転職や退職の際に必要となる「源泉徴収票」。この書類は、1年間の収入や所得税額を証明する大切な書類です。しかし、転職や退職の状況によっては、なんと源泉徴収票が2枚届くことがあります。「なぜ2枚も?」「どうすればいいの?」と戸惑う方も少なくないでしょう。

この記事では、源泉徴収票が2枚になる主な理由から、転職・退職時期別の対処法、そして会社が異なる場合の対応、さらには確定申告の方法まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。ご自身の状況に合わせて、適切な手続きを進めるための参考にしてください。

  1. 源泉徴収票が2枚届くのはなぜ?基本的な理由を解説
    1. 源泉徴収票の役割と種類を理解する
    2. 年内の複数職場での勤務と年末調整の原則
    3. 特定の状況下で同じ会社から2枚発行されるケース
  2. 【転職者必見】源泉徴収票が2枚!会社が違う場合の対処法
    1. 前職の源泉徴収票が必須となる理由
    2. 年末調整に間に合わない、または提出できない場合の対応策
    3. 退職所得の源泉徴収票の取り扱いと注意点
  3. 同じ会社で年内に複数回入退社した場合の源泉徴収票
    1. 同一会社内での雇用形態変更と源泉徴収票
    2. 年内に再雇用された場合の年末調整
    3. 特殊なケース:締日跨ぎや未払給与がある場合
  4. 退職・転職時期別!源泉徴収票の受け取り時期と注意点
    1. 年の途中で退職した場合の源泉徴収票
    2. 年末近くに退職・転職した場合の特例
    3. 源泉徴収票が届かない場合の具体的な対応
  5. 源泉徴収票2枚、合算して確定申告する方法
    1. なぜ確定申告が必要なのか?
    2. 確定申告の具体的な手順と必要書類
    3. 源泉徴収票の記載内容と確認ポイント
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 源泉徴収票が2枚届いたのですが、なぜですか?
    2. Q: 転職して源泉徴収票が2枚になった場合、どうすればいいですか?
    3. Q: 同じ会社で源泉徴収票が2枚発行されるのはどのような場合ですか?
    4. Q: 12月に退職し、翌年1月に給与の支払いを受けた場合、源泉徴収票はどうなりますか?
    5. Q: 源泉徴収票2枚を合算して確定申告する際の注意点はありますか?

源泉徴収票が2枚届くのはなぜ?基本的な理由を解説

源泉徴収票の役割と種類を理解する

源泉徴収票は、給与や退職金など、あなたが会社から受け取った収入と、それに対して支払った所得税額を証明する公的な書類です。この書類には大きく分けて2種類あります。

  • 給与所得の源泉徴収票: 1年間に会社から支払われた給与や賞与、手当などの総額(支払金額)と、そこから差し引かれた所得税額(源泉徴収税額)、社会保険料の金額などが記載されています。これは年末調整の際に最もよく使われるタイプです。通常の会社員であれば、毎年12月〜1月に勤務先から発行されるものです。
  • 退職所得の源泉徴収票: 退職金や退職手当が支給された場合にのみ発行されます。給与所得とは分離して税金が計算されるため、この書類も個別に発行されます。退職金は通常の給与とは異なる税率や計算方法が適用されるため、このような特別な書類が必要となるのです。

もしあなたが年内に転職し、前職と現職の両方から給与を受け取っていた場合や、退職金を受け取った上で転職した場合など、複数の収入源がある場合には、必然的に複数の源泉徴収票を受け取ることになります。例えば、年途中に退職し、退職金を受け取ってから別の会社に転職した場合、前職から「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」、そして現職からは年末調整後に「給与所得の源泉徴収票」が発行されるため、合計で3枚以上の源泉徴収票が手元に集まることもあり得るのです。

年内の複数職場での勤務と年末調整の原則

多くの場合、源泉徴収票が2枚以上になるのは、あなたが同じ年の途中で複数の会社に勤務したことが原因です。日本の所得税は1月1日から12月31日までの1年間で得た全ての所得に対して課されます。通常、会社員の場合、この所得税の精算は勤務先が行う「年末調整」によって完結します。

年末調整の原則として、その年の12月31日時点で在籍している会社(「主たる給与の支払者」と呼ばれることが多いです)が、その年にあなたが受け取った全ての給与を合算して税金を計算し直します。このため、年の途中で転職した場合、新しい勤務先で年末調整を受けるには、前職の会社から発行された「給与所得の源泉徴収票」を提出する必要があるのです。これにより、前職と現職の給与を合算し、正確な所得税額が計算され、過払い分があれば還付され、不足分があれば徴収されます。

もし前職の源泉徴収票を現職に提出しなかった場合、現職での給与のみで年末調整が行われるため、前職分の所得税が未精算のままとなり、結果として所得税を払いすぎている状態になる可能性があります。このようなケースでは、後述する確定申告を自分で行うことで、払いすぎた税金を取り戻す(還付を受ける)ことができます。このように、異なる会社からそれぞれ発行された源泉徴収票は、年間の所得を正しく計算するために不可欠な情報となるわけです。

特定の状況下で同じ会社から2枚発行されるケース

稀なケースですが、同じ会社から源泉徴収票が2枚発行されることもあります。これは主に、雇用形態の変更や給与の支払いのタイミングに特殊な事情がある場合に発生します。

  • 雇用形態の変更: 例えば、年の途中で正社員からパート・アルバイトに切り替わったり、その逆のケースがあったりする場合です。雇用契約が変わると、給与計算の体系や社会保険の適用などが変更されることがあり、経理上の都合で期間を分けて源泉徴収票が発行されることがあります。
  • 締日と退職日の関係: 退職日と給与の締め日の関係で、退職後に最後の給与や手当が支払われる場合があります。例えば、10月末に退職し、10月分の給与が11月に支払われるようなケースです。この場合、1月〜退職日までの給与と、退職後に支払われた給与とで、期間が分かれた源泉徴収票が発行されることがあります。特に、退職後の給与が「乙欄」と呼ばれる計算方法で源泉徴収されることがあり、この場合、所得税が通常より高めに徴収されている可能性があるため、確定申告で精算する必要が出てくることがあります。

このような状況で同じ会社から2枚の源泉徴収票を受け取った場合は、まずは会社の経理担当者にその理由を確認するのが最も確実です。そして、その2枚の源泉徴収票を合算して年末調整または確定申告を行うことで、最終的な所得税額を正しく精算することになります。どちらのケースでも、手元に届いた全ての源泉徴収票を大切に保管し、不明な点があれば税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

【転職者必見】源泉徴収票が2枚!会社が違う場合の対処法

前職の源泉徴収票が必須となる理由

転職をして年内に複数の会社に勤務した場合、新しい勤務先で年末調整を受けるためには、原則として前職の源泉徴収票の提出が必須となります。これは、所得税が1年間の全ての所得に対して課税されるという原則に基づいているからです。あなたの年間の給与所得がいくらだったのかを正確に把握するためには、前職で得た収入も現職の収入と合算して計算する必要があります。

もし、現職に前職の源泉徴収票を提出しないと、現職での給与のみを対象に年末調整が行われてしまいます。その結果、前職で徴収された源泉所得税が正しく精算されないことになり、ほとんどの場合、所得税を払いすぎた状態(過払い)になってしまいます。また、扶養控除や生命保険料控除などの各種控除も、全ての収入を合算した上で適用されるため、提出しないことで控除が十分に適用されず、結果として還付されるべき税金が還付されない、または余計に税金を支払うことになりかねません。

そのため、転職後は速やかに前職から源泉徴収票を受け取り、現職の人事・経理担当者に提出するようにしましょう。多くの企業では、年末調整の時期(通常11月〜12月頃)に提出を促す案内がありますが、遅れないように早めに準備することが肝要です。

年末調整に間に合わない、または提出できない場合の対応策

様々な事情で、年末調整の時期までに前職の源泉徴収票を現職に提出できないケースもあります。例えば、前職からの発行が遅れている、紛失してしまった、あるいは前職とのトラブルで受け取りが困難な場合などです。このような状況でも慌てる必要はありません。年末調整に間に合わない、または提出できない場合は、ご自身で確定申告を行うことで、税金の精算をすることができます。

具体的な対応策は以下の通りです。

  1. 前職に再発行を依頼する: まずは前職の会社に連絡し、源泉徴収票の再発行を依頼しましょう。多くの場合、人事部や経理部が対応してくれます。再発行には時間がかかることもあるので、早めに連絡することが重要です。
  2. 税務署に相談する(源泉徴収票不交付の届出書): 前職が再発行に応じてくれない、連絡が取れないといった場合は、管轄の税務署に相談してください。税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、税務署から会社に対して源泉徴収票の交付を指導してもらうことができます。この届出書を提出すれば、源泉徴収票が手元になくても確定申告ができる場合もありますが、通常は会社からの発行を促すためのものです。
  3. 確定申告を行う: 上記のいずれの方法でも源泉徴収票が手に入らなかったり、年末調整の期限に間に合わなかったりした場合は、毎年2月16日から3月15日までの間に、ご自身で確定申告を行いましょう。この際、現職の源泉徴収票と、手元にある前職の源泉徴収票(もしあれば)、そして控除に関する書類(生命保険料控除証明書など)を準備し、税務署の窓口で相談したり、e-Taxを利用したりして申告を行います。これにより、払いすぎた税金が還付されることになります。

どの方法を選択するにしても、期限を守り、正確な情報を申告することが大切です。不明な点があれば、税務署や税理士に相談することをお勧めします。

退職所得の源泉徴収票の取り扱いと注意点

転職の際に退職金を受け取った場合、前職からは「給与所得の源泉徴収票」とは別に、「退職所得の源泉徴収票」が発行されます。この「退職所得の源泉徴収票」は、原則として転職先に提出する必要はありません。

なぜなら、退職所得は給与所得とは異なり、分離課税制度が適用されるためです。分離課税とは、他の所得とは合算せずに、退職金単独で税額を計算し、課税を完了させる仕組みを指します。通常、退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が適切な税額を源泉徴収し、納税が完了しているため、改めて年末調整や確定申告で合算する必要がないのです。

ただし、以下のようなケースでは、退職所得の源泉徴収票も重要になります。

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合: この申告書を提出せずに退職金を受け取ると、税金が多めに源泉徴収されている可能性があります。この場合、確定申告を行うことで払いすぎた税金が還付される可能性があります。
  • 複数の会社から退職金を受け取った場合: 同じ年内に複数の会社から退職金を受け取った場合など、特殊な状況では確定申告が必要になることがあります。

いずれにしても、退職所得の源泉徴収票は、確定申告が必要になった場合や、税務署から問い合わせがあった場合などに備えて、他の重要な書類と同様に大切に保管しておきましょう。安易に捨てたりせず、少なくとも5年間は保管しておくのが賢明です。

同じ会社で年内に複数回入退社した場合の源泉徴収票

同一会社内での雇用形態変更と源泉徴収票

同じ会社内で年の途中に雇用形態が変更になった場合、例えば、契約社員から正社員へ、あるいは正社員からパート・アルバイトへと切り替わったケースでは、源泉徴収票の扱いに注意が必要です。一般的には、同じ会社に在籍し続ける限り、年度末に発行される源泉徴収票は1枚にまとめられることが多いです。しかし、会社の給与計算システムや経理処理の都合によっては、雇用形態の変更時点で一旦区切りをつけ、変更前と変更後の期間で2枚の源泉徴収票が発行される可能性もゼロではありません。

これは、雇用形態の変更によって、給与体系(時給制から月給制、固定給から歩合給など)や社会保険の加入状況、適用される手当などが大きく変わることが原因です。それぞれの期間で源泉徴収すべき税額の計算基準が異なるため、経理上、別々のデータとして処理されることがあるのです。特に、一時的に雇用契約が途切れて再雇用されたような形になる場合は、明確に2枚の源泉徴収票が発行されるでしょう。

もし同じ会社から2枚の源泉徴収票が届いた場合は、まずその理由を会社の人事・経理担当者に確認してください。そして、年末調整の際には、その2枚の源泉徴収票に記載された「支払金額」や「源泉徴収税額」を合算して申告する必要があることを覚えておきましょう。どちらか一方だけを提出すると、正しい税額が計算されず、税金を払いすぎることになる可能性があります。

年内に再雇用された場合の年末調整

一度会社を退職し、同じ年のうちにその会社に再雇用された場合も、源泉徴収票の取り扱いには特別な注意が必要です。このケースでは、実質的に「前職」と「現職」が同じ会社であるにもかかわらず、手続き上は2つの勤務期間が存在することになります。そのため、退職した際に発行される源泉徴収票と、再雇用後に年末調整で発行される源泉徴収票の計2枚が手元に届く可能性が高いです。

再雇用後の年末調整では、通常、その年の1月1日から12月31日までのすべての所得が対象となります。したがって、再雇用先の会社(つまり同じ会社)は、あなたがその年に受け取ったすべての給与(退職前の期間と再雇用後の期間の両方)を合算して年末調整を行う必要があります。この際、退職時に受け取った源泉徴収票を、再雇用された会社の人事・経理担当者に提出することが求められます。

もし、退職時に受け取った源泉徴収票を提出し忘れたり、紛失してしまったりした場合は、上述の「前職の源泉徴収票が必須となる理由」と同様に、正しい所得税額が計算されず、過払いが生じる可能性があります。その場合は、ご自身で確定申告を行うことで、税金の精算をする必要があります。再雇用の場合でも、異なる勤務期間の源泉徴収票は、年間の所得を正確に把握するための重要な書類であることを認識し、適切に管理しましょう。

特殊なケース:締日跨ぎや未払給与がある場合

同じ会社で年内に複数回入退社した場合や、退職と締日のタイミングが重なる特殊なケースでは、通常とは異なる形で源泉徴収票が発行されることがあります。例えば、給与の締日が月の途中にあり、退職日がその締日を跨ぐような場合です。このとき、退職日までの給与と、締日以降で退職後に支払われる給与が別々に処理され、結果として同じ会社から2枚の源泉徴収票が発行されることがあります。

特に注意が必要なのは、退職後に支払われる給与の源泉徴収です。会社は退職後、主たる給与の支払者ではなくなるため、その給与には「乙欄」と呼ばれる税額表が適用されることがあります。乙欄適用の場合、通常よりも高い税率で源泉徴収されることが多いため、そのままにしておくと所得税を払いすぎている可能性が高いです。

このような状況で2枚の源泉徴収票を受け取った場合は、必ず両方の源泉徴収票を合算して確定申告を行うようにしてください。確定申告をすることで、乙欄で多めに徴収された税金が還付されることになります。会社の経理担当者に問い合わせて、なぜ2枚に分かれて発行されたのか、そしてそれぞれの源泉徴収票がどの期間の給与を示しているのかを確認することも重要です。複雑なケースでは、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを踏むことをお勧めします。手元に届いた全ての書類を確認し、疑問点は放置しないようにしましょう。

退職・転職時期別!源泉徴収票の受け取り時期と注意点

年の途中で退職した場合の源泉徴収票

年の途中で会社を退職した場合、その会社では年末調整が行われません。そのため、退職時には会社から「給与所得の源泉徴収票」が発行されます。所得税法では、会社は退職者に対して退職日から1ヶ月以内に源泉徴収票を交付する義務があると定められています。

この源泉徴収票は、退職後のあなたの状況によって使い道が変わります。

  • 年内に新しい会社に転職した場合: 新しい勤務先で年末調整を受けるために、前職の源泉徴収票を提出する必要があります。提出を忘れると、年末調整が正しく行われず、税金を払いすぎた状態になる可能性があります。
  • 年内に再就職しなかった場合: この場合、年末調整を受けることができないため、ご自身で確定申告を行う必要があります。確定申告をすることで、払いすぎた所得税の還付を受けることができます。特に、生命保険料控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの所得控除を受けている方は、忘れずに確定申告を行いましょう。

源泉徴収票は通常、郵送で送られてくることが多いですが、会社によっては直接手渡しや電子データでの交付もあります。退職後1ヶ月が経過しても届かない場合は、速やかに前の会社に問い合わせるようにしましょう。

年末近くに退職・転職した場合の特例

11月や12月といった年末近くに退職したり、転職したりした場合は、源泉徴収票の受け取りや年末調整の時期において特に注意が必要です。この時期に退職すると、前職からの源泉徴収票の発行が遅れることがあり、新しい勤務先での年末調整に間に合わない可能性が高くなります。

例えば、12月に退職してすぐに新しい会社に入社した場合、新しい会社は年末調整の事務処理を進めている時期であり、前職の源泉徴収票を待つ余裕がないことがあります。また、12月下旬に退職し、その年のうちに次の職場が見つからなかった場合は、当然年末調整を受ける機会がありません。

このようなケースでは、翌年の2月16日から3月15日までの間に、ご自身で確定申告を行うのが一般的です。確定申告を行うことで、前職と現職の全ての所得を合算し、正確な所得税額を計算して過不足を精算できます。特に、年末に退職・転職を検討している場合は、源泉徴収票の受け取り時期や確定申告の必要性をあらかじめ考慮に入れておくと良いでしょう。

ポイント:

  • 前職の源泉徴収票は退職後1ヶ月以内が目安。
  • 年末の転職は、源泉徴収票が年末調整に間に合わない可能性が高い。
  • 間に合わない場合は、翌年に確定申告が必要。

いずれにせよ、手元に届いた源泉徴収票はすぐに内容を確認し、不備がないかチェックすることが大切です。不明な点があれば、すぐに会社や税務署に問い合わせましょう。

源泉徴収票が届かない場合の具体的な対応

「退職してから1ヶ月以上経っても源泉徴収票が届かない」「会社に連絡しても対応してくれない」といった問題に直面することもあります。源泉徴収票は確定申告や転職先での年末調整に不可欠な書類ですので、届かない場合は速やかに対処する必要があります。

源泉徴収票が届かない場合の具体的な対応手順は以下の通りです。

  1. まずは会社に問い合わせる: 最も基本的なステップです。まずは、前の会社の人事部や経理部に電話やメールで連絡し、源泉徴収票の発行状況を確認してください。郵送トラブルの可能性もあるため、発送状況や宛先住所の確認も行いましょう。
  2. 「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出する: 会社に問い合わせても対応してくれない、または連絡が取れないといった場合は、管轄の税務署に相談し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。この届出書は、会社が源泉徴収票を交付してくれない場合に、税務署を通じて会社に交付を促してもらうための書類です。
  3. 税務署からの指導: 届出書を提出すると、税務署から前の会社に対し、源泉徴収票の交付を指導する連絡が入ることがあります。これにより、会社が源泉徴収票を発行してくれる可能性が高まります。
  4. 確定申告への準備: 最終的に源泉徴収票が手に入らなかった場合でも、確定申告を行うことは可能です。その際は、給与明細や通帳の記録など、ご自身の収入と源泉徴収税額が分かる資料を可能な限り集めて税務署に相談してください。税務署の窓口で相談しながら、不足している情報を補う形で申告書を作成することもできます。

源泉徴収票が手元にないまま放置すると、所得税を払いすぎた状態のままになってしまったり、確定申告が必要な場合に手続きが滞ったりする可能性があります。面倒に感じても、必要な書類は必ず手に入れ、正しく税金を精算することが大切です。

源泉徴収票2枚、合算して確定申告する方法

なぜ確定申告が必要なのか?

源泉徴収票が2枚以上手元にある場合、多くは確定申告が必要となります。なぜなら、年末調整は原則として「その年の最後に在籍した会社」が一括して行うものだからです。もしあなたが以下のような状況に当てはまる場合、年末調整だけでは正しい所得税額が計算されず、多くの場合、税金を払いすぎている可能性が高いからです。

  • 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合: 最後の勤務先がないため、年末調整が行われません。
  • 年内に複数回転職し、全ての源泉徴収票を最後の会社に提出できなかった場合: 提出できなかった前職分の収入が年末調整で合算されません。
  • 退職後に支払われた給与が「乙欄」で源泉徴収されていた場合: 会社が主たる給与の支払者でなくなったために、高い税率で源泉徴収されていることがあります。
  • 退職所得の「退職所得の受給に関する申告書」を提出せずに退職金を受け取った場合: 退職金から多めに税金が引かれている可能性があります。

確定申告は、1年間の全ての所得を合算し、扶養控除や生命保険料控除、医療費控除など、各種控除を適用した上で、正確な所得税額を計算し直す手続きです。これにより、払いすぎた税金が還付(返還)されることがほとんどです。確定申告をしないと、せっかくの還付金を受け取ることができませんので、忘れずに手続きを行いましょう。

確定申告の具体的な手順と必要書類

源泉徴収票が2枚以上ある場合の確定申告は、以下の手順で進めます。基本的な流れを理解しておけば、それほど複雑な手続きではありません。

1. 必要書類の準備:

  • すべての源泉徴収票: 複数枚ある場合は、その全てを用意します。給与所得用、退職所得用など種類を問わず集めましょう。
  • 各種控除証明書: 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、iDeCoの掛金証明書、医療費の領収書や明細(医療費控除を適用する場合)など、ご自身が適用を受けたい控除に関する書類を揃えます。
  • マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類: 確定申告にはマイナンバーの記載が必要です。
  • 銀行口座情報: 還付金を受け取るための口座情報が必要となります。

2. 確定申告書の作成:

  • 国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが最もおすすめです。案内に従って入力していけば、自動的に税額が計算され、申告書が作成できます。
  • 税務署の窓口で申告書を入手し、手書きで作成することも可能です。

3. 源泉徴収票の記入方法:

確定申告書(第一表・第二表)には、複数の源泉徴収票の情報を合算して記入します。

項目 記入方法
支払金額(給与所得) 全ての給与所得の源泉徴収票に記載された「支払金額」を合算して記入します。
源泉徴収税額 全ての給与所得の源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額」を合算して記入します。
社会保険料等の金額 全ての給与所得の源泉徴収票に記載された「社会保険料等の金額」を合算して記入します。

4. 申告書の提出:

  • e-Taxで電子申告: マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマホ)があれば、自宅からオンラインで提出できます。最も迅速かつ便利です。
  • 郵送で提出: 作成した申告書を管轄の税務署宛に郵送します。
  • 税務署の窓口に提出: 税務署の受付期間中に直接窓口に提出します。不明な点があれば、その場で相談することも可能です。

確定申告の受付期間は、通常毎年2月16日から3月15日までです。還付申告であれば、この期間以外でも申告が可能です。余裕を持って準備し、期日までに確実に申告を完了させましょう。

源泉徴収票の記載内容と確認ポイント

確定申告を行う上で、源泉徴収票に記載されている内容を正しく理解し、確認することは非常に重要です。特に複数の源泉徴収票がある場合、それぞれの内容を正確に把握しておく必要があります。

源泉徴収票には、主に以下の項目が記載されています。

  • 支払金額: その年に会社から支払われた給与、賞与などの総額です。手取り額ではなく、税金や社会保険料が引かれる前の金額です。
  • 給与所得控除後の金額: 支払金額から「給与所得控除」を差し引いた金額で、所得税の計算の基礎となる「給与所得」の金額です。
  • 所得控除の額の合計額: 社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除など、各種控除の合計額です。
  • 源泉徴収税額: 会社が給与から天引きして国に納めた所得税の合計額です。年末調整で最終的な税額が確定し、過不足が精算されます。
  • 社会保険料等の金額: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、会社が給与から天引きして納めた社会保険料の合計額です。

確認ポイント:

  1. 記載内容の正確性: 氏名、住所、支払金額、源泉徴収税額などに間違いがないか確認しましょう。特に重要なのは、「支払金額」と「源泉徴収税額」です。
  2. 控除の内容: 扶養家族がいる場合や、生命保険料控除などを申告している場合、それが正しく反映されているか確認します。
  3. 2枚以上の合算: 複数枚の源泉徴収票を合算する際は、それぞれの「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」を間違いなく合計してください。手計算が不安な場合は、電卓や表計算ソフトを利用すると良いでしょう。
  4. 重複の確認: 同じ期間や同じ種類の所得が重複して計上されていないか、また、取りこぼしがないかを確認します。

もし源泉徴収票の内容に疑問がある、または不明な点がある場合は、速やかに発行元の会社の人事・経理担当者か、管轄の税務署に相談してください。正確な確定申告を行うためには、手元の源泉徴収票の情報を正しく読み取り、適切に処理することが何よりも大切です。