1. Tera Termマクロの基本:行単位送信で効率化
    1. sendlnコマンドによる行単位送信の基本
    2. waitコマンドと遅延設定でエラーを防止
    3. マクロファイル(.ttl)の作成と実行手順
  2. Tera Termマクロで実現する制御:goto・gosubの活用
    1. 処理を分岐・ループさせるgotoの使い方
    2. サブルーチンgosubでコードの再利用性を高める
    3. 変数と条件分岐を組み合わせた高度なロジック
  3. GUI操作も自動化!dispstrとマクロで表示を制御
    1. dispstrでTera Term画面へのメッセージ出力
    2. ユーザー対話型のマクロ作成(inputboxやyesnobox)
    3. 実行状況の可視化によるオペレーションミス防止
  4. Tera Termの自動化をさらに便利に:自動ログイン・バックグラウンド実行
    1. SSHログインとパスワード入力の完全自動化
    2. コマンドラインオプションを利用したバックグラウンド実行
    3. ログ取得の自動化で作業証跡を確実に残す
  5. Tera Termマクロのデバッグと注意点
    1. messageboxを活用した変数の確認とデバッグ
    2. timeout設定による無限ループの回避策
    3. セキュリティ上の注意:パスワードの取り扱いと管理
  6. Tera Termマクロ作成の「相棒」に!AIで効率化のネクストレベルへ
    1. 【思考の整理】AIでマクロ作成のアイデアを整理・優先順位付けするコツ
    2. 【実践の下書き】そのまま使えるプロンプト例( を使用)
    3. 【品質の担保】AIの限界を伝え、人がどう微調整すべきかの知恵
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: Tera Termで「行単位送信」とは何ですか?
    2. Q: Tera Termマクロで「goto」と「gosub」の違いは何ですか?
    3. Q: Tera TermマクロでGUI操作を自動化するには?
    4. Q: Tera Termで自動ログインを安全に行う方法は?
    5. Q: Tera Termマクロのデバッグはどのように行えば良いですか?

Tera Termマクロの基本:行単位送信で効率化

sendlnコマンドによる行単位送信の基本

Tera Termマクロ(TTL:Tera Term Language)において、最も頻繁に使用されるコマンドが「sendln」です。これは指定した文字列の末尾に改行コードを付加してサーバーへ送信するコマンドで、人間がキーボードでコマンドを入力してEnterキーを押す動作をそのまま自動化できます。例えば、sendln 'ls -l'と記述すれば、ディレクトリの一覧を表示する操作を実行します。単純なテキスト送信ですが、定型コマンドをミスなく瞬時に送れるため、作業効率が大幅に向上します。

ここがポイント:コマンド送信時は「send」ではなく「sendln」を使うのが一般的です。「send」は改行を送らないため、値を入力する際など特定の場面でのみ活用されます。

waitコマンドと遅延設定でエラーを防止

サーバー側の処理速度やネットワークの状態によっては、マクロがコマンドを送りすぎてしまい、サーバー側が受け取れない「コマンドのこぼれ」が発生することがあります。これを防ぐために不可欠なのが「wait」コマンドです。wait '$' '#'のように記述することで、サーバーからのプロンプト(入力を待っている状態)が返ってくるまでマクロの実行を一時停止させることができます。これにより、前の処理が確実に終わってから次のコマンドを送るという安全な自動化が実現します。また、短い休憩を入れたい場合はpauseコマンドで秒単位の遅延を設定することも有効です。

マクロファイル(.ttl)の作成と実行手順

Tera Termマクロを作成するには、まずWindows標準のメモ帳などのテキストエディタを開き、コマンドを記述していきます。保存する際は、拡張子を「.ttl」にするのがルールです。実行方法は非常に簡単で、起動しているTera Termのメニューから「Control」→「Macro」を選択してファイルを選ぶか、.ttlファイルをTera Termの実行ファイル(ttpmacro.exe)に関連付けておけば、ファイルをダブルクリックするだけで自動化処理がスタートします。特別な開発環境を構築することなく、テキストファイル一つで自動化を始められる点が最大のメリットです。

Tera Termマクロで実現する制御:goto・gosubの活用

処理を分岐・ループさせるgotoの使い方

マクロ内で特定の条件に応じて処理を飛ばしたり、同じ動作を繰り返したりしたい場合には「goto」コマンドを使用します。まず、移動先となる場所に:label_name(コロン+任意の名前)という形式でラベルを作成します。そして、goto label_nameと記述することで、そのラベルの位置まで処理をジャンプさせることができます。例えば、接続に失敗した際に最初に戻って再試行するループ処理や、エラーが発生した際に終了処理へスキップさせるといったフロー制御が可能になり、マクロの柔軟性が格段に高まります。

サブルーチンgosubでコードの再利用性を高める

複数の場所で同じような処理を行う場合、何度も同じコードを書くのは非効率です。そこで役立つのが「gosub」コマンドです。これは特定の処理を「サブルーチン」としてまとめ、必要に応じて呼び出す仕組みです。gosub label_nameで呼び出し、サブルーチンの末尾にreturnを記述することで、呼び出し元の次の行に処理が戻ります。これにより、コード全体がスッキリと整理され、メンテナンス性が向上します。共通のログ出力処理や、特定のエラーチェック処理などをサブルーチン化するのが定番のテクニックです。

活用のコツ:gosubを活用することで、1つのファイルで複雑なシナリオを管理できるようになります。コードの重複を避けることが、バグの少ないマクロ作成への第一歩です。

変数と条件分岐を組み合わせた高度なロジック

マクロ内で数値をカウントしたり、文字列を一時的に保存したりするために「変数」を利用できます。intvar = 10のように数値を代入したり、strvar = 'hostname'のように文字列を格納したりします。これらとif文を組み合わせることで、「もしエラーメッセージが含まれていたら処理を中断する」「10回繰り返したら終了する」といった高度なロジックを組むことができます。単純なコマンドの羅列から、状況を判断して動く「インテリジェントな自動化ツール」へと進化させることが可能です。

GUI操作も自動化!dispstrとマクロで表示を制御

dispstrでTera Term画面へのメッセージ出力

マクロ実行中に、サーバーへ送信するコマンドとは別に、Tera Termの画面上にメッセージを表示させたい時に便利なのが「dispstr」コマンドです。これはマクロから画面に対して直接文字列を出力する機能で、改行コードを含める場合はdispstr 'Processing...#10'のように記述します(#10は改行を意味します)。現在どのステップを実行しているのか、あるいは計算結果などを画面上に直接表示できるため、作業の進行状況を把握するのに役立ちます。サーバー側のログを汚さずにユーザーに情報を伝える手段として重宝します。

ユーザー対話型のマクロ作成(inputboxやyesnobox)

Tera Termマクロは、実行中にユーザーからの入力を受け付けるGUIコンポーネントを表示できます。代表的なものに、文字列を入力させる「inputbox」や、はい/いいえを選択させる「yesnobox」があります。

例えば、以下のような使い道があります。

  • inputbox: 接続先のIPアドレスや、実行したいコマンドの引数を実行時に入力させる。
  • yesnobox: 「本当に設定変更を反映しますか?」という確認ダイアログを表示し、誤操作を防止する。

これにより、汎用性の高い「ツール型マクロ」を作成することができます。

実行状況の可視化によるオペレーションミス防止

自動化において最も怖いのは「今何が起きているか分からない」という状況です。dispstrやメッセージボックスを適切に配置することで、マクロの進捗状況をリアルタイムで可視化できます。特に重要な設定変更を行う前には、確認用のダイアログを表示させるステップを挟むべきです。また、処理が終わった際に「すべての作業が正常に完了しました」というポップアップを出すようにしておけば、終了したことに気づかず放置してしまうタイムロスを防ぐことができ、心理的な安心感にもつながります。

Tera Termの自動化をさらに便利に:自動ログイン・バックグラウンド実行

SSHログインとパスワード入力の完全自動化

毎日同じサーバーにログインする作業は、マクロ化の最も効果的な対象です。connectコマンドを使用すれば、ホスト名、ポート番号、ユーザー名、パスワード(または秘密鍵)を指定して、Tera Termの起動からログイン完了までを一気に自動化できます。パスワードを直接マクロに書くのが不安な場合は、パスワードファイル(.dat)に暗号化して保存し、それを読み込むgetpasswordコマンドを使用することでセキュリティを確保できます。一度設定してしまえば、アイコンをダブルクリックするだけで目的のサーバーの操作画面が表示されます。

推奨設定:セキュリティの観点から、マクロファイル内に生パスワードを記述するのは避けましょう。Tera Term標準のパスワード暗号化機能(getpassword)の利用を強く推奨します。

コマンドラインオプションを利用したバックグラウンド実行

Tera Termマクロは、画面を表示させずに裏側で実行させることも可能です。Windowsのコマンドプロンプトやショートカットのリンク先に、Tera Termのマクロ実行ファイル(ttpmacro.exe)と特定のオプション(/V:非表示モードなど)を指定することで、GUIを介さずにバックグラウンドで処理を完遂できます。これにより、他の作業を邪魔することなく定期的なデータ収集やログ監視を自動で行うことができます。タスクスケジューラと組み合わせれば、深夜の定期メンテナンスなども完全無人化が可能です。

ログ取得の自動化で作業証跡を確実に残す

自動化において重要なのが「何を実行し、どんな結果になったか」の記録です。TTLにはログ取得を開始するlogopenコマンドがあります。マクロの冒頭でこのコマンドを実行するように記述しておけば、実行中のすべての画面出力が自動的にテキストファイルに保存されます。ファイル名に日付や時刻を含めることも可能で(getdategettimeを使用)、作業後のエビデンス確認や、万が一エラーが起きた際の調査に絶大な威力を発揮します。手動でログ保存を忘れるリスクをゼロにできる、非常に強力な機能です。

Tera Termマクロのデバッグと注意点

messageboxを活用した変数の確認とデバッグ

マクロが思い通りに動かない場合、「messagebox」が最強のデバッグツールになります。プログラムでいうところの「プリントデバッグ」に相当し、messagebox strvar 'Debug Info'と書くことで、その時点での変数の内容をポップアップで表示できます。条件分岐が正しく行われているか、期待通りの文字列が取得できているかをステップごとに確認することで、問題の箇所を迅速に特定できます。デバッグが終わったら、コメントアウト(行頭に ; をつける)しておけば、いつでも再利用可能な状態で残しておけます。

timeout設定による無限ループの回避策

waitコマンドを使用する際、期待する文字列がいつまでも返ってこないと、マクロはそこで永久に停止してしまいます。これを防ぐのが「timeout」変数です。timeout = 10と設定しておけば、10秒待っても指定した文字列が見つからない場合にマクロを次の行へ進めることができます。この時、組み込み変数であるresultを確認すれば、タイムアウトで終わったのか、正常に受信できたのかを判別できるため、エラーが発生した際の例外処理(ログに記録して終了するなど)をスマートに記述できます。

コマンド/変数 役割
timeout waitコマンドの最大待ち時間を秒単位で設定
result 直前のコマンドの結果(成功=1, タイムアウト=0など)を保持

セキュリティ上の注意:パスワードの取り扱いと管理

Tera Termマクロは非常に便利ですが、作成した.ttlファイルを共有したりサーバー上に放置したりする際には細心の注意が必要です。特にログインを自動化している場合、マクロ内にパスワードが平文(そのままの文字)で書かれていると、第三者に閲覧されるリスクがあります。前述した暗号化パスワードファイル(.dat)の利用はもちろん、マクロファイルを保存するフォルダのアクセス権限を適切に設定することも重要です。また、共有PCなどで利用する場合は、使い終わったマクロや一時ファイルを削除する習慣をつけましょう。

Tera Termマクロ作成の「相棒」に!AIで効率化のネクストレベルへ

Tera Termマクロは、定型作業を自動化し、日々の業務を劇的に改善する強力なツールです。しかし、複雑な処理やGUI操作の自動化となると、マクロの設計や記述に時間と労力がかかることも少なくありません。そこで、AIをあなたの「秘書」や「優秀なアシスタント」として活用しませんか?AIは、マクロ作成のアイデア出し、構成の整理、そして具体的なコードの「たたき台」作成を強力にサポートしてくれます。まるで、経験豊富なベテランアシスタントに相談するかのように、AIとの対話を通じて、あなたのTera Termマクロ作成プロセスを加速させ、より高度な自動化へと導きます。

【思考の整理】AIでマクロ作成のアイデアを整理・優先順位付けするコツ

Tera Termマクロで自動化したい作業を洗い出したら、まずはAIにその全体像を整理してもらいましょう。例えば、「サーバーへのログイン、特定のコマンド実行、結果のログ保存」といった一連の作業をAIに伝え、どのようなステップでマクロを組むのが効率的か、あるいはどの部分を自動化するのが最も効果的か、といった優先順位付けの視点を提供してもらうことができます。「この作業はGUI操作が必要だから、マクロでどこまで自動化できるか」「このコマンドの出力結果をどう扱えば良いか」など、具体的な疑問点を投げかけることで、AIは考えられる選択肢や留意点を提示してくれます。

AIは、あなたの漠然としたイメージを具体的なタスクリストや処理フローへと落とし込む手助けをしてくれます。これにより、見落としがちな要素に気づいたり、より洗練された自動化の道筋を発見したりすることが可能になります。AIはあなたの思考を整理する「壁打ち相手」となり、より本質的な部分に集中できるようサポートするのです。

【実践の下書き】そのまま使えるプロンプト例( を使用)

「AIに具体的な指示を出す」というのは、優秀なアシスタントに仕事を依頼する際の重要なステップです。AIに「Tera Termマクロで、サーバーへの自動ログインと、日付ごとのログファイル作成を自動化したい」といった目的を明確に伝え、さらに「ログインID、パスワード、接続先IPアドレス、実行したいコマンド、ログファイルの命名規則」といった具体的な情報を与えることで、AIはあなたの意図を正確に理解し、より的確なマクロコードの「たたき台」を生成してくれます。なぜこの指示が役立つかというと、AIは与えられた情報に基づいて、必要な処理を段階的に組み立て、関連するマクロコマンドを網羅しようと努めるからです。これにより、ゼロからコードを書き始めるよりも、はるかに短時間で、かつ意図に近いコードを得ることができます。

sendto_input "ssh ${login_id}@${server_ip}"
  expect "password:"
  sendto_input "${password}"
  expect "# "
  sendto_input "date '+%Y%m%d'"
  expect "% "
  get_log "log_date"
  sendto_input "mkdir /var/log/myapp/${log_date}"
  expect "# "
  sendto_input "touch /var/log/myapp/${log_date}/app_log.txt"
  expect "# "
  # ここからログ収集やコマンド実行の処理を続ける
  

このプロンプト例は、Tera Termマクロでよく利用される `sendto_input`, `expect`, `get_log` といったコマンドを組み合わせ、自動ログインと日付に基づいたディレクトリ・ファイル作成という具体的な処理を想定しています。AIはこの指示を受け、コマンドの実行順序、必要な `expect` の文字列、そしてファイル名の生成方法などを考慮したコードを生成します。ただし、このコードはあくまで「たたき台」です。実際のサーバー環境やパスワード入力のプロンプト、コマンドの出力形式などは異なる場合があるため、必ずご自身の環境に合わせて微調整が必要です。

【品質の担保】AIの限界を伝え、人がどう微調整すべきかの知恵

AIは非常に優秀なアシスタントですが、万能ではありません。AIが生成したTera Termマクロコードは、あくまで「たたき台」として捉えるべきです。例えば、AIは実際のネットワーク環境の遅延や、サーバー側の予期せぬ応答、あるいは特定のGUI要素の正確な座標などを完璧に把握しているわけではありません。そのため、生成されたコードをそのまま実行するのではなく、必ずご自身の環境でテストし、必要に応じて遅延時間の調整、`expect` で待機する文字列の修正、GUI操作の座標調整などを丁寧に行う必要があります。

AIは「思考のたたき台」を提供する道具であり、最終的な判断と品質の保証は、あくまで「あなた」の手にかかっています。AIの提案を鵜呑みにせず、その意図を理解し、ご自身の経験や知識を加えて微調整することで、初めて実用的な、そして信頼性の高いTera Termマクロが完成します。AIを賢く活用し、その限界を理解することで、あなたの自動化スキルはさらに向上するはずです。