保険者離職証明書)には、実は直接的に「労働時間数」を記載する欄は設けられていません。

しかし、賃金計算の基礎となる「賃金支払基礎日数」や「賃金総額」の算出には、日々の労働時間数が深く関わってきます。特に、変形労働時間制やフレックスタイム制など、通常の固定労働時間制ではない働き方をしている従業員の場合、この関係性はより複雑になります。

賃金支払基礎日数は、文字通り賃金や報酬が支払われる対象となった労働日数を指し、失業給付の受給資格や給付額の算定に用いられる重要な項目です。

例えば、日給制や時給制の従業員の場合、実際に勤務した日数がそのまま賃金支払基礎日数となるため、個々の労働時間を正確に記録していることが不可欠です。

また、週の所定労働時間が20時間未満となった場合、雇用保険の被保険者資格を喪失し、離職票の交付手続きが必要となることがあります。これは、労働時間数が雇用保険の適用要件に直結しているためです。

したがって、企業の人事・労務担当者は、賃金台帳やタイムカードなど、従業員の労働時間を記録した書類を常に正確に管理し、離職票作成時にはそれらの情報を基に、賃金支払基礎日数や賃金額を算出する必要があります。

この正確な記録が、後の失業給付のトラブルを防ぐ上で極めて重要となるのです。

失業給付の受給資格と労働時間・基礎日数

失業給付の受給資格を得るためには、原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが条件となります。

そして、この「1ヶ月」とカウントされるための要件が、近年変更されました。

具体的には、2020年8月以降、被保険者期間の算定において、「賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月」に加えて、「労働時間が80時間以上ある月」も1ヶ月としてカウントされるようになりました。

この改正は、特にパートタイマーやアルバイトなど、月ごとの出勤日数が11日に満たないが、総労働時間では一定以上の働きをしている従業員にとって、失業給付の受給資格を得やすくなるという点で大きな影響を与えます。

例えば、月に10日間勤務し、1日8時間労働であれば、賃金支払基礎日数は10日ですが、総労働時間は80時間となります。この場合、改正前は被保険者期間としてカウントされませんでしたが、改正後は「労働時間が80時間以上ある月」としてカウントされることになります。

これにより、企業は離職票を作成する際、従来の賃金支払基礎日数だけでなく、各月の総労働時間も正確に把握し、記載する必要性が高まりました。賃金台帳やタイムカードなどの勤怠記録は、これらの情報を裏付ける重要な証拠となります。

退職者本人も、自身の労働時間や勤務日数について正確な記録を保持し、離職票の内容をよく確認することが、適切な失業給付受給につながるでしょう。

暦日数・基礎日数のケース別カウント方法

離職票に記載する「賃金支払基礎日数」は、その数え方が雇用形態や給与体系によって異なります。正確な日数算出は、失業給付の金額や期間に影響するため、非常に重要です。

主なケース別のカウント方法は以下の通りです。

  1. 完全月給制(欠勤控除がない場合)

    その月の「暦日数」(30日または31日、2月は28日または29日)を基礎日数とします。従業員が欠勤しても給与から控除されない場合がこれに該当します。

  2. 日給月給制(欠勤控除がある場合)

    所定労働日数から欠勤日数を差し引いた日数が基礎日数となります。実際に勤務した日数に加えて、会社が給与を支払う義務のある休日(例えば、土日祝で月給に含まれている場合)も含むことがあります。ただし、欠勤によって賃金が減額された場合は、所定労働日数からその欠勤日数を引いた日数を計上します。

  3. 日給制・時給制

    実際に勤務した日数(または時間)を基礎日数とします。賃金が支払われた日の総数をカウントします。

また、特殊なケースとして以下の点に注意が必要です。

  • 深夜労働で翌日にまたがる場合: 労働時間が8時間を超えると2日間として計算されますが、8時間以内であれば1日として計算されます。
  • 有給休暇・特別休暇: 有給休暇や給与が支払われる特別休暇(慶弔休暇など)は、賃金支払いの対象となるため、賃金支払基礎日数に含めて算定します。
  • 休職・産休期間: 労災以外の病気や怪我、産休・育休などで休職し、賃金の支払いが発生しない期間は、賃金支払基礎日数に含めません。ただし、産休の前後に有給休暇を取得した場合は、その期間は算定対象となります。

これらのルールを正確に理解し、賃金台帳や勤怠記録と照合しながら離職票を作成することが、トラブル防止の鍵となります。

離職票作成で役立つ労働局・労務士の活用法

複雑なケースでの労働局への相談

離職票の作成は、一見すると定型業務に見えますが、従業員の退職理由や労働状況によっては、非常に複雑なケースに直面することがあります。

特に、労災による休業期間が絡む場合、変形労働時間制の適用がある場合、あるいは雇用形態が複数にわたるような特殊なケースでは、一般的なマニュアルだけでは対応が難しい場面も出てくるでしょう。

このような複雑な状況に遭遇した際には、管轄のハローワーク労働基準監督署といった労働局への相談が非常に有効です。

ハローワークは雇用保険の専門機関であり、離職票の記載方法や失業給付の受給資格に関する最も正確な情報を提供してくれます。具体的な相談内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 労災による休業期間中の賃金支払基礎日数と賃金額の算定方法
  • 特定理由離職者や特定受給資格者(会社都合退職など)の判断基準
  • 労働時間や賃金体系が複雑な場合の離職票への記載方法
  • 退職理由に関する会社と従業員の見解の相違がある場合の対応

これらの機関は、法的な解釈や具体的な記入例について、直接的かつ実践的なアドバイスを提供してくれます。相談時には、当該従業員の賃金台帳、勤怠記録、雇用契約書、労災に関する書類など、関連する資料をすべて持参することで、より的確な助言を得られるでしょう。

自社だけで判断せずに、専門機関の意見を仰ぐことで、正確な離職票作成と退職者とのトラブル回避に繋がります。

専門家である社会保険労務士の活用

企業にとって、離職票の正確な作成と適切な提出は、法的な義務であると同時に、従業員との信頼関係を維持する上でも極めて重要です。

しかし、特に中小企業では、人事・労務に関する専門知識を持つ人材が不足していることも少なくありません。このような場合、社会保険労務士(社労士)という専門家の活用が非常に有効な手段となります。

社会保険労務士は、労働・社会保険に関するエキスパートであり、離職票の作成代行から、関連法規に基づく適切なアドバイスまで、幅広いサポートを提供してくれます。

社労士に依頼する主なメリットは以下の通りです。

  • 正確性の確保: 労働関係法令の専門家であるため、複雑なケースでも法的に適切な離職票を作成してくれます。記載ミスによる再提出の手間や、退職者からの問い合わせ・クレームのリスクを低減できます。
  • 時間とコストの節約: 自社で不明点を調査したり、ハローワークに何度も問い合わせたりする手間が省け、本来の業務に集中できます。
  • トラブル回避: 退職理由の記載や賃金計算など、従業員との間で意見の相違が生じやすい部分について、客観的かつ専門的な見地から適切な助言を行い、紛争予防に貢献します。
  • 最新情報への対応: 雇用保険制度や関連法規の改正に常にアンテナを張っており、最新の情報を踏まえた上で対応してくれます。

特に、労災期間中の離職票作成のように、複数の法令や制度が複雑に絡み合うケースでは、社労士の専門知識が大きな力となります。初期費用や顧問料は発生しますが、長期的に見れば、法的なリスク回避や業務効率化に繋がる投資と言えるでしょう。

正確な情報提供のための準備

労働局への相談や社会保険労務士への依頼を検討する場合でも、企業側が正確な情報を提供できなければ、適切なアドバイスやサポートを受けることはできません。

そのため、事前の情報整理と準備が非常に重要となります。

離職票作成に関する相談や依頼を行う際には、以下の書類や情報を漏れなく準備しておきましょう。

【準備すべき主な書類・情報】

  • 労働者名簿: 氏名、生年月日、入社日、退職日、住所、雇用形態などの基本情報。
  • 賃金台帳: 過去2年間(失業給付の受給資格期間)の賃金支払い状況。月ごとの基本給、手当、控除額などを確認。
  • 勤怠記録(タイムカード、出勤簿など): 過去2年間の出勤日数、労働時間、欠勤・遅刻・早退日数、有給休暇取得日数など。特に、賃金支払基礎日数や80時間以上の労働時間カウントに必要です。
  • 雇用契約書・就業規則: 雇用条件、所定労働時間、賃金規定、退職に関する規定など。
  • 退職届・離職理由に関する書類: 退職理由が自己都合か会社都合かを判断するための根拠資料。
  • 労災に関する書類(労災認定書、休業補償給付支給決定通知書など): 労災の発生日、休業期間、労災保険からの給付状況などを確認。

これらの書類を事前に整理し、時系列で把握しておくことで、担当者や専門家は状況を迅速に理解し、的確な判断を下すことができます。

特に、事実関係が複雑なケースでは、関連する経緯や背景を時系列でまとめたメモなども用意しておくと、よりスムーズな相談が可能になります。

正確な情報提供は、迅速で適切な離職票作成と、退職者の失業給付受給手続きの円滑化に直結します。

離職票作成前に確認すべき労働者名簿との照合

労働者名簿の法的要件と重要性

労働者名簿は、労働基準法第107条に基づき、企業に作成と備え付けが義務付けられている重要な法定帳簿の一つです。労働者の人事管理の基本となるだけでなく、行政機関への届出や各種手続きの基礎情報としても活用されます。

その重要性は、離職票の作成時においても例外ではありません。労働者名簿には、以下の事項を記載することが義務付けられています。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類
  • 雇用年月日(入社日)
  • 退職年月日、及び退職の事由(死亡の際は、その年月日及び原因)
  • 履歴(本人の申し出によるもの)

これらの情報は、離職票に記載される基本的な項目とほぼ一致しており、離職票作成の際には、労働者名簿が基礎情報として活用されます。

特に、氏名、生年月日、入社日、退職日といった個人を特定し、雇用関係の期間を確定する情報は、離職票の正確性を担保する上で不可欠です。

また、労働者名簿は、単に情報が記載されていれば良いというものではなく、記載事項に変更があった場合は遅滞なく訂正しなければなりません。常に最新かつ正確な状態に保つことが、法令遵守はもちろんのこと、離職票を含む様々な人事・労務手続きを円滑に進める上で極めて重要です。

正確な労働者名簿の管理は、いざという時の行政機関への対応や、従業員とのトラブル回避にも繋がる企業の基本的な責務と言えるでしょう。

離職票記載情報と名簿の照合ポイント

離職票を作成する際、労働者名簿との照合は、記載情報の正確性を確保するための最終チェックポイントとして非常に重要です。

この照合を怠ると、軽微な入力ミスから重大な法令違反に繋がる可能性もあります。具体的な照合ポイントは以下の通りです。

【離職票と労働者名簿の照合ポイント】

  1. 基本情報の一致:

    氏名、フリガナ、生年月日、性別、住所、入社日(雇用保険資格取得年月日)、退職日(離職年月日)が、労働者名簿と離職票-1、離職票-2の各欄で完全に一致していることを確認します。

  2. 賃金関連情報の整合性:

    労働者名簿には賃金に関する詳細な記載は義務付けられていませんが、賃金台帳と連動している情報として、離職票に記載される賃金支払基礎日数と賃金額が、勤怠記録や賃金台帳のデータと整合しているかを再確認します。

  3. 休業期間の確認:

    労災による休業期間があった場合、その期間が労働者名簿の休職履歴や備考欄に記載されているか、またそれが離職票の備考欄の記載内容と合致しているかを確認します。休業期間中の賃金支払い状況も合わせてチェックします。

  4. 離職理由の整合性:

    労働者名簿に記載されている退職事由と、離職票に記載する離職理由が、客観的な事実に基づいて一致しているかを確認します。特に、自己都合か会社都合か、あるいは特定理由離職者に該当するかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

これらの照合を丁寧に行うことで、離職票の記載ミスを未然に防ぎ、退職者が失業給付を円滑に受給できる環境を整えることができます。

形式的なチェックだけでなく、実際の勤務状況や賃金支払い状況と突き合わせる実質的な確認が不可欠です。

不一致が引き起こす問題と対処法

離職票の記載情報と労働者名簿(および関連する賃金台帳、勤怠記録など)との間に不一致があった場合、様々な問題が発生する可能性があります。

これらの問題は、企業側、退職者側双方に不利益をもたらすため、早期発見と適切な対処が求められます。

【不一致が引き起こす主な問題】

  • 失業給付の遅延・不支給:

    離職票の内容に誤りがあると、ハローワークでの審査が滞り、失業給付の支給が遅れたり、最悪の場合は受給資格なしと判断されたりする可能性があります。これにより、退職者の生活に大きな影響を及ぼします。

  • 再提出の手間とコスト:

    記載ミスが発覚した場合、企業は離職票を訂正して再提出する必要があります。これにより、余分な事務作業が発生し、時間とコストが無駄になります。

  • 企業への信頼低下・行政指導:

    不正確な離職票の発行は、退職者からの信頼を失うだけでなく、ハローワークから行政指導を受ける対象となる可能性もあります。企業イメージの低下にも繋がりかねません。

  • 法的な問題の発生:

    特に、離職理由の不正確な記載は、退職者との間でトラブルとなり、労働紛争に発展するリスクも孕んでいます。

このような問題を避けるためには、以下の対処法が有効です。

  • 複数人でのチェック体制の確立:

    離職票作成担当者だけでなく、別の人にも最終チェックを依頼するなど、複数人の目で確認する体制を整えましょう。

  • チェックリストの活用:

    離職票作成時に確認すべき項目をまとめたチェックリストを作成し、それに沿って漏れなく確認作業を行うことで、ヒューマンエラーを減らすことができます。

  • 定期的な労働者名簿・賃金台帳の更新:

    日々の勤怠や賃金変動をリアルタイムで正確に記録し、労働者名簿や賃金台帳を常に最新の状態に保つことが、離職票作成時の情報不一致を防ぐ最も基本的な対策です。

  • 不明点があれば専門家へ相談:

    少しでも記載に疑問がある場合は、自己判断せずに、ハローワークや社会保険労務士に相談することが最も確実な対処法です。

正確な情報管理と確認体制の強化は、企業のコンプライアンス遵守と、退職者の権利保護に繋がる重要な取り組みです。

※上記の情報は、2025年9月時点での一般的な情報に基づいています。最新の情報や個別のケースについては、管轄のハローワークにご確認ください。