退職金のもらい方・もらえないケースを徹底解説【令和7年改正も】

長年の勤務に対する会社からの感謝のしるしであり、退職後の生活を支える大切な資金となる退職金。
しかし、「退職金は当然にもらえるもの」と考えていると、思わぬ落とし穴にはまることもあります。会社の制度や就業規則によっては、退職金が支払われないケースや、想定よりも少ない金額になることも少なくありません。
本記事では、退職金の基本的な受け取り方から、まさかのもらえないケース、そして令和7年度の税制改正による変更点まで、退職金に関するあらゆる疑問を徹底解説します。あなたの退職金に関する不安を解消し、退職後の人生設計に役立つ情報をお届けします。

  1. 退職金はもらえる?もらえる条件とタイミングを理解しよう
    1. 退職金制度の有無が最初のポイント
    2. 勤続年数や退職理由による条件の違い
    3. 退職金制度の種類とそれぞれの特徴
  2. 退職金のもらい方:手続きと知っておきたい税金について
    1. 退職金受け取りまでの一般的な手続きフロー
    2. 退職金にかかる税金:退職所得控除の仕組み
    3. 令和7年度税制改正で変わる控除の調整期間
  3. 退職金がもらえない!そんな時の原因と違法性の判断
    1. 「もらえない」の具体的な原因を特定する
    2. 退職金不支給が違法となる可能性のあるケース
    3. もらえない時の対処法と相談先
  4. 退職金が安すぎる?事例と確認すべきポイント
    1. なぜ「想定より安かった」と感じるのか
    2. 退職金規定の内容と計算式の確認
    3. 計算間違いや不当な減額への対処
  5. 退職金はいつ、どうやって連絡がある?辞めてからの流れ
    1. 退職金の連絡・支給時期の目安
    2. 会社からの連絡方法と必要書類
    3. もし連絡がない・遅い場合の対応
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 退職金はいつ頃もらえるのが一般的ですか?
    2. Q: 退職金のもらい方で、特別な手続きは必要ですか?
    3. Q: 退職金がもらえないケースとはどんな時ですか?
    4. Q: 退職金にかかる税金はどのように計算されますか?
    5. Q: 令和7年(2025年)の退職金に関する法改正はありますか?

退職金はもらえる?もらえる条件とタイミングを理解しよう

退職金制度の有無が最初のポイント

退職金制度は、法律で定められたものではなく、各企業が任意で設けている福利厚生の一つです。そのため、残念ながら退職金制度そのものがない会社も存在します。あなたが勤める会社に退職金制度があるかどうかを確認することが、退職金を受け取るための最初のステップとなります。

参考までに、東京都産業労働局の調査によると、従業員10~299人の中小企業のうち約65.9%が退職金制度を導入しているというデータがあります。中小企業でも多くの会社が導入している一方で、残りの約3割強の会社には制度がないため注意が必要です。

制度の有無や詳細は、入社時の労働契約書や雇用契約書、就業規則、または退職金規程に明記されていることがほとんどです。もしこれらの書類が見当たらない場合は、人事部や総務部に直接問い合わせて確認するようにしましょう。制度がなければ、残念ながら退職金は一切支払われません。

勤続年数や退職理由による条件の違い

退職金制度がある会社でも、誰もが自動的に退職金を受け取れるわけではありません。多くの場合、勤続年数や退職理由によって支給条件が細かく定められています

最も一般的な条件として「勤続〇年以上」という規定があります。例えば、「勤続3年未満で退職した場合は不支給」といった条項です。これは、短期での離職を防ぐ目的や、退職金が長期勤務への報奨という意味合いを持つためです。一般的には勤続1~3年程度で支給対象外となるケースが多いですが、会社によってはより長い期間を求めることもあります。

また、退職理由も支給に影響します。

  1. 自己都合退職: 会社都合退職と比較して、支給率が低く設定されている場合があります。
  2. 会社都合退職: 解雇や倒産など、会社側の都合による退職の場合、通常よりも高い支給率が適用されることが多いです。
  3. 懲戒解雇: 会社の秩序を著しく乱したなどの理由で懲戒解雇された場合、退職金規程に「不支給」と明記されていることがあります。ただし、判例では、懲戒解雇であっても、直ちに退職金全額が不支給となるわけではなく、その事由の悪質性や勤続年数などを総合的に考慮し、一部または全額が支給されるケースもあります。
  4. 役員退職: 役員の退職金は、株主総会の決議が必要な場合が多く、決議が否決されたり、会社の業績不振や不祥事などを理由に支給しない方針が取られたりすると、受け取れないことがあります。

これらの条件は全て就業規則や退職金規程に定められているため、必ず確認するようにしましょう。

退職金制度の種類とそれぞれの特徴

退職金制度には、企業によっていくつかの種類があります。それぞれの制度が持つ特徴を理解することで、ご自身の退職金がどのように支払われるのかを把握できます。

  • 退職一時金制度:

    最も一般的な制度で、退職時に一括で退職金が支払われます。支給額は、就業規則や退職金規程に定められた計算式(例: 基本給 × 勤続年数 × 支給率など)に基づいて算出されます。この制度は、多くの企業で導入されており、退職後のまとまった資金として活用されることが多いです。ただし、会社の業績が悪化した場合、支払いが困難になるリスクもゼロではありません。

  • 退職金共済制度:

    中小企業を中心に広く普及している制度です。企業が中小企業退職金共済事業本部(中退共)などの外部機関に掛金を支払い、従業員の退職時に共済が直接退職金を支払う仕組みです。会社が倒産しても共済から退職金が支払われるため、従業員にとっては安心感があります。支給額は、掛金の額と勤続年数によって決まります。

  • 確定拠出年金(DC)制度:

    企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)がこれに該当します。企業が掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選んで資産を形成する制度です。退職時には、それまで積み立て・運用してきた資産を一時金または年金形式で受け取ります。運用成績によって受取額が変動するため、自己責任の要素が強いのが特徴です。

  • 退職金前払い制度:

    退職金相当額を、退職時ではなく、毎月の給与や賞与に上乗せして受け取る制度です。この場合、退職時に別途退職金が支払われることはありません。一見するとお得に感じますが、退職所得控除などの税制優遇が受けられないため、税金面では不利になる可能性があります。

ご自身の会社がどの制度を採用しているかによって、受け取り方や税金の扱いが大きく変わるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

退職金のもらい方:手続きと知っておきたい税金について

退職金受け取りまでの一般的な手続きフロー

退職金を受け取るまでの手続きは、会社の規模や導入している退職金制度によって多少異なりますが、一般的なフローは以下のようになります。スムーズに受け取るためには、会社からの指示に従い、必要な書類を速やかに提出することが肝心です。

  1. 会社からの連絡・確認:
    退職の意思を伝え、退職日が確定すると、会社の人事部や総務部から退職金に関する説明があります。この際に、退職金制度の有無、支給条件、支給額の目安、必要な手続き、書類の提出期限などが伝えられます。不明な点があれば、この段階で遠慮なく質問しましょう。
  2. 必要書類の提出:
    退職金を受け取るためには、いくつかの書類を提出する必要があります。特に重要なのが「退職所得の受給に関する申告書」です。この申告書を提出しないと、退職所得控除が適用されず、源泉徴収される税額が大幅に増えてしまう可能性があります。また、中小企業退職金共済制度(中退共)などの外部制度を利用している場合は、共済機構が定める請求書なども提出が必要です。
  3. 支給決定通知書の受領:
    会社は、提出された書類に基づいて支給額を確定し、「退職金支給額決定通知書」などを発行します。ここには、支給額の内訳、振込予定日、振込先口座などが記載されています。
  4. 退職金の受け取り:
    通常、退職金は退職後1ヶ月〜数ヶ月後に、指定した銀行口座に振り込まれます。支給時期は会社の規定や処理期間によるため、通知書で確認するか、事前に会社に問い合わせておきましょう。

会社からの連絡を待つだけでなく、自ら就業規則や退職金規程を確認し、受け取り条件や手続きについて把握しておくことが大切です。

退職金にかかる税金:退職所得控除の仕組み

退職金は、長年の勤務に対する報奨という意味合いが強いため、他の所得とは異なる「分離課税」という優遇された方法で課税されます。特に「退職所得控除」という制度があり、これにより課税される金額が大幅に軽減されます。

退職所得控除額は、あなたの勤続年数によって計算方法が異なります。

  • 勤続年数20年以下の場合:
    退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数
    (80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続年数20年を超える場合:
    退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

例えば、勤続30年の場合、控除額は「800万円 + 70万円 × (30年 – 20年) = 800万円 + 700万円 = 1,500万円」となります。

実際に課税される退職所得の金額は、以下の計算式で求められます。

(退職金の収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 課税退職所得金額

このように、退職所得控除額を超えた部分のさらに半分しか課税対象にならないため、税負担が非常に軽くなります。この優遇を確実に受けるためには、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出してください。提出を忘れると、退職所得控除が適用されずに全額が課税対象と見なされ、高い税率で源泉徴収されてしまう可能性があります。

令和7年度税制改正で変わる控除の調整期間

退職金に関する税制は比較的安定していますが、令和7年度の税制改正(令和8年1月1日以降の支払いから適用)では、複数の退職所得を受け取る場合のルールに重要な変更があります。特に、確定拠出年金(DC)などの退職所得控除の調整規定が見直されました。

これまでは、確定拠出年金(DC)一時金を受け取った場合、その受け取りから4年以内に他の退職金(例えば企業からの退職一時金)を受け取ると、退職所得控除額の計算に調整が入り、控除額が減額される可能性がありました。これは、短い期間に複数回退職金を受け取ることで、退職所得控除が重複して適用され、不公平が生じるのを防ぐためです。

今回の令和7年度税制改正により、この調整期間が9年以内へと大幅に拡大されました。つまり、iDeCo(個人型確定拠出年金)などでDC一時金を受け取った後、9年以内に企業からの退職一時金を受け取る場合、退職所得控除の計算に影響が出る可能性が高まります。

この改正は、複数の退職所得に対して退職所得控除が繰り返し適用されることによる課税の不公平性を是正するためのものです。特に、セカンドキャリアなどで転職を繰り返す方や、DC制度を活用している方は注意が必要です。

一方で、勤続年数が長いほど税負担が軽減される現行の退職金課税制度(退職所得控除)の抜本的な見直しについては、令和7年度税制改正では議論が見送られました。しかし、今後の税制改正で議論が再燃する可能性もゼロではありません。

ご自身の退職金の受け取り計画と、税制改正の適用時期を照らし合わせ、不安な点があれば税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

退職金がもらえない!そんな時の原因と違法性の判断

「もらえない」の具体的な原因を特定する

「退職金がもらえない」という状況に直面したとき、まずはその原因を正確に把握することが重要です。多くの場合、以下のいずれかの理由に該当します。

  • そもそも退職金制度がない:
    会社が退職金制度を設けていない場合、当然ながら退職金は支払われません。入社時の労働契約書や就業規則、退職金規程を再確認しましょう。
  • 勤続年数が不足している:
    多くの会社では「勤続〇年以上」という支給条件を設けています。例えば「勤続3年未満は不支給」といった規定がある場合、その条件を満たしていなければ受け取れません。
  • 懲戒解雇された:
    退職金規程に「懲戒解雇の場合は不支給」という条項がある場合、退職金が支払われないことがあります。ただし、後述するように、一概に全額不支給が認められるわけではありません。
  • 会社都合による倒産など:
    会社が倒産したり、極端な経営不振に陥ったりして、退職金を支払う資力がない場合があります。この場合は「未払い賃金立替払い制度」の利用を検討できることもありますが、全てのケースに適用されるわけではありません。
  • 時効による消滅:
    退職金の請求権には時効があります。労働基準法では原則5年(2020年4月1日以前に発生した賃金請求権については2年)と定められています。退職後、長期間請求せずにいると、権利が消滅してしまう可能性があります。
  • 手続き上の不備・漏れ:
    中小企業退職金共済(中退共)のような外部制度の場合、会社が掛金の支払いを怠っていたり、従業員が請求手続きをしていなかったりすると、受け取れないことがあります。

まずはご自身の状況を上記のいずれかに当てはめて、原因を特定することから始めましょう。

退職金不支給が違法となる可能性のあるケース

退職金が支払われないからといって、全てが適法であるとは限りません。以下のような場合は、退職金不支給が違法となる可能性があります。

  1. 退職金規程に明記されているにも関わらず不支給:
    就業規則や退職金規程に退職金制度の存在と支給条件が明記されており、あなたがその条件を満たしているにもかかわらず、会社が一方的に支払いを拒否している場合です。これは労働契約違反となる可能性が高いです。
  2. 懲戒解雇による不支給の過剰な判断:
    懲戒解雇された場合でも、その理由が退職金全額を不支給とするほど重大でないと判断されることがあります。裁判例では、「労働者のそれまでの功労を全て抹消してしまうほどの著しい背信行為」があった場合にのみ、全額不支給が認められる傾向にあります。例えば、単なる業務上のミスや軽微な規律違反では、全額不支給は認められにくいでしょう。会社が不当に重い判断をしている可能性があります。
  3. 会社が恣意的に支給を拒否している:
    特定の従業員に対して、個人的な感情や嫌がらせを理由に退職金の支払いを拒否するようなケースは、不当な取り扱いとして違法と判断される可能性があります。
  4. 倒産時における不当な扱いの可能性:
    会社の倒産が原因で退職金が支払われない場合でも、手続き上の問題や、特定の債権者への優先的な支払いがあったなど、不当な扱いがあったと判断されるケースも考えられます。

「おかしい」と感じたら、まずは冷静に状況を整理し、専門家の意見を聞くことが重要です。

もらえない時の対処法と相談先

退職金がもらえない、あるいは不当に不支給とされていると感じた場合、諦めずに適切な対処をすることが大切です。

  1. 就業規則・退職金規程の再確認:
    まずは、ご自身の会社の就業規則や退職金規程を再度徹底的に確認し、支給条件や不支給事由について明確に把握してください。これが、あなたの権利を主張する上での最も重要な根拠となります。
  2. 会社への問い合わせ:
    規程を確認しても納得できない場合は、会社の人事部や総務部に書面で正式に問い合わせましょう。「なぜ支払われないのか」「計算根拠はどうなっているのか」など、具体的な説明を求め、書面で回答をもらうようにしてください。口頭でのやり取りは証拠が残らないため、避けるべきです。
  3. 外部の専門機関への相談:
    会社との交渉が難しい、または会社がまともに取り合ってくれない場合は、以下の専門機関に相談することを検討してください。

    • 弁護士: 退職金請求に関する法的な争いがある場合、最も有効な相談先です。就業規則の解釈、法的根拠に基づいた交渉、裁判手続きなどを代理してくれます。
    • 労働基準監督署: 労働基準法違反に関する相談を受け付けていますが、退職金は「賃金」としての側面と「功労報償金」としての側面があり、必ずしも労働基準法の直接的な適用対象とならないケースもあります。しかし、未払い賃金の一部として扱われる可能性もあるため、まずは相談してみる価値はあります。
    • 労働組合・総合労働相談コーナー: 個別の労働相談に応じてくれます。労働組合がない場合でも、地域合同労組などに相談できることがあります。
    • 社会保険労務士: 労働法や社会保険の専門家ですが、主に制度設計や労務相談が中心となるため、直接的な法的な争いには弁護士がより適しています。しかし、初動の相談やアドバイスには有用です。

泣き寝入りせずに、積極的に情報を収集し、専門家の力を借りて適切な対応をしましょう。

退職金が安すぎる?事例と確認すべきポイント

なぜ「想定より安かった」と感じるのか

退職金を受け取った際に「思ったより少ない」「想定していた金額と違う」と感じることは少なくありません。これにはいくつかの理由が考えられます。

  • 計算方法への誤解:
    多くの人は退職金の計算を「基本給×勤続年数」というシンプルなイメージで捉えがちです。しかし、実際には役職手当、貢献度、評価などが加味されたり、勤続年数ごとの支給率が変動したりと、複雑な計算式が用いられていることがあります。また、基本給も、手当や残業代を除いた純粋な基本給が計算の基準となるため、普段の給与イメージと乖離が生じることがあります。
  • 自己都合退職と会社都合退職の支給率の違い:
    就業規則や退職金規程では、自己都合退職と会社都合退職で退職金の支給率が異なるのが一般的です。自己都合退職の場合、会社都合に比べて支給率が低く設定されているため、「会社都合ならもっともらえたのに」と感じるケースがあります。
  • 税金や社会保険料の控除:
    退職金は退職所得控除が適用され優遇されますが、それでも税金(所得税・住民税)や社会保険料(健康保険料、介護保険料など)が差し引かれた後の手取り額を見て「安すぎる」と感じることがあります。特に、退職所得控除額を超過する高額な退職金の場合、税負担は無視できません。
  • 経済状況や物価変動への認識不足:
    昔の退職金のイメージや、知人・親戚の退職金の話と自分の支給額を比較して、現在の経済状況や物価変動を考慮せずに「安すぎる」と感じることもあります。

これらの要因が複合的に絡み合い、実際の受取額が期待値を下回ることが多いのです。

退職金規定の内容と計算式の確認

退職金が想定より安かったと感じたら、まず行うべきは、就業規則や退職金規程を再度、徹底的に確認することです。ここに記載されている内容こそが、退職金支給の全てを決定する根拠となります。

確認すべき主なポイントは以下の通りです。

  • 退職金の計算式:

    最も重要なのは、具体的な計算式です。例えば、「退職時の基本給 × 勤続年数 × 支給率」や、「ポイント制(職務等級や貢献度に応じたポイントを積み立てる)」、「定額制(勤続年数に応じて一律の金額)」など、様々な方式があります。

    計算式の具体例

    計算方式 概要 注意点
    基本給連動型 退職時の基本給に勤続年数と支給率を乗じる 「基本給」の定義(手当除く純粋な額か)を確認
    ポイント制 職務等級、評価、勤続年数に応じてポイントを付与 ポイント単価や付与基準が不明瞭な場合がある
    定額制 勤続年数に応じた定額表に基づいて支給 高額な退職金にはなりにくい
  • 支給率の違い:
    自己都合退職と会社都合退職、定年退職で支給率が異なっているか確認しましょう。多くの場合、自己都合退職の支給率は低めに設定されています。
  • 控除されるもの:
    退職金から控除される税金や社会保険料(特に国民健康保険料や介護保険料は退職後に影響が出ることがあります)の項目を確認し、計算が合っているか確認してください。
  • 複数制度の適用:
    会社によっては、退職一時金と確定拠出年金(DC)など、複数の退職金制度を併用している場合があります。その場合、DC部分の運用状況も最終的な受取額に影響します。

これらの情報を正確に把握することで、あなたの退職金がなぜその金額になったのか、具体的な根拠を理解することができます。

計算間違いや不当な減額への対処

退職金規程を確認し、ご自身で計算し直してみた結果、会社の提示額と明らかに異なる、あるいは不当な減額がされていると感じた場合は、以下のステップで対処しましょう。

  1. 会社に計算根拠の説明を要求する:
    まず、会社の人事部または経理部に対し、書面で「退職金の計算根拠を具体的に説明してほしい」と要求してください。この際、ご自身で確認した規程の内容や、あなたが算出した金額も提示し、どこに相違があるのかを明確に示しましょう。
  2. 証拠の保全:
    会社とのやり取りは、必ず書面やメールなど記録に残る形で行いましょう。口頭での説明は後で「言った・言わない」のトラブルになりかねません。
  3. 専門家への相談:
    会社の説明に納得できない場合や、会社がまともに取り合ってくれない場合は、速やかに外部の専門家に相談してください。

    • 弁護士: 退職金請求に関する法的な専門家です。規程の解釈、計算の妥当性、不当な減額の是正について、法的な観点からアドバイスや交渉の代理を行ってくれます。必要であれば、内容証明郵便の送付や労働審判、訴訟といった手続きに進むことも可能です。
    • 社会保険労務士: 労働関連法規の専門家として、就業規則や退職金規程の解釈についてアドバイスを得られる場合があります。ただし、直接的な法廷闘争は弁護士の専門分野となります。
    • 労働基準監督署、総合労働相談コーナー: 不当な減額が労働基準法に抵触する可能性がある場合、相談窓口として利用できます。

計算間違いや不当な減額は、あなたの正当な権利を侵害する行為です。泣き寝入りせず、適切な手順で対処することが大切です。

退職金はいつ、どうやって連絡がある?辞めてからの流れ

退職金の連絡・支給時期の目安

退職金を受け取る時期は、会社の規定や採用している退職金制度によって異なりますが、一般的には退職後1ヶ月から数ヶ月後に支払われることが多いです。

  • 退職一時金制度の場合:
    会社の経理処理や最終的な支給額の確定に時間がかかるため、退職月の翌月末や、退職日から1ヶ月~3ヶ月以内などと定められていることが一般的です。就業規則や退職金規程に具体的な支給時期が明記されていることが多いので、まずは確認しましょう。
  • 中小企業退職金共済制度(中退共)の場合:
    中退共の場合、会社が共済機構に退職証明書などを提出し、共済機構が支給手続きを行います。このため、会社からの手続きが完了した後、共済機構での処理期間が必要となります。通常、会社が手続きを終えてから2週間~1ヶ月程度で振り込まれることが多いです。
  • 確定拠出年金(DC)制度の場合:
    DCの場合、運用機関からの受給手続きが必要になります。退職後、一定の期間内に年金として受け取るか、一時金として受け取るかを選択し、必要な書類を提出します。その後の処理期間を経て支給されます。

いずれの制度においても、退職時には会社の人事担当者から、今後の具体的な連絡や支給時期について説明があるはずです。聞き漏らさないように、しっかりと確認し、可能であれば書面で情報を残しておきましょう。

会社からの連絡方法と必要書類

退職金に関する会社からの連絡は、通常、書面やメールで行われます。大切な情報なので、見落とさないように注意が必要です。

  • 連絡内容:

    主に以下のような情報が通知されます。

    • 退職金支給額決定通知書: 支給額の確定通知。税金控除後の手取り額も記載されていることが多いです。
    • 振込予定日: 銀行口座への振り込みが行われる日付。
    • 振込先口座の確認: 誤りがないか確認を求められることがあります。
    • 必要書類の提出依頼: まだ提出していない書類があれば、再度提出を求められます。
  • 提出が必要な書類:

    退職金を適切に受け取るために、以下の書類の提出が求められます。

    • 退職所得の受給に関する申告書: これを提出しないと、退職所得控除が適用されず、多額の税金が源泉徴収されてしまう可能性があります。必ず期日までに提出しましょう。
    • 退職金請求書: 会社所定の書式や、中退共などの外部制度の場合はその機関の請求書。
    • その他: 本人確認書類のコピー、印鑑証明書など、会社や制度によって追加で求められる書類がある場合があります。

これらの書類は、あなたの退職金を受け取る上で非常に重要です。会社からの指示に従い、正確かつ迅速に手続きを進めることが、スムーズな受け取りにつながります。

もし連絡がない・遅い場合の対応

退職金の支給時期を過ぎても会社から何の連絡もない、あるいは支払いが遅れている場合は、不安になりますが、冷静に対処しましょう。

  1. 就業規則・退職金規程の確認:
    まず、会社の就業規則や退職金規程に記載されている支給時期を再確認してください。そこに明記されている期日を過ぎているかどうかが、次のアクションを起こす際の基準となります。
  2. 会社への問い合わせ(書面で記録を残す):
    支給期日を過ぎている、または期日が近づいても連絡がない場合は、会社の人事担当者や経理担当者に問い合わせましょう。この際、必ずメールや内容証明郵便など、書面で記録が残る形で連絡することが重要です。口頭での問い合わせは避け、いつ、誰に、どのような内容で問い合わせたかを明確に記録に残しておきましょう。問い合わせる際には、いつまでに連絡や支払いを希望するのか、具体的な期日を添えて伝えましょう。
  3. 外部機関への相談:
    会社が問い合わせに応じない、または不誠実な対応が続く場合は、外部の専門機関に相談することを検討してください。

    • 弁護士: 法的な請求を行う場合、最も頼りになる存在です。内容証明郵便による督促状の送付、交渉の代理、労働審判や訴訟などの法的手続きを進めることができます。
    • 労働基準監督署: 労働基準法違反の可能性があれば相談できますが、退職金は賃金の一部と見なされないケースもあり、監督署の介入が難しい場合もあります。しかし、相談自体は可能です。
    • 総合労働相談コーナー: 都道府県の労働局が設置している無料の相談窓口です。解決のためのアドバイスやあっせん制度の利用を提案してくれることがあります。

退職金の未払いは、あなたの生活設計に大きな影響を与える問題です。泣き寝入りせず、専門家の力を借りて適切な対応をしてください。