離職票の書き方:1年未満・30日退職、80時間、7・8・9・11欄の記入例

退職時に受け取る「離職票」は、失業給付(基本手当)を受給するために不可欠な書類です。しかし、その書き方や各欄の記入方法は複雑で、戸惑う方も少なくありません。

特に、短期間での退職や特定の労働時間に関する要件、さらには各欄の正確な意味合いなど、知っておくべきポイントが数多くあります。本記事では、離職票の主要な欄に焦点を当て、その書き方や注意点を具体的に解説していきます。

離職票の基本:1年未満・30日退職でも申請できる?

離職票の役割と企業の発行義務

離職票は、失業給付(基本手当)の申請に必須となる公的な書類です。企業には、従業員の退職日の翌々日から10日以内に離職票を発行するための手続きを行う義務があります。

これにより、退職者はスムーズに失業給付の受給手続きを進めることができます。退職後の生活を支える大切な書類であることを認識しておきましょう。

短期間退職でも発行は可能か

「1年未満」や「30日」といった短期間で退職した場合でも、離職票は原則として発行されます。離職票の作成・発行に在籍期間の条件は設けられていないためです。

入社後1ヶ月以内など、どんなに短期間で退職した場合でも、退職者が希望すれば企業は離職票を作成・発行する義務があります。ただし、59歳以上の退職者は希望の有無にかかわらず原則発行が必要です。

離職票の入手までの流れと注意点

離職票は、企業がハローワークへ提出した「雇用保険被保険者離職証明書」に基づいて発行されます。通常は退職後2週間程度で退職者の手元に郵送されることが多いでしょう。

万が一、交付が遅れたり、内容に不備があったりすると、失業手当の受給手続きが遅れたり、給付額が減額されたりする可能性があります。不明な点があれば、企業またはハローワークに早めに確認することが重要です。

離職票 8欄:80時間や賃金支払基礎日数の記入方法

8欄の目的と記入の基本

離職票-2の8欄には、失業給付の受給資格に関わる「賃金支払基礎日数」を記入します。これは、離職日から遡った2年間のうち、賃金の支払対象となった日数を月ごとに記載する重要な項目です。

原則として、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が、受給資格期間としてカウントされます。この期間が通算して12ヶ月以上あることが、失業給付受給の基本的な条件となります。

賃金支払基礎日数11日の原則と例外(80時間ルール)

失業給付の受給資格では、通常、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が1ヶ月としてカウントされます。しかし、2020年8月1日以降に離職した方からは、新たなルールが適用されています。

それは、賃金支払基礎日数が11日未満の月でも、その月の労働時間が80時間以上あれば1ヶ月としてカウントされるというものです。これにより、パートタイマーなど、日数が少ない働き方でも受給資格を得やすくなりました。

80時間ルール適用時の注意点と備考欄の記入

もし賃金支払基礎日数が11日に満たない月があり、かつその月の労働時間が80時間以上である場合は、離職票の「⑬備考欄」に月の総勤務時間数を記入する必要があります。

この情報は、ハローワークが受給資格を判断する上で非常に重要となるため、正確な記入が求められます。賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月分に満たない場合は、「続紙」を使って遡って記載を続けることになります。

離職票 9欄と11欄:違いと記入のポイント

9欄(算定対象期間)の役割と記入方法

離職票-2の9欄は「算定対象期間」と表記され、失業給付の受給資格要件を満たす期間を明確にするためのものです。具体的には、離職日から遡った2年間(特定受給資格者等は1年間)が対象となります。

この期間内で、賃金支払基礎日数が11日以上(または労働時間80時間以上)の月を12ヶ月以上確保できているかを確認します。月ごとの賃金支払基礎日数と労働時間を正確に記入しましょう。

11欄(賃金支払対象期間)の役割と記入方法

一方、11欄は「賃金支払対象期間」であり、主に失業給付の支給額を算定するために使われます。退職前の6ヶ月間の平均賃金をもとに給付額が計算されるため、通常、離職日以前6ヶ月分の期間とその期間の賃金支払基礎日数を記載します。

賃金の締日を基準とし、当月の締日翌日から次月の締日までを1ヶ月として算出します。例えば、給料が毎月20日締めの場合は、21日から翌月20日までを1ヶ月とします。

両欄記入における共通の注意点

9欄、11欄ともに、賃金支払基礎日数の算出には共通のルールが適用されます。つまり、出勤日や有給休暇取得日など、賃金の支払対象となる日数が基礎日数となります。

両欄で必要な月数(9欄は原則12ヶ月、11欄は原則6ヶ月)に満たない場合は、「続紙」を使用して遡って記入を続ける必要があります。正確な情報を記載することで、失業給付の円滑な受給に繋がります。

離職票 7欄、5e、5(2)欄の重要事項

7欄(離職理由)の重要性とトラブル回避

離職票-2の7欄は「離職理由」を記入する非常に重要な項目です。この欄の記載内容によって、失業給付の支給開始時期や給付日数が大きく変わる可能性があるためです。

「自己都合退職」「会社都合退職」「契約期間満了」「定年退職」など、複数の選択肢から該当するものを選びます。離職理由については、労使間で意見の相違がある場合、トラブルの原因となることがあります。

そのため、企業は事前に退職者本人から署名をもらい、同意を得ておくことが重要です。これにより、後々の不要な摩擦を避けることができます。

離職理由の具体的な種類と選択

離職理由には、大きく分けて以下のような種類があります。それぞれ失業給付への影響が異なります。

  • 自己都合退職: 個人の都合による退職。原則として給付制限期間が設けられます。
  • 会社都合退職: 解雇や倒産など、会社側の都合による退職。特定受給資格者となり、給付制限が通常ありません。
  • 契約期間満了: 期間の定めのある労働契約が満了し、更新がなかった場合。特定理由離職者に該当する可能性があります。
  • 定年退職: 定年制度による退職。

自身の退職経緯に最も合致する理由を選択することが肝要です。不明な場合はハローワークに相談しましょう。

5e、5(2)欄(氏名・住所等)の基本と確認事項

離職票-2の5e欄には離職者の氏名を、5(2)欄には住所を記入します。これらの情報は、離職票が退職者の手元に確実に届くために不可欠です。

原則として退職時の住所を記入しますが、退職者の希望により退職後の住所を記入することも可能です。住所変更がある場合は、必ず企業にその旨を伝え、正確な情報を記載してもらうよう依頼しましょう。

被保険者番号や事業所番号、離職年月日なども正確に記載されているか、受け取った際に必ず確認するようにしてください。

離職票 a欄・b欄の確認と注意点

賃金欄(12欄)のA欄・B欄とは

離職票-2の12欄は「賃金額」を記入する部分です。ここには、A欄とB欄の二つの記入箇所があります。

  • A欄: 月給制や週給制など、期間を定めて賃金が支払われている場合に記入します。
  • B欄: 日給制や時給制、出来高払制など、労働時間や労働日数に応じて賃金が変動する場合に記入します。

自身の給与形態に応じて、正しい欄に賃金額が記載されているかを確認しましょう。この賃金額が、失業給付の計算の基礎となります。

賃金の対象となるもの、ならないもの

離職票に記入する賃金は、「労働の対価として支払われた賃金」が対象となります。これには、基本給、通勤手当、残業手当などが含まれます。

一方で、以下のものは賃金の対象から除外されます。

  • 臨時に支払われた賃金(結婚祝い金、災害見舞金など)
  • 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与、年2回の特別手当など)

これらの項目が誤って記載されていないか、受け取った離職票をしっかりと確認することが大切です。

離職票全体の確認と企業の保管期間

離職票を受け取ったら、記載されている氏名、住所、被保険者番号、離職年月日、そして何よりも離職理由と賃金額が正確であるかを必ず確認しましょう。記載内容に不備があると、失業給付の受給手続きが滞る原因となります。

万が一、内容に誤りがある場合は、速やかに企業に連絡して訂正を依頼してください。なお、企業は離職証明書を退職日から4年間保管する義務がありますが、期間を過ぎた場合の再発行はハローワークまたはe-Govを通じて行う必要があります。