React UI開発を加速させる!機能別コンポーネント活用術
ReactのUI開発を効率化し、開発速度を向上させるためには、機能別に整理されたコンポーネントの活用が不可欠です。本記事では、特定の要件に対応するコンポーネントの選び方から、その実装、そして開発全体を加速させるための具体的な手法について、最新の情報を基に解説します。再利用性を高め、保守性の高いアプリケーションを構築するためのヒントが満載です。
React AriaがもたらすアクセシブルなUI開発
Webアクセシビリティは、すべてのユーザーが情報や機能にアクセスできるようにするための重要な要素です。React Ariaは、アクセシブルなUIを構築するための強力な基盤を提供し、開発者がWAI-ARIAのベストプラクティスに則ったコンポーネントを容易に作成できるように支援します。
アクセシビリティの重要性とその課題
現代のウェブ開発において、アクセシビリティは単なる「あれば良いもの」ではなく、不可欠な要件となっています。身体的障害を持つユーザーだけでなく、一時的な状況(片手が塞がっている、騒がしい環境にいるなど)にあるユーザー、あるいは高齢者にとっても、ウェブサイトやアプリケーションが使いやすいことは重要です。アクセシビリティは、法律や規制(例えば、ADA、WCAGなど)の順守にもつながり、企業イメージの向上やSEO効果にも寄与します。
しかし、アクセシブルなUIをゼロから構築するのは容易ではありません。スクリーンリーダー対応、キーボードナビゲーション、適切なARIA属性の付与など、考慮すべき点が多岐にわたります。多くのUIコンポーネントライブラリはアクセシビリティを考慮して設計されていますが、既存のコンポーネントをカスタマイズする際や、独自のコンポーネントを作成する際には、開発者が自身でアクセシビリティの課題に取り組む必要が生じます。特に複雑なインタラクションを持つUIでは、その実装はさらに難しくなります。
React Ariaとは?アクセシブルなUIプリミティブの提供
React Ariaは、Adobeによって開発されたフックベースのライブラリであり、React Spectrumという包括的なデザインシステムの基盤となっています。その最大の特徴は、UIの見た目(スタイル)とは独立して、アクセシビリティに関するロジックや動作(インタラクション)を提供することです。これにより、開発者はデザインの自由度を保ちながら、WAI-ARIAの仕様に完全に準拠したコンポーネントを構築できます。
React Ariaは、ボタン、チェックボックス、モーダル、日付ピッカーなど、多岐にわたるUI要素に対する低レベルのフックを提供します。例えば、`useButton`フックは、ボタンのクリックイベント、フォーカス管理、キーボード操作、さらにはスクリーンリーダーに読み上げさせるためのARIA属性などを自動的に処理してくれます。開発者はこれらのフックを組み合わせることで、複雑なアクセシビリティ要件を持つカスタムコンポーネントも、最小限の労力で実装できるようになります。これにより、開発者は見た目の美しさだけでなく、すべてのユーザーが使いやすいアプリケーションを構築することに集中できます。
実装例と開発効率の向上
React Ariaをプロジェクトに導入することで、アクセシブルなUI開発のワークフローは劇的に改善されます。例えば、カスタムボタンを作成する場合、通常のHTMLボタンではキーボード操作やスクリーンリーダーへの対応を自分で実装する必要がありますが、React Ariaの`useButton`フックを使用すれば、これらのアクセシビリティ機能が自動的に付与されます。
import { useButton } from 'react-aria';
import { useRef } from 'react';
function MyAccessibleButton(props) {
let ref = useRef();
let { buttonProps } = useButton(props, ref);
return (
{props.children}
);
}
このように、わずかなコードで高度なアクセシビリティを確保できるため、開発者はアクセシビリティに関する深い知識がなくても、自信を持ってコンポーネントを開発できます。さらに、React Ariaは状態管理やイベント処理も抽象化してくれるため、コンポーネントのロジックがシンプルになり、可読性と保守性が向上します。結果として、アクセシビリティテストにかかる時間も削減され、開発全体の効率が大幅に向上します。アクセシビリティを開発プロセスの初期段階から組み込むことで、後からの手戻りを防ぎ、ユーザー体験の高いアプリケーションを迅速に提供することが可能になります。
React Bootstrap/Material UIで実現する洗練されたデザイン
ゼロからUIコンポーネントを構築する手間を省き、デザインの一貫性を保つために、UIコンポーネントライブラリの活用は非常に有効です。特にReactの世界では、React BootstrapとMaterial UIが、洗練されたデザインと高い開発効率を両立させるための代表的な選択肢として挙げられます。
デザインシステムとしてのUIライブラリ
UIライブラリは単なるコンポーネント集ではなく、その背後には堅牢な「デザインシステム」が存在します。デザインシステムとは、デザイン原則、パターン、コンポーネント、ガイドラインを体系的にまとめたものであり、プロダクト全体のデザインの一貫性を保ち、効率的な開発を促進するためのフレームワークです。React BootstrapやMaterial UIのようなライブラリは、これらのデザイン原則に基づいて構築された再利用可能なコンポーネントを提供します。
これにより、開発チームはブランドイメージを統一し、ユーザーに一貫したユーザー体験を提供できます。例えば、ボタンの色、フォントサイズ、入力フィールドのスタイルなどが、アプリケーション全体で共通のルールに従うため、ユーザーは新しい機能やページでも迷うことなく操作できます。また、デザイナーと開発者の間のコミュニケーションコストが削減され、デザインレビューのプロセスも効率化されます。提供された参考情報でも言及されている通り、これらのライブラリは「デザインの一貫性」と「開発効率の向上」という二つの大きなメリットをもたらします。
React BootstrapとMaterial UIの比較と特徴
Reactエコシステムには多くのUIライブラリが存在しますが、特に人気が高いのがReact BootstrapとMaterial UI (MUI) です。それぞれ異なるデザイン哲学に基づき、独自の強みを持っています。
* React Bootstrap : CSSフレームワークのBootstrapをReactコンポーネントとして再実装したものです。既存のBootstrapの知識やCSSを活用できるため、多くの開発者にとって学習コストが低いというメリットがあります。汎用的なデザインで、幅広い種類のウェブサイトやアプリケーションに適しており、レスポンシブデザインにも強力に対応しています。Bootstrapの豊富なテーマやユーティリティクラスとの親和性も高いです。
* Material UI (MUI) : Googleが提唱するマテリアルデザインに基づいています。ミニマリストでありながら、影やアニメーションを効果的に使用したモダンなUIが特徴です。カスタマイズ性に優れており、コンポーネントの見た目や振る舞いを細かく調整できます。参考情報でも「Googleのマテリアルデザインに基づいた、豊富なUIコンポーネントを提供します」と紹介されている通り、非常に多くの種類のコンポーネントが提供されており、複雑なアプリケーション開発にも対応できます。
どちらのライブラリも、再利用可能なコンポーネントによって開発時間を短縮し、アクセシビリティに配慮した設計がなされている点が共通しています。
プロジェクトへの導入とカスタマイズのヒント
どちらのライブラリを選択するかは、プロジェクトの要件、デザイナーの好み、および既存の技術スタックに大きく依存します。
* 選択のポイント :
* デザインの好み : モダンでGoogleらしいUIを求めるならMaterial UI、よりオーソドックスでBootstrapのデザインに慣れているならReact Bootstrapが適しています。
* カスタマイズの容易さ : 両者ともに高いカスタマイズ性を提供しますが、Material UIはテーマ機能やCSS-in-JSによるスタイリングがより柔軟です。React BootstrapはSass変数やカスタムCSSによるオーバーライドが一般的です。
* 既存プロジェクトとの統合 : 既にBootstrapを使用しているプロジェクトであれば、React Bootstrapの導入はスムーズでしょう。
* カスタマイズのヒント :
* テーマの活用 : 両ライブラリともにテーマ機能を提供しており、グローバルなスタイル設定(プライマリカラー、セカンダリカラー、フォントなど)を一元管理できます。これにより、デザインの一貫性を保ちながら、ブランドに合わせたUIを作成できます。
* コンポーネントのオーバーライド : 必要に応じて、特定のコンポーネントのスタイルや挙動を部分的に上書きすることが可能です。Material UIでは`sx`プロップや`styled`ユーティリティ、React BootstrapではカスタムCSSクラスや`as`プロップなどが利用できます。
これらのライブラリを効果的に活用することで、開発チームはUIの見た目や振る舞いを細かく制御しつつも、迅速かつ効率的に高品質なUIを構築できるようになります。
Excelライクなデータ表示に!React Gridの応用
Webアプリケーションにおいて、大量のデータを効率的かつ直感的に表示・操作するニーズは非常に高まっています。特に、表形式のデータを扱う際には、Excelのような高機能なスプレッドシート体験が求められることがあります。React Gridコンポーネントは、このような要件を満たし、ユーザーに優れたデータインタラクションを提供するための強力なツールとなります。
データグリッドコンポーネントの必要性
Webアプリケーションにおける大量データの表示は、常にパフォーマンスとユーザー体験の課題を伴います。数千、数万行にも及ぶデータを一度にブラウザにレンダリングしようとすると、アプリケーションの動作が重くなったり、メモリを大量に消費したりして、ユーザーエクスペリエンスが著しく低下する可能性があります。このような状況では、単なるHTMLの`
`タグだけでは対応しきれません。
そこで必要となるのが、データグリッドコンポーネントです。データグリッドは、単にデータを表示するだけでなく、以下のExcelライクな機能を提供することで、ユーザーのデータ操作を大幅に向上させます。
* **ソート**: 列ヘッダーをクリックしてデータを昇順・降順に並べ替え。
* **フィルタリング**: 特定の条件に基づいて表示するデータを絞り込み。
* **ページネーション**: 大量のデータを複数ページに分割して表示。
* **編集**: セル内のデータを直接編集。
* **グループ化**: 特定の列の値に基づいてデータをグループ化。
* **集計**: 合計、平均などの値を表示。
これらの機能は、ビジネスアプリケーションやデータ分析ツールにおいて不可欠であり、ユーザーが効率的にデータと対話することを可能にします。
主要なReact Gridライブラリとその機能
Reactコミュニティでは、高機能なデータグリッドライブラリが多数提供されており、プロジェクトの要件に合わせて選択できます。代表的なものをいくつか紹介します。
* AG Grid : 最も高機能で豊富な機能を誇るグリッドライブラリの一つです。ソート、フィルタリング、グループ化、集計、列のドラッグ&ドロップ、セル編集、仮想化など、Excelに匹敵する機能を網羅しています。無料のCommunity版と、より高度な機能を提供するEnterprise版があります。複雑なビジネスアプリケーションやデータ分析ダッシュボードに適しています。
* React Data Grid : より軽量でシンプルなグリッドを求める場合に適しています。仮想化によるパフォーマンス最適化に優れており、カスタムセルレンダリングや基本的なソート・フィルタリング機能を提供します。大規模なデータセットを扱うが、そこまで複雑な機能は必要ない場合に有用です。
* TanStack Table (旧 React Table) : ヘッドレス(UIを持たない)なテーブルライブラリであり、テーブルのロジック(ソート、フィルタリング、ページネーションなど)のみを提供し、UIのレンダリングは開発者が自由に行えます。これにより、最大限の柔軟性とカスタマイズ性を実現できます。独自のUIデザインシステムに統合したい場合に最適です。
これらのライブラリは、大量のデータセットを扱う際のパフォーマンス、機能の豊富さ、カスタマイズの容易さといった観点から選定することが重要です。
パフォーマンス最適化とカスタマイズ
データグリッドの性能は、特に大量のデータを扱う際にその真価を発揮します。この領域で最も重要な技術の一つが「**リストの仮想化(Windowing)**」です。参考情報でも言及されている通り、仮想化は画面に表示されている行や列のみをレンダリングし、スクロールに応じて動的に要素を追加・削除する技術です。これにより、DOM要素の数を最小限に抑え、描画パフォーマンスを大幅に向上させることができます。ほとんどの主要なReact Gridライブラリは、内部的にこの仮想化技術を採用しています。
* カスタムレンダリング : グリッドコンポーネントは、セルの内容やヘッダーを自由にカスタマイズできる機能を提供します。例えば、特定のセルにアイコンを表示したり、進捗バーを表示したり、ボタンを配置したりすることができます。これにより、単調なデータ表示ではなく、視覚的にも機能的にもリッチなUIを構築できます。
* ユーザーによるデータ操作機能 : 列のサイズ変更、列の並べ替え、行のドラッグ&ドロップなど、ユーザーがグリッドを自由に操作できる機能も重要です。これらのインタラクションは、ユーザーがデータを自分好みに整理・分析する手助けとなり、アプリケーションの使いやすさを高めます。
React Gridライブラリを適切に選択し、仮想化やカスタムレンダリングといった最適化手法を活用することで、開発者は大量のデータを扱うウェブアプリケーションにおいても、高速で応答性の高い、そしてExcelライクなユーザー体験を提供できるようになります。
高度なレイアウトとインタラクションを構築する
現代のウェブアプリケーションでは、単に情報を表示するだけでなく、ユーザーが直感的に操作でき、視覚的に魅力的なUIが求められます。Reactを活用することで、柔軟なレイアウトの構築から複雑なインタラクションの実装まで、幅広い表現が可能です。
柔軟なレイアウトシステムの構築
ウェブサイトやアプリケーションの見た目を決定づけるレイアウトは、ユーザーエクスペリエンスの基盤となります。Reactでは、CSSの強力な機能を活用しつつ、コンポーネント指向のアプローチでレイアウトを構築できます。
* CSS GridとFlexbox : これらのCSSモジュールは、レスポンシブで柔軟なレイアウトを作成するための標準的なツールです。Flexboxは1次元(行または列)の配置に優れ、ナビゲーションバーやカードリストに適しています。一方、CSS Gridは2次元(行と列)の配置を可能にし、ウェブサイト全体のレイアウトや複雑なダッシュボードの構築に最適です。Reactコンポーネント内でこれらを適用することで、再利用可能なレイアウトブロックを定義できます。
* スタイルコンポーネントとCSSモジュール : スタイリング手法もレイアウト構築の柔軟性を高めます。
* Styled Components / Emotion : CSS-in-JSライブラリは、JavaScript内でCSSを記述することを可能にし、コンポーネントごとにスコープされたスタイルを適用します。これにより、スタイルとコンポーネントが密接に結合し、スタイルの衝突を防ぎます。
* CSS Modules : CSSファイルを通常のCSSとして記述しつつ、ビルド時にクラス名を一意にハッシュ化することで、スタイルがグローバルに影響しないようにします。既存のCSS資産を活用したい場合に便利です。
* レスポンシブデザイン : スマートフォンからデスクトップまで、あらゆるデバイスで適切に表示されるよう、ブレイクポイントを設定したメディアクエリを活用します。UIライブラリ(React Bootstrap, Material UIなど)も、レスポンシブ対応のためのグリッドシステムやユーティリティを提供しています。
これらの技術を組み合わせることで、多様なデバイスや画面サイズに対応した、動的で美しいレイアウトを効率的に構築できます。
インタラクティブなUI要素の実装
ユーザーがアプリケーションをより魅力的に感じるのは、スムーズで応答性の高いインタラクションがあるからです。Reactは、複雑なインタラクションもコンポーネントとしてカプセル化し、再利用可能にすることで、開発を容易にします。
* ドラッグ&ドロップ : アイテムの並べ替えや、要素の移動など、直感的な操作を可能にします。`react-beautiful-dnd`のようなライブラリは、アクセシビリティにも配慮された、スムーズなドラッグ&ドロップ機能を提供します。
* アニメーション : ユーザーの注意を引き、操作に対するフィードバックを与える上で重要です。`Framer Motion`や`React Spring`のようなライブラリは、宣言的なAPIで複雑なアニメーションを簡単に実装できます。これにより、要素の出現・消滅、状態変化などを滑らかに表現し、ユーザー体験を向上させます。
* 複雑なフォーム : ユーザーからの入力を受け付けるフォームは、バリデーション、エラー表示、条件付きレンダリングなど、多くのインタラクションを伴います。`React Hook Form`や`Formik`などのライブラリは、これらのフォーム開発を簡素化し、パフォーマンスを最適化します。
* カスタムフックの活用 : 参考情報でも述べられている通り、状態管理やロジックをカスタムフックとして抽出し、再利用可能にすることで、コンポーネントをシンプルに保ち、コードの重複を削減できます。例えば、モーダルウィンドウの開閉ロジックや、データフェッチングのロジックなどをカスタムフックとして定義することで、複数のコンポーネントで同じインタラクションロジックを再利用できます。
これらの要素を適切に組み合わせることで、ユーザーが操作していて楽しい、高度にインタラクティブなUIを構築できます。
コンポーネント間の連携と状態管理
複雑なUIを構築する上で不可欠なのが、コンポーネント間の効率的な連携と、アプリケーションの状態管理です。Reactの単方向データフローの原則に基づき、状態は適切に管理される必要があります。
* 状態管理ライブラリ : 小規模なアプリケーションであれば、Reactの`useState`や`useContext`だけでも十分ですが、大規模なアプリケーションでは、より強力な状態管理ソリューションが求められます。
* Redux : 集中型ストアでアプリケーション全体の状態を管理し、予測可能な状態遷移を実現します。ミドルウェアによる副作用の管理も可能です。
* Zustand / Jotai : 軽量でシンプル、フックベースの状態管理ライブラリです。ボイラープレートが少なく、学習コストも低いため、近年人気が高まっています。
* Context API : props drilling(propsを深くネストされたコンポーネントに何度も渡す問題)を避けるために利用されます。グローバルな状態(テーマ設定や認証情報など)を共有するのに適しています。
* コンポーネント間のデータフロー : 親コンポーネントから子コンポーネントへはpropsを使ってデータを渡し、子コンポーネントから親コンポーネントへはイベントコールバックを通じてデータを渡すのが基本です。この単方向データフローを意識することで、アプリケーションの動作が予測しやすくなります。
* パフォーマンス最適化 : 参考情報でも強調されているように、状態管理と密接に関連するのがパフォーマンス最適化です。
* メモ化 (`React.memo`, `useMemo`, `useCallback`) : コンポーネントや計算結果、関数が不要に再レンダリング・再計算されるのを防ぎ、パフォーマンスを向上させます。特に頻繁に更新されるリストや、計算コストの高いコンポーネントで効果的です。
* 関数のインライン定義の回避 : レンダリング関数内でのインライン関数定義は、不要な再レンダリングを引き起こす可能性があるため、`useCallback`でメモ化するか、コンポーネント外で定義することが推奨されます。
これらの状態管理の選択とパフォーマンス最適化の技術を駆使することで、アプリケーションは複雑さを増しても、高い応答性とスムーズなユーザー体験を維持することができます。
React PDF、React Link、React Loadingを使いこなす
Reactアプリケーション開発では、多様なニーズに応えるために、様々な特定の機能を担当するコンポーネントが活用されます。ここでは、PDFの生成と表示、SPA(シングルページアプリケーション)におけるナビゲーション、そしてユーザー体験を向上させるローディング表示に特化したコンポーネント群に焦点を当て、その活用術を解説します。
PDF生成・表示の効率化: React PDF
Webアプリケーションにおいて、レポート、請求書、チケット、契約書など、PDF形式のドキュメントを生成・表示する機能は多くのビジネスシーンで求められます。React PDFは、この要件をReactのコンポーネントベースのアプローチで解決する強力なライブラリです。
* `@react-pdf/renderer`の活用 : これは、Reactコンポーネントの記述方法でPDFドキュメントを生成できるライブラリです。通常のHTMLやCSSのようにJSXを使ってドキュメントの構造やスタイルを定義できるため、Web開発者にとって学習コストが低く、既存のReactの知識を活かせます。レイアウト、テキスト、画像、表などをコンポーネントとして配置し、JavaScriptのロジックと組み合わせて動的なPDFを生成することが可能です。
* クライアントサイドでの動的なPDF生成 : `react-pdf/renderer`は、ユーザーのブラウザ上でPDFを生成できるため、サーバーへの負荷を軽減し、リアルタイムでのドキュメント生成を可能にします。例えば、ユーザーがフォームに入力した内容を即座にPDFとしてプレビュー表示したり、パーソナライズされた報告書をダウンロードさせたりする機能を手軽に実装できます。
* メリット :
* **開発効率の向上**: ReactコンポーネントとしてPDFを記述できるため、Web開発のワークフローにシームレスに統合できます。
* **動的なコンテンツ**: JavaScriptのデータに基づいて、内容が変化するPDFを簡単に生成できます。
* **カスタマイズ性**: 細かいレイアウトやスタイリングの調整が可能です。
このライブラリを活用することで、WebアプリケーションにプロフェッショナルなPDF生成機能をスマートに組み込むことができます。
SPAナビゲーションの基盤: React Link
シングルページアプリケーション(SPA)において、ページ間のスムーズな遷移とルーティングは、ユーザー体験を左右する重要な要素です。Reactアプリケーションのナビゲーション機能の基盤となるのが、`react-router-dom`などのルーティングライブラリが提供する`Link`コンポーネントです。
* `react-router-dom`の`Link`コンポーネント : この`Link`コンポーネントは、従来の``タグとは異なり、ページ全体のリロードを伴わないクライアントサイドルーティングを実現します。ユーザーが`Link`をクリックすると、JavaScriptによってDOMの一部が書き換えられ、URLのみが変更されるため、高速でスムーズなページ遷移が可能です。
* SPAにおけるルーティングの重要性 :
* **高速なページ遷移**: ページ全体のリロードがないため、ユーザーは待機することなくコンテンツにアクセスできます。
* **URLの管理**: ユーザーが直接URLを入力したり、ブラウザの「戻る」「進む」ボタンを使用したりしても、アプリケーションの状態が適切に維持されます。
* **アクセシビリティとSEO**: `Link`コンポーネントはセマンティックなHTMLを生成し、適切なARIA属性を付与することで、スクリーンリーダーや検索エンジンにも優しいナビゲーションを提供します。
`Link`コンポーネントを適切に利用することで、React SPAはデスクトップアプリケーションのような快適な操作感を提供し、ユーザーエンゲージメントを高めることができます。
ユーザー体験向上のためのローディング表示: React Loading
非同期処理が頻繁に発生する現代のWebアプリケーションにおいて、データフェッチング中や処理実行中にユーザーを待たせる時間は避けられません。この待機時間を快適に過ごしてもらうための工夫が、適切なローディング表示です。Reactエコシステムには、様々なローディング表示を実現するライブラリが存在します。
* 非同期処理におけるローディング表示の必要性 : サーバーからのデータ取得やファイルのアップロードなど、時間がかかる処理中にUIがフリーズしたように見えると、ユーザーはアプリケーションが応答していないと感じ、不満を抱く可能性があります。ローディング表示は、アプリケーションが「動作している」ことを明確に伝え、ユーザーの不安を軽減し、忍耐を促す役割を果たします。
* 代表的なローディングライブラリ :
* `react-loading-skeleton` : コンテンツがまだロードされていない領域に、アニメーション付きのスケルトン(骨組み)UIを表示します。これにより、コンテンツがどのように配置されるかをユーザーに事前に伝え、ロード後のレイアウトシフトを防ぎます。
* `react-spinners` : さまざまなスタイル(ボール、ドット、リングなど)のローディングスピナーを簡単に表示できます。シンプルながらも視覚的にユーザーに状況を伝えます。
* プログレスバー : 処理の進捗を具体的なパーセンテージやバーの動きで示すことで、ユーザーに待機時間の目安を提供します。
* ユーザーの待機時間を快適にするための工夫 :
* **遅延表示**: 非常に短いローディング(例:200ms未満)では、かえってUIがちらつく原因となるため、一定時間以上ロードに時間がかかる場合のみ表示する「遅延表示」が有効です。
* **視覚的な多様性**: アプリケーションのブランドイメージに合わせたローディングアニメーションを選択することで、統一感のあるデザインを維持できます。
これらのReact Loading関連ライブラリを適切に活用することで、非同期処理による待機時間をユーザーにとってより快適な体験に変え、アプリケーション全体の品質を高めることができます。
まとめ
React Aria、React Bootstrap、React Material UI、そしてReact Gridなどの強力なコンポーネント群を理解し、適切に活用することで、開発者はより効率的かつ高品質なUIを構築できます。本記事で紹介した内容が、あなたのReact UI開発の一助となれば幸いです。
よくある質問
Q: React Ariaとは何ですか?
A: React Ariaは、アクセシブルでユーザーフレンドリーなUIコンポーネントを構築するためのフックとユーティリティのコレクションです。キーボード操作やスクリーンリーダー対応などを容易にします。
Q: React BootstrapとReact Material UIの違いは何ですか?
A: React BootstrapはBootstrapのスタイルとコンポーネントをReactで利用できるようにしたものです。一方、React Material UI (MUI)はGoogleのMaterial Designに基づいたコンポーネントを提供します。デザインの方向性やカスタマイズ性で選択が変わります。
Q: Excelライクな表をReactで実現するにはどうすれば良いですか?
A: React Gridコンポーネント(例: ag-Grid, TanStack Table)を利用することで、ソート、フィルタリング、編集などの機能を備えたExcelライクな表を効率的に実装できます。
Q: React Layoutで複雑な画面構成をどう作りますか?
A: React GridシステムやCSS Flexbox/Gridを組み合わせることで、レスポンシブで柔軟なレイアウトを構築できます。React Aria ComponentsのLayout関連の機能も役立つ場合があります。
Q: PDFの表示やローディング表示はReactでどのように実装できますか?
A: PDF表示にはreact-pdfなどのライブラリ、ローディング表示にはCSSアニメーションや専用のローディングコンポーネント(Material UIのCircularProgressなど)を利用します。React Portalもローディングオーバーレイなどに活用できます。