概要: 離職票は失業手当の受給に不可欠な書類です。この記事では、離職票の基本的な書き方から、パート・アルバイトの場合、欠勤や賃金額の計算、離職理由の記載方法までを網羅的に解説します。スムーズな手続きのために、ぜひ参考にしてください。
退職時に会社から発行される「離職票」は、失業手当(基本手当)を受給するために不可欠な重要な書類です。正確な記入が求められるこの書類は、失業手当の支給額や受給期間に直接影響するため、その内容を正しく理解しておくことが非常に重要です。
本記事では、離職票の基本から、パート勤務の場合、欠勤があった場合の賃金額の計算方法、さらには離職理由の書き分け方まで、詳しく解説します。これから離職票を受け取る方、または記入方法に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
離職票とは?発行される条件と目的を知ろう
離職票の基本と種類:失業手当受給の第一歩
離職票とは、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、あなたが雇用保険の被保険者であったことを証明する公的な書類です。退職者が失業手当の受給を申請する際に、ハローワークへ提出が義務付けられています。
通常、退職日から約2週間程度で、会社を通じてハローワークから郵送されてきます。近年では利便性向上のため、2025年1月からはマイナポータルでの電子受け取りも可能になる予定です。
離職票は、以下の2種類の書類で構成されています。
- 離職票-1:主に雇用保険の資格喪失に関する情報が記載されており、失業手当の振込先口座などを本人が記入します。
- 離職票-2:あなたの離職理由や過去の賃金状況、賃金支払基礎日数などが詳細に記載されており、失業手当の支給額や期間を決定する上で最も重要な書類となります。
これらの書類を正確に準備することが、スムーズな失業手当受給の第一歩です。
離職票が発行される条件とは?対象者を確認しよう
離職票は、原則として雇用保険に加入していた従業員が退職した場合に発行されます。雇用保険の加入条件は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることです。
正社員だけでなく、パートやアルバイトの方もこの条件を満たしていれば、雇用保険に加入しており、離職時に離職票が発行されます。
ただし、離職票の発行には会社の義務と本人の希望が関わってきます。具体的には、以下のいずれかのケースで離職票が発行されます。
- 失業手当の受給を希望する場合、会社はハローワークに離職証明書を提出し、離職票を発行してもらう必要があります。
- 退職時に59歳以上である場合、本人の希望の有無にかかわらず、会社は離職証明書をハローワークに提出し、離職票を発行しなければならない義務があります。これは、高齢期の再就職支援の観点からです。
もし発行されない場合は、会社の人事・総務担当者に問い合わせるか、ハローワークに相談しましょう。
離職票の目的と重要性:なぜ正確な情報が必要か
離職票がこれほどまでに重要視される理由は、主に以下の2点に集約されます。
- 失業手当の支給額と支給期間を決定するため
- 失業手当の給付制限期間(支給開始までの待機期間)を決定するため
特に離職票-2に記載される「離職理由」は、失業手当の受給開始時期に大きく影響します。例えば、自己都合退職の場合、原則として2ヶ月間の給付制限期間が設けられますが、会社都合退職や、やむを得ない理由での自己都合退職(特定理由離職者)の場合、給付制限が適用されないことがあります。
また、過去の賃金状況や賃金支払基礎日数が正確に記載されていないと、失業手当の支給額が少なくなったり、受給資格を満たせないと判断されたりする可能性もあります。
そのため、離職票の内容、特に本人が記入する離職理由の意思表示欄や、会社が記入する賃金に関する情報については、必ず内容を確認し、不明点や誤りがあれば早めに会社やハローワークに確認することが非常に重要です。
離職票の基本!「基本日数」と「賃金額」の計算方法
賃金支払基礎日数とは?月給・時給別の計算ポイント
離職票に記載される「賃金支払基礎日数」とは、賃金の支払い対象となった労働日数を指します。この日数は、失業手当の受給資格期間(原則、離職日以前2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること)を満たしているかを確認する上で非常に重要です。
計算方法は、雇用形態によって異なります。
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月給制の場合
原則として、その月の暦日数(例:30日、31日)を記載します。ただし、欠勤控除(欠勤した日数分だけ給料が減額される制度)がある場合は、所定労働日数から欠勤日数を引いた日数となります。例えば、所定労働日数が20日の月に5日欠勤した場合、賃金支払基礎日数は15日と計算されます。
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日給・時給制の場合
実際に勤務した日数、つまり出勤日数をそのまま記載します。この日数には、有給休暇を取得した日や、会社の都合で休業となり休業手当が支給された日も含まれます。これにより、たとえ出勤していなくても、賃金の支払い基礎となった日数が確保されることになります。
この日数が不足していると、失業手当の受給資格が得られない可能性もあるため、特に注意が必要です。
賃金額の正確な計算:含まれるもの・含まれないもの
「賃金額」は、失業手当の支給額を算定する上で最も重要な項目の一つです。離職日以前の一定期間(原則2年間)に支払われた賃金の総額を基に、日額が決定されます。
賃金額に含まれるものと含まれないものには明確な基準があります。
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賃金に含まれるもの
基本給はもちろんのこと、以下の手当も含まれます。
- 休日手当、深夜手当などの時間外手当
- 技能手当、役職手当、住宅手当、家族手当などの各種手当
- 通勤手当
- 賞与(ボーナス)のうち、3ヶ月を超えて支給されるものを除く
特に通勤手当は、数ヶ月分をまとめて支給されるケースがありますが、その場合は1ヶ月相当額を各月に割り振って計上し、端数は最終月に計上するというルールがあります。
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賃金に含まれないもの
災害補償として支払われる休業補償費などは、労働の対価ではないため賃金には含まれません。
これらの計算は会社が行う項目ですが、もし記載されている賃金額に疑問がある場合は、自身の給与明細と照らし合わせて確認し、必要であれば会社の人事・総務部門に問い合わせることが大切です。
失業手当に直結!算定基礎となる期間と賃金
失業手当(基本手当)の支給額は、離職日以前2年間に支払われた賃金の総額を基に算出されます(ただし、65歳以上の離職者の場合は、離職日以前1年間が対象となります)。この期間を「算定基礎期間」と呼びます。
支給額の算定には、以下の条件を満たす月の賃金が使われます。
- 賃金支払基礎日数が11日以上ある月
- または、2020年の見直しにより、賃金の支払い基礎となる労働時間数が80時間以上ある月
これらの条件を満たした月が、原則として合計で12ヶ月以上必要となります。これを受給資格期間といい、この期間が満たされていないと失業手当の受給資格が得られません。
会社が離職証明書を作成する際には、離職日以前の1年間または2年間の給与情報を詳しく記載し、その中から上記の条件を満たす月を選び出して賃金額を計上します。これにより、失業手当の日額が決定されるため、この賃金額が正確であることは非常に重要です。
もし途中に長期の欠勤や休職期間があり、賃金の支払いがなかった月がある場合、その期間は算定基礎期間から除外されることがあります。離職票の賃金欄をしっかりと確認し、疑問点があればハローワークに相談しましょう。
パート・アルバイトの離職票:時給や短期・長期の場合の注意点
パート・アルバイトも対象!雇用保険加入条件と離職票
「パートやアルバイトだから離職票は関係ない」と考えている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。パートやアルバイトといった非正規雇用の方も、一定の条件を満たしていれば雇用保険の加入義務があり、退職時には正社員と同様に離職票が発行されます。
雇用保険の加入条件は以下の通りです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
これらの条件を満たしていれば、雇用形態にかかわらず、雇用保険の被保険者となります。したがって、退職する際には会社から離職票が発行され、失業手当の受給資格がある場合は申請が可能になります。
もし上記の条件を満たしているにもかかわらず雇用保険に加入していなかった場合は、会社に確認するか、ハローワークに相談することをお勧めします。未加入期間があったとしても、遡って加入手続きができる場合があります。
時給制の「賃金支払基礎日数」と「賃金額」の計算
パート・アルバイトの方で時給制の場合、離職票の「賃金支払基礎日数」と「賃金額」の計算には、いくつか特有の注意点があります。
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賃金支払基礎日数
時給制の場合、賃金支払基礎日数は実際に勤務した出勤日数が基本となります。たとえば、月に10日出勤していれば、賃金支払基礎日数は10日と記載されます。
また、有給休暇を取得した日や、会社都合で休業し休業手当が支給された日も、賃金支払基礎日数に含まれます。これにより、実労働日数が少なくても失業手当の受給資格を満たしやすくなります。
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賃金額
時給制の場合の賃金額は、基本給(時給×労働時間)に加えて、通勤手当、深夜手当、休日手当など、すべての労働の対価として支給された手当を含んだ総額が計上されます。
失業手当の受給資格期間の算定については、2020年の制度見直しにより、「賃金支払基礎日数が11日以上ある月」に加え、「労働時間数が80時間以上ある月」も算定対象として認められるようになりました。これにより、日数が少なくても長時間勤務しているパート・アルバイトの方も受給資格を満たしやすくなっています。
自身の給与明細をよく確認し、離職票の記載内容と相違がないかチェックしましょう。
短期雇用・長期雇用の注意点:受給資格期間の確保
パート・アルバイトの雇用期間の長さは、失業手当の受給資格に大きく影響します。
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受給資格期間の確保
失業手当を受給するためには、原則として離職日以前2年間のうちに、雇用保険に加入していた期間(被保険者期間)が通算して12ヶ月以上必要です。この「1ヶ月」は、賃金支払基礎日数が11日以上、または労働時間が80時間以上ある月を指します。
そのため、短期間の雇用契約を繰り返している場合や、月に数日しか勤務していない期間が長い場合、この受給資格期間を満たせない可能性があります。
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複数の事業所での勤務
もしあなたが複数の会社でパート・アルバイトとして雇用保険に加入していた期間がある場合、それぞれの被保険者期間を合算して受給資格期間を満たすことが可能です。ただし、それぞれの会社で離職票を発行してもらい、ハローワークに提出する必要があります。
短期雇用であっても、雇用保険の加入条件を満たしていれば離職票は発行されます。しかし、受給資格期間を満たしているかどうかが失業手当を受け取れるかの鍵となりますので、ご自身の勤務実績と照らし合わせて確認し、不明な場合はハローワークで相談することをお勧めします。
離職理由の記載方法:自己都合・会社都合の書き分けと具体例
離職理由の重要性:失業手当への影響を理解しよう
離職票-2に記載される「離職理由」は、失業手当の支給時期と支給期間に直接的に影響するため、非常に重要な項目です。大きく分けて「自己都合退職」と「会社都合退職」があり、それぞれで取り扱いが異なります。
具体的には、以下の点が異なります。
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給付制限期間の有無
自己都合退職の場合、原則として2ヶ月間の給付制限期間が設けられ、この期間は失業手当が支給されません。一方、会社都合退職の場合、給付制限期間はありません。
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受給期間
会社都合退職の場合、自己都合退職よりも所定給付日数が長くなる傾向があります。
離職票-2には、会社が記載した離職理由と、それに対する本人の「異議の有無」を記入する欄があります。会社の記載内容と自分の認識が異なる場合は、必ず「異議あり」にチェックし、具体的な理由を書き添えましょう。
この意思表示が、あなたの失業手当受給に大きく影響することを理解しておくことが大切です。
自己都合退職の記載例と注意点
自己都合退職とは、労働者自身の意思で退職する場合を指します。一般的には「一身上の都合により退職」と記載されることが多いですが、離職票-2には具体的な理由を記入する欄があります。
記載例としては、以下のようなものがあります。
- 「キャリアアップのため、より専門性の高い職務に就くことを希望したため」
- 「家族の介護が必要となり、勤務継続が困難になったため」
- 「転居に伴い、通勤が困難になったため」
これらの理由が客観的に妥当と認められる場合は、「特定理由離職者」と認定され、自己都合退職であっても給付制限期間が適用されないケースがあります。例えば、親族の介護のために通勤困難な地域へ転居した場合や、結婚による転居などもこれに該当し得ます。
ただし、単なる「飽きたから」「他にやりたいことができたから」といった理由では、特定理由離職者には認定されません。
会社が記載した離職理由が「自己都合」となっていても、自分の退職理由が特定理由離職者の条件に当てはまる可能性があると感じたら、ハローワークに相談してみましょう。その際、それを裏付ける客観的な証拠(転居先の住民票、家族の介護証明など)を準備しておくとスムーズです。
会社都合退職の記載例と具体例
会社都合退職とは、会社の経営上の都合や、労働環境の問題など、会社側の責任によって労働者が退職せざるを得なくなった場合を指します。会社都合退職の場合、失業手当の給付制限期間がなく、所定給付日数が長くなる傾向があるため、離職理由の正確な把握は非常に重要です。
具体的な会社都合退職の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 会社の倒産
- 事業所の閉鎖や移転により、通勤が著しく困難になった場合
- 解雇(懲戒解雇を除く)
- 人員整理(リストラ)
- 退職勧奨
- ハラスメント(セクハラ、パワハラなど)が原因で退職せざるを得なかった場合
- 賃金の未払い、大幅な減額があった場合
- 労働条件が、採用時のそれと著しく異なった場合
これらの場合、離職票には具体的な事由が記載されます。もし会社が記載した離職理由が自己都合となっていても、実際には上記のような会社都合に該当すると考える場合、離職票-2の「異議の有無」欄で「異議あり」にチェックを入れ、具体的な事情を詳細に記入し、ハローワークで相談してください。
その際、ハラスメントの証拠や、労働条件の変更に関する書面など、客観的な証拠を提示できると、あなたの主張が認められやすくなります。</
離職票記載で迷ったら?問い合わせ先と見本で確認しよう
会社の人事・総務部への問い合わせ:まず確認すべきこと
離職票について疑問が生じた場合、まず最初に確認すべきは、退職した会社の人事・総務担当者です。特に、離職票の発行状況や、会社が記入する項目(賃金額、賃金支払基礎日数、離職理由など)について不明な点があれば、積極的に問い合わせましょう。
具体的な問い合わせ内容は以下の通りです。
- 離職票の発行が遅れている場合の、発行予定日の確認
- 離職票-2に記載されている賃金額や賃金支払基礎日数が、自身の給与明細と一致しているかの確認
- 会社が記載した離職理由が、自分の認識と異なる場合の確認と擦り合わせ
- 自身で記入する箇所(離職票-1の振込口座、離職票-2の離職理由の意思表示など)の記入方法の確認
もし記入内容に誤りがあった場合でも、捨印を押して訂正することが可能ですので、慌てずに担当者に相談してください。ただし、会社と意見が対立するようなデリケートな問題については、次のハローワークへの相談も視野に入れるべきです。
ハローワークへの相談:専門機関の活用
会社との話し合いで解決できない問題や、離職票の記載内容について専門的な判断が必要な場合は、ハローワークに相談しましょう。ハローワークは雇用保険の専門機関であり、離職票の作成・提出、失業手当の支給に関する一切の手続きを管轄しています。
特に以下のようなケースでは、ハローワークへの相談が有効です。
- 会社が離職票の発行に応じない、または著しく遅れている場合
- 会社が記載した離職理由と、自身の認識が大きく異なる場合(自己都合と会社都合の認識の相違など)
- 失業手当の受給資格があるか不安な場合や、具体的な手続き方法が分からない場合
- 離職票の記入内容に重大な誤りがあり、会社での訂正が困難な場合
相談に行く際は、発行された離職票や給与明細、身分証明書、印鑑など、関連する書類を持参しましょう。ハローワークの担当者は、個別の状況に応じて適切なアドバイスや手続きの支援を行ってくれます。
離職票の見本と記入例:インターネットでの情報活用
離職票の具体的な記入方法や、各項目の意味についてさらに詳しく知りたい場合は、インターネット上の情報を活用することも非常に有効です。特に、厚生労働省やハローワークの公式ウェブサイトでは、離職票の見本や詳細な記入例が公開されています。
これらの見本や記入例を参照することで、以下の点が確認できます。
- 離職票-1、離職票-2の各項目の具体的な記入箇所と意味
- 本人が記入すべき「氏名」「振込口座」「離職理由の意思表示」などの正確な書き方
- 会社が記入する「賃金支払基礎日数」「賃金額」の計算方法の具体例
- 間違いやすいポイントや、よくある疑問点に対するQ&A
事前に見本を確認し、不明な点を整理しておくことで、会社やハローワークへの問い合わせもスムーズに進められます。
正確な離職票の記入と適切な手続きは、失業手当をスムーズに受け取るために非常に重要です。もし少しでも不安な点があれば、一人で抱え込まず、専門機関のサポートを積極的に利用しましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 離職票はいつ発行されますか?
A: 原則として、退職後10日以内に会社からハローワークへ提出され、その後、離職票が発行されます。退職後しばらくしても届かない場合は、会社に確認してみましょう。
Q: 「基本日数」とは何ですか?
A: 基本日数とは、失業手当の算定期間となる雇用保険に加入していた日数のことです。原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある場合に基本手当が受給できます。
Q: パートやアルバイトでも離職票はもらえますか?
A: はい、パートやアルバイトでも、一定の条件(雇用保険の被保険者期間など)を満たせば離職票が発行されます。時給や勤続期間によって計算方法が異なる場合があるので注意が必要です。
Q: 欠勤が多い場合、「基本日数」はどうなりますか?
A: 欠勤が続いても、雇用保険の被保険者期間としてカウントされる日数はあります。ただし、休職期間が長すぎる場合や、賃金が極端に低い場合は、基本手当の受給資格に影響する可能性もあります。
Q: 離職理由で「自己都合」と「会社都合」の違いは何ですか?
A: 「自己都合」は、本人の意思で退職した場合(転職、個人的な理由など)を指します。「会社都合」は、会社の倒産、解雇、契約期間満了など、会社側の理由による退職を指します。離職票の記載は、失業手当の給付日数に大きく影響します。