概要: 公務員、契約社員、個人事業主など、立場によって異なる退職金制度について、掛金、雇用保険、社会保険料まで含めて詳しく解説します。解雇時の対応や、将来設計に役立つ情報が満載です。
公務員・契約社員の退職金制度:違いと注意点
公務員の退職金制度の全貌
公務員の退職金は、その立場によって適用される法律や条例が異なります。国家公務員であれば「国家公務員退職手当法」に、地方公務員であれば各地方自治体の条例に基づき、その支給額や条件が定められています。
原則として、勤続年数が1年以上あれば退職金の受給資格が得られます。勤続年数の計算には、6ヶ月未満の端数は切り捨て、6ヶ月以上は切り上げられるのが一般的です。例えば、20年5ヶ月の勤務であれば20年、20年7ヶ月の勤務であれば21年として計算されるイメージです。
近年では、少子高齢化社会の進展に伴い、公務員の定年年齢も段階的に引き上げられています。令和13年度からは原則として65歳が定年年齢となるため、長く働くことが前提となり、それに伴い退職金の支給額や受給時期にも影響が出る可能性があります。
退職金の受け取り方としては、退職時に一時金として一括で支払われるのが一般的ですが、平成27年10月からは公務員においても「年金払い退職給付」という制度が創設され、選択肢が広がりました。この制度は、退職金を年金形式で受け取ることで、計画的な老後資金の確保に役立ちます。
具体的な金額としては、令和4年度の国家公務員の平均退職金が約1,104万3,000円、令和5年度の地方公務員では約1,325万9,000円となっています。特に定年退職に限ると、約2,000万円が目安となることが多く、安定した老後資金の形成に寄与しています。
契約社員の退職金制度の実情
契約社員の退職金については、公務員のように法律で一律に定められた制度はありません。そのため、退職金を受け取れるかどうかは、勤務する企業が退職金制度を導入しているか、そしてその制度の支給条件を満たしているかにかかっています。
多くの契約社員は、雇用期間が定められた有期雇用契約で働いています。この雇用形態の特性上、正社員と比較して退職金制度の対象外となるケースが非常に多いのが実情です。企業によっては、長期間雇用している契約社員に対して、限定的に退職金や慰労金を支給するケースもありますが、これはあくまで企業の任意によるものです。
近年では「同一労働同一賃金」の原則が浸透しつつあり、正社員と同等の業務内容や責任を負っている契約社員に対しては、退職金を含む待遇面での不合理な格差を解消するよう求められています。しかし、この原則が実態としてすべての企業に浸透しているわけではなく、依然として契約社員には退職金が支給されないケースが多いのが現状です。
もし契約社員として働く中で退職金制度について確認したい場合は、入社時や契約更新時に、企業の就業規則や退職金規定をしっかりと確認することが重要です。また、自身の働き方が正社員と同等であると考える場合は、労働組合や労働基準監督署に相談することも選択肢の一つとなります。退職金は老後の生活を支える大切な資金となるため、自身の状況を正確に把握し、必要な情報を集めることが不可欠です。
退職金制度における公務員と契約社員の比較
公務員と契約社員の退職金制度を比較すると、その基盤、支給の確実性、そして平均支給額において大きな違いが見られます。
公務員の退職金は、法律や条例によって定められた制度であり、安定した支給が約束されています。勤続年数などの要件を満たせば、ほぼ確実に退職金を受け取ることができます。さらに、定年制度が明確であり、退職金の平均額も数千万円規模と高額になる傾向があります。これは、公務員が国民全体の奉仕者として長期的に安定した雇用を前提としているためです。
一方、契約社員の退職金は、企業の任意制度に依存しており、支給される保証はありません。多くの企業では契約社員を退職金制度の対象外としているため、たとえ長年勤務したとしても退職金を受け取れない可能性が高いのが現状です。これは、契約社員が有期雇用であり、雇用期間の満了をもって雇用関係が終了するという特性が影響しています。
以下に主な違いをまとめました。
- 法的な根拠:
- 公務員: 国家公務員退職手当法、地方公務員条例(法的根拠あり)
- 契約社員: 企業の就業規則、退職金規定(企業の任意による)
- 支給の確実性:
- 公務員: 条件を満たせばほぼ確実
- 契約社員: 企業の制度導入と条件による(不確実)
- 平均支給額:
- 公務員: 数千万円規模(定年退職の場合)
- 契約社員: 支給されないケースが多数、支給されても少額
この違いから、契約社員は、将来の退職後の生活資金を自身の自助努力で準備する必要性が高いと言えます。公務員は手厚い制度に守られていますが、契約社員は自身のキャリアプランや老後設計において、退職金以外の方法で資産形成を考えることが極めて重要になります。
解雇時の退職金、掛金、雇用保険の基本
退職金と解雇の関係性
退職金は、労働者が長年勤め上げた功労に報いる目的で支払われるものですが、解雇された場合に退職金がどうなるかは、その企業の退職金規定によって大きく左右されます。特に注意が必要なのは、懲戒解雇の場合です。
多くの企業の退職金規定では、横領や背信行為などの重大な非行があった場合の懲戒解雇時には、退職金が一部または全額不支給となる旨が明記されています。これは、労働者の貢献度や信頼を著しく損ねた行為に対して、退職金の支給義務を免れるという考え方に基づいています。一方、会社都合による解雇の場合(経営不振によるリストラなど)は、通常通り退職金が支給されるか、あるいは自己都合退職よりも割増しで支給される規定がある場合もあります。
契約社員の場合、雇用期間が定められているため「解雇」というよりも「契約満了」という形での終了が一般的です。しかし、契約期間中に会社側から一方的に契約を解除される場合は「解雇」に該当します。この際、退職金規定がある企業であれば、その規定に沿って支給される可能性がありますが、契約社員は元々退職金制度の対象外であるケースが多いため、解雇されたとしても退職金が支払われないことがほとんどです。
解雇は予期せぬ事態であり、経済的な不安を伴います。自身の雇用契約や就業規則、退職金規定を事前に確認しておくことが、いざという時の備えになります。もし解雇された際に退職金の支給に疑問がある場合は、労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談することを検討しましょう。
雇用保険制度の役割と加入条件
雇用保険は、労働者が失業した場合や育児・介護などで休業した場合に、生活の安定と再就職の促進を図るための重要な社会保険制度です。具体的には、失業給付(基本手当)、育児休業給付、介護休業給付などが提供されます。
しかし、この制度はすべての労働者に適用されるわけではありません。
- 公務員: 原則として雇用保険には加入できません。これは、公務員が一般的な企業に比べて雇用の安定性が高く、失業するリスクが低いとみなされているためです。また、公務員独自の退職手当制度や共済組合制度があることも理由の一つです。ただし、期間雇用者や、特定の条件を満たす準公務員(独立行政法人職員の一部など)は、雇用保険に加入できる場合があります。
- 契約社員: 契約社員は、正社員と同様に雇用保険に加入できます。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
これらの条件を満たせば、雇用期間の定めがある契約社員であっても、失業時の給付や育児・介護休業給付の対象となります。
- 個人事業主: 個人事業主自身は、原則として雇用保険に加入できません。これは、個人事業主が「雇用される側」ではなく「雇用する側」であると見なされるためです。しかし、個人事業主が従業員を雇用している場合は、その従業員が上記の条件(週20時間以上、31日以上の雇用見込み)を満たせば、雇用主として雇用保険への加入義務が生じます。
雇用保険は、万が一の備えとして非常に重要な制度です。自身の雇用形態と加入条件を確認し、もし加入対象であれば、保険料が給与から天引きされているか確認するようにしましょう。
掛金の種類と支払い形態
退職金や老後資金、そして社会保障を支えるための「掛金」は、雇用形態によってその種類と支払い形態が大きく異なります。それぞれの立場での掛金の状況を見ていきましょう。
- 公務員:
- 厚生年金保険: 公務員は「共済組合」に加入しており、その一環として厚生年金保険制度に適用されます。給与から保険料が天引きされ、将来の年金給付に繋がります。
- 退職等年金給付制度: 厚生年金保険に加えて、公務員独自の制度として「退職等年金給付制度」があります。これも給与から一定額が掛金として徴収され、退職時に一時金または年金として受け取ることができます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金): 公務員もiDeCoに加入でき、掛金は全額所得控除の対象となります。2024年12月以降、公務員のiDeCo掛金上限額は月額2万円に引き上げられる予定であり、より一層、自身で老後資金を準備しやすくなります。
- 契約社員:
- 社会保険料: 契約社員が一定の条件(週の所定労働時間、月額賃金など)を満たして社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する場合、給与から社会保険料が天引きされます。この保険料は、将来の医療費や年金給付の財源となります。事業主と労働者で保険料を折半して負担します。
- 個人事業主:
- 小規模企業共済制度: 個人事業主の「退職金制度」に相当するもので、掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で自由に設定・変更できます。最大の魅力は、支払った掛金の全額が所得控除の対象となることで、高い節税効果が期待できます。
- 国民年金保険料: 個人事業主は国民年金に加入し、国民年金保険料を支払う義務があります。令和6年度の保険料は月額16,980円です。将来の老齢基礎年金に繋がる重要な掛金です。
このように、それぞれの立場に応じた掛金制度を理解し、自身のライフプランに合わせて適切に活用することが、将来の経済的な安定に繋がります。
退職金と厚生年金・国民健康保険料の関係性
退職金が社会保険料に与える影響
退職金は、その性質上、社会保険料の計算に直接的な影響を与えることはほとんどありません。退職金は「退職所得」として、他の所得とは別に分離課税されるため、健康保険や年金保険の標準報酬月額や標準賞与額には含まれません。
しかし、退職金を受け取った後の生活、特に社会保険料の負担には間接的な影響が生じる可能性があります。
- 退職後の健康保険料: 退職すると、それまで加入していた健康保険(会社の健康保険組合や共済組合)から脱退することになります。その後は、以下のいずれかの選択肢を選ぶことになります。
- 国民健康保険に加入: 住所地の市区町村で加入します。保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、退職金自体は影響しませんが、その年の他の所得(例えば、退職後の再就職先での給与や失業給付など)によっては保険料が変動します。
- 任意継続被保険者になる: 退職時の健康保険に最長2年間継続して加入できる制度です。保険料は退職時の給料に基づき計算されますが、会社負担分がなくなり全額自己負担となるため、保険料額は高くなります。
- 家族の扶養に入る: 家族が加入している健康保険の扶養に入れる場合、自身の保険料負担はありません。ただし、扶養に入るには収入基準などの条件があります。
- 退職後の年金保険料: 厚生年金保険から国民年金保険に切り替わる場合、国民年金保険料を自身で支払う必要があります。
退職金はまとまった金額ですが、社会保険料の計算には直接加算されないため、受け取った退職金をどのように運用・管理するかが、退職後の生活設計において非常に重要になります。
公務員の共済組合と退職後の社会保険
公務員は、一般企業の会社員が加入する健康保険組合や厚生年金保険とは異なり、「共済組合」に加入しています。この共済組合が、医療保険と年金制度の両方を一体的に運営しているのが特徴です。
公務員の社会保険料は、この共済組合が定める料率に基づいて給与から天引きされます。40歳以降になると、健康保険料と合わせて介護保険料も徴収されるようになります。
公務員が退職した場合、その後の社会保険の選択肢は主に以下のようになります。
- 健康保険:
- 任意継続: 共済組合の任意継続制度を利用し、退職時の共済組合に最長2年間継続して加入できます。保険料は全額自己負担となります。
- 国民健康保険への加入: 住所地の市区町村の国民健康保険に加入します。保険料は、前年の所得などに基づいて計算されます。
- 家族の扶養に入る: 配偶者や子などの健康保険の扶養に入ることも可能です。
- 年金:
- 厚生年金保険(共済年金): 公務員として支払った掛金は、厚生年金保険の記録として管理され、老後に「老齢厚生年金」として受け取ることができます。
- 国民年金: 厚生年金保険の適用が終了した後、再就職しない場合や扶養に入らない場合は、国民年金(第1号被保険者)に加入し、国民年金保険料を支払うことになります。
- 年金払い退職給付: 公務員独自の制度で、退職金を年金形式で受け取ることを選択している場合、退職後も一定期間、年金を受け取ることができます。
公務員は安定した制度の下で働いていますが、退職後の社会保険の選択は自身のライフスタイルや経済状況に合わせて慎重に検討する必要があります。
契約社員・個人事業主の社会保険料の動向
契約社員と個人事業主の社会保険料は、それぞれ異なるルールと動向に沿って変化しています。
契約社員の社会保険料
近年、日本では社会保険の適用範囲が段階的に拡大されており、契約社員など非正規雇用労働者も社会保険に加入しやすくなっています。現在の主な加入条件は以下の通りです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額賃金が8.8万円以上であること
- 2ヶ月以上の雇用見込みがあること
- 学生ではないこと
- 従業員101人以上の企業に勤めていること(2024年10月からは従業員51人以上の企業に拡大予定)
これらの条件を満たす契約社員は、健康保険と厚生年金保険に加入する義務が生じます。保険料は給与から天引きされ、事業主と折半で負担します。社会保険に加入することで、将来の年金受給額が増えたり、病気や怪我の際の保障が手厚くなったりといったメリットがあります。
個人事業主の社会保険料
個人事業主自身は、基本的に国民健康保険と国民年金に加入します。介護保険料は、40歳以降に国民健康保険料と合わせて納付することになります。
これらの保険料は、事業の経費としては認められませんが、「社会保険料控除」として所得から全額控除できるため、節税効果があります。確定申告の際に忘れずに申告しましょう。
また、個人事業主が従業員を雇用している場合、社会保険の取り扱いが変わります。常時5人以上の従業員を雇用している個人事業主(特定の事業を除く)は、「強制適用事業所」となり、従業員を社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる義務が生じます。この場合、事業主も保険料を折半で負担することになります。従業員の雇用を検討している個人事業主は、社会保険の加入義務とそのコストを事前に把握しておくことが重要です。
個人事業主の退職金制度:加入できる保険とは
小規模企業共済制度のメリットと活用法
個人事業主には会社員のような法定の退職金制度がありませんが、その代わりとしてぜひ活用したいのが「小規模企業共済制度」です。この制度は、国の機関である中小機構が運営しており、個人事業主や小規模企業の役員が安心して老後や廃業に備えられるように設計されています。
小規模企業共済の最大のメリットは、その節税効果にあります。支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減することができます。例えば、月70,000円(年840,000円)を掛金として支払った場合、その全額が所得から控除され、課税所得が減ることで節税に繋がります。
掛金は月額1,000円から70,000円まで、500円単位で自由に設定・変更が可能です。事業の状況に合わせて柔軟に調整できるため、無理なく続けることができます。共済金(退職金に相当する給付金)は、廃業時や引退時、死亡時などに受け取ることができます。
受け取り方法には、一括払いと分割払い、または併用があり、自身のライフプランに合わせて選択できます。一括で受け取る場合は「退職所得」扱いとなり、長期の勤続年数に応じた退職所得控除が適用されるため、税制上の優遇措置を受けることができます。分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」扱いとなります。
将来への備えと節税対策を両立できる小規模企業共済は、個人事業主にとって非常に魅力的な制度と言えるでしょう。加入を検討する際は、中小機構のウェブサイトなどで詳細を確認し、自身の事業計画や老後資金計画に組み込むことをお勧めします。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用
個人事業主が自身の老後資金を形成するための強力な手段として、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。iDeCoは、加入者が自ら掛金を拠出し、金融商品を選んで運用する私的年金制度です。
iDeCoの最大の魅力は、その「税制優遇」にあります。
- 掛金が全額所得控除: 支払った掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。これは、小規模企業共済と同様の強力な節税効果です。
- 運用益が非課税: 運用中に得た利益(利息や配当、売却益など)は非課税で再投資されます。通常、金融商品の運用益には税金がかかりますが、iDeCoではこれが免除されます。
- 受け取り時にも税制優遇: 原則60歳以降に年金または一時金として受け取る際にも、公的年金等控除や退職所得控除の対象となり、税負担が軽減されます。
個人事業主の場合、iDeCoの掛金上限額は月額68,000円(年額81万6,000円)と、会社員や公務員に比べて高額に設定されています。これにより、より多くの金額を税制優遇を受けながら積み立てることが可能です。
ただし、iDeCoは「確定拠出年金」という名の通り、運用結果によって将来受け取る金額が変動する「自己責任」の制度です。元本保証型の商品もありますが、投資信託などを選択すればリスクとリターンを伴います。金融機関によっては提供される商品や手数料が異なるため、自身の投資経験やリスク許容度に合わせて慎重に選びましょう。小規模企業共済と合わせて活用することで、より盤石な老後資金を築くことができます。
その他、個人事業主が備えるべき老後資金
小規模企業共済やiDeCoは個人事業主にとって大変有益な制度ですが、老後資金の準備はこれだけに限りません。複数の方法を組み合わせることで、より強固な資産基盤を築くことができます。
- 国民年金基金:
国民年金基金は、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして給付を受けられる公的な制度です。月々の掛金に応じて将来の年金受給額を増やすことができ、掛金はiDeCoと同様に全額所得控除の対象となります。iDeCoと国民年金基金の掛金を合わせた上限額は月額68,000円です。公的年金の上乗せとして、より安定した老後収入を確保したい場合に有効です。
- 貯蓄型保険:
終身保険や養老保険といった貯蓄性のある生命保険も、老後資金の準備に役立ちます。保険料を積み立てていくことで、満期時や解約時に保険金や解約返戻金を受け取ることができます。保障と貯蓄を兼ね備えている点が特徴で、死亡保障を確保しながら資産形成を進めたい場合に検討できます。ただし、途中解約すると元本割れするリスクもあるため、長期的な視点で契約することが重要です。
- NISAなどの投資制度:
新NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益が非課税となる制度です。つみたてNISAや成長投資枠を活用することで、株式や投資信託への投資を非課税で行うことができ、効率的に資産を増やすことが期待できます。特に、長期・積立・分散投資を基本とすることで、リスクを抑えながら資産を形成していくことが可能です。iDeCoと同様に運用益が非課税になるため、積極的に活用したい制度です。
これらの制度を自身のライフステージやリスク許容度に合わせて組み合わせることで、個人事業主としての老後資金を計画的に準備し、安心して事業を継続していくことができるでしょう。
退職金に関する疑問を解消!よくある質問と回答
退職所得の計算方法と税金
退職金は、長年の勤務に対する報酬として支給されるため、他の所得とは異なる「退職所得」として扱われ、税制上の優遇措置が設けられています。これにより、一般的な給与所得よりも税負担が軽くなる仕組みになっています。
退職所得の計算は以下のステップで行われます。
- 退職所得控除額の計算: まず、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を計算します。
- 勤続年数20年以下の場合: 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続年数20年超の場合: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
この控除額は、退職金から非課税枠として差し引かれる部分です。
- 退職所得の算出: (退職金収入金額 – 退職所得控除額) ÷ 2
- 所得税・住民税の計算: 算出された退職所得に、所得税率と住民税率をそれぞれ乗じて税額を計算します。退職金は「分離課税」といって、他の給与所得などとは合算されずに単独で税額が計算されるため、総合課税による税率の急上昇が抑えられます。
退職所得は、控除額を差し引いた残りの金額をさらに2分の1にするという「2分の1課税」が適用されます。これにより、課税対象となる所得が大きく減額されます。
例えば、勤続30年で退職金2,000万円を受け取った場合を考えてみましょう。
- 退職所得控除額: 800万円 + 70万円 × (30年 – 20年) = 800万円 + 700万円 = 1,500万円
- 退職所得: (2,000万円 – 1,500万円) ÷ 2 = 250万円
この250万円に対して所得税・住民税が課税されることになります。退職金の税金は、通常、会社が計算して退職時に源泉徴収してくれるため、原則として確定申告は不要です。
退職金と失業保険(基本手当)の同時受給は可能か
退職金を受け取ることと、失業保険(雇用保険の基本手当)を受給することは、原則として同時に可能です。退職金は「退職所得」として、失業保険は「非課税所得」として、それぞれ別の制度に基づいて支給されるため、互いに影響し合うことはありません。
つまり、退職金を受け取ったからといって、失業保険の受給資格が失われたり、給付額が減額されたりすることはありません。失業保険の受給要件を満たしていれば、退職金の有無にかかわらず、所定の期間、基本手当を受け取ることができます。
ただし、失業保険の給付開始時期や給付日数は、退職理由によって異なります。
- 自己都合退職の場合:
一般的に、退職後2ヶ月間の給付制限期間が設けられます。この期間が経過した後でなければ基本手当の支給が開始されません。また、会社都合退職に比べて給付日数が少なくなる傾向があります。
- 会社都合退職の場合:
(倒産、解雇など)給付制限期間は原則としてありません。ハローワークでの手続き後、比較的早く基本手当の支給が開始されます。また、給付日数も自己都合退職より長くなることが多いです。
いずれの場合も、失業保険を受給するためには、ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に就職活動を行う必要があります。退職金は老後資金の柱として、失業保険は再就職までの生活費として、それぞれの役割を理解し、計画的に活用することが大切です。
定年延長と退職金への影響
公務員においては、少子高齢化や年金支給開始年齢の引き上げに伴い、定年年齢が段階的に65歳まで引き上げられることが決定しています。この定年延長は、退職金の支給額や受給時期に大きな影響を及ぼします。
退職金の支給額は、一般的に「退職時の基本給」と「勤続年数」に基づいて計算されます。定年が延長され、働く期間が長くなることで、以下の影響が考えられます。
- 勤続年数の増加:
定年が延びることで勤続年数が増加し、それに伴い退職金計算の基礎となる「功労報奨」や「退職手当」が増加する可能性があります。公務員の退職金制度は勤続年数が長いほど有利になる仕組みが多いため、この点はポジティブな影響と言えます。
- 退職時の基本給:
定年延長後も役職や給与が維持されれば、退職時の基本給が高くなることで退職金も増額されます。しかし、定年後の再任用制度などでは、役職や給与が下がることがあり、その場合は退職金算定の基本給が低くなる可能性もあります。
- 年金受給開始年齢との関連:
定年延長は、年金受給開始年齢との間で「空白期間」が生じないようにする目的もあります。例えば60歳で定年退職し、年金の支給が65歳からだと、その間の収入が途絶えてしまいます。定年が65歳まで延長されれば、この空白期間を解消し、収入の安定が図られます。
企業においても、定年延長や継続雇用制度の導入が進んでいます。企業が定年を延長する場合、退職金規定の見直しが行われることが一般的です。従来の退職金制度を維持しつつ延長するのか、あるいは定年退職金を一旦支給し、その後の継続雇用期間には別途の退職金制度を設けるのかなど、企業によって対応は様々です。
定年延長は、働く期間が長くなることで生涯賃金が増える可能性がある一方、退職金制度や年金制度とのバランスを理解し、自身のライフプランを再構築することが求められます。
免責事項: 本記事は、提供された情報に基づいて作成されたものであり、最新の情報や個別の状況については、専門家にご相談ください。
まとめ
よくある質問
Q: 公務員の退職金はどのように決まりますか?
A: 公務員の退職金は、勤続年数や退職理由、俸給などを基に計算されます。国家公務員は退職手当、地方公務員は退職手当制度に基づいて支給されます。
Q: 契約社員でも退職金はもらえますか?
A: 契約社員の場合、原則として退職金は支給されません。ただし、就業規則や労働契約で退職金制度が定められている場合は、支給対象となる可能性があります。
Q: 解雇された場合、退職金はもらえますか?
A: 解雇の場合、退職金が支給されるかどうかは、解雇理由によります。正当な理由なく解雇された場合は、損害賠償として退職金に相当する金額が支払われることがあります。また、就業規則で解雇時の退職金に関する規定を確認することが重要です。
Q: 退職金と厚生年金・国民健康保険料にはどのような関係がありますか?
A: 退職金そのものが直接、厚生年金や国民健康保険料に影響を与えることはありません。ただし、退職金を受け取った年の所得として課税される場合があり、その所得額によっては、翌年度の国民健康保険料に影響する可能性があります。また、退職に伴って健康保険の扶養に入る場合などは、手続きが必要です。
Q: 個人事業主が退職金のような準備をするにはどうすれば良いですか?
A: 個人事業主の場合、退職金制度はありませんが、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済などの制度を活用することで、将来に向けた資産形成が可能です。これらは節税効果も期待できます。