退職は新たなキャリアのスタートですが、それに伴う事務手続きの中には、少し複雑に感じるものもあります。特に「源泉徴収票」は、退職後の生活や税金に関わる非常に重要な書類です。

「いつ受け取れるの?」「どうやって使うの?」「もしもらえなかったらどうすればいいの?」そんな疑問をお持ちの方のために、この記事では退職後の源泉徴収票について、受け取り方から万が一の対処法まで、最新かつ正確な情報で詳しく解説します。

転職先の年末調整や確定申告、各種手続きで困らないよう、ぜひこの記事を参考に、大切な源泉徴収票を適切に管理しましょう。

  1. 退職後に源泉徴収票が発行される時期と理由
    1. 1. 源泉徴収票とは?その重要性
    2. 2. 退職後の源泉徴収票が発行される一般的な時期
    3. 3. なぜ退職後に源泉徴収票が必要になるのか?
  2. 源泉徴収票を前の職場・バイト先に請求する方法
    1. 1. 請求する前に確認すべきことと準備
    2. 2. 勤務先への連絡方法と依頼手順
    3. 3. 再発行をスムーズにするためのポイントと注意点
  3. 源泉徴収票が間に合わない!転職・無職の場合の注意点
    1. 1. 転職先での年末調整に間に合わない場合の対処法
    2. 2. 無職期間があり確定申告が必要な場合の注意点
    3. 3. 会社が源泉徴収票を発行してくれない場合の最終手段
  4. 源泉徴収票をもらってない・未提出だとどうなる?
    1. 1. 年末調整・確定申告ができないことによる影響
    2. 2. 意図せず脱税状態になるリスク
    3. 3. 税務署からの連絡や罰則の可能性
  5. 昔の会社・バイト先の源泉徴収票を再発行してもらうには
    1. 1. 何年前までさかのぼって再発行が可能か?
    2. 2. 倒産した会社や連絡が取れない場合の対処法
    3. 3. 年金受給者の源泉徴収票再発行について
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 退職後、源泉徴収票はいつ頃もらえますか?
    2. Q: 前の職場・バイト先に源泉徴収票を請求するにはどうすればいいですか?
    3. Q: 源泉徴収票が間に合わない場合、転職や無職だとどうなりますか?
    4. Q: 源泉徴収票をもらってない・未提出だと、無収入だとバレますか?
    5. Q: 昔の会社・バイト先の源泉徴収票を紛失しました。再発行してもらえますか?

退職後に源泉徴収票が発行される時期と理由

退職後に受け取る源泉徴収票は、あなたの1年間の所得と納税状況を証明する大切な書類です。まずは、その基本的な役割と、なぜ退職後に発行されるのかについて理解を深めましょう。

1. 源泉徴収票とは?その重要性

源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの1年間におけるあなたの給与・賞与などの収入総額と、そこから天引きされた所得税額が詳細に記載されている公的な書類です。会社員にとっては、自身の収入と納税額を正確に把握するための、いわば「収入と納税の成績表」のようなものと言えるでしょう。

この書類がなぜ重要かというと、主に以下の場面でその真価を発揮するからです。

  • 転職先での年末調整: 年内に再就職した場合、新しい会社で正確な年末調整を行うために、前職の収入と税額を合算する必要があります。
  • 確定申告: 年内に再就職しなかったり、医療費控除や住宅ローン控除などを受けるために自分で確定申告を行う場合に必須です。
  • 各種手続きでの所得証明: 住宅ローンや自動車ローンの申し込み、賃貸契約、保育園や幼稚園の入園申請、奨学金の申請など、様々な公的・私的な手続きであなたの所得を証明する書類として利用されます。

これらの手続きを進める上で、源泉徴収票がなければ手続きが滞ったり、場合によっては利用できないケースも出てくるため、非常に重要な書類として扱われます。

2. 退職後の源泉徴収票が発行される一般的な時期

退職後の源泉徴収票は、所得税法によって発行が義務付けられています。通常、会社は従業員が退職する際に、以下のいずれかのタイミングで源泉徴収票を発行します。

  • 退職時または最終給与支払い日: 原則として、会社は従業員が退職した日、またはその年の最終給与が支払われた日から1ヶ月以内に源泉徴収票を発行する義務があります。多くの企業では、最終給与計算後に郵送されるか、退職手続きの際に手渡されることが多いです。
  • 年末調整後(年の途中の退職ではない場合): もしあなたが年末まで勤務し、退職せずに年末調整を会社で行った場合は、通常は12月または翌年1月頃に年末調整の結果とともに発行されます。

ただし、本記事のテーマは「退職後」の源泉徴収票ですので、主に年の途中で退職した場合の受け取り時期が焦点となります。会社の規模や経理処理の都合によっては、1ヶ月以上かかる場合も稀にありますが、基本的にはこの期間内に受け取ることができると認識しておきましょう。もし期限を過ぎても届かない場合は、早めに会社に確認の連絡を入れることが大切です。

3. なぜ退職後に源泉徴収票が必要になるのか?

退職後に源泉徴収票が必要となるのは、主に「税金の精算」と「所得の証明」という二つの大きな理由があるからです。

  • 転職先での年末調整のため:

    年の途中で退職し、年内に新しい会社に転職した場合、新しい会社で年末調整を行うことになります。この際、転職前の会社での収入と、そこから天引きされた所得税額を新しい会社に伝える必要があります。源泉徴収票にはこれらの情報が詳細に記載されているため、前職と現職の収入を合算して正確な年間の所得税額を計算するために不可欠なのです。これがないと、正しい税額が算出されず、払いすぎた税金が還付されなかったり、逆に税金が不足して追徴課税されたりする可能性があります。

  • 確定申告のため:

    年内に再就職しなかった場合や、年末調整では対応できない特定の控除(医療費控除、住宅ローン控除の初年度など)を受けたい場合は、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告には、年間の全ての所得を証明する書類として、退職した会社からの源泉徴収票が必須となります。

  • 各種手続きでの所得証明のため:

    先述の通り、住宅や自動車のローン申請、賃貸物件の契約、奨学金の申請、保育園・幼稚園の入園申請など、あなたの「支払い能力」や「所得状況」を証明する必要がある多くの場面で、公的な証明書として源泉徴収票の提出を求められます。これは、源泉徴収票が最も信頼性の高い所得証明の一つだからです。

このように、退職後の源泉徴収票は、あなたの金銭的な信用や税務上の義務を果たす上で、極めて重要な役割を担っているのです。

源泉徴収票を前の職場・バイト先に請求する方法

「退職したけど源泉徴収票が届かない」「なくしてしまった」という場合でも、ご安心ください。前の職場やバイト先に再発行を依頼することができます。ここでは、スムーズに再発行してもらうための具体的な方法と注意点について解説します。

1. 請求する前に確認すべきことと準備

再発行を依頼する前に、まずは以下の点を確認し、必要な情報を準備しておきましょう。これがスムーズな手続きの第一歩となります。

  • 自宅への郵送状況の確認:

    退職時に「後日郵送します」と言われた場合、本当に届いていないか、郵便物の中に紛れていないか、念のため自宅の郵便物や過去の書類をくまなく確認しましょう。特に年末年始は、他の書類に埋もれてしまうこともあります。

  • いつの源泉徴収票が必要か明確にする:

    「〇年分の源泉徴収票」と具体的に伝えることが重要です。例えば、2023年中に退職したなら「2023年分の源泉徴収票」が必要です。複数の年次分が必要な場合は、すべて伝えてください。

  • 本人確認に必要な情報の準備:

    会社側は本人確認のため、いくつかの情報を求めてきます。以下の情報は手元に準備しておきましょう。

    • 氏名(退職時の氏名、結婚などで旧姓がある場合は旧姓も)
    • 生年月日
    • 在籍期間(〇年〇月〇日~〇年〇月〇日まで)
    • 当時の住所
    • 社員番号、従業員コード、保険証番号など(記憶にあれば)
  • 当時の給与明細の有無:

    もし給与明細を保管している場合は、それらも手元に準備しておくと、会社側が情報を特定しやすくなる場合があります。

これらの情報を事前にまとめておくことで、会社とのやり取りが円滑に進み、再発行までの時間短縮につながります。

2. 勤務先への連絡方法と依頼手順

準備が整ったら、実際に前の勤務先へ連絡して再発行を依頼しましょう。以下に一般的な手順とポイントをまとめました。

  1. 連絡先の特定:

    まずは、退職した会社の総務部、経理部、または人事部が源泉徴収票の発行を担当している部署です。中小企業の場合は、代表電話に連絡し、源泉徴収票の再発行について相談したい旨を伝えましょう。

  2. 連絡手段の選択:

    • 電話: 最も一般的で、その場で状況確認や不明点の解消ができるため効率的です。
    • メール: 書面で依頼内容を残せるため、認識違いを防げます。ただし、返信までに時間がかかることがあります。
    • 書面(郵送): 確実性はありますが、最も時間がかかります。電話やメールで連絡が取れない場合の最終手段として検討しましょう。

    電話で依頼する場合でも、念のためメールで内容を再確認してもらうとより確実です。

  3. 依頼内容の伝達:

    連絡の際は、前項で準備した情報を正確に伝えます。「〇年分の源泉徴収票の再発行をお願いしたい」と明確に伝え、必要に応じて身分証明書の提示などを求められた場合は、指示に従いましょう。

  4. 受け取り方法の確認:

    一般的には、自宅住所宛に郵送してもらうケースが多いです。その場合、郵送先の住所を正確に伝えましょう。会社によっては、直接取りに来ることを求められる場合もありますので、その際は事前にアポイントメントを取り、身分証明書を持参してください。

  5. 発行までの期間と費用の確認:

    再発行には通常、数日から1週間程度かかりますが、会社の状況(繁忙期、担当者の不在など)によっては数週間かかることもあります。発行にかかる期間と、費用が発生するかどうか(通常は無料ですが、郵送費実費などを求められる可能性もゼロではありません)を確認しておきましょう。

連絡の際は、元職場への敬意を忘れず、丁寧な言葉遣いを心がけることがスムーズな対応を引き出すポイントです。

3. 再発行をスムーズにするためのポイントと注意点

再発行を依頼する際に、よりスムーズに進めるためのいくつかのポイントと、知っておくべき注意点があります。

  • 丁寧な言葉遣いを心がける:

    退職した会社とはいえ、源泉徴収票の発行は会社側の事務作業であり、協力をお願いする立場です。丁寧な言葉遣いと感謝の気持ちを伝えることで、相手も気持ちよく対応してくれるでしょう。感情的にならず、冷静に状況を説明することが大切です。

  • 連絡先の複数確認:

    担当部署の連絡先が不明な場合や、連絡が取れない場合は、会社の代表電話番号にかけ、事情を説明して担当部署へ繋いでもらうか、連絡先を教えてもらいましょう。また、もし当時の同僚や信頼できる知人がまだ在籍しているなら、内々に相談して担当部署の情報を得るのも一つの手かもしれません。

  • 発行義務の認識:

    会社には所得税法により源泉徴収票の発行義務があります。万が一、再発行を拒否されるようなことがあれば、この義務についてやんわりと伝えることも可能です。ただし、まずは友好的な解決を目指しましょう。

  • 期間に余裕を持って依頼する:

    年末調整や確定申告の時期(翌年1~3月)は、再発行依頼が集中し、発行までに通常よりも時間がかかることがあります。また、引っ越しシーズンなど郵便が混み合う時期も遅延のリスクがあります。必要な時期より1ヶ月程度の余裕を持って依頼することをおすすめします。

  • 給与明細の保管の重要性:

    源泉徴収票が何らかの理由で再発行できない場合でも、すべての給与明細が揃っていれば、それを元に自分で収入・納税額を計算し、確定申告時に参考書類として利用できる可能性があります。ただし、これはあくまで最終手段であり、事前に税務署に相談して指示を仰ぐ必要があります。日頃から給与明細は大切に保管しておきましょう。

これらのポイントを押さえることで、不必要なトラブルを避け、確実に源泉徴収票を再発行してもらえる可能性が高まります。

源泉徴収票が間に合わない!転職・無職の場合の注意点

転職先の年末調整の期限が迫っているのに源泉徴収票が届かない、あるいは無職期間があり確定申告が必要なのに手元にない、という状況は焦るものです。ここでは、そのような緊急時の対処法と、源泉徴収票がない場合の注意点について解説します。

1. 転職先での年末調整に間に合わない場合の対処法

新しい会社に転職した場合、通常は年末調整の時期(11月~12月頃)に、前職の源泉徴収票の提出を求められます。もし提出期限までに間に合わない場合は、以下の方法で対処しましょう。

  • まずは転職先の会社に相談する:

    提出が遅れる旨を正直に、そして速やかに人事・経理担当者に伝えましょう。多くの場合、会社側は提出が間に合わない従業員に対して、「ご自身で確定申告を行ってください」と指示を出します。会社によっては、年末調整後に別途提出を受け付けてくれる場合もありますが、これは稀なケースです。

  • 自分で確定申告を行う:

    会社が年末調整をできない場合、あなた自身で確定申告を行う必要があります。確定申告では、その年の1月1日から12月31日までのすべての所得(転職前と転職後の給与所得など)を合算し、正確な所得税額を計算して申告します。この確定申告には、遅れてでも前職の源泉徴収票が必須となるため、引き続き前の会社に発行を依頼し続けてください。

    確定申告の提出期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日までです。この期間内に、税務署の窓口、郵送、またはe-Tax(電子申告)を通じて手続きを行います。

  • 一時的な対応について:

    もし年末調整の期限が差し迫っており、源泉徴収票の入手が絶望的な場合でも、手元の給与明細書が全て揃っていれば、それを基に暫定的に年末調整を進めることを許可される場合があります。しかし、これはあくまで応急処置であり、最終的には源泉徴収票に基づく確定申告が必須です。給与明細はあくまで参考資料であり、正式な書類ではないため、税務署の指示を仰ぐか、最終的には確定申告で正しい情報に基づいて申告し直す必要があります。

いずれにせよ、源泉徴収票は確定申告には不可欠なため、遅れても必ず入手するように努力しましょう。

2. 無職期間があり確定申告が必要な場合の注意点

年の途中で退職し、その後、年内に再就職しなかった場合や、扶養に入ったものの年末調整の対象とならない場合は、基本的にご自身で確定申告を行う必要があります。この場合、源泉徴収票がないと大きな不利益を被る可能性があるため、以下の点に注意しましょう。

  • 税金が還付される可能性が高い:

    会社員が毎月支払っている所得税は、その時点での給与額に基づいた「概算額」です。年の途中で退職し、その後の収入が減少または途絶えると、年間の所得額が当初の見込みよりも少なくなることがほとんどです。そのため、年末調整や確定申告を行うことで、すでに払いすぎた所得税が還付金として戻ってくる可能性が非常に高いです。

  • 各種控除の適用:

    医療費控除やふるさと納税による寄付金控除など、年末調整では対応できない税額控除を適用するためには、確定申告が必須です。これらの控除を受けることで、さらに還付金が増える可能性があります。

  • 源泉徴収票の入手は必須:

    確定申告には、退職した会社の源泉徴収票が不可欠です。これがないと、前職の収入と税額を正確に申告することができません。そのため、無職期間がある場合でも、前の職場に連絡して源泉徴収票を必ず入手してください。

  • 住民税への影響:

    所得税の確定申告を行うことで、その情報が自治体に送られ、翌年の住民税額が適切に計算されます。もし確定申告を怠ると、所得が正しく把握されず、不適切な住民税額が課されたり、所得証明が必要な場面で支障が出たりする可能性があります。

無職期間があったからといって確定申告が不要と安易に考えず、自身の税金がどうなるのかを正確に把握し、必要な手続きを漏れなく行うことが大切です。

3. 会社が源泉徴収票を発行してくれない場合の最終手段

前の会社に何度依頼しても源泉徴収票を発行してくれない、あるいは連絡が取れない、といった事態に陥ることも稀にあります。しかし、会社には源泉徴収票の発行義務があり、拒否することはできません。このような場合の最終手段と対処法を知っておきましょう。

  • 税務署への相談:

    再三の依頼にもかかわらず会社が応じない場合は、あなたの住所地を管轄する税務署に相談してください。税務署は税法に基づき、会社に対して発行を指導することができます。

  • 「源泉徴収票不交付の届出書」の提出:

    税務署で「源泉徴収票不交付の届出書」を入手し、必要事項を記入して提出します。この届出書を提出すると、税務署から会社へ発行を促す連絡が入ることが一般的です。これにより、会社が重い腰を上げ、源泉徴収票を発行してくれる可能性が高まります。

    ただし、この届出書を提出しても税務署があなたの源泉徴収票を代わりに発行してくれるわけではない点に注意が必要です。あくまで会社への指導を求めるための手続きです。

  • 給与明細での代用(税務署の指示のもと):

    もしすべての給与明細書が手元にあり、かつ税務署の許可が得られれば、それらを基に確定申告を行うことが可能な場合があります。しかし、これは例外的な対応であり、必ず事前に税務署に相談し、指示を仰ぐ必要があります。給与明細だけでは控除額などの情報が不足している場合もあるため、注意が必要です。

  • 専門家への相談:

    状況が複雑で解決が難しい場合や、会社との関係が著しく悪化している場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。法的なアドバイスや、会社への交渉代行などを依頼できる可能性があります。

諦めずに、これらの方法を試すことで、最終的には源泉徴収票を入手できるか、代替手段で対応できる道が開けるはずです。

源泉徴収票をもらってない・未提出だとどうなる?

「源泉徴収票がないまま年末調整や確定申告の時期を過ごしてしまったらどうなるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。ここでは、源泉徴収票をもらっていない、あるいは提出しなかった場合に生じうる影響について詳しく解説します。

1. 年末調整・確定申告ができないことによる影響

源泉徴収票が手元にない、または提出しなかった場合、年末調整や確定申告が正しく行えません。これにより、以下のような影響が生じる可能性があります。

  • 所得税の過払い・追徴課税:

    会社員が毎月給与から天引きされている所得税は、年間所得を予測して計算された「概算額」です。年の途中で退職した場合、年間の所得額が予測よりも大幅に減ることが一般的です。源泉徴収票がないと、この過払いを精算する年末調整や確定申告ができず、結果として払いすぎた税金が還付されません。逆に、複数のアルバイトを掛け持ちしていた場合など、所得が正しく計算されないことで、本来納めるべき税額が不足し、後から追徴課税される可能性もあります。

  • 各種控除が受けられない:

    医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除、生命保険料控除、iDeCo(個人型確定拠出年金)の所得控除など、様々な税額控除や所得控除は、年末調整や確定申告を通じて適用されます。源泉徴収票がなければ、これらの控除を適用できず、支払うべき税金が不必要に高くなってしまいます。

  • 住民税や社会保険料への影響:

    所得税の確定申告の情報は、地方自治体に送られ、翌年度の住民税額の計算に利用されます。また、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料の計算にも影響を与えます。源泉徴収票がないことで所得が正しく把握されないと、これらの料金が不適切に計算され、不利益を被る可能性があります。

源泉徴収票がないことは、単に書類がないだけでなく、経済的な損失や不利益に直結するため、必ず入手・提出するようにしましょう。

2. 意図せず脱税状態になるリスク

「源泉徴収票を提出しないと脱税になるの?」と心配する方もいますが、厳密には、源泉徴収票の未提出そのものが直ちに脱税行為となるわけではありません。

多くの会社員の場合、給与から所得税が源泉徴収(天引き)されているため、税金はすでに納められています。しかし、源泉徴収票がないことによって、結果的に以下のようなリスクが生じ、意図せず脱税状態とみなされる可能性もあります。

  • 所得の過少申告リスク:

    複数の収入源がある場合(例:副業、複数のアルバイト)や、控除額が正しく反映されていない場合、源泉徴収票がないと正確な所得額を把握できず、本来よりも少ない所得で申告してしまうことがあります。これが結果的に「過少申告」となり、税務調査の対象となる可能性があります。

  • 税務署からの督促:

    たとえ源泉徴収票が提出されなくても、会社は税務署に「給与支払報告書」を提出しています。そのため、税務署はあなたの所得情報を把握しています。確定申告が必要な状況で申告がなかった場合、数年後に税務署から「お尋ね」の連絡が来ることがあります。この連絡を無視したり、適切な対応を取らなかったりすると、税務署があなたを脱税行為と判断する可能性も否定できません。

  • 公的手続きでの不利益:

    住宅ローンや自動車ローンの審査、保育園の入園申請など、公的な手続きで所得を証明する書類の提出が求められた際に、源泉徴収票を提出できないと手続きが進まないだけでなく、信用に問題があるとみなされる可能性もあります。

このように、源泉徴収票がないことは、あなたの納税状況や社会的信用に大きな影響を与える可能性があるため、軽視せずに対応することが重要です。

3. 税務署からの連絡や罰則の可能性

源泉徴収票がないまま放置し、適切な年末調整や確定申告を行わなかった場合、税務署から連絡が来たり、最悪の場合、罰則が課される可能性があります。これらは決して他人事ではありません。

  • 税務署からの「お尋ね」:

    先述の通り、会社が税務署に提出する「給与支払報告書」により、税務署はあなたの所得を把握しています。確定申告の義務があるにもかかわらず申告がない場合、数年後に税務署から「申告についてのお尋ね」という書類が送られてくることがあります。これは税務調査の一歩手前の段階であり、この時点で速やかに申告を行う必要があります。

  • 追徴課税と延滞税:

    もし、本来納めるべき税金を納めていなかったことが判明した場合、不足していた税金(本税)に加えて、以下の税金が課されます。

    • 過少申告加算税:

      申告した税額が本来の税額より少なかった場合に課されます。不足額に対して原則10%が加算されます。

    • 無申告加算税:

      確定申告が必要な人が期限までに申告しなかった場合に課されます。納付すべき税額に対して原則15%(50万円を超える部分は20%)が加算されます。

    • 延滞税:

      納付期限までに税金を納めなかった場合に、その遅延日数に応じて課される利息のようなものです。利率は年によって変動しますが、高率になることがあります。

    これらの加算税や延滞税は、本来納めるべき税額を大きく上回る場合があり、経済的な負担が大きくなります。故意でなくても、申告漏れがあれば対象となるため注意が必要です。

  • 社会的信用の失墜:

    税金を適切に納めないことは、個人の社会的信用を損なう行為です。将来的なローン審査や事業の許認可などに悪影響を及ぼす可能性も考慮する必要があります。

源泉徴収票は、これらのリスクを避けるためにも、必ず適切に入手し、必要な手続きを行うための最も重要な書類であることを認識しておきましょう。

昔の会社・バイト先の源泉徴収票を再発行してもらうには

「昔の会社の源泉徴収票が急に必要になった!」という場合でも、諦める必要はありません。過去の源泉徴収票も、一定期間内であれば再発行してもらうことが可能です。ここでは、何年前までさかのぼれるのか、また会社が倒産していた場合の対処法、そして年金受給者の源泉徴収票について解説します。

1. 何年前までさかのぼって再発行が可能か?

「昔の源泉徴収票が必要になったけど、何年前まで再発行してもらえるの?」という疑問を持つ方もいるでしょう。これには、税法上の規定が関係しています。

  • 原則として「5年」が目安:

    所得税法には、企業が給与支払に関する帳簿書類を7年間保存する義務がある、と定められています。しかし、源泉徴収票の再発行義務については、過去の所得に関する権利・義務の期間である「5年前まで」が一般的とされています。つまり、基本的には過去5年分の源泉徴収票であれば、会社に再発行を依頼すれば応じてもらえる可能性が高いでしょう。

  • 会社によって対応は異なる可能性も:

    あくまで目安であり、会社によっては独自のルールやデータの保存期間が異なる場合があります。例えば、電子データで長期保存している会社であれば、5年を超えても対応してくれるケースもゼロではありません。まずは、問い合わせてみることが重要です。

  • 古いほど再発行が難しい理由:

    あまりに古い年次の源泉徴収票の場合、以下のような理由で再発行が難しくなることがあります。

    • 当時のデータが見つからない、またはシステムが変更されアクセスが困難
    • 担当者が変わっており、当時の状況を把握している人がいない
    • 会社の合併や事業売却により、担当部署や連絡先が不明

    これらの事情も考慮し、できるだけ早めに、そして必要な年次を明確にして依頼するようにしましょう。

必要な年次が5年以上前の場合は、再発行が難しい可能性も考慮しつつ、ダメ元でも一度連絡を取ってみる価値は十分にあります。

2. 倒産した会社や連絡が取れない場合の対処法

源泉徴収票が必要なのに、会社が倒産してしまったり、連絡先が不明でどこにも連絡が取れない、といった最悪のケースに直面することもあります。しかし、そのような場合でも、諦める必要はありません。以下の方法を試しましょう。

  1. 管轄の税務署に相談する:

    会社が倒産している、または連絡が取れない場合、最も有効な手段は、ご自身の住所地を管轄する税務署に相談することです。税務署は、すべての会社から「給与支払報告書」を受け取っているため、倒産した会社の給与情報も把握している可能性があります。

  2. 「源泉徴収票不交付の届出書」の提出:

    会社が倒産等で源泉徴収票を発行できない場合でも、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することができます。この届出書を提出することで、税務署側で状況を把握し、何らかの対応を検討してもらえる可能性があります。この書類を提出しても税務署が源泉徴収票を代わりに発行するわけではありませんが、税務署が持つ情報を元に、確定申告に関するアドバイスや指示を受けることができます。

  3. 手元の給与明細などを活用する:

    もし当時の給与明細書が全て手元に保管されていれば、それを基に自分で年間の収入額や社会保険料、所得税額を計算し、確定申告に役立てることができます。ただし、この場合でも、必ず事前に税務署に相談し、給与明細だけで確定申告ができるか、またその際の具体的な手続きについて指示を仰ぐことが不可欠です。

  4. 労働基準監督署への相談:

    もし源泉徴収票以外の問題(給与の未払い、退職金未払いなど)も絡んでいる場合は、労働基準監督署への相談も視野に入れることができます。労働基準監督署は、労働者の権利保護を目的としています。

会社がなくなってしまっても、税務署は最後の砦となります。まずは諦めずに税務署へ足を運び、相談してみましょう。

3. 年金受給者の源泉徴収票再発行について

年金を受給している方の場合、源泉徴収票の扱いが会社員とは異なります。年金受給者の源泉徴収票は、勤務先からではなく、年金支給元から発行されます。

  • 発行元は「日本年金機構」など:

    老齢年金など、公的年金を受給している方の源泉徴収票は、日本年金機構から発行されます。企業年金や個人年金を受給している場合は、それぞれの運営団体が発行元となります。

  • 受け取り時期:

    通常、毎年1月頃に、前年分の年金振込通知書とともに郵送されてきます。これは、年金も所得税の課税対象となるため、確定申告や各種控除の申請に必要となるからです。

  • 再発行の依頼方法(日本年金機構の場合):

    もし年金に関する源泉徴収票を紛失してしまった場合は、以下の方法で再発行を依頼できます。

    • ねんきんダイヤルへ電話: 「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165、または03-6709-1165)に電話し、再発行を依頼します。自動音声ガイダンスに従い、必要な手続きを選んでください。
    • 年金事務所窓口での手続き: 最寄りの年金事務所に直接出向いて再発行を依頼することも可能です。その際、基礎年金番号やマイナンバーが確認できるもの、本人確認書類(運転免許証など)を忘れずに持参しましょう。
    • 再発行までの期間: 郵送で依頼した場合、通常、申請から発送まで1週間から10日程度かかることが多いです。
  • 注意点(障害年金・遺族年金など):

    障害年金や遺族年金は、原則として非課税所得であるため、これらの年金については源泉徴収票は発行されません。

年金受給者の確定申告は、公的年金等控除など独特の制度があるため、不明な点があれば年金事務所や税務署に相談することをおすすめします。