Java 17の登場と過去のバージョン

長期サポート(LTS)とJavaの進化

Javaは活発なエコシステムを持つプログラミング言語であり、定期的に新しいバージョンがリリースされています。中でも、長期サポート(LTS)バージョンは、安定性と長期的な保守が求められるエンタープライズシステムにとって非常に重要です。LTSバージョンは、リリース後も長期間にわたってセキュリティアップデートやバグ修正が提供されるため、安心して利用し続けることができます。Java 17は、Java 11に続く主要なLTSバージョンとして、多くの開発者や企業から注目を集めています。

過去を振り返ると、特にJava 8は長らくデファクトスタンダードとして利用されてきましたが、2014年のリリースから多くの時間が経過し、その後のバージョンで数多くの機能強化やパフォーマンス改善が図られてきました。Java 17は、これらの進化の集大成とも言えるバージョンです。

JavaのバージョンアップサイクルとLTSの位置づけ

Oracleは現在、半年に一度の頻度で機能リリースを行い、2年ごとにLTSバージョンをリリースするというサイクルを採用しています。このサイクルにより、最新の技術動向を迅速に取り入れつつ、安定した基盤も提供される形です。

これまでの主なLTSバージョンは、Java 8、Java 11、そしてJava 17です。現在ではJava 21もLTSとしてリリースされていますが、Java 17は、Java 8やJava 11からの移行先として非常に有力な選択肢となっています。特にJava 11からJava 17への移行は、LTS間の移行となるため、比較的小規模な変更で最新のメリットを享受できる点が魅力です。

Java 8からの大きな進化

Java 8がリリースされた2014年以降、Javaの言語仕様やAPIは大きく進化しました。Java 17は、Java 8にはなかった多数の機能強化やパフォーマンス改善を含んでいます。例えば、ラムダ式やStream APIはJava 8で導入されましたが、それ以降もモジュールシステム(Jigsaw)、varによる型推論、レコード、Sealed Classes(シールクラス)、Pattern Matching for Switch(switch文のパターンマッチング)など、開発効率とコードの可読性を高める機能が多数追加されています。

これらの新機能は、より簡潔でモダンなJavaアプリケーション開発を可能にし、開発者の生産性向上に貢献します。長年Java 8を利用してきた開発者にとっては、これらの新しいプログラミングパラダイムを取り入れる良い機会となるでしょう。

Java 17への移行を検討すべき理由

顕著なパフォーマンス向上

Java 17への移行を検討する最大の理由の一つは、その顕著なパフォーマンス向上にあります。特にJava 11と比較しても、起動時間の短縮やガベージコレクション(GC)の効率化が図られています。参考情報によると、Java 17はJava 11と比較して起動時間が約15%短縮され、ガベージコレクションの効率も向上しているとのことです。

これは、マイクロサービスアーキテクチャで頻繁に再起動されるサービスや、計算集約型のバッチ処理などにおいて、処理能力の向上とリソース消費の削減に直結します。より高速で効率的なアプリケーションの実行は、ユーザーエクスペリエンスの向上だけでなく、運用コストの削減にも貢献します。

最新の言語機能による開発効率化

Java 17には、開発者の生産性を高め、より堅牢で読みやすいコードを書くためのモダンな言語機能が多数導入されています。その中でも特に注目すべきは、Sealed Classes(シールクラス)Pattern Matching for Switch(switch文のパターンマッチング)です。

Sealed Classesは、継承を許可するクラスやインターフェースを明示的に制限することで、コードの安全性と可読性を向上させます。一方、Pattern Matching for Switchは、switch文で型によるパターンマッチングを可能にし、複雑な条件分岐を簡潔に記述できるようになります。これらの機能により、開発者はよりエラーの少ない、保守しやすいコードを効率的に記述することが可能になります。

安心の長期サポートと最新環境への対応

Java 17はLTSバージョンであるため、Oracleから少なくとも8年間のサポートが提供されます(参考情報より)。これは、特に長期的な運用が求められるエンタープライズシステムにとって非常に大きなメリットです。安定したセキュリティアップデートとバグ修正が保証されることで、安心してシステムを稼働させ続けることができます。

また、Java 17は最新のハードウェア環境への対応も強化されています。特に、macOS上のApple Silicon(M1/M2チップ)にネイティブ対応している点は、Apple製品を利用する開発者にとって大きな利点となります。これにより、Apple Silicon搭載Macでの開発環境構築がよりスムーズになり、パフォーマンスも最大化されます。

Java 17のインストールとダウンロード方法

OpenJDKディストリビューションの選択

Java 17をインストールする際、最初に検討すべきは、どのOpenJDKディストリビューションを利用するかという点です。Oracle JDKはJava 11以降、商用利用において有償ライセンスが必要となる場合があります。しかし、心配はいりません。Adoptium (旧 AdoptOpenJDK) や Azul Zulu、Amazon Correttoなど、多くのベンダーから無償で利用可能なOpenJDKディストリビューションが提供されています。

これらのディストリビューションは、Oracle JDKと完全に互換性があり、長期サポートも提供されています。多くのプロジェクトや企業では、これらの無償のOpenJDKディストリビューションが採用されています。ご自身のプロジェクトの要件やサポート体制を考慮し、最適なディストリビューションを選択しましょう。

OSごとの一般的なインストール手順

Java 17のインストール方法は、お使いのOSによって異なりますが、基本的な手順は以下の通りです。

  • Windows: Adoptiumなどの公式サイトから提供されるインストーラー(.msiファイル)をダウンロードし、実行するのが最も簡単です。または、パッケージマネージャーであるChocolatey (`choco install temurin17jdk`) を利用する方法もあります。インストール後は、環境変数JAVA_HOMEPathの設定を確認してください。
  • macOS: Homebrew (`brew install temurin@17`) を利用するのが一般的です。Homebrewを使用すると、バージョンの管理も容易になります。公式サイトから.dmgファイルをダウンロードして手動でインストールすることも可能です。
  • Linux: ディストリビューションのパッケージマネージャー(Debian/Ubuntuならapt、CentOS/RHELならyum/dnf)を利用するのが一般的です。例えば、UbuntuではPPAを追加してインストールする方法や、SDKMAN!のようなJavaバージョン管理ツールを利用する方法もあります。

インストール後は、ターミナルで java -version コマンドを実行し、正しくJava 17がインストールされているか確認しましょう。

開発環境(IDE)との連携

Java 17をインストールしたら、お使いの開発環境(IDE)との連携もスムーズに行う必要があります。主要なIDEはすべてJava 17をサポートしており、通常はインストールされたJDKを自動的に検出するか、手動でパスを指定することで利用可能になります。

  • IntelliJ IDEA: プロジェクト設定でJDKのパスを指定するだけで、Java 17の機能を利用できます。
  • Eclipse: ワークスペースのJDT設定でJava 17を追加し、プロジェクトのコンパイラ準拠レベルを17に設定します。
  • VS Code: Java Extension Packをインストールし、設定ファイルでJavaの実行環境を指定します。

これらのIDEは、Java 17の新機能に対するコード補完や構文チェックも提供するため、効率的な開発が可能です。IDEのサポートを活用し、Java 17のメリットを最大限に引き出しましょう。

Java 17のサポート期限について

Oracleによる長期サポートの詳細

Java 17は長期サポート(LTS)バージョンであり、OracleはJava 17に対して少なくとも8年間のサポートを提供すると表明しています(参考情報より)。これは、2021年9月のリリースから計算すると、2029年9月頃まで主要なアップデートやセキュリティ修正が提供されることを意味します。

この長期的なサポート期間は、特にエンタープライズシステムや大規模な基幹システムにとって非常に重要です。システムを一度構築すれば、数年間は安定した環境で運用を継続でき、頻繁なバージョンアップによるコストやリスクを抑えることができます。計画的な移行と長期的な安定稼働を考える上で、Java 17のLTSは大きなメリットとなります。

OpenJDKコミュニティのサポート状況

Oracle JDKの商用利用ライセンスの変更以降、OpenJDKコミュニティによるディストリビューションの利用が広まっています。Adoptium (旧 AdoptOpenJDK) や Azul Systems、Amazonといったベンダーは、それぞれ独自のOpenJDKディストリビューションを提供しており、Java 17に対しても長期的なサポートを提供しています。

例えば、Adoptiumはコミュニティ主導でTemurinと呼ばれるOpenJDKビルドを提供し、数年間の無料サポートを約束しています。Azul ZuluやAmazon Correttoのような商用ベンダーも、無料のLTSビルドと、さらに長期的な有償サポートオプションを提供しています。これらの選択肢を検討することで、Oracleのサポート期間に依存せず、柔軟なサポート戦略を立てることが可能です。

将来のLTSバージョンとの比較

JavaのLTSバージョンは、Java 8、Java 11、Java 17と続き、最新のLTSバージョンはJava 21(2023年9月リリース)です。さらに、次期LTSであるJava 25は2025年9月にリリース予定です(参考情報より)。

現在、新規開発でJavaを採用する場合、Java 21以降を検討するのが一般的ですが、既存システムの場合はJava 17への移行も非常に有効な選択肢となります。Java 17はまだサポート期間が長く、すでに成熟した安定したバージョンとして広く利用されています。システム要件や移行の労力、利用しているライブラリのサポート状況などを総合的に判断し、最適なLTSバージョンを選択することが重要です。

Java 1.8やJava 11からの移行パス

Java 8からの移行における注意点

長年Java 8を利用してきたシステムからJava 17へ移行する場合、その間に追加された機能や変更点が多いため、いくつかの注意が必要です。

  • 互換性の確認: 最も重要なのは、利用しているライブラリやフレームワークがJava 17をサポートしているかどうかです。古いバージョンのライブラリはJava 17で動作しない可能性があり、アップデートが必要になる場合があります。
  • APIの変更: Java 9で導入されたモジュールシステム(Jigsaw)によって、一部の内部APIが隠蔽されたり、削除されたりしています。また、Java 8には存在しなかった多数のAPIが追加され、一部のAPIは非推奨または削除されています。これらの変更点を把握し、必要に応じてコードを修正する必要があります。特に、リフレクションを使用している部分や、内部APIに依存しているコードは注意が必要です。

Java 8からJava 17への移行は、単なるバージョンアップではなく、コードベース全体の見直しとテストが必要となる可能性があります。計画的な移行と十分なテスト期間を確保することが成功の鍵となります。

Java 11からのスムーズな移行

Java 11もLTSバージョンであるため、Java 17への移行はJava 8からの移行に比べて比較的スムーズに進むことが多いでしょう。しかし、それでもいくつかの非互換な変更点が存在するため、注意が必要です。

  • パフォーマンス向上: Java 11からJava 17への移行の主なメリットの一つは、前述の通りパフォーマンスのさらなる向上です。特に起動時間やスループットの改善は、アプリケーションの効率化に貢献します。
  • 非互換性の可能性: 参考情報にもあるように、Java 17では--illegal-accessオプションのサポートが終了しています。これはJava 9以降のモジュールシステムによって非推奨とされてきたもので、内部APIへの不正アクセスを許可するオプションでした。また、java.security.aclなどの一部のAPIが削除または置き換えられています。これらの変更点に依存しているコードがないか確認し、必要に応じて修正を行う必要があります。

Java 11からの移行は、影響範囲が限定的である可能性が高いですが、それでも徹底的なテストを実施することが推奨されます。

ライセンスとディストリビューションの選択

Java 17への移行を検討する上で、ライセンスの問題は非常に重要です。Oracle JDKはJava 11以降、商用利用において有償ライセンスが必要となる場合があります。このため、多くの企業では、無償で利用できるOpenJDKディストリビューションへの移行を進めています。

Adoptium(Temurin)、Azul Zulu、Amazon Correttoなど、多くの信頼できるベンダーがJava 17のOpenJDKビルドを提供しており、これらは無料で利用可能です。これらのディストリビューションは、Oracle JDKと機能的に同等であり、セキュリティアップデートも提供されます。移行計画を立てる際には、どのディストリビューションを選択するかを早期に決定し、ライセンスリスクを回避することが不可欠です。